旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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作者の嫁艦は、木曾か古鷹です。

古鷹いいよね……。


533話 大天使フルタカエル

最近は本当に、仕事がない。

 

深海棲艦は、大攻勢の前には、力を蓄えるために一旦退くんですね。

 

今は退いてる状態なので、深海棲艦はしばらく出ません。

 

その状態を仕事がない!と言ってしまうのは、気の緩みなのでは?と言う意見も当然有りますが……。

 

私達、黒井鎮守府は、少数精鋭です。

 

なので、戦時体制には即座に移行できます。

 

戦艦だったあの頃のように、出撃の為に整備だとか船乗りだとか指揮権だとかなんだとか、そう言ったことは殆ど必要がないのです。

 

艤装を動かす為の資材は充分にストックしてあり、例え、百回全力戦闘をしても使い切れないほどに蓄えがあります。

 

ついでに言えば、ここの艦娘は全員、艤装を限界まで近代化改修しているので、必要な資材はそれぞれ異なるんですけどね。

 

私のような、肉弾戦タイプの艦娘は、そもそも燃料を必要としませんし……。

 

艤装を使う艦娘は、大体、搭載しているのは核融合エンジンとかなので、必要なのは重水素やヘリウム3とかですかね?

 

中には、アイスセカンドなんかを使う艦娘もいますし、それを言えば、『勇気』さえあればいくらでも動かせる……、なんて子もいます。

 

整備の問題も、個人で使う、人間用サイズの武装を個人で整備するだけで良い訳ですし、指揮権は、提督を頂点として、聯合艦隊旗艦は長門さんになっています。

 

まあ、何にせよ、私達は即座に戦時体制に移行できるので、普段から気を張る必要はあまりない訳ですね。

 

そもそも、私達にとって重要なのは、『いかに提督を喜ばせられるか?』であって、深海棲艦と戦うことじゃありませんしね。

 

提督から命じられた仕事だからやっているだけで、人命や、海の平和とか、そういうのは正直どうでも良いです。

 

私達は提督の猟犬であり、提督が「狩れ」と命じた獲物を狩るだけの存在です。

 

獲物を狩って、ご褒美に「お情け」をいただく為だけに生きているんですよ。

 

ああ、もちろん、全ての決定権は提督にありますが、自分で考えなくて良いという訳ではないんですよ?

 

例えば、提督のお世嗣を産むこととか、そう言ったこともしっかり考えないと、一人前の猟犬とは言えません。

 

さあ、今日も、提督のしもべとして、敵を狩りましょう!

 

そう思って私は、隣で寝ている加古を起こしました。

 

「加古、起きて、朝だよ」

 

「んんぅ……?ふぁ〜あ、おはよー古鷹……」

 

半分寝ている加古の手を引いて、顔を洗って歯を磨き、着替えて髪を整えて、と。

 

「ほらっ、加古ー!今日は私達が、提督の護衛役なんだよ!」

 

「そうだった!」

 

その一言でばっちり起きたは加古は、すごい速さで身支度を整えた。

 

 

 

そして、提督の私室へお迎えにあがります!

 

まずはノック。

 

そして声をお掛けします。

 

「提督、起きていらっしゃいますか?」

 

『ん、起きてるよ』

 

「入室してもよろしいですか?」

 

『良いよ』

 

そうして、扉を開く。

 

「おはよう、古鷹」

 

ああ……、ああ!

 

提督!

 

私の主人!神にも等しい、いや、神そのもの!

 

素敵、素敵、素敵!

 

白亜の御髪も、鋭利な視線も、彫りの深いお顔も、薄い唇も、がっしりした肩幅も、分厚い胸板も、引き締まった筋肉も全部!

 

全てが美しい!

 

「おいで、古鷹、加古」

 

「「はい!」」

 

提督が、まるで、よく懐いた犬にそうするかのように、両手を広げる。

 

ああ、ああ!

 

私に、私達に、飛び込んでこいと!

 

そう仰るのですね!

 

私も女ですから、本能では、提督の分厚い胸板にマーキングするかのように頬擦りして、朝から奉仕をしたく思っています。

 

けれど、猟犬としての理性の部分がそれを許しません。

 

主人と犬との間には、絶対的な上下関係があるのです。

 

提督が上、私達犬が下。これが決まりです。

 

ですから、本能のままに、提督にしゃぶりつくことなど、本来は許されません……。

 

けれど、そこを!

