島村家の元フェザー級日本チャンピオン~challenge again~ 作:伊吹恋
「う~ん!パーフェクト!ピッタリじゃないですか!」
「なあ…やっぱりやめないか?」
小野ミチオという広島のゆるキャラになることを決意したプロボクサー兼俳優の一樹。そんな一樹はゆるキャラ小野ミチオの着ぐるみを着て総合監督の男の元まで歩いてきた。
その姿は尾道ラーメンをモチーフしたどんぶり帽子、ゆるキャラらしくゆる~い顔をした八朔の顔、ONOとプリントを施された服。海産物のPRも含まれた魚のポシェットに、それに乗っかるように漁師が多いというアピールである黒い長靴を履いた一樹が現れた。
「重いし、暑いし、息苦しいな…これは逃げ出す気持ちもわかる…」
「まあ、そう言わずに、小野ミチオ君は尾道のシンボル!アイドル!象徴なのですから!」
「大体このヘンテコなキャラのどこが尾道を象徴してるんだ?」
「えええ!?見てわかりませんか?
瀬戸内を代表する名産『八朔』をモチーフにしたチャーミングなお顔!
おしゃれなアクセントになっている尾道を代表的食べ物『尾道ラーメン』の帽子!
美味しい海産物を楽しめる街であることを伝える『お魚』のポシェット!
漁師の住む町であることを伝えるためのクールな『長靴』!
そして小野ミチオ君の苗字である「ONO」を大胆にプリントしたイケてる洋服!
全てが美しき町、尾道を象徴してる完全無欠なご当地ゆるキャラだと思いませんか!?」
「あまり思わないが…」
「まあ大丈夫ですから!自信を持ってください!カッコイイですよ!島村さん!いや、ミチオ君!」
「…で、俺は具体的に何をすればいいんだ…?」
「もうすぐ子供たちがやってくると思いますので、まずはファンサービス、遊んであげてください!
ただし、くれぐれもキャラクター性を乱すことはしないでくださいね」
「キャラクター性?」
「小野ミチオ君は尾道に住んでいる漁師という設定です。なので、基本は海を愛する渋い男のキャラです」
「この顔でか……?」
「そして言葉遣いですが、基本的には挨拶には「ミチー」をつけてください!」
「「ミチー」?」
「こんにちはミチー!よろしくミチー!のような感じです。では練習してみましょう、サンハイ!」
「よろしくミチー……」
「そうですそうです!本番ではもっと元気よくお願いしますね!
…それと、困ったときに使う口癖が設定されます。
困ったときは、「オーノー!」と言ってください。練習しましょう。さん、はい!」
「…オーノー」
「エクセレント!ちなみに英語の「OH!NO!」と「小野」がかかってます!洒落てるでしょ!?」
「どう考えてもスベってるだろ…」
「そして最後に!もういっこだけあります!」
「まだあるのか…で…何なんだ」
「それは、決めポーズです!」
「決めポーズ?」
「小野~…」
総合監督の男は大きく足を開き腕を頭の所まで持っていき
「ミチオ!」
と両膝を折り曲げ左方向に、右腕は肘を折り曲げ下の方向に、左腕は同じように肘を折り曲げて上の方向に向けてポーズをとる。それは少し卍のマークにも似ていた。ここまで見た一樹の反応は
「うわあ……」
ドン引きしていた。
「こんな感じでお願いします。登場の時やシメる時とかに使われますね」
「やりたくないぜ…」
「まあまあ、そう言わずに、子供たちの笑顔のためですから!いきますよー!さんはい!」
「小野~…」
先ほどの総合監督の男がやったようにポーズを取り、
「ミチオ……!」
卍のポーズを取った。
「島村さん!完璧ですよ!間違いない…あなたこそが小野ミチオだ!」
「…嬉しくねえよ…」
「お!そろそろ子どもたちが来ますよ!それでは島村さんよろしくお願いします!他の設定は結構ガバガバなんでなんとなくそれっぽい演技をしてくれれば大丈夫ですんで!」
「…つまりは丸投げってことかよ…どうなっても知らねえからな」
「大丈夫です!島村さんこそ小野ミチオです!
…あっ!来た!それじゃあよろしくお願いします!!」
総合監督の男がその場を去ると、後ろから子供らしき声が耳に入る。
「わああ!小野ミチオだあ!」
「すごーい!本物だ!」
それにつられるように三人ほどの子供がこちらに歩いてくる。
変哲な格好の割には意外に人気があることを知った一樹は「ここは人肌脱ぐか…」と後ろを向いた。
そして一樹は一目を気にすることなく、大声で声を出す。
「ようガキ共……俺こそが……
チャーミングなはっさくフェイス……!
おしゃれな尾道ラーメン帽子……!
キュートな魚のポシェット!
漁師の心意気…… クールな長靴!
イカしたナウい「ONO」トレーナー……!
そう 俺こそが尾道の象徴……
小野……ミチオだ……!!」
ちゃんと自己紹介の後に卍ポーズを取る一樹。
「楽しみたい奴は…かかってこい!!」
果たして、イベントは無事に終えることができるのか!
続く。