東方恋華想《完結》   作:室賀小史郎

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恋人は霧雨魔理沙。

あなたのハートにマスタースパーク。


魔理沙の恋華想

 

 人里ーー

 

「何だこれ……?」

 

 今目の前で起こっていることをそのまま説明すると、仕事が終わって帰ってきたら、今まで借りてた借家に『空き家』という立札が置かれてた。

 更には中も空っぽで家具や衣服も全部無くなってた。

 

(家賃滞納なんてしてないし、そもそもこんな手荒なことをする大家さんじゃない……)

 

「……い」

 

(なら空き巣……じゃないよな。タンスとか持ってくの大変だし、わざわざ男である俺の下着や服なんて要らないだろう……)

 

「……〜い」

 

(人が考えてる最中に誰だよ……バシバシ人の肩を叩きやがっtーー)

 

「無視すんなよ〜、泣くぞ?」

「ま、魔理沙……」

 

 正体は俺の恋人、霧雨魔理沙だった。ずっと俺が反応しなかったせいで、魔理沙は涙ぐんでいる。

 

「わ、悪い悪い。ちょっと考え事してて」

 

 俺は魔理沙に急いで謝り、魔理沙の左頬を優しく撫でた。

 

「んっ……今度無視したらヤだからな?」

 

 そう言うと魔理沙は俺の右手に自分の手を重ね、俺の手にスリスリと頬ずりした。どうやら許してくれたみたいだ。

 

「魔理沙は俺に何か用か? 用事なら後にしてほしいんだけど……」

「え? 私はお前を迎えに来てやったんだぜ?」

 

 ん?

 

「お前のことだからいつも通り家に帰っちまったんだな〜。忘れん坊め♡」

 

 んんん!?

 

「ど、どういうことですかね?」

「私にあんなことをしておいて……今更何言ってるんだよ?♡」

 

 くぁwせdrftgyふじこlp!!?

 やべぇ、上目遣いでモジモジする魔理沙めっちゃ可愛い!

 俺のハートにマスタースパークがもろ直撃なんだがががが!

 

「なぁ、本当に忘れちゃったのか? 昨晩のこと……」

 

 魔理沙は俺の右手をギュッと握りしめ、寂しそうに目を細めて俺のことを見て訊いてきた。

 

(思い出せ! 思い出せ俺!)

 

 確か、昨晩は魔理沙がキノコパーティをするって言い出して、魔理沙の家で俺以外にも霊夢やアリスも呼んでみんなでキノコ鍋をつついてた。んでもってお酒も飲んでて魔理沙が酔っぱらうと霊夢やアリスは『ご馳走様』って何故か俺に言って帰ってった。その後、魔理沙と二人きりになってそのまま酒飲んで……気が付いたら寝てた。

 

 まさか、酔った勢いで魔理沙を!?

 

「マジか……」

「やっと思い出したのかよ、ば〜か♡」

「いやぁ……まぁ、その……ありがとう」

「おう♡」

 

 謝ろうかと思ったが、魔理沙はこういう時に謝られるのは嫌いだ。だから俺はお礼を言った。正直プレイ内容とか魔理沙の○○○声とか全く覚えてないが、魔理沙の反応を見るなり当たりなんだろう。

 魔理沙は満面の笑みで俺に抱きついて、俺の胸に顔をグリグリしてるのだから。

 

(くそ……魔理沙とのスイートメモリーを忘れるだなんて……!)

 

「じゃあ、私の家に早く帰ろうぜ♡」

 

 ん?

 

「え、魔理沙の家にか?」

 

 俺がそう説明すると魔理沙は「ん?」と小首を傾げた。

 

(何、この可愛い生き物……)

 

 すると魔理沙は何か思ったらしく、耳まで真っ赤になった。そして魔理沙は「本当にイジワルだな……♡」と言いつつ、熱くなった自分の両頬を手で押さえ、モジモジと腰をくねらせる。

 

「そ、そうだな、私の家じゃなくて、()()()家だったな♡ 早く私達の家に帰ろうぜ?♡」

 

 んんんんんん!!!?

