東方恋華想《完結》   作:室賀小史郎

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恋人はクラウンピース。


クラウンピースの恋華想

 

 博麗神社ーー

 

 よく晴れた幻想郷。しかし本日は昼前でも非常に肌寒い上、霊夢のところには今チルノが大妖精と共にやってきているため、寒さが増している。

 

「お前! こ、これ以上あたいに近づくな!」

「えぇ〜、あたい達と一緒に遊ぼうよ〜!」

 

 そんな中、囲炉裏の間で毛布に潜り込み、遊びに誘うチルノを警告しているのは地獄の妖精・クラウンピース。

 クラウンピースは主人であるヘカーティアの指示で地獄を離れ博麗神社の下の地下空間に居を構えているものの、ほぼ霊夢達と一緒に生活している。

 これに対して霊夢は萃香や針妙丸もいるので、三人になろうが特に気にしていない様子だ。

 

 今では萃香や針妙丸とも打ち解け、博麗神社裏の森に住む光の三妖精達とも遊ぶ仲なので大分馴染んでいる。

 そして最も変わったことが、

 

「こんにちは〜」

「あんちゃ〜♡」

 

 クラウンピースに恋人が出来たことだ。

 

 この青年は博麗を信仰する人間で、普段は人里で銭湯を営んでいる。

 とある吹雪の夜、寒さに弱いクラウンピースが倒れていたところを青年が救い、それによりクラウンピースが青年を気に入り、今に至る。

 

 この時間になると青年は決まって博麗神社へお参りに訪れる。銭湯の掃除等を終えると、昼下がりまで手すきになるからだ。

クラウンピースは青年が来ると毛布から出て青年に飛びつき、そのままほぼずっとホールド状態でいることが多い。

青年も優しくクラウンピースを抱っこしているが、周りからしたら控えてほしいくらいだとか……。

 

「あんちゃ、温か〜い♡ 今日は寒いからあんちゃにずっとくっつくいてる!♡」

「あはは、クラウンピースちゃんは相変わらず寒がりだな〜」

「いいでしょ!♡ それに可愛い恋人のあたいがくっついてるんだから、あんちゃは幸せなはずだよ!♡」

「あぁ、凄く幸せだよ」

 

 そう言って青年がクラウンピースの頭をポンポンと叩くように優しく撫でると、クラウンピースは嬉しそうに羽をパタつかせる。その羽は半透明なので光りに当たってキラキラ輝き、それがまた甘い雰囲気にマッチして余計に甘い光景となる。

 

「あのクラウンピースがいつもより凄く楽しそうにしてる!」

「クラウンピースちゃんはお兄さんが大好きだからね♪」

「仲がいいのは結構だけど、境内でイチャつかないでほしいわ……」

 

 チルノと大妖精がバカップルを見ながら話している横で、霊夢はため息混じりにぼやく。

 それを聞いて青年は苦笑いを浮かべるが、一方のクラウンピースはそんなことは聞こえていないので、変わらず青年の胸に顔をグリグリと押し付けている。

 

「霊夢〜、萃香起こしてきたよ〜」

「霊夢〜、薬湯作って〜……」

 

 すると萃香を起こしに行っていた針妙丸が戻ってきて、その後ろからのそのそと片手で頭を押える萃香が現れた。

 

「お、針妙丸だ! 今日も小さないな!」

「うるさい! いつか絶対に同じ身長になってやる!」

「その頃にはあたいがもっと身長伸びてるし〜♪」

「なら私はそれ以上に伸びる!」

 

 チルノと針妙丸が相変わらずの口論を繰り広げる中、萃香は弱々しく「静かにしてくれ〜」と頼み、それを見た大妖精がチルノ達をなだめる。なんともいつも通りの博麗神社。

 

「少しは控えなさいよ……しまいには禁酒させるからね」

「そんなのやだ〜……」

「なら控えなさい。あんたの酒代だけでうちの資金は飲み潰されてるのに……」

 

 霊夢に注意される萃香はいつもよりか小さく見えた。

 

「休肝日とか一杯だけとかにしたら〜?」

 

 そんな萃香にクラウンピースがそう提案した。青年の背中に移動し、肩に顎を乗せた状態で。

 

「休刊日〜? そんなの天狗に言えよ〜」

「萃香さん、クラウンピースちゃんが言ったのは肝臓のお休みのことだと思います……」

 

 萃香に大妖精がそうツッコミを入れると、萃香は「あ〜、無理無理」と片手を振ってあしらった。

 

「私の肝臓は一日でもお酒入れないと破裂する仕組みだから〜」

「そうなの!? 鬼って大変なんだな!」

「チルノちゃん、騙されないで!」

 

