島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~   作:伊吹恋

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あけましておめでとうございます。今回はあのアイドルからオリジナルでキャラクターが登場します!


Round.10

フェザー級初試合を見事初勝利に収めることが出来た木崎京介。一樹たちは控え室に戻った京介への激励をしていた。

 

「いやぁ~ホント危ない試合だったね!」

 

「京介君、お疲れ様です!」

 

「ああ、みんなわざわざ応援ありがとう。そして一樹さんも・・・応援ありがとうございました。声援、ちゃんと届きましたそのおかげでなんとか勝てました」

 

「何がなんとか勝てただ、しっかり打たれてたじゃねえか。結果的には勝てたが、その内容はヒヤヒヤ物だったよ。だが勝ったのも事実だ。どんな手を使おうが勝ちは勝ちだ、今はこう言おう...お疲れ。よく頑張った・・・」

 

一樹は疲れ果てて椅子に座り込んでいる京介の肩に手を置き、優しい笑みを浮かべた。

ボロボロの顔で(・・・・・・・)

 

「...所で一樹さんがいったい何があったんですか?」

 

「気にするな。ちょっと丸太を持った坊主のような格好をした『ハァハァ』と息を荒くした大男に顔を殴られただけだ!なぜ殴られたのかは理由は聞くな」

 

「それは大丈夫なのでしょうか?その人が東京に居るって事は日本が吸血鬼だらけに・・・」

 

「心配ないさ!丸太持ってたし」

 

「「「いや、何の話し?」」」

 

こうして京介の初試合は無事終わりを告げた。そして、これは一樹の運命を大きく変える出来事の始まりでもあった。それは数日後の卯月達のライブ当日だった。

 

一樹は店を閉めて朝早くからある所に来ていた。そこは大きな舞台セットが立っているライブ会場だった。そして一樹はそんなライブ会場に集まっている人混みの中にいた。顔を青くしながら。

 

「・・・(なんか気分悪くなって来やがった・・・)」

 

今回一樹が訪れたのは卯月たちCPメンバーのライブだった。と言っても歌うのは彼女達だけではない。346プロダクションのアイドルたちによるアイドルフェスティバルライブ。それがここなのだ。気分を悪くしながらも一樹がなぜここにいる理由は単純明快。『卯月の為』ただそれだけだ。

 

この日に卯月は前もって一樹にライブのチケットを渡していた。このライブ自体はテレビで生放送をするためテレビで鑑賞する予定だった。だが卯月の涙目の上目遣いで「お兄ちゃん、お願いです・・・来てください!」にはかなわなかった・・・。一樹は「卯月に悲しい思いをさせていいのか?否!そんなの兄貴としてやってはいけねえ!!」と言いこうしてやって来たのだ。

普段は「兄離れしてくれ」と言ってる一樹だが、卯月の事になれば大事な事をすっぽかしてでもそっちを優先する。結論を言うと、一樹は卯月にとことん甘いのだ。

前に店をすっぽかして卯月の中学の授業参観に行ったというエピソードもあるが、それはまた別の機会に話そう。

 

なんとか人混みから抜けだし卯月達がいる劇場裏に行く。目的は激励の為だ。

 

「オッス、調子はどうよ」

 

「あっお兄ちゃん!」

 

一樹を見つけるなり笑顔で一樹元に駆け寄る卯月。それに付いてくるようにCPメンバーの面々もこちらにやってくる。それぞれのメンバーを見渡す一樹。

 

「うん、調子は良いみたいだな。よしよし・・・」

 

「卯月ちゃんのお兄さん、こんにちは!」

 

とみりあが一樹に向かって元気よく笑顔で言う。

 

「おう、こんにちはみりあちゃん。全員引き締まった面構えだな」

 

「うん、前にお兄さんが聞かせてくれた演説のおかげだよ」

 

「あれか・・・あの話しで緊張が紛れたのなら言った甲斐はあっただろうが・・・それでも不安はあるだろ?」

 

みんなは顔を見合わせながら首を縦に振る。

 

「それでいいさ、どんなに大舞台になれてる奴でも緊張するものだ。俺が言えるのは一つ、失敗を恐れるな。お前達がこの日の為に練習して来たのは重々分かってる。舞台に上がれば主役はお前達アイドル達だ、失敗を恐れるな、失敗してたとしてもそれは次に生かせる。だから、止まらず突っ走れ!」

