東方恋華想《完結》   作:室賀小史郎

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恋人は諏訪子。


諏訪子の恋華想

 

 妖怪の山ーー

 

 雪が降り積もり、雪化粧をした幻想郷。

 そんな肌寒い日和を守矢神社の祭神である諏訪子は、鼻歌交じりで過ごしていた。

 

「ららら〜ん、ら〜、らら〜らら〜♪」

 

 諏訪子は上機嫌で何やら大きめなバッグに荷を詰めている。

 

「ふふふ、ご機嫌ですね、諏訪子様ったら♪」

「今日を待ち望んでいたからね。何日も前から」

 

 そんな諏訪子の様子を微笑ましく眺める神奈子と早苗。

 今日、諏訪子は地霊温泉郷へ二泊三日で遊びに行くのである。

 

「下着はやっぱり黒かな〜♪ でも情熱的に赤も……いやでもここは清楚に白って選択肢もあるわね……」

 

 諏訪子はああでもないこうでもないと悩んでいた。しかもこれに関しては数日前から悩んでいるのだ。

 

「布切れの一枚や二枚でああも悩めるものかね〜」

「いやまあ、諏訪子様にとっては悩むところなんですよ、きっと」

 

 早苗が苦笑いを浮かべて返すと、神奈子は「そんなもんかね〜」と半分呆れた感じで返した。

 諏訪子がどうしてこういうことにまで悩んでいるのかというと、これから地霊温泉郷に一緒に向かう相手が恋人だからなのだ。

 

 諏訪子の恋人は数年前に幻想郷入りしたエントと言う西洋の木の精で、トレントと呼ばれることもある。

 このエントも見た目は長身で若いがザッと数千年生きており、諏訪子と同じく見た目が若い大人なのである。

 エントは幻想郷入りした際、妖怪の山に住むか、魔法の山に住むか悩んでいた。元々時間の感覚がゆっくりなため決めきれずに居ると、山にある守矢神社にふらりと立ち寄り、そこで初めて諏訪子と出会った。

 そして諏訪子の方がエントのものの考え方や癒し系オーラを気に入り、山に住むことを勧め、山に住むことにしたエントの家に度々訪れるようになった。

 そうやって絆を育んでいく内にエントは諏訪子に惚れ、諏訪子に告白。諏訪子は前々から気に入っていたこともあり快く頷き、恋仲となった。諏訪子としては告白されたいからエントから告白するように接していたと、文の取材で明らかにしたが、二人の仲は変わらずラブラブである。

 

「よし、荷造り完成♪ 後はアイツを待つだけね♪」

「お茶をお淹れしましょうか、諏訪子様?」

 

 荷造りを終えた諏訪子に早苗が訊ねると、諏訪子は「もう少しで来ると思うから大丈夫♪」と返し、玄関の方へ向かった。

 

 すると丁度、やってきたエントが玄関を開けたところだったので、諏訪子は透かさずエントの胸にダイブし顔を埋めた。

 エントは驚きながらもしっかりと諏訪子を受け止め、「危ないなぁ〜」と返しながらも諏訪子の頭を優しく撫でていた。

 

(乙女の勘というか何というか……)

(流石は諏訪子様です……)

 

 タイミングの良さに二人は驚いて苦笑いを浮かべた。

 そしてエントは諏訪子を抱えたまま上がると、神奈子と早苗の側に座った。

 

「お二方、こんにちは〜」

「あぁ、こんにちは。今日から諏訪子のことをよろしくな」

「温泉楽しんできてくださいね♪」

「はい、諏訪子と満喫してきます〜」

 

 エントののほほんとした挨拶に神奈子達は微笑んで頷きを返すと、諏訪子は「挨拶終わったなら早く行こ♡」とエントを急かした。

 そんな諏訪子にエントは「相変わらずせっかちだな〜」と言いながらも、諏訪子の荷物を背負い、諏訪子も抱えたまま立ち上がった。

 

「それじゃ、行ってくるね〜♡」

「失礼します〜」

 

「お気をつけて〜♪」

「何かあったら連絡するんだぞ〜」

 

 こうして諏訪子達は地霊温泉郷へと向かうのだった。

 

 

 地霊温泉郷ーー

 

 温泉郷に着いた二人は早速宿へ向かい、案内された部屋に荷物を置いて一息吐いた。

 この部屋には個室の温泉が設けられていて、それなりのお値段をするいい部屋だ。

 

「いや〜、来ちゃったね〜♡ 二人きりだよ、二人きり♡ しかも個室温泉付きの旅行♡ ひひひ♡」

「二人きりの旅行だね〜♪」

「うん♡ すっごく楽しみにしてたんだ♡」

「僕だもだよ〜♪」

「だよねだよね〜♡」

 

 そう言うと諏訪子はあぐらを掻くエントの足の隙間にポスッと入り込み、エントに背中を預けて思い切り手足を伸ばした。

 するとエントは諏訪子が両手を上げている隙きに、諏訪子の両脇から両手を出して諏訪子を包み込むように抱きしめた。

 

