ないです。
ウオオオオッ!!!
俺俺俺俺!!!
真夏ーのーじゃんぼり———。
「———釣りをやります」
プロとして———。
「おおっ!じゃあ、今日は俺とデートか!」
てーんりゅーちゃーんじゃーん。
既に、ライフジャケットにクーラーボックス、釣り竿を完全装備した天龍ちゃん。
今日は、マネーの力で作った黒井鎮守府の港で、釣りをするのだ。
釣りをするのだポッター。
マネーの力は強大で、マネーチャージプリキュアである大淀が、溢れる資本の力で釣りに丁度いいポイントを用意してくれた。
具体的にどんな釣りポイントかと言うと、神室町からタクシーで行ける堤防にあるくらいに無差別に何でも釣れるところだ。
シラスからマグロ、リュウグウノツカイ(イクさんではない)まで釣れる、ブッ壊れスポットである。
余談だが、幻想郷で一本釣りして、俺の竿を呑み込んでくれたイクさんとは最近会ってない。会ったら「もっと会いに来てください!」と100%ズタズタに引き裂かれるので、ひっさつどげざでどうにかしよう……。
俺のひっさつどげざは10%の確率で相手に許してもらえるので、やってみる価値はありますぜ!人間関係が駄目になるかならないかなんだ!
さ、て。
俺はそんなブッ壊れスポットである、黒井鎮守府堤防に天龍ちゃんとやってきていた……。
時間帯はもうマジで早朝。
昼間だと水温が高くなり過ぎて、お魚さんも困ってしまうからねえ。
事実、最近の暑さでは、茹だった魚が死んで、沖合に流れ着いていることもあるくらいだよ。怖いね、地球温暖化。
やっぱり俺も、カボチャを被ってマフティーとなり、地球環境を守らなきゃならないのだろうか?
統合失調ハサウェイにはなりたくないなあ……。
既に面白ノースリーブグラサン芸人みたいな領域にはいるが。天龍ちゃんはチャーミングだからな。
「何狙うんだ、提督!今の季節ならシロギスか……、新子のタコなんてのもアリだな!」
「へえ、タコ来てるのこの辺?」
「大淀が用意した堤防には、何故か毎年来てるぞ。タコは、その年によって来る来ないが分かれるんだけどなあ」
「はえー、すっごい。どう言う技術を使った堤防ならそんなことになるんですかねぇ?」
「知らんけど、『真島建設』ってところに下請けを依頼したらしいぜ?」
「アァ……、オワッタ……!」
極道なんですがそこ????
本当に大丈夫????
ググった知識でビル建てるような人らだよ?
まあ、勘で爆弾解体できる人だしセーフみたいなところはあるかな。
で、何を狙うかだっけ?
「サビキで小ちゃいアジでも釣るかなあ。アジフライ食べたいし」
「んもー!提督って、基本的に食べる為に釣りをするから、ゲーム性をあんまり考えないよなあ」
まあそうねえ……。
「俺は基本的に、釣りの技術は生きる為に身につけたからね」
生きる為、仕方なかった。
「んじゃ、チヌとか?狙って釣るのは難しい時期だよ、ゲーム性もあるんじゃないかな」
「んー……、チヌは夜じゃねえか?」
まあそれはそう。
あ、チヌってのはクロダイのことね。
クロダイって雑食だから、汚いところで釣ると臭くて美味しくないんだけど、黒井鎮守府堤防は何故か不自然に綺麗だから新鮮で美味しいよ。
炊き込みご飯にすると気が狂うほど美味いんじゃ。
「あとはツバスかなあ……」
「ああ、良いんじゃねえか?ツバスは朝の方が釣れるしな」
「釣った豆アジを餌にして、ツバスを釣る訳だよ」
「へえ、ノマセ釣りかよ」
ツバス、つまりはハマチだ。
鰤の進化前の姿である。
ブリ、ハマチ……?
