防具作らなきゃ……。
どうもこんにちは。
いつもニコニコ貴方の隣へ這い寄る混沌、旅人です。
なんか、俺が実はニャルなんじゃ?みたいなことを言われた気がするが、実際俺はニャルに振り回されて死にかける探索者側であることをここに明記しておくよ。
変なのとのエンカウント率の高さは、多分ニャルのせいだと思う。
ドルチェアンドガバーナの香水のせいではなく、俺を悩ませるのは大抵ニャルとかそう言う奴らなんで……。
友達の上位者もたくさんいるけどさ。
あ、そう言えばこの前、ヤーナム在住の元狩人で現触手塊上位者の人がいるんだけど、彼からお歳暮届いたっけな。
中身は儀式素材詰め合わせセットだったから、白露型にあげたよ。
えっとね、本来なら今回は、各国のロボット研究者の方々との会合があったんだけどね、残念ながら急用が入ってドタキャンすることになっちゃったんだよね。
仕方ないから明石を派遣したんだけど、どうなることやら。
え?
俺に入った急用とは何か、だって?
そりゃもう決まってるでしょ。
『グオオオオオオッ!!!!』
「グワーーーッ!!!」
「旅人ーーーっ!!!」
怨虎竜マガイマガドの討伐だよ。
さて、なんだかよくわかんない紫色の炎っぽいのの爆発に巻き込まれて、ゴミ屑のように宙を舞う俺。
そんな俺の脳裏には、どうしてこうなったのかと言う経緯が、走馬灯のように駆け巡っていた……。
事の始まりは、俺が仕事もせずに鎮守府で遊んでいたあの日に遡る。
俺は、起床して身支度を整え、朝食を作り、食事を済ませ、艦娘に捕まっておっぱいを揉まされていた……。
「あの、愛宕?」
「あんっ♡もっと強くぅ♡」
「いや、あの……」
「そこぉ♡抓ってぇ♡」
愛宕が満足すると、愛宕から手紙を渡された。
「はい、お手紙♡」
「手紙……?あ、これは……」
ハンターズギルドからの手紙だった。
「ハンターズギルド?」
愛宕が可愛らしく首を傾げる。あざとい仕草だが、彼女はそれが嫌味にならない美貌の持ち主であった。
「そう、ハンターズギルド。モンスターを狩る『ハンター』の組合だよ」
「それって、前に言ってたハンター協会とは違うの?」
ハンター協会……、そっちは別口だな。
「ハンターズギルドはモンスターを狩る、『モンスターハンター』の組織だね。ハンター協会は、財宝ハンターや賞金首ハンターとか、色々いるよ」
「ハンターズギルドはモンスター狩りに特化したハンターで、ハンター協会は色々なハンターがいるってこと?」
「大体合ってる。付け加えるなら、ハンターズギルドは基本的に、金目的じゃなくて、自然環境との調和を第一に、モンスターの個体維持や生存域の確保の為にモンスターを狩る組織だね」
俺はそう言いながら、手紙の蜜蝋を剥がした。
「ふぅん……。提督は、ハンターズギルドにも、ハンター協会にも席があるの?」
「んー?そうだよー」
どっちのライセンスも持ってるぞー、っと。
内容は……、ふむ。
昔会った友人が、カムラの里のハンターになった、と。
一緒に狩りに行かないか?と。
そう言う話だった。
ふむふむ。
俺としては構わないんだが……。
会合とかあるし、どうしようか?
「……なんて書いてあるのかしら?」
俺の手元の手紙を覗き込む愛宕が呟いた。
「これは、まあ、友人に仕事を手伝って欲しいっていうお誘いだったよ」
「へえー、いってらっしゃい、提督!」
「え?行っていいの?」
「え?良いに決まってるじゃない!」
ふむ?
「だって、私達艦娘って、貴方の下僕なのよ?下僕がご主人様の行動にケチつける訳ないわよねえ?」
おっと?
愛宕の目からハイライトさんが……。
ハイライトさんの霊圧が、消えた……?
