まあ、独り暮らしだと死にスキルになるんだよね。
「えっと、僕ももらって良かったのかい?」
「良いの、良いの。大体こんな量、一人で全部なんて無理でしょ?辛さは控えめにしといたから、食べて、どうぞ」
「そ、それじゃあ、いただきます…………、こ、これは!美味しい、美味しいよ!」
「フフフ、当然よ!ほーら、牛乳もあるぞー!」
俺、黒井鎮守府の中庭でカレーを作ってます。提督の仕事できてるなこりゃ。完璧だわ。
「ほーら、さっきからそこら辺に隠れてる君達?カレー、食べりゅ?」
「……だ、誰ですか?」
「あ、あまり近寄っちゃ駄目だ、新しい憲兵かも」
「……いい匂い、なのです」
うーん、警戒されてる。女の子にはモテる方だと思ってんだけどなぁ。
「えーとね、ここの新しい提督の、新台真央だよー!よっろしくぅ!」
明るく振る舞う。笑顔は大事。
「えっ、あ、新しいって?」
「前の提督は、ほら、アレだ、一身上の都合で引退したよ、うん。まあほら、いなくなった人のことは忘れて、ごはん食べましょ?ね?」
餌付けである。今姿を見せた子達はどうやら(見た目は)子供だ。多分いける。
「あっ、カレー!」
「おー、確か海軍じゃ、金曜日はカレーなんだろ?これから毎週、カレーを作ろうぜ?」
懐からテーブルと椅子を出し、カレーを配膳。
「わぁ……!」
「わ、罠とかかな?もしかして毒が入ってるとか?」
「でも、あの人も時雨も同じものを食べてるわよ?」
「うめ、うめ、うめ」
「引くほど沢山食べてるのです……」
「早く食べないと冷めるよ?あとデザートはこんなこともあろうかと量産しておいたプリンだから。カレー食べたら出すよ」
「「「「……プリン!」」」」
プリンが勝利の鍵だったか。前日に量産しておいて良かったな。本当は知り合いに配り歩く予定だったが。
「ほ、本当に食べても良いの?」
「うん、このやり取り飽きるくらいやったよ?食べて?料理には自信あるから!例の新聞記者にも文句は言わせないぜ?」
「(新聞記者?)そ、それじゃあ、い、いただきます」
「お、美味しいのです!」
「これは、中々だな」
「はむっ、はふはふ、はふっ!」
「暁、もっと落ち着いて食べて?」
「はっはっはっ、お代わりもいいぞ!」
何てことをやってると、匂いにつられたのか、鎮守府の中からどんどん人が出てきた。
全員で50人くらいか?カレーを追加して、ブルーシートを敷いて、仮設テントを張らせねば。ちょっとした炊き出しだよね、これ。何故か恐縮したり、警戒したりする皆んなに「まあまあ、カレーどうぞ」と勧めて回ると、終わった頃にはもう昼過ぎ。お腹もいっぱいだし、もう眠い。そう言えば、俺、提督だったわ。と言うことは、お昼休みを伸ばせるのでは?
悪巧みをする俺に、対魔忍みたいな格好の黒髪の子が尋ねてきた。
「その、まともな食事をさせてくれたことには感謝するが、貴方は一体何者なんだ?この鎮守府には提督と憲兵以外は進入できないはずだが?」
「なんだかんだと聞かれたら、答えてやるのが世の情け。俺の名は新台真央!ラブリーチャーミーな元旅人の提督さ!なんか知らんけどここで提督をやることになったから、よろしくな!!」
「なっ、何?!!提督だと?!!」
「あと、これから三時くらいまでお昼寝タイムな!提督命令だからこれ!!おやつは餅と小豆が余ってるのでぜんざいになります。よしなに」
「待て、寝るな!どう言う意味だ!私に分かるように説明しろ!!」
「素晴らしいことだよ」
眠い、もうだめだ、寝る。こんないい天気でお腹もいっぱいなら寝るでしょ、常識的に考えて。
「クソッ、話が通じん!!どうした榛名、その書類は?何、大本営の?……確かに、分かった。そういうことか……。では、本当に貴方がここの新しい提督……、ね、寝てる!」
「わぁ、ZZZの文字が宙に浮いてますよ?!あからさまに寝てるって感じです!」
「ん?なんだ、このメモは?何々?『三時くらいになったら起こしてね。それまでは皆お昼寝タイム。そこの毛布は好きに使っていいよ。おやすみ。』だと?」
「そう言えば、私、こんなに食べたのは初めてで、眠くなってきちゃいました……、長門さん、私も少しおやすみしますね」
ZZZ……。
「お、おい、榛名?お、怒られるぞ?」
「大丈夫ですよ!提督は今、「休め」と命令したじゃないですか!」
「しかしだな……」
「……この人は、見ず知らずの行き倒れだった私を拾って、見ず知らずの艦娘の為に戦って、そして鎮守府まで送ってくれるような優しい人です。いきなりのことで皆んな驚いてるかもしれませんけど、信用はできると思います」
ZZZ……。
「成る程、この男が木曾の言っていた……。相当な益荒男らしいな。良いだろう。「休め」との命令、確かに承った。皆んな!!聞いた通りだ!!三時まで全員「休め」!!」
ん?何か大きい声がしたな、三時かな?
