東方恋華想《完結》   作:室賀小史郎

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恋人は純狐。

※重い部分はカットしてますのでご了承お願い致します。


純狐の恋華想

 

 人里ーー

 

 今日も平穏に時が流れる幻想郷。

 しかしそんな昼下がり、ある少女にとっては少々厄介なことが起きていた。

 

「うどんちゃ〜ん、私どうしたらいいのかな〜?」

「わ、私に言われましても……」

 

 人里にある茶屋でとある人物から相談を受けるのは、鈴仙。

 そして鈴仙に相談しているのは、神霊であるあの純狐だ。

 

 純狐はあの一件以降、鈴仙を気に入り、暇を持て余していたのでちょくちょく地上へ訪れている。

 

 そして今、何を相談しているのかと言うと、

 

「彼が好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで好きで……どうしたらいいのか分からないのよ、うどんちゃ〜ん!」

 

 恋の相談だった。

 

 純狐には辛く苦しい過去がある。そしてあの一件で博麗の巫女や白黒の魔法使い、鈴仙達と関わったことで地上に興味を持ち、降り立った。

 しかし土地勘も無く、ただ彷徨っていた純狐は魔法の森で悪い妖怪に襲われた。純狐の力からすれば屠るのは容易かったが、そんな純狐を助けた一人の青年がいたのだ。

 その青年は数年前に魔法の森に住み着いた外の世界からやってきた魔術師で、名前は「レーザル」。幻術を得意とし、愛用の角笛で魔力を込めた音色を奏で相手を混乱させたり、惑わしたりして撃退する。

 レーザルの幻術で妖怪が戸惑っている内に、レーザルは純狐を救出。そのことから純狐はすっかりレーザルを気に入り、あの辛く苦しい過去を乗り越え、今ではレーザルと恋仲にまで発展したのだ。

 

「……いつもみたいに会いに行けばいいじゃないですか」

「駄目よ! 今週はもう六日連続で会ってるのよ!? 今日くらいは我慢しなきゃ、重い女だと思われちゃうじゃない!」

 

 もう十分重いよ……と思った鈴仙だったが、その言葉は胸にしまい込むことにした。でないとあとが面倒だから。

 

「じゃあ我慢すればいいじゃないですか。私、まだ薬売りの仕事終えてないので、もう行っていいですか?」

「冷たいよ、うどんちゃん! 私と貴女の仲じゃない! 何か気を紛らわす方法とか教えてよ!」

「帰ってへカーティアさんやクラピちゃんと過ごせばいいじゃないですか」

「へカちゃんは閻魔のとこに行っちゃってて、クラちゃんは紅魔館に遊びに行ってるから無理!」

「いや無理ではないでしょう? 一人でも本を読むとか、部屋のお掃除するとか、お昼寝するとか色々時間潰せます」

「一人でいると余計に彼の顔しか頭に浮かばないの〜! それで気がついたら地上に来ちゃってるの〜!」

 

 鈴仙がああ言えば純狐はこう言う。何を言っても結局『帰る』という選択肢は純狐にはないようだ。

 鈴仙としては早く仕事に戻りたい上に、純狐の惚気け話に付き合わされるのはまっぴらごめんなので、さっさとこの状況を何とかしたい。

 

「もういっそのこと一緒に住んでしまえばいいのに……」

 

 もう面倒くさくなった鈴仙が、お茶を飲みつつそうつぶやくと純狐が急に席を立った。

 

「うどんちゃん! 貴女今いいこと言ったわ!」

 

 そう言って鈴仙の背中を勢い良く叩く純狐。それにより鈴仙は口からお茶の弾幕を繰り出すことになったのは致し方ない。

 

「ごほっ、ごほっ……こ、今度は何なんですか?」

「うどんちゃんがいいことを言ったわ! 私、これから彼に一緒に住むように提案するわ!」

 

 それはそれで重いことにならないのでしょうか、純狐さんや……と鈴仙は思った。しかしこうなった純狐はもう誰にも止められない。止められるなら例の宿敵くらいだ。

 純狐は鈴仙に何度もお礼を言い、鈴仙と自分のを合わせたお代を払ってから、颯爽と茶屋を後にした。

 

「………………薬売りに行こ」

 

 そんな純狐の背中を鈴仙は死んだ魚のような目で見送りつつ、鈴仙は仕事に戻るのだった。

 

 

 魔法の森ーー

 

