ギャグ小説を書けるほどのメンタルパワーがなく、更新ができませんでした。
許してくだち。
黒井鎮守府のフリーパスっぷりと言ったらもう凄い。
一応、黒井鎮守府のメインルームや、炉心があるルームには厳重な防御があり、外壁もしっかりあるし警備ロボもたくさんあるのだが……。
身分が明らかな人は、あっさりと出入りできちゃったりする。
術師なんかは特に簡単に出入りができるね。
転移の妨害も一切なく、それどころか転移してきやすい条件を整えてあるのだから。
その辺の話をすると大変だが、まあ要するにガイドビーコンみたいなのを出してると思ってくれて構わない。
だからたまに、黒井鎮守府には、時空漂流者やら何やらが来る……。
黒井鎮守府、転移ルームのすぐ隣。
居酒屋鳳翔にて。
俺はいつものように、艦娘を侍らせて鍋をつついていた。
「んー、寒い日に、熱々で辛いキムチ鍋!こんな贅沢は他にないズェ……」
俺の隣では古鷹と加古が、護衛(という名目で俺を合法的にストーキングできるオイシイ役割)をしているらしい。
かわいいね。
キムチ鍋を十人前平らげたので、あとはモツ鍋とか行こうかなと鳳翔を呼んだ、そのあたりで……。
転移ルームから、二人の男女が現れた。
片方はエルフのおっさん。
もう片方は翡翠色の瞳をした美女。
んーんん?
ままえやろ、黒井鎮守府は美人なら誰でも受け入れるのだ!
まるで幻想郷みたいだあ。
「あの、悪いけど、食事を分けてもらえる?」
女性が言った。
なるほど、長旅をしていたのだろう。
焦燥した様子を見るに、逃亡者の類か。
面白そうだし、美人だから匿おう!
「良いよ、座りな。……あ、食べられないものとかある?」
「特には」
「はいよ、鳳翔さーん!」
「はーい」
鳳翔が、山盛りの食料を持ってきてくれた。
最近、鳳翔や間宮などの厨房組は、修行のためにドンドルマなどに顔を出していたらしく、バフ効果が出る料理の作り方を覚えてきたらしい。
「どうぞ、好きなだけ」
「ありがとう!」
飲食を始めようとする女性、だが……。
「待て、ジルエアエル。この男、何かおかしい」
と、エルフの男がそれを制した。
ふむ……?
「古鷹、加古、俺っておかしいかな?」
「いいえ!提督のすることも、存在も、何もかもが全て絶対に正しいですよ!」
「そんな訳ない!提督は誰よりも正しいよ!艦娘にとっての神様だよ!」
うむ、俺は正しい。
と言うか、正しくなくても正しいと思い込まなくてはならない。
今更、某サークルクラッシャー女さんみたいなのに「マフティーのやり方、正しくないよ」とかレスバの申込申請書をDMで飛ばされてきても困るのだ。
そんなことをされたらこちらも「それでも!」と言い続けて食い下がりながら撤退するしかなくなってしまう。
大体、俺を正しいと信じてついてきてくれる艦娘達に申し訳が立たないんだよねえ。
皆が信じる俺は正しい、正しくなくてはならない。
そう*決意*を新たにした俺を、エルフ男はガン見してきて、言った。
「……人間ではない」
失礼な。
「大体人間だよ」
「気配が違う、魔力の流れも」
「分かったよ、今直す」
俺は、体内を使いやすいようにカスタマイズしてるからなあ……。
特に最近は、艦娘にあっさり殺されることが増えたから、再生能力に極振りしているところがある。
ネトゲで防御力に極振りしている美少女と出会ったりもしたし、やっぱり時代は極振りなんだよね。
俺の身体から異音が響く。
表面がボコボコと泡立つ。
そして、肉体の調子を整えて、人間の中身を再現した。
「こんなんでいいかい?」
「……なるほど、そういう存在か」
杖を納めたエルフの男は、大人しく座って飲み物のカップを煽った……。
「……なるほどね。君はシリさん、魔物退治人『ウィッチャー』の見習いで、色々あって悪い奴から逃げて、避難するためにここへ」
男の方は、名前は名乗らなかったが、エルフの賢者とシリさんが言っていた。
便宜上賢者と呼ぶ。
……にしても、紅魔館の賢者はもっとぱいぱいが大きい美女だから、男だとしっくりこないなあ。
運動不足女特有のムチムチの尻が堪らないんだ!!!!
「ありがとう、助かったわ。すぐに出ていくから……」
「いや、その必要はないさ。避難するならここを使ってくれて良い」
「え?でも……」
「その代わり」
「……その代わり?」
「今度、俺が君達の世界に行った時に、そっちの世界を案内してくれ。それが条件だ」
「ええ、それくらいなら全然」
そう言うことになった。
「……でも、どうして助けてくれるの?」
んー……。
「この世界は、軸的に根源に近いんだよね。ターミナルと言うか……」
「どう言うこと?」
シリさんの方は理解できないようだったが、賢者さんは理解したようだ。
「なるほど、確かにこの不安定さを見るに、『複数の世界が混ざり合っている』な。ターミナルとはよく言ったものだ」
「そうそう。だから、異世界や別次元、時間旅行者とか、珍しくないんだよ。今更、一人増えたくらいで何ともないんだよね」
この前も、グウェンプールちゃんって子とアメリカで会ったし。あの子は上位世界での観測者だったみたい。
あとはこの世界から異世界転移やら異世界転生やらをする人も多いよ。
「……そんな訳だからもう何も気にならないんだよね。実際、この居酒屋……ああ、酒場にも、この世界の人間じゃない人も多い」
俺がそう言って、居酒屋の中を見回す……。
……「うみゃあ!」「サーバルちゃ〜ん!だめだよ〜!」「だって〜!別のちほーに来たのに、フレンズがいないんだもん〜!」「ここは、フレンズさんがいないところなのかもしれないね」
……「うまーい!こっちの世界はアルディオン大陸よりごはんが美味しいでやんすねえ!あっ、旅人の旦那!何か依頼があれば格安で引き受けるでやんすよ、このベネットが!」
……「宿を貸してもらえて良かったわね、パーン。それに美味しい食事まで……」「ああ、ディード。テレポートのトラップがまさか異世界に繋がっているとは……」
そう、この居酒屋鳳翔。
ほぼ別世界みたいなもんである!!!
「飯と寝床くらい出すとも、黒井鎮守府の収入からするとそんなものは誤差だからね。そんなものより、俺は可能な限り旅人達を保護したい」
「どうしてかしら?」
「俺自身が『旅人』だからさ。見知らぬ世界で人々に石もて追われるのは辛いし、立ち寄った村で刃を向けられるのは悲しい。……せめてここだけは、旅人に優しいところであって欲しいんだ」
「……貴方は、立派な人なのね」
「いや、申し訳ないが、俺は女に目がない下衆野郎さ。下衆野郎の罪滅ぼしだよ」
「それでも、ありがとう。本当に助かるわ。お言葉に甘えてしばらく滞在させてもらうわ」
「ああ、好きにしてくれ」
燕の人
やたらと設定を盛られる美女。
旅人
人の親になって若干丸くなったかもしれない。