「提督の命令なら、どんな命令も聞くわ。靴を舐めたり、全裸で街を歩いたり、自分の手で自分のハラワタを引き摺り出せって言われても、ちゃんとやるわ。だって、私達は貴方が、提督が大好きだから!愛してるから!私達は、愛を証明するためならなんでもやるわよ!」
「お、あ、はい」
「提督がついて来いって言うなら、地獄の果てまでついていくわ。提督が待っていろって言うなら、十年でも百年でも千年でも待つわ。だから提督、好きにして良いのよ♡」
うん!
よし!
じゃあ、お言葉に甘えて、行ってこようかな!
そして、現在に至る訳ですね。
「がっ、あ」
爆風に煽られ、岩肌に叩きつけられる俺。
そのダメージで、腕がへし折れ、骨が飛び出てしまった。
また、弓もへし折れた。
相手は、爆発する紫の炎を身に纏う牙獣種のモンスター、マガイマガド。
かなりの強敵だ。
『グルル……』
全身の骨がぐちゃぐちゃになり、武器である弓もへし折れた俺を一瞥したマガイマガドは、最早俺は脅威たりえないと判断した。
俺から目を背けて、もう一人のハンター……、カムラの里のハンターの方へ、ギラついた視線を向けた。
「おおおっ!」
『ガアアアアアアアッ!!!!』
ハンターは、太刀を素早く抜刀して真っ直ぐに突っ込んでくるマガイマガドの腕を斬りつけると同時に、横に跳ねた。
上手いな。
回避と同時に攻撃を繰り出す、モンスターハンターの狩りの技だ。
「おあああああっ!!!!」
そして、間髪入れずに振り返り、兜割り。
『ガアッ?!!』
怯んだところに……。
「とっておきだ!」
気刃斬りだ。
再び、ハンターの太刀に赤いオーラが宿る。
マガイマガドも、よく見れば満身創痍。
自慢のツノは砕け、剣のような尻尾も割れている。
あと少しで倒せそうなんだが……。
『ガアアアアアアアッ!!!!』
怒りの声を上げて突進をするマガイマガド。
でもさ。
よく考えて欲しい。
「確実にトドメを刺してない敵から目を離しちゃいかんでしょ」
俺は、肉体を再生させて、アイテムボックスから取り出した新しい弓で、死角からマガイマガドの右眼を貫いた。
『ギ、ガアアアッ?!!!』
「今だ!やれーーーっ!!!」
「う、おおおおおおおおおっ!!!!」
「「乾杯!」」
カムラの里に帰還した俺達は、カムラの里の名産である清酒を飲み干した。
「いやあ、死んだかと思ったぞ」
「あれくらいじゃ死なないさ」
「えっ、内臓出てたよな?」
「よくある」
そんな話をしながら、酒を飲み交わす。
「ここの団子美味いよなー、お持ち帰りしていい?」
「良いんじゃないか?」
「うちの子にもお土産を持って帰らんとかわいそうだしなあ」
「あー、なんだっけ?都会の方で大組織作ったんだっけ?」
「そうそう。まあ、この辺境の方にはあんまり関係ないと思うよ?」
「そりゃそうだ。この辺はモンスターだらけだしな」
そうなんだよね。
一匹見たら三十匹いると思え、と称される『ヒドラ』も、こっちの方には全然いない。
ハンターズギルドにスパイもいない。
だって、ハンターズギルドの上役って言えば、元G級ハンターか、竜人だからな。入り込みようがないんだよ。
「……ところが、そうでもないかもしれんぞ?」
おっと……。
「里長?」
里長のフゲンさんだ。
「どういうことですか、里長さん?」
俺が訊ねた。
「うむ、ハンターズギルドの方からの注意文が来た。これを見ろ……」
文書の束を見せられる。
……ふむ、なるほど。
何らかの大規模な密猟組織がいる、と。
ギルドナイトが追っているが、何人か返り討ちにされた、ともある。
「何か、心当たりはあるか、旅人殿?」
「ん……、まあ、犯人は流石に分からないが、組織は分かった」
「ふむ、聞いても?」
俺は、文書の一部にある、『口から六本の触手が生えた赤い骸骨』のマークを前に出し、一言。
「『ヒドラ』だ」
愛宕
乳首が弱い。
旅人
頭が弱い。