人里ーー
「じゃあ、これお代ね。また頼むよ」
「はい♪ では失礼します♪」
とある民家に本日最後の訪問販売を終えた鈴仙は、外で「う〜ん」と伸びをした。
(師匠には販売が終わったら夕方までは自由にしてていいって言われてるし、彼のところにでも行こうかな♡)
まだ日も高い空を見ながらそんなことを思った鈴仙は、早速目的地へ向けて歩を進めた。
(あ、手ぶらで行くより何か手土産くらい買った方がいいよね……)
ふとそう思った鈴仙は、目的地へ行く前に適当な茶屋で手土産を買うことにした。
それからいくつか茶屋の前を通った鈴仙だったが、ピンと来る茶屋が無く何も買えないでいた。
「鈴仙じゃん」
ふと聞き慣れた声に名前を呼ばれ、声がした方を見ると、そこには魔理沙が居た。
鈴仙と魔理沙は互いに挨拶を済ますと、早速魔理沙が話題を振った。
「訪問販売の帰りか?」
「はい♪」
「へぇ、お疲れ」
「ありがとうございます♪」
すると魔理沙は鈴仙の顔をマジマジと見つめ、クスッと小さく笑った。
鈴仙はそんな魔理沙に小首を傾げていると、魔理沙は「あ〜、悪い悪い」と言って謝った。
「別にお前を馬鹿にして笑ったんじゃないんだ。ただ前みたいにビクビクしてないし、堂々としてるから、変わったなって思ってさ♪」
魔理沙の説明を聞いた鈴仙は「そうですか?」と含み笑いを浮かべて訊いた。
「あぁ、変わったさ。これも愛の力ってやつかね〜♪」
「ちょ、いいいいきなり何を言い出すんですか!?」
愉快そうに言う魔理沙に鈴仙は少し頬を赤く染めて抗議した。
魔理沙がそう言うのには訳がある。
鈴仙は元々人間をとても恐れていて、里に行く際は極力人に会わないようにしていた。
しかし、そんな鈴仙を変えた人物が居る。
それは鈴仙がこれから向かおうとしている人物で、その人物は人里で鍼灸師として鍼灸院をしている若い男性で、鈴仙の恋人だ。
彼と鈴仙の出会いは数年前まで遡る。
その日も人を避けて薬の訪問販売をしていた鈴仙は、周りを気にするあまり前方不注意で彼とぶつかってしまい、彼は何とも無かったが鈴仙は軽く足首を捻ってしまった。
それから彼は鈴仙を自分の鍼灸院までお姫様抱っこで運び、治療を施した。鈴仙はその時の彼の誠実さ、優しさ、他者を思い遣る姿勢に心を惹かれ、度々訪れるようになり、数ヶ月前に鈴仙から思い切って告白し、晴れて恋仲となった。
そんな優しい人間の彼と接してから、鈴仙は人間への恐怖心も消え、今では明るく堂々としていられるのだ。
鈴仙の変化に永琳や輝夜も最初こそは驚いたが、理由を知った二人は彼の元へ訪れ深々と感謝を伝え、「鈴仙をよろしくお願いします」と言う程だった。
「どうせ、これからあいつの所に行くんだろ? ん〜?」
「そ、そりゃ行きますけど……」
「前のお前なら逃げるように帰ってたのにな〜♪」
魔理沙がそう言いながら鈴仙の脇を肘で小突くと、鈴仙は顔を真っ赤にして「うぅ〜」と俯いてしまった。
すると魔理沙はまた何かを思い出して口を開いた。
「あ、そうそう。そこの茶屋で美味いみたらし団子売ってたぜ♪ あいつの所に行くなら買ってってやれよ。私も霊夢用に買ったし♪」
そう言った魔理沙は団子屋の包を見せてニッコリと笑った。
そんな魔理沙を見た鈴仙は「じゃあ、そうしようかな」と頷いた。
「一緒に食べんのはいいけど、団子より相手を食うなよ?♪」
「ま り さ さ ん!」
猛抗議する鈴仙に、魔理沙はケラケラと笑いながら謝ると、箒に乗って「んじゃな〜♪」と颯爽とその場を後にした。
鈴仙は魔理沙を見送ると、自分も魔理沙に言われた茶屋で手土産を買い、彼の鍼灸院へとまた歩を進めた。
ーー。
鍼灸院の前まで来た鈴仙は裏の玄関に回った。昼下がりにはここはもう休診していて、裏に回らないといけないからだ。
裏の玄関の前で鈴仙は小さく深呼吸をしてから、戸を軽くトントントントンと四回叩いた。
これは鈴仙達の決まりごとで、彼が誰が来たのか明確にする意味と『だ・い・す・き』の意味が込められている。
それから暫くすると、ガラリと戸が開いた。
「いらっしゃい、鈴仙♪」
「えへへ、今日も来ちゃった♡」
「僕はいつでも歓迎だよ……さ、上がって♪」
「邪魔しま〜す♡」
それから鈴仙は茶の間へ通され、彼が鈴仙のために買ってくれた自分専用の兎の形をした座布団に腰掛けた。
彼は透かさず鈴仙へお茶を淹れると、鈴仙の前へ「どうぞ」と言って湯呑を置いた。
「いつもありがとう♡」
「これくらい造作も無いさ」
