※注意
今回の主人公は人外です。
小悪魔ちゃんの髪型はショートでもロングでも好きな方をご想像してください。
紅魔館ーー
ここ紅魔館の大図書館は本日も変わらずの一日が過ぎていた。
私は我が主であるパチュリー様により召喚された使い魔である。
約半年前に召喚され、今ではこの幻想郷にも大分馴染めたと自負している。
「パチュリー様。魔理沙様がお越しです」
「泥棒にまで敬語は使わなくていいわよ」
私がパチュリー様に報告をすると、パチュリー様はため息混じりで言葉を返し、読んでいた本を閉じた。
「ひっでぇな〜。今日はちゃんと本を返しに来たんだぞ?」
「彼が行かなきゃいつも借りっぱなしじゃないの。貴女は……」
そう言ったパチュリー様がため息を吐くと、魔理沙様はケラケラと笑って誤魔化した。それを見るとパチュリー様はまた盛大なため息を吐いた。
「もういいわ。返す本を貸してちょうだい」
「こちらでございます」
本を包んだ大きな風呂敷を机に広げると、パチュリー様はその一冊一冊を丁寧に確認する。魔理沙様が誤って破いてしまっていたりした事例があるため、パチュリー様はそれ以来必ず確認する。
すると、
「パチュリー様、紅茶をお持ちしました。魔理沙さんもどうぞ♪」
パチュリー様のもう一人の使い魔である小悪魔さんがティーセットを持ってやって来た。みんなからは「こあ」というあだ名で親しまれている。
「ありがとう、こあ」
「サンキュ〜♪」
丁寧に紅茶を淹れ、お二人が座る前にそれぞれティーカップを置いた小悪魔さんは一礼して、私の隣へ並んだ。
そして、
「(おかえりなさい♡)」
愛くるしい笑顔で私に小声でそう言ってくれた。
小悪魔さんには紅魔館へ召喚された時からお世話になっていて、お互いにパチュリー様の使い魔同士ということもあり意気投合し、つい数日前に正式にお付き合いすることになった。
「た、ただいま……」
「んふふ、はい♡」
小悪魔さんは私のどんな些細な言葉でも、いつもこのように嬉しそうにしてくれる。私はそんな彼女の笑顔を見る度に胸がときめく。そしてその都度、私は彼女のことを心から好きなのだと確信する。
「相変わらずラブラブだな〜」
「使い魔同士、通じ合う物があるのよ」
魔理沙様の言葉にパチュリー様は含み笑いをしながら返し、紅茶を含んだ。
私はお二人の会話が聞こえているので、恥ずかしさのあまり体温が上がっていく。
「お〜お〜、真っ赤な悪魔になったな〜♪」
「変身する能力を身につけたのは凄いことね。ふふ」
「か、勘弁してください」
お二人に私が言葉を返すとお二人だけでなく、小悪魔さんまでもクスクスと私を見て笑った。
出来ることならばこの場から逃げたい。しかしパチュリー様が本を確認し終えるまではここを離れることは許されないので、私は俯くことでしか対抗出来なかった。
ーー。
それからようやくパチュリー様が本を確認し終えたので、私は小悪魔さんと一緒に本を元の本棚へ戻す作業に入ることが出来た。待っている間、私はずっとからかわれ続けたので、動いていないのに変な汗をかなり掻いてしまった。
「凄い汗ですね〜♪ うふふ♪」
「貴女のせいでもあるのですよ……お二人に加担して。少しは助けてくれても良かったではありませんか」
「私は貴方の可愛い一面が見れて楽しかったですから♡」
「……そうですか」
これは勝てないと思った私は、そう言って本棚の方へ向き直ると、小悪魔さんは「そうで〜す♡」と言いながら私の背中へ抱きついて顔をグリグリと埋めた。
本当に小悪魔の名前その通りで、やることがいちいち可愛くて、でもそれが嫌じゃないのだから困ったものだ。これが惚れた弱みなのかもしれない。
「あ、そう言えば……」
「はい?」
「ただいまとおかえりなさいの口づけ……まだですよね?♡」
「なっ!?」
「お付き合いする際に約束しましたよね〜? 沢山キスしてくださいって♡」
「い、今は職務中です」
私はそう理由を付けて黙々と本を戻す作業を続けた。彼女のことだ、多分今私の背中にいる彼女は不満そうに頬を膨らませていることだろう。
彼女と口づけをしたくない理由はない。だが、彼女との口づけは私を堕落させる魔性の口づけなのだ。だから出来るだけ仕事中はしないようにしている。
(む、この本はあちらの棚だな……こちらに置いてーー)
そう思って手にしていた本をカゴへ戻そうと振り返ったその時だった、
「ちゅっ♡」
「!?」
