東方恋華想《完結》   作:室賀小史郎

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恋人は白蓮。


白蓮の恋華想

 

 白玉楼ーー

 

 とても穏やかな昼下がり。

 ここ冥界に聳え立つ白玉楼では、とある女子会が催されていた。

 

「それじゃみんな〜、カンパ〜イ♪」

『カンパ〜イ♪』

 

 白玉楼の主・西行寺幽々子の合図で始まった今回の定例女子会。

 その参加者はーー

 

「いやぁ、何だかんだこの女子会というのも随分回を重ねたな〜」

 

 守矢神社の祭神・八坂神奈子。

 

「そうね〜、でもちょいちょい出れなかった時もあるし、私はそんな風には思えないわね〜」

 

 幻想郷最古参の妖怪・八雲紫。

 

「神奈子は皆勤賞だからね〜。私も研究とかであんまり出れないし」

 

 月の頭脳・八意永琳。

 

「私も寺の方が何かと忙しくて……あ、私は緑茶でお願い致します」

 

 封印された大魔法使い・聖白蓮。

 

 そうそうたる面々が集まった女子会……女子会である。

 

 これは幻想郷の各グループの代表的な存在である面々が、交流をするために紫と幽々子が企画した定期的な集会なのだ。

 この場にはいないが紅魔館の主・レミリア・スカーレットや地霊殿の主・古明地さとり、仙界に住んでいる豊聡耳神子、閻魔である四季映姫もメンバーに入っている。ただ今回は仕事や身内の都合で欠席。

 

「私は特にこれといった仕事がないから、暇なのよ」

「貴女が動くとろくなことにならないからね。だから何かある度に『また守矢か』なんて言われるのよ」

 

 永琳の言葉に神奈子は「だから今は何もしてないだろう!?」と声をあげると、みんなから「まあまあ」とたしなめられた。

 

「神奈子のことは置いといて……さっきの言葉に、一人嘘つきがいたわね〜」

 

 紫はそう言うと扇子を広げ、口元を隠してその一人を流し見る。

 その視線の先には、

 

「え、私ですか?」

 

 白蓮の姿があった。

 白蓮はどうして自分が嘘つき呼ばわりされたのか理解出来ず、首を傾げる。

 

「だって貴女、寺では彼氏とイチャイチャしかしてないじゃない?」

 

 紫がそう言い放つと、その場にいる全員が「えぇ!?」と目を丸くさせ、白蓮ただ一人が「違います!」と顔を微かに赤らめて否定した。

 

 紫が言ったように、白蓮には恋人がいる。

 それは数年前に命蓮寺の門下に入った『煙々羅(えんえんら)』と言う煙の妖怪だ。

 白蓮の元に来てからは修行により人の姿へなることが可能となったが、前のように煙の姿に戻ることも可能である。

 

 煙々羅は心の美しい人の前に姿を見せる妖怪で、ある日白蓮が本堂で線香を焚いて修行していると、その煙から煙々羅が現れたのが二人の出会いだった。

 煙々羅は白蓮が何をしているのか興味が湧き、色々と白蓮から話を聞き、白蓮も嫌な顔一つせずにしっかりと受け答えすると、煙々羅は白蓮の思想を気に入って、その時から門下に入ることにした。

 それから白蓮と過ごす内に煙々羅は白蓮のことが女性として好きになり、その心を知ってからは毎日白蓮に猛アタックをし、それに白蓮が折れた形。

 しかし白蓮も元から煙々羅を可愛がっていたこともあり、周りからすれば「やっとくっついたのか」と呆れられたくらいだった。

 

「貴女ね、私は幻想郷の管理者よ? スキマを使えばいつだって貴女達を見れるのよ? 忘れてない?」

「そ、そうですけど、私とえんちゃんはイチャイチャなんてしてませんよ! 一緒にお茶したり、一緒にお料理やお掃除してるだけですから!」

 

 紫の言葉を聞いても白蓮はなおも否定する。

 しかし、他の皆は「えんちゃんだって♪」「ちゃん付で呼んでるのね♪」「これは映姫様がいれば黒ね♪」と白蓮の恋人の呼び方に注目が集まった。

 

「煙々羅だからえんちゃんね〜。なら聖は彼氏からは何て呼ばれてるの〜?」

 

 幽々子がそう訊ねると、他の皆も気になるといった顔で白蓮の方を注目。

 それに対し、白蓮は目を逸らして黙秘する。

 

「確か〜、レンレンだったわよね〜?♪」

 

 しかし紫にバラされ、白蓮の抵抗は無意味に終わった。

 対する皆は紫の言葉に「おぉ〜!」と大興奮。

 

「それじゃあ、ちょっと俗な質問だけど……」

 

 すると永琳が手をあげ、

 

「夜の方はどうしてるの?」

 

 と、とんでもない質問をしてきた。

 これには白蓮も思わずむせてしまう。

 

「ふむ……確かに気になるな」

「どうなの、聖?」

 

 興味津々の神奈子と幽々子。

 白蓮はもう逃げられないと悟り、観念したかのように口を開く。

 

「その……普通に重ねています……」

「尼でもヤルことはヤッてるのか」

 

 神奈子がそう返すと、白蓮は顔を真っ赤にして俯いた。

 

