旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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523話 妙高過去語り 前編

「疑問なんだけどさ」

 

俺は、サラミをかじりながら訊ねた。

 

あ、サラミに塩は乗せてません。

 

死の三点食いとかやりません。食べ物で遊ぶな。

 

「はい?」

 

妙高がこちらを向いた。

 

「……なんで君ら、アサシンになってんの?」

 

「今更ですか?」

 

「いや、そうだけどさ。気になって」

 

「理由は……、もちろん、提督のためですよ」

 

そうなの。

 

「暗殺して何で俺のためになるの?」

 

「黒井鎮守府を裏から害そうとしている『結社』を優先的に始末しています」

 

ほへー、なるほどー。

 

「『教団』とは、『結社』の情報提供の代わりに、『教団』での活動の支援や任務を受けています」

 

ふむふむ。

 

「妙高の話、もっと聞きたいな。今日はたくさんお話ししようか」

 

「はいっ♡なんでも話しますっ♡」

 

 

 

×××××××××××××××

 

そうですね……。

 

どこからお話しましょうか……。

 

まず、事の始まりは、黒井鎮守府で召喚された私達妙高型が、初期訓練を終えて近海の警備活動を始めた頃の話でしょうか?

 

「んーっ!キラキラの青い海!やっぱり海はサイコーねっ!」

 

足柄が伸びをしてから大声で言いました。

 

「足柄!真面目にやりなさい!」

 

「ヒェッ、妙高姉さん……。わ、分かったわよ」

 

はしゃぐ足柄を咎めながら、羽黒と那智も一緒に、四人で近海の警備活動をしていたんです。

 

そんな時……。

 

「んん?妙高姉さん、漁船だ」

 

那智が何かを見つけました。

 

それは、大型の漁船で……、不思議なことに、船名が書かれていない船でした。

 

「もしもし、提督?」

 

私はすぐに、通信機で提督に確認をとりました。しかし、私の記憶では、この海域に漁船が来るなどという報告は受けていませんでした。

 

提督に、その不審艦の特徴を伝えると……。

 

『んー?おかしいな、漁船?そんな報告は受けてないんだけど……?その船、停止させて船長に話を聞いてみてくれる?』

 

とのことなので、その通りに行動しました。

 

「そこの漁船!止まりなさい!現在、この海域は封鎖されています!」

 

私は、そうやって停船させました。

 

すると……。

 

「分かりました、船長が詳しい話があるから船内に来て欲しいと……」

 

と、その不審艦の船員に言われました。

 

この時はまだ、私達艦娘を罠に嵌めてどうするのか?そんな価値はないだろう、などと思っていた私達は、その言葉を疑いもせずに、普通に船内に入ってしまいました。

 

船内は、今考えると、漁船にしては不自然なほどに整理されていましたね。

 

怪しいのですが、当時の私達は召喚されたばかりで、人を疑うということができませんでした。

 

そして、船長のいるブリッジに連れて行かれると……。

 

「え……?騎士……?」

 

何故か、漁船の中に騎士がいました。

 

それも、赤い十字架の……。

 

となると……。

 

「テンプル騎士団……?」

 

私がそう呟きました。

 

すると、騎士の男が口を開きました。

 

「やはり、知っているのだな。あの、『マオ・シンダイ』の手先か!!!」

 

そう言って、ロングソードを抜きました。

 

「え……?!ま、待ってください、なんの話ですか?!」

 

「黙れ、貴様らにはここで死んでもらう!」

 

その瞬間、周囲の船員達が、隠し持っていたハンドガンを乱射してきました。

 

狭い船室では回避できず……、何発か食らってしまいました。

 

「ぐっ?!こ、この弾丸は……?!」

 

艦娘には、銃弾なんてものは効かないはず。

 

それなのに、私達はダメージを受けていたんです。

 

つまり、恐らくは特殊弾頭……。

 

不味い、このままじゃ……!

 

そんな時!

 

「おおおらっ!!!!」

 

「足柄?!」

 

足柄は、艤装である丸斧を、思い切り近くの船員に投げつけました!

 

「が、あ……」

 

顔面に突き刺さった斧。船員の頭蓋がぱくりと割れて、内側から髄液と、うどん玉のような脳味噌が溢れ、床に灰色に染めました。

 

「姉さん!しゃんとして!殺さなきゃ、殺されるよ!」

 

「え……、ええ!妙高型!船員は皆殺しよ!騎士は捕らえて!」

 

「「「はい!」」」

 

私は叫びました。

 

それを聞いた船員達は、即座にリロードして、発砲してきます。

 

「あああああっ!!!!」

 

「足柄っ?!」

 

足柄は、私達の盾となり、銃弾を全身に受けました。

 

なんて無茶なことを……!

 

「は、ははは、はははははは!!!効かないわねぇ!生っちょろいのよ!!!」

 

「くっ?!」「ば、化け物か?!」「うう……!」

 

再び、リロードしようとする船員。

 

しかし、私達は、足柄の作ってくれた隙を逃しませんでした。

 

まず私は、二本のカトラスを騎士に叩きつけ、動きを止めた。

 

それと同時に、那智は左側の、羽黒は右側の船員をなぎ倒した。

 

艦娘の力で剣を振り回せば、人間なんて脆い生き物は簡単に『ばらばら』になる。

 

ねじ切れた手足が宙を舞い、裂けた腹から血色と肉色が混ざる臓物が飛び散る。

 

「ぬううっ?!貴様らあっ!!!同志の仇だぁ!!!」

 

「くうっ?!!」

 

騎士は、ロングソードを振り回して、私に斬りかかった。

 

人間とはとても思えない重い一撃!

 

「はあああっ!!!」

 

とは言え、こっちは四人!

 

囲んでしまえば……!

 

「貴様らっ……、卑怯な!」

 

「罠を張って大人数で囲んできた貴様が『卑怯な』だと?!どの口が!」

 

那智が叫び、ロングソードで、騎士の腕を斬り飛ばした。

 

「羽黒っ!麻痺薬を!」

 

「は、はいっ!」

 

羽黒に指示を出した、その時……。

 

「ふ、ははは!ははははは!『叡智の父の導きがあらんことを』!!!」

 

騎士は叫んで……。

 

「姉さん!爆弾だ!」

 

爆弾の火薬の匂いを感じ取った那智も叫ぶ。

 

「退避ーーーッ!!!」

 

私達が船を脱出したその時に……。

 

爆音が轟き、船は木っ端微塵になりました……。

 




旅人
結社にテロりまくって目の敵にされている。

妙高
アサシン型。

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