ルーミアの恋華想
人里ーー
爽やかな朝、優しい日差し、活気ある人里。
今日も幻想郷は平和だ。
僕はそんな平凡な一日を、
「ルーミア、少しは自分で歩いてよ」
「む〜、イヤだ〜!」
背中にルーミアをぶら下げながら歩いている。
僕の恋人、ルーミアは小さな見た目で、いかにも□リコンと思われがちだが、彼女の正体は妖怪であり、闇を操ることが出来る。
今は日の光を浴びていて弱体化しているだけで、日が沈めば元の姿に戻る。夜に元の姿のルーミアともデートしたことがあるため人里の少数の男達からは嫌味も込めて「タラシ」と呼ばれている。
「な〜な〜」
「どうしたの?」
「寺子屋行きたくな〜い」
「ダメダメ。慧音先生にルーミアと一緒に暮らす代わりに授業にはちゃんと連れてくるように言われてるんだから」
「むぅ〜……お前は私より慧音の方が好きなのか〜?」
ルーミアはそう言って僕の首筋にガジガジと歯を軽く突き立てる。これにはルーミアなりの抗議の意味がある。
「慧音先生は好きだよ? 良く面倒見てくれるし、優しいし、良い人じゃないか」
「夜なら私もナイスバデーだ〜! よそ見しちゃメ〜!」
「ちょ、痛い痛い!」
「慧音に盗られるくらいなら私がお前を食べて、永遠に私の血となり肉となり、骨にするぞ〜!」
「なんだその殺伐とした愛情!? 大丈夫! 僕はルーミア一筋だから!」
そう言うとルーミアは僕の首筋に噛み付きながら「ぐるるる」と唸っている。まだ半信半疑なのだろう。
「君と出会って恋をして、君と暮らして愛ってのを知った。僕の人生にルーミアは必要だよ」
恥ずかしいけど僕はちゃんとルーミアへの気持ちを伝えた。
するとルーミアは途端に笑顔になり、突き立てていた歯の痛みも消えた。その証拠にルーミアは今、僕の首筋をちゅ〜ちゅ〜と吸っている。この行為はルーミアが僕にだけすることで、「嬉しい」や「大好き」の意味が込められている。
ただ人々が往来する道のど真ん中でやらないでほしい。前に比べたらみんな流してくれるが、突き刺さるような視線もあるから。
「あ、ルーミア」
「んむぅ?」
「チルノちゃんと大妖精ちゃんが向こうの橋に見えるよ」
「
すると向こうも僕達に気がついたようで、小走りで駆け寄ってきた。
「おっす、ルーミア! 旦那さん!」
「おはようございます♪」
元気に挨拶するチルノちゃんに対し、礼儀正しく挨拶する大妖精の大ちゃん。僕達も二人に笑顔で挨拶を返し、一緒に寺子屋へ向かうことになった。
「今日もルーミアは旦那さんと一緒だな〜♪ ラブラブだな〜♪」
「えへへ、いつもラブラブだよ〜♡」
「ふふ、ルーちゃん幸せそう♪」
「そ〜なのだ〜♡」
「あはは……」
チルノちゃん達の言葉にルーミアは嬉しそうに返答するが、僕としては恥ずかしくてなんて返せばいいのか分からず、取り敢えず笑うことしか出来ない。
「そう言えばルーちゃん、国語の宿題やってきた?」
「え、宿題なんてあったの、ルーミア?」
「…………」
ルーミアはバツが悪そうに僕から目を逸らした。
「ルーミア?」
「…………」
呼んでもルーミアはずっとそっぽを向いたままだった。この時点で宿題があったことを隠していたのは事実だ。
僕は『仕方ない』と思いつつ、ふぅと一息吐いた後で、
「チルノちゃんや大ちゃんはやってきたのかい?」
話題を二人に振った。
「あたいは最強だから大ちゃんの答えを見ながらやってきたぞ!」
「一緒にやりました……あはは……」
潔いチルノちゃんの答えに、大ちゃんは苦笑いを浮かべながら答えた。
「そっかそっか。二人は偉いな〜。何処かの嘘つきとは違って♪」
僕はわざと大声で言ってから、二人の頭を優しく撫でた。
「へへ、あたいは最強だからね♪」
「あ、ありがとうございます」
「お利口さんはしっかり褒めなきゃね♪」
変わらずに二人の頭を撫で撫でしていると、チルノちゃんは「むふ〜♪」と何処か自慢気で、大ちゃんは「えへへ♪」とはにかんでいた。
すると、
「むぅ〜、むぅむぅむぅ〜」
耐え切れなくなったルーミアが唸りつつ、僕の頬に頭を押し付けてきた。『私も撫でろ〜』と言う合図である。
でも僕はそれを無視してチルノちゃん達の頭を撫で続けた。
「わ〜ん! ごめんなさい〜! いい子にするから撫で撫でしてほしいのだ〜!」
「よく言えました♪」
泣きながら謝って僕の首筋を甘噛みするルーミア。
そんなルーミアに僕は『よしよし』と優しく頭を撫でてあげると、ルーミアは「んへへ〜♡」とだらしない声を出して喜んだ。
「次からはちゃんと言うんだよ?」
