東方恋華想《完結》   作:室賀小史郎

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恋人は幽香。

ドS成分少な目です。


幽香の恋華想

 

 太陽の花畑ーー

 

 四季折々の花が咲き誇るこの太陽の花畑では、住み着いている風見幽香が日課である花の世話を終えて、優雅に昼下がりのティータイムを過ごしていた。

 お気に入りのティーカップにお気に入りのハーブティーを淹れ、自宅のテラスで花を眺めながら、穏やかな太陽の日差しを感じていると、そこにアリスとメディスンがやってきた。

 二人は幽香に笑顔で挨拶をすると、幽香もニッコリと笑みを返して二人をテラスへ招き入れた。

 

 アリスは自分の家の花壇に幽香から貰った花を植えていることで交流があり、メディスンは花が好きという共通の趣味で交流があるため、度々こうして集まってはお茶を楽しむのだ。

 

「あら、今日のはまた違ったハーブティーね……香り自体は甘いけれど、味はどこかスパイシーな感じ」

「でもなんかとっても落ち着く〜♪」

 

 幽香が丁寧に淹れたハーブティーを飲んだ二人は舌鼓を打った。

 それを嬉しそうに眺める幽香は「良かったわ」と言って、自分もハーブティーを口に含んだ。

 

「今日のはね、フェンネルのハーブティーなのよ」

「フェンネル?」

「フェンネルって言うのはこれよ」

 

 首を傾げるメディスンにアリスは持ってきた植物図鑑からフェンネルの項目を開いて、メディスンに見せるとメディスンは「お〜!」と目を輝かせてそのページを読んだ。

 

「フェンネルには鎮静作用があって、気持ちを落ち着かせたい時におすすめね。鼻にぬける独特の香りも、アロマ効果が高くて、リラックス作用があるの」

「私は前に飲ませて貰ったカモミールティーの方が甘くて好きかな〜♪」

「ふふ、なら今度カモミールティーをご馳走するわね」

 

 素直なメディスンの言葉に幽香はクスクスと優しく笑い、メディスンの頭を撫でた。するとメディスンは気持ち良さそうに目を細め「んゆ〜♪」とご満悦な声を出した。

 

「そう言えば幽香」

 

 アリスに呼ばれた幽香は「何?」とアリスの方を向いた。

 

「人里に居る彼氏との仲はどうなの?」

 

 アリスから「彼氏」の単語が出た瞬間、幽香はボンッと顔を赤くした。

 

 アリスの言う彼氏とは文字通り幽香の恋人のことである。

 幽香の彼氏は人里でガーデニングショップを営む半人半妖の青年で、ガーデニングショップを営むきっかけを作ったのは幽香なのだ。

 青年は数年前に幽香から目をつけられていて、ある時に突然、道端で幽香から弾幕ごっこを仕掛けられた。

当然青年は敗北するが、敗北した理由は道端に咲いていた花を流れ弾から守ったからであり、そんな青年の優しさや強さに魅了された幽香は、青年を気に入り、自分の元へ半ば強制的に置いた。

 それから半年程前、幽香の少々強引な告白に青年は快く応じ、更には結婚式の資金を貯めるため、彼は幽香から叩き込まれたノウハウでガーデニングショップを人里に開き、今では日中は店をやって夜に帰ってくるという生活をしている。

 

「幽香とお兄ちゃんは仲良しだよね〜♪ この前もお兄ちゃんに傘を持たせて人里お散歩してたし♪」

「ま、まぁ私の男なんだから、私に尽くして当然よね……」

 

 メディスンの言葉に幽香は精一杯平静を装って言葉を返した。

 

「流石は幽香ね〜♪ 彼氏でももう尻に敷いちゃうなんて♪」

「恋仲でも上下関係はハッキリしておかないとね……」

 

 アリスの言葉にも平静を装って返す幽香だが、顔は真っ赤なのでメディスンはともかく、アリスは楽しんでいるようにしか見えない。しかし幽香はそんな洞察も出来ないくらい焦っているため、平静を装うのに手一杯だった。

 

 それからも幽香はメディスンの無邪気な口撃とアリスのちょっとした口撃を浴び続け、二人が帰る頃には茹でダコのように赤くなってしまうのだった。

 

 

 それから夜ーー

 

「ただいま〜」

 

 青年が仕事を終えて帰ってくると、

 

「あなた〜!」

 

 と幽香は半べそで彼の元にやってきて、彼に抱きついた。

 

「ど、どうした?」

 

 そんな幽香を見て、青年は戸惑いつつも幽香の頭を優しく撫でながら声を掛けた。それでも幽香は「うぅ〜」と力無い声をもらすだけだった。

 

「誰かに嫌なこと言われた?」

「ううん……」

「寂しかった?」

「寂しかったけど、そうじゃないの……」

 