そう言う彼に鈴仙は「うん♡」と返すと、正面に座った彼の方へスススッと移動し、彼の左腕にキュッと抱きついて頬ずりした。
「どうしたの、鈴仙?」
「ん〜ん♡ 今日はいっぱい甘えたいだけ♡」
「そっかそっか♪」
彼はそう返して鈴仙の髪を優しく手で梳いた。鈴仙はそれが心地よくて思わず「みゅ〜♡」と甘えた声をあげた。
「ねぇねぇねぇ、お土産にみたらし団子買ってきたから食べない?♡」
「いつも悪いね……ありがたく頂くよ」
「ふふ、気にしないで♡ 今開けるね♡」
それからガサゴソと包を開いた鈴仙は「わぁ♪」と明るい声をあげた。
「どうしたの?」
「あのねあのね、評判しか聞いてなかったんだけど、凄いよこのお団子! みたらしが中に入ってるの!」
そのみたらし団子は鈴仙が言ったように団子の中にみたらしが入っていて、串に刺さっているのではなく、手を汚さずに一つ一つ摘んで食べられる作りだった。
「おぉ、これは新しいね」
「だよねだよね♪ じゃあ先ずはお一つ……はい、あ〜ん♡」
鈴仙は早速その一つを摘んで彼の口元へ運んだ。
彼が口を開けると鈴仙はポイッと彼の口の中へ団子を入れた。
「…………ん、美味しい♪」
彼の嬉しそうな笑顔に鈴仙も顔をほころばせる。
そして彼は「じゃあ、鈴仙にも」と団子を鈴仙の口元へ運んだ。
「あ〜……ん……ん〜、おいひぃ♪」
幸せそうな表情を浮かべて鈴仙は頬を両手で押さえた。
「はは、鈴仙可愛い♪」
「はわっ……も、もぉ、急に何?♡」
「そう思ったから」
彼はそう言って悪戯っ子のように笑うと、鈴仙は嬉し恥ずかしと言った複雑な表情をした。
「んじゃ、鈴仙の可愛いところをまた見たいから、もう一回食べて♪」
「もぉ〜、何それ〜?♡」
「そのままの意味だけど?」
「うぅ〜♡」
鈴仙は恥ずかしそうに唸りながらもちゃんと「あ〜ん♡」と口を開けた。
そしてまた彼から団子を食べさせてもらった鈴仙は、また幸せそうに笑みを浮かべて「美味しい♡」と答えた。
「それじゃ、今度は私が食べさせる番だからね♡」
「頼むよ……あ〜」
彼は口を開けて待機したが、鈴仙は「……でも私が食べちゃう♡」と自分の口へ団子を入れた。
そんな鈴仙を彼は可笑しそうに笑って見つめると、鈴仙が不意に顔を彼の顔へと近づけた。
「鈴s……っ!?」
「っ……ちゅっ、ん……ん〜、ちゅるっ……んっ♡」
彼の唇を奪った鈴仙は自分の舌で強引に彼の口を開け、そこへ自身が食べていた団子を流し込んだ。
「ぷはぁ……美味しかった?♡」
唇を離した鈴仙にそう訊かれた彼は赤面してコクコクと頷くことしか出来なかった。
鈴仙はそんな彼を見て「可愛い♡」と言って、また彼の唇をついばんだ。
「れい……んむっ、せ……んんっ、ちゅっ……」
「んはぁ、ちゅっ……れろっ、んっ……ちゅっちゅ〜……んっ……はぁ♡」
「ど、どうしたの鈴仙、なんかいつより積極的だぞ?」
「実は私、昨晩から
「え」
すると鈴仙は彼を押し倒し、その上に覆い被さって潤んだ瞳で彼の瞳を見つめ、ゆっくりと口を開いた。
「したいな……あなたと気持ちいいこと♡」
そう言った鈴仙の手は既に彼の胸元を弄っていた。
「鈴仙っ、ダメだ……こんな日が高い内から!」
「いつもこの時間帯にしてるじゃない♡ 今日は夕方までいっぱいいっぱいイチャラブしよ♡」
「鈴s……っ!?」
「ほら、私のココ♡ あなたとキスしてただけで、もうこんなになってるの……あなたじゃないと鎮まんない♡」
「一回だけだからな……」
「あは♡ うん、いっぱい可愛がってね♡」
そう言った鈴仙は彼の耳にしゃぶりつき、彼とラブラブに過ごした。
そして第一ラウンド終了後ーー
「れ、鈴仙……一回って約束だろ!?」
「えぇ〜?♡ まだ抜いてないから、まだ一回は終わってないよ〜♡」
「鈴仙が放してくれないからだろ!? 早くこのホールドしてる足を解いてくれよ!」
「それで簡単に解いてあげる私じゃないよ?♡」
「くぅ……」
「ほらほら、時間は限られてるんだから早く〜♡ 私、まだまだあなたを感じたいの♡」
「鈴仙!」
「きゃん♡ ふふ、嬉しい♡ あぁっ♡」
そして夕方にやっと鈴仙が彼の家から出て来ると、鈴仙はお肌ツヤツヤで満足感に溢れる笑顔だったそうなーー。
鈴仙・優曇華院・イナバ編終わりです!
うどんげに愛を搾り取られる感じに仕上げました!
まぁ彼氏なら彼女の要望には出来る限り応えねば男の恥ですからね! 妬ましい!←自分で書いてて
そしてかなりきわどいラストになりましたがご了承を。
ではお粗末様でした♪