「分かったのだ〜♡ だからもっと撫でて〜♡」
「はいはい♪」
「ん〜♡」
「ルーミア猫みたいだね♪」
「うん、可愛い♪」
こうして三人を寺子屋に連れて行った後で、僕は仕事へ向かった。
去り際にルーミアから熱いキスをされたーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
自宅ーー
「ただいま〜」
「おかえりなさ〜い♡」
日が暮れ、仕事を終えて帰宅した僕を出迎えたのはルーミアだ。ただ今は日暮れなので元の大人っぽいルーミアに戻っている。
「ただいま、ルーミア」
「うん♡ いい子にしてた♡」
「宿題は?」
「だ、大ちゃん達と終わらせた……」
「丸写ししてない?」
「してない! ちゃんと自分でやった!」
「ん、いい子いい子」
「な〜♡」
頭を撫でるとルーミアは猫みたいな声を出して僕の胸に顔を埋めた。
体が大きくなって声や口調も多少大人っぽくなっても、やはり子どもっぽいところは変わらないので綺麗というよりは、可愛いの方が強い。
「ねぇねぇ、お腹空いた〜♡」
「今作るから待ってて」
「うん♡ 今日は何?」
「牛肉が安かったからハンバーグにしてあげるよ♪」
「わ〜い、やった〜♡」
こうして僕は晩御飯を作るため、台所へ移動した。
「ねぇ、ルーミア?」
「ん〜? 何かお手伝いするか〜?」
「いや、そうじゃなくて……この状態だと作り難いんだけど」
ルーミアは僕のお腹の方へ手を回して後ろから僕を抱きしめていた。
「イヤなの?」
「嫌ではないんだけどね……ほら刃物使うから危ないでしょ?」
「じゃあこう?」
ルーミアはそう言うとお腹の方ではなく、肩の方へ手を回してきた。いわゆるあすなろ抱きってやつだ。
(あんまり変わらない気がする……)
「あ、あのさ、そうじゃなくtーー」
「んっ♡」
振り返った瞬間、僕の唇とルーミアの唇が重なってしまった。大きくなったルーミアは身長が僕より大きいので見上げることになる。対するルーミアは僕を見下ろす形なので丁度キスしてしまうのを忘れていた。
「ちゅっ、んむぅ……っ……ちゅっ、ちゅ〜♡」
それで一旦こうなると暫く離してくれない。
ルーミアは自分の舌を僕の口の中へ強引に侵入させると、僕の歯や歯茎、舌の裏まで優しく撫でるようにゆっくりと丹念に愛撫する。
こうなるとルーミアの独壇場で彼女が満足するまでこのキスは終わらない。
舌と舌が絡み合い、唇を離したとしてもルーミアの長い舌が僕の舌を離そうとせず、また唇が吸い寄せられてしまう。
「んっ、ちゅっ……しゅき、んんっ……らいしゅきぃ、ちゅるっ、んちゅっ♡」
「んはぁ、んっ、る、るぅ、み……んっ、あ……っ」
どれだけ舌と舌を絡ませただろう……どれだけ唇をついばまれたのだろう……やっと舌や唇が離れると、僕とルーミアの唇からは二人の唾液が混じり合った唾液が糸を引いて妖しく輝いていた。
「はぁ、はぁ……どうして、いつも……はぁはぁ、こんなに激しいんだ」
「だってお前とのキスが大好きなんだもん♡」
「まったく……」
「えへへ、ご馳走様♡」
ルーミアは愛くるしい笑顔でそう言うと自分の口端に残った唾液をペロッと舐め取った。その仕草が妙に色っぽくて内心ドキッとしながらも、僕は口を服の袖でで軽く拭いてから料理に戻った。
料理中、ルーミアは相変わらず僕から離れようとはしなかった。
料理が完成し、居間で二人向かい合わせで座り、『頂きます』と手を合わせるとルーミアは勢い良くハンバーグにかぶりついた。
「はふ、はぐ、ん〜♪」
「まだあるからゆっくり噛んで食べるんだよ?」
「ん〜!」
早速お代わりをねだってきたので、僕はまた新しいハンバーグをお皿に乗せた。
「美味しい?」
「うん♡ 美味しいし、お前の手料理だから幸せ♡」
「ふふ、そっか」
大人っぽいなっても変わらないルーミアの屈託無い笑顔。僕は彼女の表情でこれが一番好きなのは秘密だ。
それから二人で御飯を食べ、お風呂も済ませ、布団を敷いて後は寝るだけになった。
「ん〜ん〜♡」
「ん?」
「んん〜♡」
僕の隣に寝転ぶルーミアは可愛くねだりながら僕の着物の胸ぐらを引っ張ってくる。
これは……
「お手柔らかにね、夜更かしし過ぎはいけないから」
彼女が僕を食べたい(意味深)合図だ。
「今夜も沢山お代わりする〜♡」
こうして僕とルーミアの夜は更けていくのだーー。
ルーミア編終わりです!
恋人というかそれ以上っぽくなりましたがご了承を!
ルーミアは妖怪なのでセーフ。ということで!
お粗末様でした♪