旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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あーーー。

全然ダメ。

調子出ないなー。

やっぱり、天気悪いとねー。


516話 南太平洋大乱闘! 後編

「わはははは!やれやれー!凄いぞー!カッコいいぞー!」

 

メギドラオンがボカスカ爆発して、深海棲艦の肉片が飛び散る。

 

もう本当に物凄いレベルの大虐殺。

 

神州丸もよくやるわ。

 

他にも援護役の艦娘も十数人いるし、そのお陰で雑魚は殆ど散らしたから、後は南太平洋空母棲姫と南方戦艦新棲姫のボス二体だ。

 

『オノレ!ヤッテクレタナ、黒井鎮守府!』

 

「前衛、退け!扶桑型を出す!」

 

俺が叫んだ。

 

「「「「了解!退避ーーーッ!!!」」」」

 

前衛の艦娘が退避する。

 

そして……。

 

『何ヲ……?』

 

「行くわよ、山城」

 

「はい、姉様」

 

 

 

×××××××××××××××

 

 

 

生まれた時から、私はなんとなく、不幸であった。

 

音成鎮守府のドックにて、海原提督に迎えられた時も、滑って転んで怪我をした。

 

初めての出撃では、命中弾なし、駆逐艦の魚雷で大破という大敗を喫した。

 

初めての給料は全額落として無くした。

 

それは、私だけじゃなく、妹の山城もだった。

 

なんとなく、運が悪い姉妹だった。

 

そして、音成鎮守府は黒井鎮守府に編入された(公式記録ではされていないのだが、そういう事になった。旅人さんがそうした)のは幸運だった。

 

海原提督のような、優しい善人を提督とできたのは、人生でも一二を争う幸運だったと思う。

 

そして、間違いなく一番の幸運は、旅人さんの下で働ける事だった。

 

私如きには、もらい過ぎな幸運だった。

 

だから、私達は、その分を働いて返そうと、どんどん鍛えた。

 

しかし、おかしい。

 

鍛えれば鍛えるほど、『不幸』が加速していった。

 

初めのうちは、主砲が中々当たらないだとか、相手の雷撃に直撃してしまうだとか、その程度のものだった。

 

それがやがて、もっと狂ってくる。

 

砲塔が暴発して爆発した。

 

訓練場の流れ弾が直撃して手足が弾け飛んだ。

 

ここ一番という時に足を滑らせて内臓が潰れた。

 

『不幸』は、私達を殺そうとしてきた。

 

その度に、大切な仲間や、愛する旅人さんが巻き込まれた。

 

……私達は、『不幸』に負けないように、もっと鍛えた。

 

それでも、『不幸』はどんどん加速した。

 

ある時は、ピンポイントに私達がいる地点にミサイルや隕石が落ちてきた。

 

またある時は、出先で魔王が降臨して戦う羽目になった。

 

あまりにも不幸なので、幸運を得られるマジックアイテムを集めて、それを拘束具のように全身に取り付けた。

 

それで初めて、『常識の範囲内で不幸な人』の枠の中に収まることができた。

 

拘束具さえあれば、私達は人並みの幸せを感じられた。

 

愛する人に触れられて、まともに外を出歩けた。

 

けど、ある日、思った。

 

私達は、こうして『不幸』であること以外に、何の力もないのではないか、と。

 

周りの皆さんは強かった。

 

神秘の力たる魔法を使う。

 

圧倒的な腕力を使う。

 

最新の技術を活用した兵器を使う。

 

私達は?

 

私達は、何の役に立っているのだろうか?

 

そう考えた時、私達の掌には何もない事に気がついた。

 

それに気がついて、努力をした。

 

けど、びっくりするくらいに、私達には何の才能もなかった。

 

魔法もからきし、身体能力は並以下、技能技術も身に付かず。

 

「結局、私達には、私達が『不幸である』という事実それだけしかなかったのよ」

 

『何ノ話ダ……?』

 

「だから……、だから」

 

 

 

『不幸』と、地獄まで相乗りしてやる事にしたわ。

 

 

 

私と山城は、艤装たる『拘束具』を外す。

 

その瞬間。

 

漏れ出す……、『不幸』が。

 

忌むべき『不幸』が!

 

『何ダ……、ソレハ!ソレハ何ダ?!!!』

 

海が腐りゆく。

 

ボコボコと、気泡を弾けさせ。

 

魚達が死に、浮かび上がる。

 

死骸は高速で腐敗し、生臭い腐臭を撒き散らす。

 

凝縮された『不幸』……、『瘴気』が私達に纏わり付き、私達の身体を蝕む。

 

しかし、このくらいでは何ともない。訓練の賜物だ。

 

『ア、アア……!!!』

 

《ドウシマシタカ?》

 

自分の声とは思えないほどに暗く淀んだ声だ。

 

『瘴気』を纏う私達の声は、『呪い』となる。

 

相手の名を呼ぶだけで、衰老病死を齎すだろう。声を聞くだけでも、並の存在なら即死を免れない。

 

『ク、クルナ、クルナ、ヤメロオオオオオッ!!!!』

 

私の腕は『鬼神』の腕だ。

 

一度触れれば……。

 

『触ルナ、ヤメロ、熱イ、寒イ……、痛イ……、痛イ、痛イ、苦シイ、苦シイ!!!アアアアアアアッ!!!』

 

皮が爛れ、肉が腐り、骨が焼ける。

 

『ヤメロ、ヤメテクレ、降参スル、モウヤメテクレ!!!ギャアアアアアアッ!!!!』

 

 

 

《ナントモ、ナサケナイ。シンカイセイカントハ、コノテイドノモノデスカ……》

 




扶桑・山城
艦娘とは、皆、神霊として生まれるが、黒井鎮守府で生活すると、何故か質が変化する。扶桑型は厄病神としての力を持っている。

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