小悪魔さんに唇を奪われてしまった。
柔らかく、瑞々しい彼女の唇に、私はまるで乾いた喉が水を欲するかのように夢中になる。それくらい彼女の唇は魔性を秘めているのだ。
「ん、ちゅっ……っ……ちゅ〜♡」
「っ……んっ、んんっ……」
唇がまったく離れない。いや、私の本能が彼女の唇を欲して放さないのかもしれない。そう思えるくらいの間、彼女とのキスは続いた。
「んはぁ……んふふ、ご馳走様です♡」
ようやく唇を離した小悪魔さんはペロッと自分の唇を舌でなぞり、艶やかな微笑みで私にそう言った。
「……お粗末様でした」
「んふふふ〜♡」
私が精一杯の返事をすると、小悪魔さんは幸せそうに笑って、私の胸にしがみついた。こんな愛くるしい行動を取られてはこちらからは何も文句が言えない。
その後も私は不意打ちの口づけを何度もお見舞いされながらも本を戻す作業は続け、全てが戻し終わった時には私は小悪魔さんから本日何度目になるか分からない口づけを受けた。
ーー。
「ひゃ〜……ラブラブっていうかバカップルだな、マジで」
「私はもう慣れたわ……あれでも今日は少ない方よ」
「うわぁ……」
パチュリー様達がそんな話をしていると、図書館のドアが勢い良く開いた。
そしてこういう風に開ける人物は紅魔館でただ一人だ。
「パチェ〜! 悪魔貸して〜♪」
パチュリー様のご親友であるレミリア様の妹君であるフランドール様だ。フランドール様のお遊びは命懸けなので、私が召喚されて以来度々こうして図書館へ訪ねて来る。
「彼の仕事も終わったから好きにしてちょうだい。ただ遊ぶなら他でやってね」
「うん♪」
「よっ、フラン♪」
「あ、魔理沙だ♪ 魔理沙も一緒に遊ぼ〜♪」
「あ〜、悪ぃ。私は今パチュリーと話してっからさ、また今度でいいか?」
「ぶ〜……約束だからね?」
「この魔理沙様が約束を破ったことがあったか?」
「ない!」
「よし! んじゃまた今度な♪」
「うん! 悪魔〜! 早く遊ぼ〜!」
魔理沙様との会話が終わったフランドール様は私の手を取って猛スピードでご自分のお部屋へ連れ行った。
それから私はフランドール様とそれはとてもとても
遊びが終わって自室へ戻る頃には、朝焼けが紅魔館を照らしていた。
自室ーー
折られた肋骨や腕の骨を再生しつつ、入浴と食事を済まして自室へ戻った私は、信じられない光景を見た。
私のベッドが不自然に盛り上がっているのだ。
そしてこんなことをするのは決まっている。
「………………何をしているんですか、小悪魔さん」
ベッドの端に座って声をかけると、小悪魔さんが掛け布団から顔を半分だけ覗かせて、「えへへ♡ おかえりなさい♡」と言ってきた。
無駄にいい笑顔で思わず胸の鼓動が高鳴る。
「た、ただいま」
「そろそろ帰ってくる頃だと思って来ちゃいました♡」
「そ、そうですか……」
するとバサッと掛け布団を取り、彼女は私をベッドへ押し倒すと、また掛け布団を掛けた。
「あ、あの……小悪魔さん?」
小悪魔さんの突然の行動に焦る私をよそに、小悪魔さんは私の体にギュ〜ッと抱きついて離れようとしなかった。
(あぁ、そうか……)
私は悟った。だから彼女の頭を優しく撫でた。
「フラン様ばっかりズルい……貴方は私の恋人なのに……」
小悪魔さんは私を度々長時間に渡って独占するフランドール様にヤキモチを焼いているのだ。
しかしフランドール様はレミリア様の妹君で、かつ自由な身となった今は楽しい時間を過ごすのも大切なことであり、ヤキモチを焼いてもそれを吐き出せないのだ。
私は黙って彼女の頭を何度も何度も撫でた。
「……今日のフラン様はどうでした?」
「とても良い笑顔で私の肋骨を一気に三本へし折っていました」
「……相変わらず元気みたいですね」
「はい、とても」
「…………」
フランドール様が元気であることは嬉しいが、私を独占されるのは嫌という気持ちが入り混じっているのだろう。彼女は暫く黙り込んでしまった。
私はそこで彼女へ魔術を掛けた。
「どんなに過ごした時間が違っても、私の心はいつも小悪魔さんと共にあります。貴女が私の最愛の方です」
すると、
「ふふふ……♡」
彼女は嬉しそうに笑みをこぼしてくれた。
しかし、
「あだ名で呼んでくれなかったから失格♡ もう一度やり直し♡」
やはり彼女の
小悪魔編終わりです!
その名の通り小悪魔っぽい彼女にしました!
色々と設定を盛りましたがご了承を!
お粗末様でした☆