 青年のかける言葉に一つ一つ答える幽香。それでもどうしてこのような状況になったのか分からない青年は、幽香に引っ付かれたまま居間へと向かった。

 

 ーー。

 

 青年は居間にあるソファーに腰掛けると、幽香もその隣にちょこんと座り、また青年に抱きついて顔を埋めた。

 こうなったらとことん待つしかないと考えた青年は、幽香がちゃんと言ってくれるまで幽香の頭や髪を優しく撫で続けた。

 

「少しは落ち着いた?」

「うん♡」

「じゃあ、どうしてこうなったの?」

「…………怒らない?」

「聞いてみないと分からない」

「…………嫌いにならない?」

「いきなり弾幕ごっこを仕掛けたられても、今こうしてるのに?」

「……あうぅ〜」

 

 幽香は「ごめんなさい」と言わんばかりに俯いた。

 そんな幽香に青年は「ごめんごめん」と謝って、幽香の頬に優しいキスをした。

 

「んぁ……んふふ♡」

「ほら、話してごらん?」

「えっとね……」

 

 幽香は顔を真っ赤にしながらアリス達との会話のことを説明すると、青年は大きな声を出して笑った。

 

「な、なんでそんなに笑うのよ!? 私はすっごく気にしてるのに!」

「わ、悪い悪い……ふふ、で、でもなんでもっと素直に言わなかったんだ?」

「だ、だって……私があなたに甘えてるだなんて知られたくなかったんだもん……」

「それと引き換えに、俺を尻に敷く彼女という印象を持たれたってのも可笑しな話だな♪」

 

 青年はまた可笑しそうに言うと、幽香は「むぅ〜」と可愛く唸って抗議した。

 

「まぁ俺は周りからどう思われても構わないよ。ちゃんと愛する人が俺のことを理解してくれているんだから」

「……そんな言い方……ズルい……♡」

「ズルいかな?」

「私がズルいって思ったからズルいの!」

「お、今の発言は尻に敷いてる感じだね〜♪」

「むぅ、やっぱり怒ってるから今日のあなたは意地悪なのね!」

 

 幽香はそう言うと両頬をぷくぅっと膨らませて、プイッとそっぽを向いてしまった。

 

「幽香〜」

「知らない……ふんだ」

「悪かったよ……俺しか知らない幽香を独り占め出来てると思ったらつい、さ」

「…………ぁぅぅ〜♡」

「幽香だって、自分しか知らない俺を独り占め出来てるって思うと嬉しくならないか?」

 

 すると幽香は「嬉しい、かも♡」と少し頬を緩めた。青年はそれを聞いて「だろ?」と言うと、幽香はまた彼の方を向いて、今度は「うん♡」とハッキリ頷いて彼に抱きついた。

 

「こんなに可愛い幽香を独り占め出来て俺は幸せだな〜♪」

「私も幸せよ〜♡」

「幽香可愛いよ幽香〜♪」

「あなた素敵よあなた〜♡」

 

 それから二人はラブラブイチャイチャしつつ、晩御飯も仲良く食べさせ合うのだった。

 

 ーー。

 

 晩御飯の後は入浴タイムである。

 しかし、今日はいつもの入浴タイムではなかった。

 何故なら、

 

「ゆ、幽香……なんで今日は一緒に入ってるんだ?」

「そういう気分だったから、よ♡」

 

 今日は幽香も同じく湯船に浸かって居るからだ。

 幽香は自身の背中を青年の胸に預け、ご機嫌に足で湯船をパチャパチャとさせている。

 

「あなたがまだまだこういうことに弱いのも、私だけが知ってるのよね♡」

「そ、そうだね……」

「んふふ〜、もう何度も肌は重ねてるのに♡」

「こら」

「きゃ〜♡」

「好きな人の肌なんて慣れる訳ないだろ……」

 

 恥ずかしそうにつぶやいた青年の言葉に、幽香は胸がトクントクンと高鳴った。

 すると、

 

「〜♡」

「ゆ、幽香!?」

 

 幽香は向きを変え、青年と向かい合う形で彼に抱きついた。いわゆるだいしゅきホールドである。

 

「あなたのことが欲しくなっちゃった♡」

「え、こ、ここで?」

「ここでもベッドでも♡」

「せ、せめてベッドまで我慢しない?」

「や〜♡ 我慢出来ないもん♡ それに、あなたもヤル気満々じゃない♡」

「こ、こんな体勢なら誰だって……」

「私にしか見せない、あなたの可愛い顔や声……沢山聞かせてね♡」

「あ、あぁ……」

 

 その後、青年は風呂場でもベッドでも、物理的に幽香のお尻に敷かれることになったとさーー。




風見幽香編終わりです!

ツンデレってのも考えたんですが、甘えん坊で夜は積極的なゆうかりんのお尻に敷かれたいという妄想をそのまま書きました!
ギリギリのR-15って感じでご了承を。

ではお粗末様でした☆

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