 

一樹は拳を固めてストレートの形を取りCPメンバーの前に突き出す。

 

「「「おー!!!」」」

 

CPメンバーもそれに答えるように一樹拳を突き出し声を上げる。

 

彼女らの会話をしていると一人の男性スタッフらしき人物が一樹に話しかけてきた。やはり関係者とはいえ怪しい人物だと思われたか?と思いつつ一樹は職質覚悟でスタッフの方を向く。

 

「もしかして、島村一樹さんですか?」

 

「えっ?・・・(なんで俺の名を知ってるんだ?・・・まさか)」

 

「あの、元フェザー級王者のあの島村一樹さんですよね!?」

 

やっぱりかぁ・・・という感じで一樹は「ハァ・・・」と小さなため息をする。だがここで嘘をついてもしょうが無いと感じた一樹は自分の名前を明かす。

 

「確かに俺が島村一樹です」

 

一樹が名を名乗ると男性スタッフの目の色が変わった。

 

「やっぱり!僕、ずっと一樹さんのファンなんです!引退はしてしまいましたが、あなたはいつでも私の憧れです!」

 

「は、はぁ・・・?」

 

「あ、あの、よかったらサインを・・・」

 

どこから出したのか、白い色紙とマジックペンを出してくるスタッフ。

参ったなあ、という感じに一樹はその色紙一式を受け取りそこに名前を慣れた手つきで流れるように書く。

 

「・・・これでいいですか?」

 

色紙に書いたサインを持って目を輝かせる男性スタッフ。

 

「あ、ありがとうございます!いつか、再びリングに上がるのを願ってます!!」

 

そう言い残して去って行く男性スタッフの後ろ姿が消えるまで見ていた。

 

「・・・引退してるんだけどな・・・俺・・・」

 

その後一樹は武内にも挨拶をしに行くと、武内もさっきのスタッフのように色紙と黒いペンを一樹に差し出す。

 

「・・・」

 

「・・・(そう言えば、あの試合の後にサインするの忘れてたわ・・・)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライブは白熱。何せ人気アイドルたちが集まってる大イベントだ。これほど大きなイベントだ。金かかってんだろうな。俺も歌を聴きながらノリノリに足踏みとかもしてたし、素直に楽しいと思えるものだった。

そしてライブはクライマックス。全アイドルによる『お願い!シンデレラ』の熱唱が終わった。前列辺りにはシンデレラプロジェクトメンバーを中心に卯月の姿も確認できた。

 

卯月は今、輝いてる。憧れ続けたアイドル。今その夢が努力と結びついて実が成った。俺は今の卯月が眩しい。はっきり言うと、俺は卯月が羨ましい。・・・羨ましい?なんでそう思ったんだ?

分からなかった。なんで俺は卯月を羨ましく思ったんだ?何に対して?努力?憧れ?夢?わからない・・・。

 

ライブは終わりすでにみんなのインタビューに入っている。

 

「はい、次は島村卯月さんです!今の思いを誰に伝えたいですか?」

 

「はいっ!私は両親に、そして一番伝えたいのは、お兄ちゃんです!」

 

「お兄さん、と言いますと、あのプロボクサー島村一樹さんでしょうか?」

 

「はい。お兄ちゃんは引退しても私を応援してくれました。私もお兄ちゃんの努力を近くで見たから、目標に向かって頑張ってこれました。その頑張りを見せて貰うたびに私は勇気を貰ってきました。だから私はお兄ちゃんがもし復帰するとしたら、私はお兄ちゃんを応援します。だからこそ今私はお兄ちゃんに伝えます。『ありがとうございます!!』」

 

「ッッ!!」

 

あの言葉・・・聞き覚えのある台詞を言ってくれるよ・・・あの言葉は俺が新人王を取ったときの台詞じゃねえか。

 

『俺は目標に向かって頑張ってこれました。でも、ここまで来れたのは今の家族が俺を支えてくれたからです!だから、今感謝の言葉を伝えるとしたら、義理の両親と義理の妹です!ありがとうございます!!』

 

「・・・復帰には時間がかかる・・・か」

 

拳を前に出し、堅く握りしめる。目を閉じ、思い浮かべる。自分の目標、何を目的にしていたか。

 

