旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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旅人の日常については、桐生さんみたいなもんだと思ってもらって結構です。


536話 旅人サブストーリー

テーテーテーテレッテー。

 

提督監視委員会です。

 

「実況は私、大淀と」

 

「解説の明石でやっていきたいと思います!」

 

はい。

 

「で、大淀さん。提督に付けた監視カメラ、盗聴器、発信器、監視衛星、ハエ型自律飛行式監視カメラなどから得られた映像と音声を、実況解説していくとのことですが?」

 

「はい!私達艦娘は、夫である提督を愛しています!なので、見守る義務があるのです!」

 

提督のことは全て把握しなくてはなりません。

 

提督の要求を受けた際に、スムーズに応答する為です。

 

提督が「世界を滅ぼせ」と命じるならば、即座に、全世界に対して核兵器を発射し、機動兵器を差し向け、私達が要人を直接抹殺しに行きますよ!

 

……まあ、提督はそんなことは仰りませんが。

 

提督は仏のようにお優しい、慈悲深きお方ですから。

 

提督はこの世界を愛していらっしゃいます。

 

ここで、「提督の愛する世界を壊せば、私のことだけを見て下さる」などと考えるのは三流の下僕です。

 

それは、浅ましくも、提督の愛を求める行為……。

 

奉仕者として、従僕として、提督という神の使徒として……、提督の愛を求めるなど三流も三流。下の下です。

 

私達は、無私にして無償の愛を、絶対にして全霊の忠誠を、提督に捧げる。その為だけに生きている存在なのですよ?

 

下僕が主人に何かを求めるなど……。

 

それに……。

 

私だけを見てもらいたい!などと、甘ったれたことを考えずとも、提督は私達一人一人のことをよく見て、思い量ってくださっていますからね。

 

 

 

では、早速、外出なさった提督の行動を追跡しましょうか!

 

提督は、ハンドルがついてるものは大抵何でも動かせる多芸なお方ですが、基本的には徒歩での行動を好まれます。

 

ドライブにもよく行かれるのですが、今日は散歩のようですね。

 

提督が外を出てしばらく歩くと……。

 

『『『『旅人さん!』』』』

 

複数の人に話しかけられましたね。

 

「大淀さん、これは?」

 

「男は敷居を跨げば七人の敵あり、とは言いますが、提督は外に出ると十個くらいサブストーリーが発生するんですよね」

 

『おっと、緊急性が高い用事の人は誰かな?』

 

提督が仰いました。

 

すると……。

 

『ヨシさんが、ホームレス狩りに!』

 

と、薄汚い格好の老人が言いました。

 

察するところ、ホームレスでしょうね。

 

『何だって?ヨシさんが?不味いな……。ゲンさん、場所は?』

 

『桜下通り裏の、いつもの場所じゃ!』

 

『分かった!すぐ行く!』

 

そして、提督は、裏通りに入って……。

 

『ひいい〜!やめとくれ〜!』

 

『うるせーよジジイ!』

 

『おらっ!社会のゴミを掃除してやってんだよ!』

 

『ホームレスなんて、いない方がいいっしょ!』

 

ホームレス狩りの現場に辿り着きました。

 

すると……。

 

『コラ、ガキ共。ヨシさんを離せ』

 

『は?何あんた?』

 

『キモ〜!正義感ってやつ?』

 

『ホームレスの味方とか!』

 

ふむふむ……。

 

私は別に、ホームレスに同情心はありませんから、なんとも思いませんが……。

 

『ヨシさんは好きでホームレスをやってるんじゃないさ。ヨシさんは元々工場員だったけど、事故で指を……』

 

ヨシさん、なる名前の、襲われているホームレスの前歴について話す提督。

 

ええとですね……、人間が維持できる友人関係の最大数は百五十人と言われているのはご存知ですか?

