皆んなヤンデレだけど、タイプが違うから。見解の相違とかは、ありますねぇ!
今回は短かったので、急遽、おまけに「山風とわんわんらんど」を後半にくっ付けたぞ。よろしくな!
「……山風は、大丈夫なのか?」
「ええ、時雨姉さんに任せたわ。……時雨姉さんも、僕達は道具なんかじゃないよって、慰めてくれて……。普段はちょっと過激だけど、ああ見えて私達のことを想ってくれているのよ」
「そうか……。海風は、そのまま山風に付いていてやってくれ。流石に、心配だからな……」
「ええ、それじゃ……」
「クソッ、この鎮守府、ヤバいんじゃないか……?」
はっきり言って黒井鎮守府は異常だ。
戦闘能力はもちろんだが、それ以上に、所属する艦娘の気性が、な。
確かに、司令は尊敬に値する素晴らしい人、って奴だ。
上官としても、人間としても、ああなりたいと思えるような、そんな男だ。
しかし、それでも、あんなに崇拝されるのは、おかしい。あれじゃ、司令自体も迷惑に思うんじゃないか?
「それじゃ、次はどうする……?」
初月が聞いてくる。……実は、前から、行くべきだと思ってる所が一つだけあるんだ。
「……地下だ」
「地下?」
そう、地下……。
どこでも出入り可能な黒井鎮守府の中で、唯一立ち入り禁止の場所……。
「あそこに何が隠されているか……、それで、司令の真意が分かるんじゃないか……?」
「……確かに。不誠実な事かもしれないが、あの人の隠している事が、もしも、もしも悪い事ならば……」
そうだ。
この鎮守府の記録は全部見た。司令の人となりも大体は分かった。
結果、司令はとてつもない善人だと、俺は分かった。
でも、隠されているところがただ一つ。
地下室だ。
……俺は、司令のことを信じている。だから、これは、最後の確認だ。
もしも、これで、何も出てこなければ、俺はこれから司令の為に命を賭して戦う。萩も、同じ意見だ。確かに、ここの艦娘は過激なところはあるが、俺だって、司令に笑顔でいてもらえるなら、なんだってしてやりたいと、そう思えるようになってきた。
だって、あの人は、司令は、本当の正義だから。
助けても見返りのない俺達に手を差し伸べてくれた、本当の正義だ。
だから……。
「……で、地下室前に来た訳だが」
「……開いてるな」
なんか、もう、怪しい。
「……ほ、本当に入るの?」
照月、恐れるな!これは、試練だ……!
「そ、それじゃ、行くぞ!!」
「ああ!!」
鋼鉄のドアを、開けっ、
『テケリ・リ、テケリ・リ……』
閉める。
……………………。
「な、なんかいたー!!!なんかヤバいのいたーーー!!!」
「な、ななななな!なんだ今の?!!!何だ今のー!!!」
「あわわ、あわわわわ!!!!」
はー、はー、お、落ち着け!落ち着け俺!!そう、そうだ、見間違いだ!!黒いスライム状の何かなんていなかった、良いね?
「も、もう一度だ!!」
「や、やめておかないか?」
「あわわ……、お、お化け?お化けなの?」
大丈夫、次は大丈夫……。
ドアを、開けっ、
「畜生!まーた湧きやがった!!死ねっ!オラオラ!!アグニ!魔力の集積!ブレイズキャノン!!」
ッし、閉めるッ!!!
……………………。
「戦ってたーーー!!!司令が戦ってたーーー!!!!」
「何やってるんだあの人はーーー!!!」
「も、もういやーーー!!!」
落ち着け!落ち着け落ち着け落ち着け!!良く考えろ、鎮守府の中に化け物が湧いて出て、しかも、それと司令が戦うなんてこと、あり得るか?いや、無い!!!
きっと、幻覚とか、なんかそういうのだ!!!大丈夫だ、問題ない!!!
「げ、幻覚だ!見間違いだ!!」
「いや無理だろ!それは通らない!!だって、もう、さっきから爆発音とか聞こえてくるんだぞ?!!」
「ひいいいいい!!な、なんか、変な鳴き声が聞こえてくるうううう!!!」
う、うるさい!これは、そう、局地的に地震でも起きてるんだ!そもそも、あんなおかしな化け物がこの世にいるか?司令がなんか良くわからない魔法を使うか?そんな訳ないだろ!!!
よ、よし、三度目の正直だ!!
ドアを、開けるッ!!!
「あー、アメフラシに近いなー。ちょっと神話生物臭さが強いけど。醤油で煮てみたけど、結構アリか?毒腺とか取れば意外と……」
「「「………………食べてるー?!!!」」」
「えっ、何?ここ、立ち入り禁止なんだけど」
「司令ーーー!!駄目だ!それ駄目なやつだーーー!!!」
「は、吐き出せ!!今すぐ吐き出せ!!!」
「て、提督?身体は平気?!お腹痛くない?!!」
「はい?何?なんなの?」
「……なるほど、立ち入り禁止の地下室が気になって、見に来た、と?」
「「「……はい」」」
うう、やっぱり、怒られるかな?
「全く……、駄目だよ?ここ、危ないから立ち入り禁止なの」
まあ、そりゃ、あんな化け物を見たら、な。
「なんで、こんな危険な部屋が鎮守府に……?」
「いやー、俺の持ち物がなー。色々と危険なものばっかりでなー。常人では見ただけでアウト、触ったら確実にお終い、みたいなもんもあるから。ここに厳重にしまっておかなきゃ大変だろ?」
……つまり、司令は、人々の平和の為に、危険なものを管理している……?