「ぷるっぷるっぷるっごき〜……?」
「ん、どうした提督?また発作か?」
天龍が気の毒そうな表情を隠しつつ、優しい声を出して俺の肩を抱く。
いやん、惚れちゃいそう。
それはともかく、俺はそんな定期的に狂ってるみたいな扱いなのだろうか?
正常な精神を持つ、一般通過旅人なんだが????
「今流行っている鰤と言えば、男の娘の方のブリなのですが」
「すまん、何の話だ????」
「僕は、ついてゆけるだろうか。君のいない世界のスピードに」
「おっ、大丈夫か大丈夫か?」
本気で心配されてしまった。
天龍は良い子だなあ。
「いや大丈夫、昔の鰤の話をしていた」
「そ、そうか……」
ナイロンライン巻き巻き〜。
釣具を用意していると……。
「おいおい、ナイロンラインで良いのか〜?PEラインの方が感度高いぜ〜?」
と、横でリールを弄る天龍ちゃんに煽られた。
「俺本体の感度が三千倍なので大丈夫みたいなところがある」
「うげ、やめてくれよー……。あの、対魔忍とかいうアホ共を拾ってくる仕事、マジでキツいんだぜ……?」
ああ、そう言えば、定期的にあっさり捕まる対魔忍を救出する仕事を天龍は定期的にしていたな。
「あいつら、感度三千倍だかなんだか知らねえが、運んでる最中にイキまくって変な汁撒き散らすんだよ……」
ああ……、はい……。
「お、お疲れ様です……」
割とガチでしょんぼり顔をするもんだから、ちょっとシリアスに慰めちゃったぞう?
「ってか、天龍ちゃんは大丈夫なの?」
「え?何がだ?」
「魔界のオークとかにレイプされたりしてない?」
「ハハッ、何言ってんだよー!」
「ははは、冗談で」
俺がそう言いかけると、天龍ちゃんは笑顔のまま、地の果てから湧き上がる呪いの声みたいな声音でこう言った。
「俺の身体も心も、魂の一欠片すらも、全てアンタのもんなんだよ。なんで、ゴミ虫共に触れさせるんだ?」
おっ……とぉ……?
「本来なら、提督以外に見られるのですら不愉快なんだぜ?けど、他でもない、愛するアンタが、人間らしく過ごせって言うから我慢してるんだ」
おお、あ、おお。
「あーっ、と、えー、辛い?」
「……いや、我慢できる。艦娘は仲間だし、地元の人らも……、まあ、胸を見たりはするけど、悪い連中じゃねえ。キレるほどのことじゃ、ねえ」
ん、よし。
「天龍は偉いね、頑張ってるね。良い子だ、愛してるよ」
「うん……♡」
ふう……。
釣りをしながらも爆弾解体もできるなんて、スリリングで最高だなあ!!!!
おま(ん)け。
「提督ー?このコスプレ、なんなのー?」
もがみんに鰤のコスプレをさせていた。
因みに新しい方だ。
「最近流行りの、賞金稼ぎの子のコスプレだよー」
「へえ……、そうなんだ。これ着てると、提督は嬉しいの?」
「んー、どうだろ?」
「え?可愛くない?」
「いや、最上は可愛いけど……」
「けど?」
「それ、男の子のコスプレだし……」
「にゃああ?!!!なんで?!なんで男の子のコスプレ?!!」
「いや、行けるかなって……」
「僕は一人称が『僕』だけど、ちゃんと女の子だよぉ!!!目の前で着替えたんだから分かるでしょ?!!!」
まあそれはそう。
「でも、これはこれで……」
「も、もしかして、提督……!ホ、ホモに?!」
「ないです(ないです)」
「女の子の可愛さを思い出してー!」
そう言って、スパッツ尻を見せてくれる、最上ちゃんなのでした(きょうの◯んこ)。
天龍
釣り人。圧倒的陽キャオーラを持つ。
旅人
「ときメモなら死んでた」