 そんなことをしていると、土間から霊夢が戻ってきて「適当なこと教えない」と萃香に注意し、萃香へ薬湯の入った湯呑を手渡す。

萃香はそれにお礼を言いつつ、苦い渋いと涙目になりながら飲んでいった。

 

「そんなになるまで良く飲むよな〜、あたいには何が美味しいのか分かんないや」

「私達にはまだ早いんだよ」

「まぁ、妖精には早いかな〜。鬼の私にとっちゃ、欠かせない物だよ♪」

 

 萃香の言葉にチルノも大妖精も「へぇ〜」と目を丸くする中、霊夢と針妙丸は呆れたようにため息を吐く。

 するとクラウンピースが口を開いた。

 

「あたいはあんちゃと一日でも会えなかったら死んじゃう!♡」

 

 かなり大胆な発言で大妖精と針妙丸は顔を赤くし、チルノは「そーなのかー」と例のポーズをしつつ返し、残る霊夢と萃香はそんなこと聞かなくても分かる……と言うような目をしながらのスルー。

 

「あたいね、あんちゃが大好きなの。本当ならあんちゃの側にずっといたい。でも、この神社にいることがご主人様の言い付けだから……だからごめんね、あんちゃ」

「謝る必要はないよ。俺がこうしてお参りに来れば会えるんだから……だからそんな悲しい顔をしないで」

 

 青年はクラウンピースにそう優しく声をかけると、その頬に優しく口づける。

するとクラウンピースは「ん♡」と弾んだ声をもらし、口づけが終わると同時に青年にギュッと更に抱きついて青年の頬と自分の頬を擦り合わせた。それはまるで飼い猫が飼い主に甘えているような、そんな愛くるしい光景だった。

 

「あんちゃ〜♡ 好き〜♡ 大好き〜♡」

「あはは、俺もクラウンピースちゃんが大好きだよ♪」

 

 またいつものように好き・大好きを交互に言い合い、砂糖の弾幕を辺りに撒き散らすルナティックシュガーズ(極限のバカップルという意)。

 

「すっごいラブラブだね、大ちゃん!」

「そ、そうだね……」

「甘過ぎる……」

「にっがい薬湯が甘く感じる不思議……」

「結局こうなるのよね〜」

 

 チルノは目を輝かせているものの、大妖精や針妙丸はピチュる寸前。萃香は冷めた感じで霊夢はグレイズでゴリゴリ躱している。

 

「あんちゃ……あたい……♡」

「え……でもみんながいるし……」

 

 するとクラウンピースが何やらモジモジしながら、何かをねだるように目配せを始めた。これはクラウンピースがちゃんと口づけをしたい……そうおねだりする時の仕草である。

 それを見ると霊夢や萃香、針妙丸は何も言わずにふらっとその場を後にし、察した大妖精もチルノを連れて霊夢達と共に避難した。

これは二人に配慮した故の行動ではなく、見慣れている霊夢達といえども、至近距離でのシュガーボム(キスシーン)直撃は避けたいのだ。もしかすると……いやかなりの確率でシュガーボムの次はルナティックシュガーボム(ディープ)に発展するので、こうなると即座に霊夢達は逃げることにしている。

 

「ほら、あんちゃ、霊夢達もあたい達に気を遣ってくれたよ? だから、しよ?♡」

「…………」

 

 まだ躊躇いがある青年に対し、クラウンピースは準備万端とばかりに青年の鼻先に自身の鼻先を擦り付け、瞳にはハートマークを浮かべる。

 

「分かった……しようか、クラウンpーー」

「んちゅ〜っ♡」

 

 青年が言い終わるのを待たずして、クラウンピースは青年の唇に自身の唇を重ねた。二人にとってもうこれ以上の言葉は不要だったから。

 

 唇と唇を合わせ、上唇、下唇と順にお互いについばんでいく。

 熱を帯び、青年がクラウンピースの口の中へ舌を入れようとするも、クラウンピースはゆっくりと口を開き、青年の舌を焦らしながら自分の元へと誘っていった。

 色めく吐息と互いの舌が絡まる艶めく音、離れてもまた重なり合う唇……何度も何度も愛する人の唇を感じ合う二人は自然と抱き合っていた。

 

「おぉ〜!」

「あ、あんなに、ちゅちゅ、ちゅうしてる……」

 

 好奇心に負けてクラウンピース達のキスシーンを見ていたチルノと大妖精は驚きながらも異なった反応を見せ、

 

「早く終わってくれないかな〜……お腹空いた……」

「準備だけでもしましょうか……」

「そ、そうだね……」

 

 いつものメンバーはしずしずと昼食の用意に取り掛かった。

 

 結局、クラウンピース達は霊夢達が昼食を作り終えるまで口づけしていたとかーー。




クラウンピース編終わりです!

バカップルのバカイチャを書きました♪

お粗末様でした☆

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