「俺、死んだり戦闘不能になったりすると、その場に持ち物を落としちゃうからさ?危険物は極力どこかに保管しときたい訳よ」
そうか、そういうことか……!
「じゃ、じゃあ、やっぱり、司令は正義の味方なんだなっ!!」
「はあ?」
「俺、この鎮守府の記録を読んだんだ!司令、あんたは凄い人だ!!大本営に邪魔されながらも、艦娘を助けて、人々を助けて、海の平和の為に戦っている、そうだろ?!」
憧れ、なんだ。誰かの笑顔を守りたい。ずっと、そう思ってた。
司令は、俺の憧れの体現だ。
俺の目指す、正義そのものだ。
でも……、
「んー?俺は、正義の味方なんかじゃないよ?ただ、自分のやりたいことをやっただけ。……好き勝手やってる分、むしろ悪党だよ?」
「な、なんでだ?どう考えたって、大本営が悪いだろ?なんで、自分を悪く言うんだ?謙遜、ってやつか?」
悪党?司令が?そんなはず、ないだろ!
「……大本営には、大本営の正義があるんだろ。もちろん、俺には俺の正義がある……。人は常に、自分の正義を貫いて生きているんだよ」
「自分の、正義……」
……そっか、自分だけが絶対に正しい、なんて、そんな訳ないか。
皆んな、自分が正しいって、そう思って生きているんだもんな。
「じゃあ、やっぱり、自分の正義を貫くって、悪いことなのか?」
「そうかもな。自分の正義を貫くってことは、好き勝手やるってことだし。それは、一般的には悪いことなのかもしれない。でもな、他人になんと言われようと気にするなよ!例え他人に悪と呼ばれても、自分のやりたいことをやらない方がずっと駄目だからな!」
「……司令……!」
そうだ!司令の言う通りだ!!
正義とか、悪とか、言葉に惑わされちゃ駄目だ!!
「……ま、自分の正義が間違いだった、なんてこともある。そんな時は、俺が、仲間達が止めてやるさ。……だから、自分の正義を信じて、真っ直ぐ突き進むんだ!」
「…………おう!!」
……そっか、正義は、俺の中にずっとあったんだ……。
もしも、俺が道を違えても、あの人が、司令が俺に正義を示してくれる……、そう言うことか。
だったら、だったら司令は……。
絶対の、正義…………。
×××××××××××××××
道具、あたしは、提督の、道具……。
役立たずは、いらない子……。
「明石達も酷いね、僕達を道具だなんて……。確かに、提督には恩義があるけど、だからと言って道具になるなんて間違いだよ」
「そ、そうよね、時雨姉さんの言う通りよ!良い、山風、貴女は道具なんかじゃ……」
「僕達は、提督の犬なんだから」
時雨、姉……?
「時雨姉さん、何を?!」
い、ぬ……?
「だってそうだろう?食事も、住処も用意してもらって、沢山の愛情を注いでもらえる……。でも、何も返すことは出来ない。まるで犬じゃないか」
「それ、は……」
犬、なの?あたしは、提督の、犬……?
「僕達には精々、目一杯提督に尻尾を振って、提督の敵を噛み殺すことしか出来ないだろう?だから、飼い主である提督と対等にはなれない」
提督は、偉い?あたしよりも、上……?
「そんな、そんな言い方って……!」
「何か間違ったこと言ったかな、海風。……君も、本当は気づいているんだろう?僕達の立場ってものを」
「それはっ……」
そうだ、そう、あたしは、犬。提督の、飼い犬。道具なんかじゃない。沢山、可愛がってもらえる……!!
「……別に、強制する訳じゃないさ。提督の妻だと思うのも、恋人だと思うのも、娘だと思うのも……、全部、自分の勝手でいい。ただ、僕達は皆んな、提督には一生かかっても返せない恩があることだけは、忘れちゃ駄目だよ」
「…………はい」
犬、犬……、飼い犬、かぁ……。
えへ、えへへへへへ、ちょっと、可愛いかも……。
「さあ、山風?もう分かっただろう?……僕達皆んなで、提督に服従しようじゃないか……❤︎」
「……うん、分かった……❤︎」
分かった。
全部、分かった。
そう言うこと、なんだ。
あたし達は飼い犬。
一生可愛がってもらえる、構ってもらえる。
一生幸せ。ずっと一緒。
だから、あたしは……。
あたし、は……❤︎
嵐
旅人を絶対の正義として信頼するように。例え誰であろうと、旅人の前に立つ邪魔者は悪だ、とか思うように。
山風
旅人を主人として崇拝するように。自分は走狗であると同時に愛玩動物だと考え始めた。捨てられない為にも必死に努力をする。
時雨
旅人に救ってもらった、助けてもらった恩義を返すことは、どんなに頑張っても出来ないと判断し、全身全霊をかけて仕えることにしている。旅人の走狗として戦うこと、雌犬として媚びること、その両方が生き甲斐。
旅人
艦娘には、自身の良識に従って、のびのび生きて欲しいと思っている。また、折角、船ではなく、人間の女の身体で生まれた以上、人間の女としての楽しみや喜びを味わって欲しいとも考えている。