気がついたらもう冬だ。
空中戦では不利なアイドルと会ったりなどしつつ、冬を楽しむ俺、██歳。
██歳、学生ではないです。
そんな俺は、だらっとした休日の二度寝から起きる。
██歳、覚醒です。
何故、バキバキ健康バリバリ最強ナンバーワンの俺が二度寝などしていたか?
理由はこれである。
海楼石でできた腕輪……。
そう、この前のシリさんとの約束通り、異世界で長期旅行をした。そしてその代償として、艦娘に囚われたのである!
……自分の家で自分の嫁に監禁されるとか、これもうわかんねぇな?
海楼石の腕輪は、何故か俺のパワーを奪う。
別に悪魔の実なんて食べた覚えないんだけどね、何でだろうねおかしいね。
俺には広く浅く色んな手札と性質があるから、大抵の攻撃が効かないのだが……、弱点を消して無敵になることはできない。そういう『絶対法則』があるのだ。
例えば物理ほぼ無効の一見無敵に見える長門なんかも、その謂れから「核熱」に対して弱点があるし、陸奥や島風は「爆発」に弱く、時雨はなんか知らんけど「破魔」に弱い。
無論、装備で補ってはいるけどね。
そんな俺は、自己改造によりある程度耐性を変化させることができるのだ。
アルバトリオンみたいなものだと思って欲しい。いや、あんなに強くないけど。
……で、うちの艦娘には、そのパターンを読まれているから、隙を突かれて捕まってしまったという訳なんだよね。
と言うか、ぶっちゃけ俺は自分の耐性を完全には理解してない。そこを突かれた。今回はたまたま、海楼石が効く時の耐性パターンだったのだろう。
大体にして今回は俺あんま悪くないよね?
次元の渦に飲み込まれてシリさんと逸れて、なんだかんだで出会った白狼の名を冠するウィッチャーのおじさんと一緒にしばらくシリさんを探す旅をしていたんだから。……あの人、まだ生きてたんだ。昔会った人が、シリさんの父親だったとはなあ。
「事情があった!……事情が!」
「はーい、じゃあ、食事にしましょう?」
監禁主の陸奥に捕まる。
「その程度のことでは、オルファンは沈む訳がない!」
「はい、食堂に行きますよー」
最近は俺の妄言も華麗にスルーされてしまう。
大人になったなあ……、俺は誇らしいよ。
しかし、大人になるって悲しいことなのとはよく言うので、あまり大人になり過ぎてはいけない。
大人は誰も笑いながらテレビの見過ぎと言って子供の言葉を否定してくる訳じゃん?
大人になって夢を忘れた古い地球人になるとね、やっぱダメだからね。
アニメじゃないしνガンダムは伊達じゃないし、冗談ではない。
まあ進化し過ぎると碌なことにならないし、急速な革命とかやると碌なことにならんぞと天パが論破してたからそういうことだろう。
そうだろう、スティンガーくん?
……竜馬さん、最近何やってんだろ?
知り合いのパイロットさん達はみんな、ルビコン?とかいう惑星で新資源が見つかった?とか言ってそっち行っちゃったんだよね。俺も行こうかな……?
ポケモンで例えると、ニャオハが進化してしまうとマスカーニャになって、ケモナーの人が喜び、マスカーニャでマスカキーニャされちゃうから危険!みたいな感じ。
飯。
朝なので軽く済ませる。
今日は洋風にパンにしようか。
トーストを十斤に、ベーコンを敷いてその上に卵を落とした目玉焼きを1メートル四方ほど、バケツ二杯分のチキンコンソメスープと副菜にソーセージ1キロとシーザーサラダ1キロとポテトサラダ1キロとマフィン二十個とヨーグルト1キロとみかん二十個。
少し物足りないが、まあ朝だからね。
「はい、あーん♡」
「あーん」
あとは、陸奥に拘束されてるので、食べさせてもらうしかなく、食事のペースが遅かったと言うのもある。
「うふふ」
「……陸奥。今、幸せかい?」
「ええ、とっても」
あぁ^〜。
やっぱり、いい女は幸せにならなきゃいけないからね。
女の子が笑顔になれないなら、そんなのは世界の方が間違ってるってそれ一番言われてるから。
「……でも、もっともっと、ずっとずっと。永遠に、貴方の側に居たいわ」
「居ればいい」
「なら、どうしていつも居なくなってしまうの?」
「……そういう人間なんでね」
こういう言い方はしたくないのだが……。
だから言ったんだ、俺と一緒になっても、幸せにしてやれないと。
俺は恋人はやれるが、父親はできないんだ。
家庭人じゃない。
同じ説明をもう一度した。
「……そう。いつもそう答えるわよね」
「すまないね」
「良いの。だから私は、貴方を力尽くで縛り付ける……。嫌になったら、いつでも逃げて?」
「ああ、そうするよ」
今日のところは、一緒にいようか。
……ところで、食堂の窓に鉄格子嵌ってんだけど。本当に逃がしてくれる気あるこれ?
仕方がないので今日は陸奥とお馬さんごっこをする。
大人のお馬さんごっこだ。
陸奥のムチムチのデカ尻が落ちてくる。
因みに、陸奥はベロチューしながらやるのが好きだ。
「ちゅ♡ちゅう〜♡」
姉の長門なら、スポーツどころか殺し合いみたいな激しい行為を望むのだが、陸奥はその逆で、ナメクジの交尾みたいなスローでねっとりした行為を望む。
心身が溶かされて一体化するかのような錯覚を覚える。SAN値チェックが入りそうだが、この鎮守府には狂人しかいないのでセーフみたいなところがある。
SAN値チェックしようにも、SAN値が遊戯王のライフポイント並みにあるんだから無意味なんだよなあ。
それを言えば、俺のライフポイントはOCGで大弱体化した金玉のように、ちゅーちゅー吸われちゃってるんだが。ライフちゅっちゅギガントさんェ……。
そんなことを思いながら、俺の上でお馬さんごっこしている陸奥を抱きしめ、昼から堕落した生活を送っていた……。
そして夜。
俺は、陸奥と一緒に酒を飲んでいた。
このまま陸奥に囚われていると、ムツリムになってしまいそうだ……。
ウォッカを1瓶一気飲みしてから、俺は言った。
「陸奥、そろそろ拘束具を外してくれないかな?」
「駄目よ」
「いつ外してくれる?」
「ずっと一緒、死ですら私達を分つことはないわ」
うーむ。
「……まあ、そろそろ外しても良いわよ?二人目もできたことだし」
そう言って陸奥は、プラスチック製のピンク色の棒状の検査器具を俺に見せつけてきた。陽性である。
アァ……オワッタァ……。
「貴方が三ヶ月以上姿を消しても、艦娘に発狂者が出なかったのは、やっぱり子供のおかげね。子供っていいわよね、提督?」
「ウス」
俺は、黒井鎮守府共用の口座に、「養育費」という名目で、異世界で稼いだアイテムの大半をお金に変えて振り込んだ……。
旅人
頑張って集めた希少金属を全部売った。
陸奥
三ヶ月旅人なしでの生活ができるほどに社会復帰している。まあ復帰も何も社会で生きられる人間ではないのだが。