「邪淫を貪らなきゃいいんだし、気にしなくてもいいじゃない♪」

「でも聖がそうことするのは意外ね〜」

「大僧侶も根は女だったということね」

「結婚すれば子もこさえる訳だしな」

「…………」

 

 その後も白蓮は煙々羅との生活を根掘り葉掘り訊かれ、その都度白蓮は顔を真っ赤にさせるのだった。

 女子会が終わると白蓮は真っ白に燃え尽き、ゆらゆらトボトボと寺へ帰っていった。

 

「流石にやり過ぎたかしら?」

 

 白蓮の背中を見て紫がそう言うと、

 

「でも何だかんだ貴女も楽しんでたじゃない」

「そうそう♪ それに聖の人間らしいところが見れて得した気分だわ♪」

「ま、次からは触れないでやろう。これがきっかけで来れなくなったら夢見悪いしな」

 

 とそれぞれ思うことを言い、神奈子の言葉に皆で頷いたあとで解散するのだった。

 

 

 命蓮寺ーー

 

 寺に帰ってきた白蓮は、真っ直ぐに煙々羅の部屋へやってきた。

 煙々羅は読書中だったが、白蓮の様子がおかしいことにすぐ気がつき、読んでいた本を置いて白蓮の元へ。

 

「ど、どうしたの? 何か嫌なことでもあった?」

「…………」

 

 押し黙る白蓮を見た煙々羅は「そっか」と声をかけると、白蓮のことを優しく抱きしめた。

 

「無理には訊かないよ……大丈夫。レンレンは一人じゃないよ」

「…………うん♡」

「よしよし……お帰り、レンレン」

「…………ただいま、えんちゃん♡」

 

 それから暫く、白蓮は煙々羅に抱きしめてもらい、落ち着きを取り戻した。

 

「…………ごめんなさいね、えんちゃん」

 

 部屋の中へ入り、煙々羅と向かい合って座った白蓮は、開口一番に謝罪の言葉を述べる。

 

「謝ることないよ♪ レンレンが元気ないと俺だって悲しいからね♪」

「ありがとう、えんちゃん♡」

「いいえ〜♪」

 

 それから白蓮は女子会でのことを話した。話していると白蓮はまた恥ずかしさが込み上げてきて、その声はどんどん小さくなっていった。

 

「ーーと言った感じで……」

「それは災難だったね……」

 

 白蓮が話し終えると、煙々羅は優しい笑みを浮かべ、白蓮のことを労った。

 

「でも、紫さんが全部を見てる訳じゃないんだから、そんなに答えなくても良かったんじゃない?」

「そ、それはそうですけど……」

 

 煙々羅の指摘に白蓮は何か言いた気に煙々羅を見た。

 それに気づいた煙々羅はそのまま白蓮の言葉を待った。

 そして、

 

「…………だ、大好きなえんちゃんとのことだから、皆さんには誤解なくお伝えしたかったの♡」

 

 消え入りそうな声で、でも目ではちゃんと煙々羅のことを見つめて伝えると、煙々羅は「そっか」とニッコリと笑って白蓮のことをまた優しく抱きしめる。

 

「凄く嬉しいよ、ありがとう、レンレン♪」

「えんちゃん……♡」

 

 すると白蓮が煙々羅の胸元をクイクイっと引っ張った。

 煙々羅が白蓮の顔を見ると、その目はとても潤んでいて何を求めているのかが分かる。

 

「口づけ……したい♡」

 

 煙々羅は白蓮に「勿論♪」と告げ、そのまま白蓮の唇に自身の唇を重ねる。

 何度か軽く互いの唇をついばみ合い、最後は白蓮から長い口づけをされた。

 

「ぷはぁ……こ、こんなにしていいの?」

「今更です♡」

「だ、だって、いつも長いのは夜中にしか……まだ夕方だよ?」

「いいんです……今日は、えんちゃんを感じたかったから♡」

「レンレン……」

「共に地獄へ落ちてくれるのでしょう?♡ あの告白、嘘ではないんですよね?♡」

「も、勿論……」

「なら何も怖くありません♡ だから今は、もっと私と……♡」

 

 

 一方、部屋の戸の前ーー

 

『えんちゃん、好き……ちゅっ……大好きなの……んっ、れろ♡ んんっ、れる♡』

『れ、レンレン……んんっ、ちゅっ……』

 

「…………ここに今から突入しろと?」

 

 茹でタコのように真っ赤な水蜜が立っていた。

 突き当りの角には一輪達がそれを見守っている。

 時間的に夕飯なので、水蜜はジャンケンに負けて二人を呼びに来たのだ。

 

『えんちゃん……えんちゃ〜んっ♡』

『ちょ、れ、レンレン……ま、待って』

 

 戸の向こうからは二人の艶めいた声がまる聞こえである。

 

「も、もうさ、先に食べちゃわない? こっちはもう()()()()っぽいし」

 

 角にいるみんなに水蜜がそう提案すると、みんなは揃って首を縦に振り、二人の邪魔にならないよう退散した。

 

 その日、白蓮は朝まで煙々羅の部屋から出て来なかったとかーー。




聖白蓮編終わりです!

聖の可愛いところが書きたかった。ただそれだけです!
愛故のことなので、ラストのあれは仕方ない。愛ある行為なので、どうかご了承を。

お粗末様でした☆

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