「ふぁあ、もう三時?」
「あっ、お、起こしてしまったか、すまない!責任はこの私にある、叱責するならば私を!」
「そっか、じゃあ、えっと、罰として…………ZZZ」
「提督?罰として、何を……、ね、寝てる!」
×××××××××××××××
何なのだ?!この男は?!行動の原理が全く読めん!
そして、私は何をされるのだ?!罰として何だ?また、殴られるのか?分からん、何をされるのか全く分からん。
榛名に聞いてみるか?あっ、駄目だ、寝てる!
では時雨に、あっ、こっちも寝てる!というより、駆逐艦は全滅だ!!
ならば木曾に聞くか、木曾は、あっ、毛布にくるまってる!寝るつもりか!
「ちょ、ちょっと待ってくれ、木曾!その、私は、罰として何をされるんだ?!」
「……ん?長門か。知らん」
「知らんて、いや、その、予想できる限りで良いんだ、何をされるのか考えてみてくれ!」
「……うむ、分からん」
「そ、そこを何とか!何をされるのか皆目検討もつかん!!」
「冗談抜きで本当に分からん。あの男は俺達の常識の外側にいるからな。まあ、案外、起きた頃には忘れてるんじゃないか?」
「だ、だが、お前の話だと、謎の光で前提督を倒したとか。はっ?!も、もしかしたら呪い師の類いで、呪いをかけられるのでは?!!」
そ、そしてお化けに取り憑かれたりとか?!いかん、考えれば考えるほど怖くなってきた!
「……あー、そうか。お前はそうだったな。まあ、お前が思っているようなことは起きんよ、多分」
「な、何のことだ?こ、この長門、決して、おおおお化けがこここ怖いなんてことは」
「お、おう、そうか。良かったら手でも握っていてやろうか?」
「なっ、何だと!この長門を愚弄するな!」
「あ、ああ、すまん。(思いっきり握ってきた。凄く震えてるし。)」
こここここのビッグセブンと謳われた長門が怖いなんてことは決してないのだ。
「あら?どうしたの長門?」
「!!、む、陸奥か!い、いやぁ、木曾が怖くて眠れんと言うからな!手を握ってやっているところだ!!」
「……あー、そうなの。あっ、じゃあ、私もなんだか怖くなってきたから、長門の隣で休んでも良いかしら?」
た、助かる!ありがとう陸奥!
「は、ははは、陸奥は怖がりだなぁ!わ、私の隣で寝ると良い!で、出来るだけ近づいて!」
「はいはい、貴女は疲れを溜め込みやすいんだから、休めるときに休んでおきなさい、ね?」
「あ、ああ、そうだな!」
なんて出来た妹なんだ!この長門、感動したぞ!!て、提督なんて怖くないんだからな!!た、例えお化けを出そうと、私は絶対に屈しない!!
時雨
ガンキャノンではない。
暁型のみんな
ロリみある。
長門
戦闘行動以外はながもん。
女子力が死んでるし、お化けも怖い。
陸奥
長門の保護者。
木曾
いい奴。
榛名
今日も大丈夫。
旅人
料理チート。
例の新聞記者
この料理は出来損ないだ、食べられないよ、など、食い物に文句を言わせたら世界一。