「疑問なんだけどさ」
俺は、サラミをかじりながら訊ねた。
あ、サラミに塩は乗せてません。
死の三点食いとかやりません。食べ物で遊ぶな。
「はい?」
妙高がこちらを向いた。
「……なんで君ら、アサシンになってんの?」
「今更ですか?」
「いや、そうだけどさ。気になって」
「理由は……、もちろん、提督のためですよ」
そうなの。
「暗殺して何で俺のためになるの?」
「黒井鎮守府を裏から害そうとしている『結社』を優先的に始末しています」
ほへー、なるほどー。
「『教団』とは、『結社』の情報提供の代わりに、『教団』での活動の支援や任務を受けています」
ふむふむ。
「妙高の話、もっと聞きたいな。今日はたくさんお話ししようか」
「はいっ♡なんでも話しますっ♡」
×××××××××××××××
そうですね……。
どこからお話しましょうか……。
まず、事の始まりは、黒井鎮守府で召喚された私達妙高型が、初期訓練を終えて近海の警備活動を始めた頃の話でしょうか?
「んーっ!キラキラの青い海!やっぱり海はサイコーねっ!」
足柄が伸びをしてから大声で言いました。
「足柄!真面目にやりなさい!」
「ヒェッ、妙高姉さん……。わ、分かったわよ」
はしゃぐ足柄を咎めながら、羽黒と那智も一緒に、四人で近海の警備活動をしていたんです。
そんな時……。
「んん?妙高姉さん、漁船だ」
那智が何かを見つけました。
それは、大型の漁船で……、不思議なことに、船名が書かれていない船でした。
「もしもし、提督?」
私はすぐに、通信機で提督に確認をとりました。しかし、私の記憶では、この海域に漁船が来るなどという報告は受けていませんでした。
提督に、その不審艦の特徴を伝えると……。
『んー?おかしいな、漁船?そんな報告は受けてないんだけど……?その船、停止させて船長に話を聞いてみてくれる?』
とのことなので、その通りに行動しました。
「そこの漁船!止まりなさい!現在、この海域は封鎖されています!」
私は、そうやって停船させました。
すると……。
「分かりました、船長が詳しい話があるから船内に来て欲しいと……」
と、その不審艦の船員に言われました。
この時はまだ、私達艦娘を罠に嵌めてどうするのか?そんな価値はないだろう、などと思っていた私達は、その言葉を疑いもせずに、普通に船内に入ってしまいました。
船内は、今考えると、漁船にしては不自然なほどに整理されていましたね。
怪しいのですが、当時の私達は召喚されたばかりで、人を疑うということができませんでした。
そして、船長のいるブリッジに連れて行かれると……。
「え……?騎士……?」
何故か、漁船の中に騎士がいました。
それも、赤い十字架の……。
となると……。
「テンプル騎士団……?」
私がそう呟きました。
すると、騎士の男が口を開きました。
「やはり、知っているのだな。あの、『マオ・シンダイ』の手先か!!!」
そう言って、ロングソードを抜きました。
「え……?!ま、待ってください、なんの話ですか?!」
「黙れ、貴様らにはここで死んでもらう!」
その瞬間、周囲の船員達が、隠し持っていたハンドガンを乱射してきました。
狭い船室では回避できず……、何発か食らってしまいました。
「ぐっ?!こ、この弾丸は……?!」
艦娘には、銃弾なんてものは効かないはず。
それなのに、私達はダメージを受けていたんです。
つまり、恐らくは特殊弾頭……。
不味い、このままじゃ……!
そんな時!
「おおおらっ!!!!」
「足柄?!」
足柄は、艤装である丸斧を、思い切り近くの船員に投げつけました!
「が、あ……」
顔面に突き刺さった斧。船員の頭蓋がぱくりと割れて、内側から髄液と、うどん玉のような脳味噌が溢れ、床に灰色に染めました。
「姉さん!しゃんとして!殺さなきゃ、殺されるよ!」
「え……、ええ!妙高型!船員は皆殺しよ!騎士は捕らえて!」
「「「はい!」」」
私は叫びました。
それを聞いた船員達は、即座にリロードして、発砲してきます。
「あああああっ!!!!」
「足柄っ?!」
足柄は、私達の盾となり、銃弾を全身に受けました。
なんて無茶なことを……!
「は、ははは、はははははは!!!効かないわねぇ!生っちょろいのよ!!!」
「くっ?!」「ば、化け物か?!」「うう……!」
再び、リロードしようとする船員。
しかし、私達は、足柄の作ってくれた隙を逃しませんでした。
まず私は、二本のカトラスを騎士に叩きつけ、動きを止めた。
それと同時に、那智は左側の、羽黒は右側の船員をなぎ倒した。
艦娘の力で剣を振り回せば、人間なんて脆い生き物は簡単に『ばらばら』になる。
ねじ切れた手足が宙を舞い、裂けた腹から血色と肉色が混ざる臓物が飛び散る。
「ぬううっ?!貴様らあっ!!!同志の仇だぁ!!!」
「くうっ?!!」
騎士は、ロングソードを振り回して、私に斬りかかった。
人間とはとても思えない重い一撃!
「はあああっ!!!」
とは言え、こっちは四人!
囲んでしまえば……!
「貴様らっ……、卑怯な!」
「罠を張って大人数で囲んできた貴様が『卑怯な』だと?!どの口が!」
那智が叫び、ロングソードで、騎士の腕を斬り飛ばした。
「羽黒っ!麻痺薬を!」
「は、はいっ!」
羽黒に指示を出した、その時……。
「ふ、ははは!ははははは!『叡智の父の導きがあらんことを』!!!」
騎士は叫んで……。
「姉さん!爆弾だ!」
爆弾の火薬の匂いを感じ取った那智も叫ぶ。
「退避ーーーッ!!!」
私達が船を脱出したその時に……。
爆音が轟き、船は木っ端微塵になりました……。
旅人
結社にテロりまくって目の敵にされている。
妙高
アサシン型。