 間欠泉地下センター前から森の中へ直進すること十分。純狐のお目当ての相手、レーザルの暮らす小屋がある大木が見えてくる。

 レーザルの小屋は大木の枝のところに建てられており、これはレーザルが趣味で作った小屋。

 

 純狐は小屋の扉の前に降り立つと、服の埃を払い、乱れた服や髪を軽く整えてから扉をノックしようとした。

 

「いらっしゃい、純狐」

 

 しかしそれより先にレーザルが扉を開け、微かだが笑顔を見せて純狐を出迎える。

 純狐はその笑顔に胸をキュンとさせながらも、自分もニッコリと笑ってレーザルに返し、そのまま中へと入った。

 

 ーー

 

「いつものでいいか?」

「うん♡」

 

 レーザルの言う『いつもの』とは珈琲のことで、レーザルが普段から飲んでいる物。純狐はレーザルと同じ物なら何でもいいので、必然的に飲み物は珈琲となる。

 

「純狐は砂糖とミルク多めだよな」

「きょ、今日はそのまま挑戦するわ!」

「それ、昨日も一昨日も、その前からも言って未だにブラック飲めないじゃないか。無理するな」

無理なんてしないもん……」

「あんな苦そうに飲んでて無理してないなんて言えないだろ」

 

 そう言ってレーザルは純狐の膨れた頬を人差し指でツンツンする。そんなレーザルに純狐は更に膨れっ面になるが、レーザルが構ってくれるのが嬉しいので段々といつものデレデレな顔に戻った。

 

 珈琲を淹れ、いつものソファーに二人で肩を並べて座る。純狐は幸せそうにレーザルの肩に頭を預け、思わず足をパタパタさせた。

 

「そういえば、今日は来るのが遅かったな……来てくれないのかと思っていたんだ」

「そ、そんなに寂しかった?♡」

「まぁな……もう純狐と過ごすのが当たり前になってるから、純狐がいないとポッカリと穴が開いたような気分なんだ」

 

 そんなことを大好きな相手から言われた純狐は、グングンとエクステンドが上がってしまう。それに純狐は新たな野望をその胸に秘めているため、先程のレーザルの言葉はその野望を達成させるのに十分な言葉だった。

 

「あ、あのね、レーザル……」

 

 先程の言葉で自信をつけた純狐は思い切って鈴仙からもらった案を提案することにした。

 しかしなかなか次の言葉が出せず、純狐はオロオロとしてしまう。付き合うのを決める時もそうだったが、同棲することは更なる一歩を進むこと……それは純狐にとって望むことだが、それと同じくらい不安がある。

 

 もうあんなことになりたくない……

 もう何も失いたくない……

 もうあの光景を見たくない……

 

 そのことを思うと次の言葉が出ないのだ。

 

 すると純狐の耳に穏やで、それでいて安心する音色が流れてきた。

 

「〜♪ 〜〜〜♪ 〜〜♪」

 

 レーザルの角笛だった。レーザルが純狐の気分が落ち着くように癒やしの音色を奏でていたのだ。

 

「レーザル……♡」

「〜♪ ……どうだ、少しは落ち着いたか?」

 

 演奏を終え、純狐に優しい笑みを見せるレーザル。純狐はその笑顔に力強く頷くと、レーザルの左手を自身の両手で優しく包み込むように握った。

 

「レーザル、私ね……貴方とずっと一緒にいたい♡ 少しの間でも離れたくない……だから、一緒に暮らそう?♡」

「駄目だ」

「え……ど、どうして?」

「こういうのは男から言うものだ。だからーー」

 

 そう言ってレーザルは純狐の顎をクイッと自分の方へと優しく、しかし少し強引に向ける。

 

「ーーだから、俺から言う。俺の元で一緒に過ごそう、純狐。大丈夫だなんて無責任なことは言わない。でも純狐の悲しみ、辛さを半分……いやそれ以上を共に背負わせてくれ。愛する君に俺は残りの一生を捧げることをここに誓おう」

「……はい、これからの私は貴方と共に♡」

 

 そして二人は自然と互いの唇を重ね合わせた。レーザルが純狐の腰を力強く抱くと、純狐はそれに応えるようにレーザルの首に回した両腕に力を込める。

 口づけが終わる頃には、外がすっかり夜になっていたとかーー。




純狐編終わりです!

少しでも幸せになってほしい。そう思って甘さ控えめな純愛にしました!

お粗末様でした☆

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