 少し潤んだ瞳の上目遣いで頬を赤らめてのそのカミングアウトはなんなの? 俺を萌え殺す気なのか?

 

「こほん……ま、まぁ、確かにあんなことをしておいて責任を取らないのも男じゃないよな。うん」

「へへ、お前のそういうとこ、私は大好きだぜ♡」

 

 本日二度目のマスタースパークが俺のハートを貫いた。やめて! 俺の残機はもうゼロよ!

 ん? と言うことは……。

 

「つかぬ事を聞きます、魔理沙さん」

「ん、何だ? 女友達くらい私はうるさく言わないぜ? あ、でも浮気したとしても私にバレないようにしろよな? んで遊び終わったら、ちゃんと私の所に戻ってくること!」

 

 違います。そうじゃありません。そしてなんでそんなにイケメンなの魔理沙。余計に惚れるやん。

 

「いや、浮気とかしないよ。俺には魔理沙だけって言ったろ?」

「うん、今でもちゃんと覚えてる♡」

「っ!?」

 

 あ、危なかった……もう少しで魔理沙のニパッにピチュるところだった……。

 

「そ、そうじゃなくてさ……一緒に住むにしても、急過ぎないか? 魔理沙がやったんだろ、これ?」

 

 何とかグレイズで乗り切った俺は取り敢えず話を進めるため、目の前にある空っぽになった俺の家を指差した。

 

「ん? 善は急げって言うだろ? 魔法でお前が使ってた家具や何かは全部運んだぜ?」

「何にしたって急過ぎだろ……俺は必ず責任は取るし、逃げないぞ?」

「んなこと分かってるよ……ただ……♡」

「ただ?」

「あ、あんな熱く激しくされたら……もう、離れて暮したくないんだもん♡」

「っ!!!?」

 

 あ〜、いい人生だった……。

 プレイ内容は覚えてないことだけが悔やまれるが、俺は最高の人生を全う出来た。

 

「あ、お、おい!」

 

 最後に聞こえた声は、俺の最愛の女性の声だった。

 

 ピチューーン

 

 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー

 

 霧雨魔法店ーー

 

「ん……」

「お、やっと目ぇ覚めたか?」

 

 目覚めると俺の目の前には魔理沙の笑顔があった。

 魔理沙は俺が寝かされてるベッドの横に椅子を出して、俺を介抱してくれてたようだ。

 

「ここは天国か?」

 

 随分長い夢を見ていたような気がする。

 

()()()家だぜ♡」

 

 夢じゃなかった……。

 

 ベッドから起き上がって辺りを確認すると、確かに魔理沙の家であることが分かった。夜になっているということも。

 更に部屋の中には魔理沙のタンスの横には俺が使ってたタンスもしっかりと並べられている。

 

「急に倒れるから驚いたんだぞ〜?」

「ご、ごみぇん……」

 

 魔理沙は心配してくれてたみたいで、魔理沙は抗議のつもりなのか、両手で俺の両頬を左右からグニグニと摘んだ。

 

「呼吸も規則正しかったから永琳にはまだ診せてないんだけど、どこか痛むか?」

「いや、大丈夫」

 

 主に魔理沙のせいだったからとは言わない。

 

「お前は良く気絶するよな〜。そんなんで力仕事なんてしてて大丈夫なのか〜?」

「大丈夫大丈夫」

 

 主に魔理沙の(ryーー

 

「ま、お前が大丈夫ならいいけどさ〜……」

 

 魔理沙はそう言って俺の太腿ら辺にぽふっと頭を乗せてきた。相当心配させてしまっているようで、申し訳なく思う。

 

「心配してくれてありがとうな」

「へへ、お礼なんかいいって♡」

「あぁ」

 

 俺は笑顔で返してから魔理沙の頭をワシャワシャッとと少し乱暴に撫でた。髪型が崩れてしまうが、魔理沙にはこれくらいの方が好評だからだ。

 

「ん〜、お前のワシャワシャ好き〜っ♡」

「それは良かった」

「はふ〜♡」

 

 まるで飼い主に甘える犬のように魔理沙は頭の位置をコロコロと変え、撫でられたいポイントを変えていく。

 コンテニューしたのに早速残機がごっそりと持っていかれそうだ。

 

(しかし、本当にこれでいいのか?)