フェザー級世界タイトル・・・一度あきらめた願いだが、やってやるよ・・・俺も卯月に勇気を貰ったからな。

 

「妹から感謝の言葉を聞いてやる気が出たか?」

 

横から聞き覚えのある声を聞き俺は横にいる人物を見る。そこに居たのは俺がよく知ってる人物だった。

 

「咲耶・・・?」

 

その人物は俺と同じフェザー級の現日本チャンピオン。このライブに出場しているアイドルの実兄で、俺の最大のライバルである人物。

 

 

日本フェザー級チャンピオン橘咲耶(たちばなさくや)

 

 

「・・・お前も妹のライブを見に来たのか?」

 

「ああ、そんな事より、戻るのか?リングに・・・」

 

「・・・あれだけ勇気を貰ったからな・・・俺はリングから下りることにより卯月が悲しまないようになると思ってた・・・だが違う。俺はただ怖がってただけだ・・・あれだけ卯月たちに失敗しても恐れるなって言っておいて自分がこれだ・・・だがあいつの言葉を聞いて目が覚めた。今度は取ってやるよ。世界を・・・この手で・・・恐れん、迷わずまっすぐ進んでやる・・・!」

 

拳を天高く上げ、それを見続ける。その日、俺は里中会長に再びリングに返り咲くことを伝えた。明日から身体を鍛え直す為のトレーニングが始まる。

 

こうして俺に目標が出来た。・・・いや、出来たのでは無い。これは再挑戦(リベンジ)だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおお!!!」

 

ロードワークというには激しすぎる走り込み。まさに全力疾走で一樹は土手を一気に走り抜ける。それを見ているCPメンバーたちは目を丸くしていた。

 

「す、すごい・・・」

 

「バイクと同じ速度で走ってるにゃ・・・」

 

そしてジムに帰ると次はサンドバッグを連打。徹底的に心臓や身体をいじめ抜く。負担をかけることにより基本体力を取り戻しつつあった。

 

「ラスト!!」

 

「ふっ!!!」

 

ラストに右ストレートがサンドバックに当たり大きく揺れる。

この時、一樹の身体は昔に近づいて来ている。だがまだまだだった。

 

昼の店を休みにしてカチャカチャと箸を進める一樹。それも低カロリーかつスタミナが着く料理ばかりだ。一緒に食事する事になったCPメンバーもその姿を見て唖然とした。止まることを知らない箸。みるみる釜の中にある米は無くなっていく。

 

「お、お兄さん?いくら体力を取り戻す為だからって流石に食べすぎじゃあ...」

 

「心配すんな!俺食ってるのは玄米だ。お前らが食ってるのは白米だからまだ釜には飯がある!」

 

「いやそういう問題じゃあ...」

 

「酒池肉林の境地...(流石に食べすぎじゃ...)」

 

「気にすんな!ボクサーはスタミナ命なんだ!」

 

夕食を済ませると次は夜の居酒屋の準備をし、営業が終わると風呂に入ったら寝てまた朝早くからロードワークとそしてトレーニングの後は夜の居酒屋。朝から夜までこの繰り返しだった。店は一樹が昼間練習をするため喫茶は当分営業するのをやめた。朝、昼はトレーニングに、夜は居酒屋営業に変えた。

次第に力を取り戻しつつある獅子の姿に、多くのボクシングファンが期待を大きくした。長らく眠り続けた獅子が目覚め、爪を研ぎ今か今かと折りが解き放たれるのをじっと待っている。

 

 

そして、解き放たれる時は来た。

 

 

8月26日 島村一樹復帰戦

島村一樹VS有田雅彦

 

 

 

復帰試合まで、あと3ヶ月




友人「・・・無理矢理感半端ねえな」
自分「いや、その、すんません・・・友人を主人公にして艦これの好きなキャラとの恋愛話を書くのと同時に進行してて遅くなった・・・」
友人「へぇ・・・ちなみにその友人の好きなキャラは?」
自分「北上様・・・」
友人「えっ、なにそれ見たい」←北上好き

というわけで編集長(友人)から叱られずに済んだMENです。自分でも違和感満載のごり押しの一樹復帰です。

そして次回は季節は夏の設定にしました!はじめの一歩的に言えば夏とは・・・恒例のアレです!もちろんデレマスキャラも出ますので次回も暖かい目で見守ってください!

では次回・・・ボックス!!

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