「アンタの力加減は最高だね〜♡ とっても安心する♡」

「気に入ってもらえて何よりだよ〜♪」

「えへへ、幸せ〜♡ もうちょっとぎゅ〜ってして♡」

「苦しくないかい?」

「私はこう見えても丈夫だからね♡ それにたまには苦しいくらい抱きしめてほしい♡」

 

 諏訪子の願いを聞き入れたエントは「それじゃあ……」と遠慮がちに言いながらも、回した手にキュッと力を込めた。

 

「ん……あぁ……んふぅ♡」

「諏訪子……」

 

 諏訪子のもらした吐息にエントは慌てて力を緩めようとしたが、諏訪子から「やめないで!♡」とお願いされた。

 

「あ……っ……んんっ……んぁ……♡」

「ほ、本当に大丈夫?」

「だ、大丈夫……んひぃっ♡ もう少し、このまま……あぅ♡」

 

 諏訪子はそう言うが、先程から抱えている体が小刻みに震え、頬も赤く紅潮し、目もうつろになってきている。

 

「ね、ねぇ……そっち向くからちょっと緩めて♡」

「分かった……」

 

 エントと向き合った諏訪子は、透かさずエントの胸にしがみついた。

 

「もっかい、さっきのぎゅうして♡」

「でも……」

「お願い……♡」

 

 エントは心配だったが、惚れた女から潤んだ瞳で見上げられておねだりされたら選択肢は一つしかない。

 エントは諏訪子の腰や背中に回した手にまたゆっくりと力を込めた。

 

「んあぁ……これこれ、あぅ……この力加減……しゅきぃぃ♡」

「諏訪子……」

 

 諏訪子の艶かしい声にエントは段々と変なことしている気分になった。

 

「んんぅ……♡」

 

 すると諏訪子が甘えた声でエントの服の胸元をクイックイッと引っ張ってきた。

 

「どうしたの?」

「ちゅうしたい……♡」

「うん、いいよ」

「ん〜……♡」

 

 差し出された小さな唇にエントが軽く唇を重ねると、

 

「んんっ♡ ちゅっ♡ んちゅっ♡」

「!!!?」

 

 諏訪子は「もう離さない」と言わんばかりにエントの首に回した手に力を込め、激しく貪るようにエントの舌に自身の舌を絡めてきた。それによりエントも気持ちが昂ぶり、先程よりも力強く諏訪子の体を抱きしめた。

 

「んむぅ!?♡ んんっ、あふっ、んっ……んんんんっ〜♡」

 

 それから諏訪子は大きく体を震わせ、その手の力はとても強いものとなったが、暫くすると力は弱まり、唇も離れて力なくエントの胸に頭を預けた。

 

「はぁはぁ……ひひ、抱きしめてもらっただけで……はぁはぁ、いっちゃった♡」

「え!?」

「何よぅ……こんな私は嫌いなの?♡」

「そう言う訳じゃないけど……」

「ふふ……アンタだってこんなにしてるじゃん♡」

「うぅ……」

「えへへ、私でこんなにしてくれて嬉しい♡ それじゃあ、温泉入ろっか♡」

「うん……」

「隅々まで洗ってあげるから覚悟してね、ちゅっ♡」「ちょ、諏訪子……」

「この日のためにずっと我慢してたんだから、満足させてよね♡」

「温泉入るだけだよね……?」

「大丈夫大丈夫♡ 温泉でもお布団でも何回でもシようね♡」

「えぇっ!!?」

 

 驚きを隠せないエントに構うことなく、その気モードになった諏訪子はエントに甘い言葉を耳元で囁き、そのまま耳にかぶりつくのだった。

 こうしてエントは諏訪子に絶対的リードを許したまま、されるがまま温泉旅行を過ごし、色々なものを洗い流すのだった。

 

 

 そしてーー

 

「いやぁ〜、個室風呂の部屋を取ったと聞いた時点でこうなるとは思ってたんだよ、私は……」

「エントさ〜ん、大丈夫ですか〜?」

「大丈夫大丈夫♡ ちょっと張り切り過ぎちゃっただけだよ♡」

 

 旅館を出る日、エントは干乾びていたため、諏訪子が神奈子と早苗を呼び、エントは二人に運ばれて地霊温泉郷を後にし、永遠亭へ直行するのだった。

 因みにエントが復活するまで一ヶ月掛かった。長引いたのは『諏訪子がちょくちょく患者のところにお見舞いにきていたからだ』と、永琳は殺意の波動を込めた笑顔で語っていたそうなーー。




洩矢諏訪子編終わりです!

人妻設定がありますが定かではないので、あくまで恋人設定で書きました。どうかご了承を。
そして妙に肉食系にしてしまったのにもご了承を。

此度もお粗末様でした☆

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