なんかこれ……、凄く……、無味無臭のソシャゲって感じ。
ええと、どこまで話しましたっけ……?
ああ、そう。
テンプル騎士団の船が爆発したところでしたね。
当時の私達からすれば、それはもう困惑ものでした。
人間が艦娘に届きうる牙を持つこともそうですが、そもそも、世界の海を守るために召喚された私達が、守るべき人間に牙を剥かれたこと。
その事実は、本当に私達を驚かせました。
そうして私達は、ズタボロになりながら、大破した足柄を抱えて帰還しましたね。
「提督……、すみません!近海警備ですが……」
私達は、たとえどんな理由があろうと、任務に失敗し、大きなダメージを受けて帰還しました。
それは、言い訳のしようのないミスです。
なので、青い顔をしながら頭を下げました。
あれほどまで私達……、『艦娘』と言う得体の知れない化け物に、優しくしてくださる提督は、私達からすれば神様のようなもの。
そんな人に、簡単な初任務の失敗を報告するのは辛かったですね……。
敬愛する提督に怒られる怖さも当然ありましたが、そんなものよりも遥かに、失望させてしまったことに対する大きな大きな申し訳なさ、ですかね。
この時の私は、責任を取って腹を切れと言われたら喜んで切っていました。それくらいに申し訳なく、まさに合わせる顔もないと言ったような、そんな感情を持っていました。
ですが……、提督は。
「おいおい……!」
「ひっ……!申し訳ございません!申し訳ございません!」
地に頭を擦り付けて謝る私を立たせて、強く抱きしめてくださいましたね。
「ごめんな、痛かっただろうにな……!早くドックへ!」
「し、しかし、私達は任務に失敗を」
「そんなことはどうでも良い!任務なんかより、君達のことの方が大事だ!」
いつも笑っている提督は、この時は、真剣な顔をしてこう言ってくださいましたね。
……え?覚えていらっしゃらないですか?
ふふ、それでも、私達は覚えていますよ。
「足柄、立てないか?俺が抱えていくからな。ああ、こんなに怪我をして……、かわいそうに」
「あ……、てい、とく……」
「良いんだ、喋るのも辛いだろう?何も心配いらない。今は、傷を治すことだけ考えてね。とりあえず、応急処置だけどポーションかけとくね」
そう言って、提督は足柄を抱えて、私達を入渠させてくださいましたね。
確かに、腕が千切れ飛んだ足柄は入渠が必要かもしれませんが、比較的軽傷の私達まで、大量の資材を使って入渠させてくださいましたね。
この頃の鎮守府はまだ、資材も多くはなかったのに。
艦娘は、器は肉である以上、骨折や切り傷くらいなら、人間と同じように……、いえ、人間以上の速度で治るんですよ?
それなのに、少ない資材を使って入渠させてくださいましたね。
それだけじゃなく、ドックに行くまで連れ添い、足柄を抱えて、励ましの言葉をくださいましたよね。
「大丈夫だ、失敗なんかじゃないからな。不測の事態だから、指示した俺が悪いんだ」
「そ、そんな!提督は何も悪くありません!」
「いや、テンプル騎士団が相手なら、俺の問題だ。艦娘にまで手出ししてくると読めなかった、指揮官である俺が悪かった。ごめんな、女の肌に傷を作るだなんて……」
「いえ、本当に提督は悪くないんです!私達が無能で!どんな罰でも受けますから!」
「良いんだ、君達は本当に良く頑張ってくれた。罰したりしない。むしろ、良く生きて帰ってきてくれたと称賛するよ。ありがとう……」
提督は、みんなにこのような態度をとりますよね?
いつも、自分は当然のことをしたまでだ、だとかおっしゃいますが、こんなことをされたら、艦娘は……、兵士は、女は。
あらゆる意味で指揮官を敬愛するようになるんですよ。
失敗を許してくださる寛大さに敬意を持ちましたし、傷を労ってくれる優しさに愛情を持ちました。
こんなことをされると、兵士としても、女としても惚れてしまうんですよ。
そうして、私達が傷を癒したあと、三日間の休日までくださいましたよね。
当時はまだ、鎮守府はシフト制で、休みを取るのは難しかったのに、スケジュールを調整して休みをくださいましたよね。
忙しい中に見舞いだと言って、手作りの菓子類を持参して部屋に来てくださいましたよね。
この見舞いの時も、私達に労いの言葉をかけてくださいましたね。
私達は覚えていますよ。
その後に……、私達は、会議室で改めて報告をしました。
テンプル騎士団を名乗る謎の集団に騙し討ちされたことについて。
その時、提督の隣には、一人のヤクザがいましたね。
そう、『タカクラキヨシ』……、『アサシン教団』の日本支部に所属するアサシンです。
そこで私達は、『アサシン教団』と『テンプル騎士団』についての話を聞きました……。
紀元前くらいの大昔から存在している暗殺組織で、超古代文明の遺した危険な遺物の悪用を防ぎ、人間の自由意志を尊重して、圧政者などを暗殺する集団……、それがアサシン教団。
一方で、超古代文明の遺物を悪用して、社会の全てを管理しようとする集団、それをテンプル騎士団と言う。
正直な話、この時は、何がなんだか良くわかりませんでした。
でも、ただ一つ分かったこと。
それは……。
「テンプル騎士団、は……、提督を殺そうとしている?」
「ああ、そうだ」
それは、テンプル騎士団は、敬愛する提督の敵だと言うこと。
例え、艦娘の使命が、深海棲艦と戦い人々を守ることだったとしても……、それでも、私達は。
人間が敵であっても、提督を傷つけるものは許してはおけない……!
私達は、強くそう思いました。
妙高型
この件を機に好感度が爆上がり。
旅人
敵が多過ぎる。