 

お優しい提督は、私達のその、浅ましい雌の本能を察して、甘えさせてくださるのです!

 

雌の匂いを感じ取られるなんて、犬として失格……、私達は駄犬ですね。

 

そんな駄犬を、提督は愛してくださる……。

 

こんなにも、こんなにも幸せなことが他にありますか?

 

「「提督っ!」」

 

私と加古は、提督の胸に飛び込みました。

 

「あらまー、かわいーねー、うりうり〜」

 

そう言って、提督は、私達を撫でてくださいました。

 

「こんな早い時間に来るってことは、朝からしたかったってことかな〜?」

 

そんなつもりは……!

 

ない、と言えば嘘になるかもしれません。

 

でも、違います!

 

たまたまなんです!

 

そう思って、私は強めに否定してしまう。

 

「ち、違います!」

 

「とぼけちゃってえ(マジキチスマイル)」

 

「わ、私達は、提督の犬なんです!犬が主人におねだりだなんて、浅ましい真似はできません!」

 

「ふーん?じゃあ……、俺が抱きたいんだけど、良いかな?」

 

ああ、すみません、提督。

 

気を遣わせてしまいましたね……。

 

「もちろんです!提督の為なら!」

 

………………

 

…………

 

……

 

 

 

朝から最高の時間を過ごした私達。

 

提督は、ベッドの上では、少々意地悪なお方です。

 

私がもう達してしまっているのに、私の弱いところをゴリゴリと……。

 

でも、そんなところも素敵なんですよね……!

 

 

 

軽くシャワーを浴びて、食堂へ。

 

提督は、鳳翔さん達と協力して、朝から数百人分の料理をお作りになります。

 

朝から二十種類を超えるメニューを考案し、作っていらっしゃいますね。

 

一度、負担になっていないかとお訊ねしたことがありますが、好きでやっているので苦ではないと仰られていました。

 

実際、提督に埋め込ませて頂いた『チップ』からは、あれだけの料理をしていても、バイタルの乱れはなく、非常にリラックスした信号を出していらっしゃいました。

 

恐らくは、本当に楽しんでいらっしゃるんでしょうね。

 

であれば、私から言うことはありません。

 

調理を一時間足らずで終わらせた提督と共に食事を摂って、午前の仕事に入ります。

 

と、言っても、提督には殆ど仕事は回ってきません。

 

雑事は全て、提督の忠実な猟犬たる艦娘がやります。

 

提督はただ、報告を聞いて、方針を立てていただくだけでよろしいのです。

 

もちろん、艦娘が、提督の利権を犯そうなどと言う考えは一切ありませんよ?

 

その証拠に、あらゆる事業や活動の『責任者』は艦娘ですが、利益は100%提督のものになります。

 

……まあ、その利益は、提督は殆ど受け取らず、ほぼ全てを艦娘名義の口座に入れたり、黒井鎮守府の運営資金として貯蓄なさっているのですが。

 

身持を崩さない、立派なお方であることは素晴らしいのですが……。

 

私としては、もっと好き勝手なさってもいいのに、と思いますね。

 

 

 

昼、昼食作りをなさった提督を護衛します。

 

午後の提督は、基本的に、外部組織との会合か、もしくは鎮守府の見回りをなさります。

 

今日は見回りですね。

 

見回りは、艦娘とのコミュニケーションが目的だそうです。

 

人数が多いので、充分なコミュニケーションが取れないことについて、提督は嘆いていらっしゃいました。

 

……なんてお優しいお方なのでしょうか。

 

提督の貴重なお時間を、私達艦娘に割いてくださる……。

 

本当に光栄なことです。

 

その後、夕食作り、入浴、晩酌の後、提督は床に入ります。

 

「おいでー」

 

「提督……♡」

 

寝る前にも、可愛がっていただけました。

 

 

 

幸せ……。

 

本当に幸せですね。

 

昔は考えられなかった、本当の幸福。

 

私達に愛を、本当の幸福を、全てを与えてくださった提督。

 

恩を返さなければならない。

 

提督の望みを叶え、全てを捧げ、敵を狩り……。

 

全霊で、無償の愛への対価を払わなければならない。

 

注がれた愛情の分だけ、忠誠を、忠義を返すのだ。

 




旅人
毎日、護衛だとかなんだとか言って、適当な艦娘がべったりついてくる。

古鷹
大天使。

加古
カコッテンダー。

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