 

これをダンバー数と言います。

 

まあ、要するに、人間は百五十人以上の人と関係を持てるほど、他人を記憶できないんですね。

 

提督は、と言いますと……。

 

『……そして、リーマンショックの煽りを受けてしまって、職を失い、泣く泣くホームレスになった人なんだよ。決して、お前らが言う、働かないクズなんかじゃない。断じて違うんだ』

 

提督は、恐ろしいほどまでの数の人間を『記憶』なさっているのです。

 

そもそも、艦娘だけで百五十人くらいはいるでしょう。

 

提督は、艦娘の、身長や体重だけでなく、喋り方、癖、好物……、使っているシャンプーの銘柄まで、何でも覚えておいでです。

 

それだけではなく、こうして、話をしたホームレスの一人一人のことすら、しっかり覚えていらっしゃいます。

 

『は?意味わかんねー。何言ってんのお前?ホームレスはホームレスだろ?』

 

『……まあ、理解してくれないならそれでいいさ』

 

『で?やんのかよ?言っとくけど、俺ら三人、ボクシングやってるかんな?』

 

『そうなると、事実として……、お前らは俺の友人を侮辱したことになる訳だ』

 

そう、友人。

 

提督にとっては、自分と意思疎通ができる存在は、例え何であれ『自分と同じ人間』として扱います。

 

そして、『友人』となった人は、例えホームレスだろうと、力を貸します。

 

それが提督なのです。

 

『あ?何を……』

 

『遅い』

 

『が、がああっ?!!い、痛えよぉ!折れちまった……、腕があああ!!!』

 

『て、テメェ!!!』

 

『だから遅いって』

 

『ぎゃあああっ!!!』

 

『で、お前は?やるのか?』

 

『や、やりませえええん!!!ひいいいっ!!!』

 

 

 

『あ、ありがとう旅人さん!恩に着るよ!』

 

『気にすんなよヨシさん。ほら、これで湿布でも買ってくれ』

 

そう言って、襲われていたホームレスに二、三万円を渡す提督。

 

『こ、こんなにもらえないよ!』

 

『余ったらみんなで酒でも飲んでくれよ』

 

『だ、だけど……』

 

『じゃあこうしよう、酒は俺の経営している店で買っていってくれ。それなら、俺が自分の店に金を落とす訳だから、おかしくないだろ?』

 

『……ありがとう、旅人さん。今のご時世、俺達みたいなホームレスを友達と呼んでくれるのは、ホームレス以外じゃあんたくらいなもんだよ』

 

頭を下げるホームレスに、後ろ手で手を振りながら、歩き去る提督。

 

提督は、本心から、ホームレスに同情して……、とかそんなではないんですね。

 

本当に言葉通り、友人が襲われていたから助けただけ、なんですよ。

 

提督は、誰にでもこんな感じです。

 

ただ、美人な女性にはより一層甘いですが。

 

 

 

「……さて!ここまででどうですか、大淀さん?」

 

「そうですね、提督の交友関係がおかしいのは周知の事実ですが、街の人々とも交友を持っていらっしゃることがよく分かるワンシーンでしたね」

 

「はい!確かに、提督は幅広すぎる交友関係を持っていますよね。総理大臣とか大統領とかとも友人ですが、こうして、ホームレスなんかとも友人である、と」

 

「提督は、偉い偉くないのような、社会的な立場で人を評価しませんからね」

 

「ですねえ。そもそも、それを言えば、私達艦娘何で人外の化け物ですし」

 

「そんな提督だからこそ、私達艦娘に応えてくださったのかもしれませんね」

 

「ええ、本当に、私達は幸運でしたね。提督と縁を持てて、提督に愛してもらえるだなんて、最高の幸運です!」

 

「あ、提督に新しい動きがあるみたいですよ。見ていきましょう……」

 




大淀
狂信者。旅人が命じればマジで何でもやる。

明石
狂信者。表面上は普通の女の子だが、内面はドロドロ。

旅人
外に出る度にサブストーリーが発生する。オープンワールドゲームの主人公レベルでサブストーリーが発生する。

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