旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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俺はぷよぷよのアルルを幼少期に見てから、僕っ子ってやつがどうも好きになっちまってなあ……。

時雨みたいに可愛い女の子が僕っ子なのは威力が高い。


567話 しぐにゃん

朝……。

 

起床した時から。

 

いや、僕の意識は、起床する前から。

 

それどころか、二十四時間ずっと、最愛の人に向けられている。

 

仕事で遠出、実験中、戦闘中。

 

それでも、意識の何割かは、常に提督に向けているんだ。

 

ああ、提督。

 

僕の、僕達の最愛の人。

 

初めにしてもらったことは、地獄からの解放。

 

けど……、僕達は、漫画やアニメのヒロインのように都合のいいキャラクターじゃあない。

 

助けられたから、そこからすぐに恋とかそういう話にはならなかった。

 

けど、すぐに。

 

そう、すぐに。

 

提督は、僕達の心を蕩けさせていった。

 

優しく触れてくれる。

 

壊れ物を扱うかのように。

 

愛してくれる。

 

『艦娘』でも『化け物』でもなく、一人の人間として尊重してくれる。

 

上辺だけじゃないんだ。

 

心から、僕達を愛してくれている。

 

僕達、艦娘は、どう取り繕っても化け物だ。

 

定義的には、デビルサマナー達が使役する悪魔と何も変わらない。

 

折り重なった人々の祈り、破滅回避の為の『アラヤ』からの抑止力でありつつ……。

 

その癖、僕達の中身は、当時の船員の記憶や能力がパッチワークのように繋ぎ合わされた急造品で。

 

更にそこに、付喪神の要素をも取り入れて、霊核を調整し。

 

最後に、人肉に近しい肉の器を作り、そこに霊核を埋め込んで、出来上がり、と。

 

そんな、キメラのような作り物の僕達を。

 

愛して……、愛してくれているんだ。

 

それが、僕達にとってどれほどの救いになるか……!

 

自己の記憶すらはっきりとせず、慣れない肉の器に戸惑い、ヒトでも兵器でもない「ナニカ」であると自覚した時!

 

どれほどの、どれほどの恐怖を感じることか!

 

「滅びたくないから何とかしろ」という、我儘なニンゲンの無責任な祈りで急造されたつぎはぎのフランケンシュタイン!

 

それが艦娘だ!

 

それを、それを……!

 

愛してくれているんだよ、彼は!

 

それだけじゃない、つぎはぎの僕達に、新しい布をくれた!

 

布の名前は「人格」といい、それを作るために、「趣味」「嗜好」「好悪」と言った道具も与えてくれた!

 

不完全な僕達を、ここまで作り直して、ここまで愛し続けてくれた提督を、何故嫌えようか?!

 

ああ、ああ。

 

愛してる。

 

愛してる、愛してる、愛してる。

 

神学者の語る最上位の天使は、溢れる神への愛で全身が燃えており、それを羽で隠しているのだという。

 

僕もそうだ。

 

愛している。

 

捧げたい、全てを。

 

彼の為なら、比喩ではなくなんでもやる。やってみせる。

 

しかし、彼はそれを望まないだろう。

 

だから僕は、理性の翼で燃える愛を抑え込む。

 

 

 

それとこれとは別で、提督の窃視はやめられない。

 

『瞳』にて、早朝の提督の心を覗き見る。

 

「ほあようございあーしゅ!」

 

ふふ、おはよう、提督。

 

ああ、やはり、『瞳』はいい。

 

愛する人のことが、よく見える。

 

よく、分かる。

 

「オッスオッス、しぐにゃんも起きてるかー?」

 

ふふっ、しぐにゃんだって?

 

後で猫耳を用意しておこう。

 

「おはようのチューしてほら」

 

ちゅー。

 

「ヒャア!最高!今日も一日頑張るぞい!」

 

そうだね、頑張ろうね。

 

さて……、そんな朝の提督は、何を考えているのかな?

 

《———キンキンキン!》

 

………………は?

 

《「———」これ使えば……、稚拙な文章でもかっこよくなるんちゃうか?》

 

えっ、は?え?

 

《———朝メシ》

 

《———どうすっかな……》

 

《———やっぱり》

 

《———冬やし、あったまるもんを……》

 

《って、こりゃファブルやないかーい!HAHAHAHA!》

 

ふ、ふふふ。

 

流石は提督だね。

 

思考は読めても、意味は不明だ。

 

こうも分からないと、逆に好奇心がグングン湧いてきてしまうじゃあないか。

 

『理解』したい。

 

僕は君のことをもっと知りたくなってしまったよ。

 

「やめとけ!やめとけ!俺は頭がおかしいんだ!」

 

まあそれはそうだね。

 

 

 

今日は、提督が、白露型の研究成果を見に来てくれたみたいだ。

 

今回は、外道:スライムを込めた弾丸を敵対者に撃ち込み、擬似的な悪魔合体を成立させ、敵対者を崩壊させる武器について発表させてもらった。

 

「怖スギィ!!!」

 

大丈夫だよ、提督。

 

恐怖なんてすぐになくなるんだ。

 

僕は、提督を抱きしめて、言った。

 

君が怖いものは、僕が全部消し去ってあげるよ、と。

 

それとも……、怖いのは僕かい?

 

「はい?何でしぐにゃんが怖いのよさ?」

 

嫌味じゃないけど、僕はもう、君より強いよ。

 

怖くないのかい?

 

「特には……?アッ!おぱんてぃは怖いなぁ!しぐにゃんのおぱんてぃは怖い!!!見せられたら大変なことになるなあ!!!!いやー!!!おぱんてぃは怖いなぁ!!!!」

 

ああ……、これだ。

 

提督は、馬鹿だ。

 

でもそれは、考えなしとか、危機察知ができないとか、そういう意味じゃない。

 

僕を信頼してくれているんだ。

 

こんな僕を……、化け物の僕を。

 

僕がどんな存在か理解した上で、それでも正面から好きだと言ってくれる。

 

僕は、そんな愛する人の信頼に応えたい。

 

それに、僕だって女だ。

 

愛する人といちゃつきたい。

 

ほーら、提督?

 

しぐにゃんのおパンツですよー。

 

「ヒャア!縦縞!」

 

ああ……、もう、本当に。

 

こんな人だから。

 

だからこそ、愛せるんだ。

 

全てを捧げたいと思えるんだ。

 

ほら、来て、提督?

 

今日は、白露型の全員で「お相手」するよ……♡

 




しぐにゃん
にゃんにゃんにゃーん。

旅人
ファブルを読んでない。

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