もう本当に勘弁してくれないかな?
いや、もちろん、俺もできる限りは協力するよ?
でも俺って、基本的には、個人レベルじゃクソザコナメクジも良いとこなんだよね。
クソザコナメクジは言い過ぎだとしても、うーん、まあそうだね、秀才レベル?
俺は、G級ハンターでありデビルサマナーであり狩人であり、魔法使いであり格闘家でありプロレスラーであるけれど、そのどれもが「秀才」止まりなんだよ。
俺が今まで出会ってきた、綺羅星のような天稟持つ者達と比べれば、どこまでいっても「そこそこできる」程度の人間に過ぎないんだよ。
俺がしつこく、自分のことをただの人間だと言うのはそれだからだよ。
俺は、俺よりも遥かに優れた天才達をこの目で見てきた。
『主人公』達の活躍を、すぐ側で眺めてきた傍観者なんだ。
例えば、こんな人達がいた。
東京受胎。本格的な世界の終わりのその時。
世界を元に戻すために戦い抜いた青年がいた。
俺も、その青年の仲魔となって、壊れた東京を共に旅した。
確かに彼は、最初のうちは人間に毛が生えた程度の力量しかなかった。
けれど、どんどん悪魔を倒して、力だけでなく心も成長し、最後は魔王すら倒して見せた。
それと比べれば、俺なんて単なる人間だ。
こんな話もある。
とある旅人の話だ。あ、俺じゃないぞ。
その旅人は、二千の技を持つと言う、優しい心を持った青年だ。
だが、なんの因果か、超古代文明の力を手にしてしまった。
彼は、良い意味で変わらなかったよ。
超古代から蘇りし怪人、グロンギ。
奴らは、『ゲーム』と称して殺人の数を競う競技をしていた。
奴らの凶行を目にしてなお、その優しい心を失わずに、怒りと悲しみに飲まれなかった旅人は、最後に、グロンギの王と一騎討ちをして……。
その後は、遠くへ、また旅に行ったよ。
俺は、あんなに優しい心は持っていない。
彼の善性と比べれば、俺なんて単なる人間だ。
色々な人と出会った。
みんな、みんな、とても良い人達だった。
とても、凄い人達だった。
それと比べれば、俺は、本当に単なる人間だ。
……話を戻そう。
ここは、辺境。
地球の果てだ。
ここには、様々なモンスターが跳梁跋扈し、神秘についても、魔界並みに高くなっている。
この辺境では、モンスターハンターと呼ばれる人々が、襲いくるモンスターと戦っている。
確かに、俺がいつもいる日本では、毎日のように侵略者やら何やらが宇宙から降りてきて、それをスーパーロボットが撃退する……、みたいな状態だが、この辺境も負けてはいない。
天候を自由に操る龍や、破壊光線を撒き散らす牙獣。
火を吹き空を飛ぶ飛竜に、電を纏う狼竜。
こんな奴らが、毎日毎日どったんばったん大騒ぎしてる訳だからね。
いやぶっちゃけ、対処法がある分、悪魔とかの方がマシなまである。
悪魔ってのはね、明確な弱点やら対処法があるもんなのよ。
例えば、龍王:ヴィーグルという悪魔がいる。
この悪魔は、魔力の源が、額にあるガーネットなんだ。
このガーネットを奪えば、簡単に無力化できる。
英霊とかもそうだよね。
クー・フーリンなんて有名でしょ?
ゲッシュを破らせれば簡単に無力化できてしまう。
けど……、この辺境にいるモンスターは、そういう明確な弱点が一切ないんだよね!!!
いや、もちろん、弱い属性とかはあるよ?けど、こうすれば一発で完封できますー、みたいなお手頃な手段がないのよ。
だから、物理で殴り殺すしかない。
……殴り殺すんだよ?
トラックよりでかい竜を。馬鹿でかい刃物で。
「こんな修羅の国にいられるか!俺は国に帰らせてもらう!」と言って、多くの人がここから逃げ出した。
それでもまだ残っているこの辺境の人々は……。
総じてぶっ飛んでますねえ!!!
そんな、まともな人なら近寄らないこの辺境の地に、何故、アメリカの悪の組織である『ヒドラ』が来ているんだ……?
俺は、脳内にある『瞳』を使って、世界を俯瞰した。
すると……。
「ぎょへえええ?!!!」
思わず変な声出ちゃった!!!
いや、これ……、来ているのは『ヒドラ』だけじゃない!
『アンブレラ社』と『ブラックゴースト残党』、『Dr.ヘル一味』『ショッカー』『ギャラクター』辺りが手を組んでるううう?!!!
しかも、もう、サンプルにこの辺のモンスターを捕らえたりデータ取りしたりして撤退済み!
ど、どーしよ、これ。
まあ、大丈夫大丈夫。
旅人は狼狽ない。
とりあえず、ハンターズギルド本部に調査結果を報告だ。
「……ってなことがあってさ。大変だったよ」
「なるほど、分かりました。各組織へ注意事項を伝達しますね」
帰宅した俺は、大淀に、ハンターズギルドに提出した報告資料の写しを渡す。
こういうのって、放置すると大抵ろくでもないことになるからね。俺は詳しいんだ。
あらかじめ、各組織に注意喚起しておくだけでもだいぶ違うよ?
前に、日本でバイオハザードが起きたときも、俺達がいち早く動いていたから、被害は最小限で抑えられたでしょ?それとおんなじだよ。
とは言え……、仮に、こっちの社会で辺境のモンスターを放たれたら、管轄はどこになるのかな?
怪獣と見ればスーパーロボット、モンスターと見れば対魔忍やデビルサマナーが対処するだろうけど……。
ま、とりあえず、知り合いの全組織に情報を送っておけばいいかな。
旅人
オトモアイルー的なポジション。