 

 そう、俺は魔理沙に大切なことを伝えてない。

 

「なぁ、魔理沙……ちょっといいか?」

「ん? 真面目な話か?」

 

 魔理沙の質問に俺はゆっくりと頷くと、魔理沙は「分かった」と言って姿勢を正した。

 俺は深呼吸した後で魔理沙の手をギュッと握って、魔理沙の目を見てしっかりと伝えた。

 

「こんな俺だけど、魔理沙を心から愛してる。俺と結婚してほしい」

(順番が逆になったけど、やっぱりこういうことはしっかり伝えないと……)

「…………くすっ」

「な、わ、笑うことないだろ」

「だってさ……ふふふっ♪」

 

 魔理沙は俺の渾身のプロポーズに声を弾ませて笑った。こっちは恥ずかしいやら胸キュンやらで顔が赤くなってるのがハッキリと分かる。

 ひとしきり笑うと魔理沙はベッドの方へ座り、俺の右の頬を撫でながら目を合わせた。

 その琥珀色の瞳にはしっかりと俺が映っているのが分かる。まるで吸い込まれて行くようだ。

 

 そして次の瞬間、

 

「んっ……♡」

「んんっ!?」

 

 魔理沙が俺に肉薄してくると同時に、唇に柔らかい感触が伝わってきた。

 

「んんっ……ちゅっ、んふぅ……ちゅ〜っ♡」

「んんんんっ!?」

 

 まるで全神経が唇に集まっているかのようだった。それくらい魔理沙との口づけは刺激的だった。

 

「んはぁ……へへ♡」

「はぁ、はぁ……魔理沙……」

 

 時間としては短い。だが俺からすればかなり時間が経ったような気がする。

 魔理沙はそんな戸惑う俺を見て鈴のようにコロコロと笑う。

 

「何度言われても嬉しいもんだな♡ 私も愛してる♡」

「そ、そうか……」

 

 ん? 待て、()()()()()()()……だと?

 

「昨晩のお前の私を強引に抱きしめて『魔理沙を一生愛します! 結婚してください!』っていう激しいプロポーズも素敵だったけど……しっとり言われるのもまたキュンキュンしちゃうな♡」

「と言うことは……夜のマスタースパーク(意味深)は発射されてなかった!」

「ん? 何の話だ?」

「え……俺、声に出てた?」

「うん」

「…………」

 

 正直に白状すると魔理沙からすっごく笑われた。

 穴があったら入りたかった。

 

「ふふふ、お前は本当に面白いな〜」

「し、仕方ないだろ……」

「まぁ、私の言い方も悪かったかもな♪」

「……」

「じゃあ……♡」

「ん? どうした魔理sーー」

 

 俺は魔理沙に押し倒される形でベッドに寝転がった。

 対する魔理沙はイタズラっ娘のように笑い、俺の首筋にソッとキスをして、

 

「お前が思ってた通りのことになっちゃおうか♡」

 

 耳元でそう囁かれ、俺の何処がとは言わないがルナティックになったのはお察ししてほしい。

 でもお互いに初めてだったからエクストラステージにはまだまだ程遠かった。それでもお互いに幸せな時だったのは間違いなかった。

 

 後日、俺一人で魔理沙の親父さんに頭を下げに行った。親父さんは一発だけ俺をぶん殴ると『あのじゃじゃ馬を頼む』と言ってくれたーー。




霧雨魔理沙編終わりです!

乙女で押しの強い魔理沙にしました!
お粗末様でした☆

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