旅人の一ヶ月1万円生活!
「えー、黒井鎮守府のYouTubeチャンネルに、面白い動画を投稿する為に、俺と艦娘の一ヶ月1万円生活をやろうと思う。まず、お手本がわりに俺が一ヶ月を1万円で生活してみせるから、よーく見ておけよ!」
「はい!」
一日目……。
『まず、増やすか』
そう言って、合法のカジノへ乗り込んで、1万円を100万円に増やした。
「え?ちょっ、ちょっと待ってください。増やすのってレギュレーション違反じゃありませんか?」
と青葉。
「そんなこと、どこにも書かれてないだろ?」
「いや、増やすのアリだと、霧島さんや白露型、夕雲型の一人勝ちになりますよ?」
ふーん?
「じゃあ、増やすのはナシってことで」
二日目。
「節約する為に森で暮らそう」
ロケ用のマンションのブレーカーを落として、肥沃な北海道の森を目指して歩き出した。
「い、いや、だから……、レギュレーション違反では?」
「でも、浜◯も魚とりに海行ってたじゃん」
「森はアウトでは?」
三日目、北海道の森へ到着。
「しゃあ!」
その辺の木々を切って成形し、家を建てる。
家と言っても、小さなあばら屋だ。
原始人レベル。
「えっ、これもう、プリミティブ◯クノロジーじゃないですか!原住民兄貴じゃないですか!」
「良いだろ?」
「ダメです」
「ああああああ」
四日目、狩り。
磨製石器を取り付けた投槍で鹿を仕留めて、黒曜石のナイフで解体。
鹿肉と野草を焼いて食べる。
余った鹿肉は、干し肉にする。
塩は、海水から魔法で抽出した。
「いや、魔法は駄目でしょう?!」
「え?そうかな?」
「魔法ありならヌルゲーになっちゃうじゃないですか!」
そうかな……?そうかも……。
五日目、魚とり。
『はあっ!』
勢いよく海に潜り、手製のモリで魚を集めた。
黒曜石のナイフで綺麗に魚をさばいて、一部を干して、一部を土器に入れて魚醤にした。
なお、魚醤は魔法で発酵させられて、一日でできる。
「人間社会での生活より、野生での生活の方が手慣れてるの、本気で怖いんですが……」
「いや……、そりゃあ、どちらかと言えば、社会より森で生きる方が楽だしなあ」
「現代人のセリフじゃないですよねそれ……」
飛んで八日目、熊との戦い。
『ガアアアアアアアッ!!!!!』
『うおおおおおおっ!!!!』
三十分に渡る死闘の末、熊を仕留める。
熊肉は、山芋と山菜と共に、昆布出汁と魚醤で煮込まれてスープにした。
余った肉や肝は乾燥させておく。
「おもむろにゴールデンカムイになるのやめてもらえます????」
「一時期、アイヌの里に厄介になってた時があるんだけどさ、アイヌって、子熊を育ててから、大人になったら殺して食うのよね。それをもらったことあるんだけど、アレは美味いぞ〜?家畜は、食べている餌で肉の質や味が変わるからな!しっかり育てられた熊は美味い!」
「提督、私は提督のことが本気で大好きで愛しているので、できればこんなこと言いたくないんですが……、貴方、頭おかしいですよね?」
十日目、森から出て、熊の肝や干し魚などを地元民に渡す。
それと交換で、野菜や調味料、卵などをもらう。
「森の民ロールプレイやめてもらえません????エルフか何かですか貴方は」
「こんなムキムキのエルフは嫌だなあ……」
「でも、やってることは完全に森の民ですよね」
「まあ多少はね?」
十二日目、木霊と触れ合いながら料理を作る。
狩ったウサギをさばいて細かく切り、米を土器で炊いて、卵と魚醤、玉ねぎを使って、親子丼もどきを作る。
木霊達にも、干し肉を分けてやる。
「えっ、えっ、ちょ、ちょっと待ってください……。アレ、何ですか?」
「ん?ああ、木霊だよ。古い森によくいる、妖精さんみたいなもんだよ」
「えっ、は?そんなのいるんですか?」
「いるよ」
「ま、まあ、それは良いとして、何で馴染んじゃってるんですか?」
「よくあるよくある」
「ええー……」
十三日目、森に現れた魔化魍から、木霊達を守る為に戦う。
『キシャアアアアッ!!!!!』
『うおおおおっ!!!!』
『『『『がんばえー!』』』』
一時間に渡る死闘の末、魔化魍を退治した。
しかし、傷は深く、丸一日の休息が必要になった。
「いや……、だから、突然に番組が変わるの、やめてもらえませんか????」
「よくあるよくある」
十五日目、魔化魍に壊された小屋の修復。
木霊達が手伝ってくれたおかげで、見事なツリーハウスになった。
「幻想的ですね」
「まれによく見る展開だな」
十八日目、森の守り神と邂逅。
『あなたがこの森の神か』
『………………』
『そうか……、わかった。あと十二回、陽が沈むまではこの森に滞在する予定だったが、そうとあれば力を貸そう』
『………………!』
『いや、礼はいらない。短い間とは言え、森に住ませてもらった礼だ』
守り神は、鹿の角を生やした、白い衣を纏う白髪の美女の姿だった。
「だから……、さっきから番組が乱気流のように変わってるんですよね?」
「これくらいよくあるだろ?森に住んでれば、守り神と会うだろ、普通は」
「普通の人間は森に住みませんし、守り神にも会わないんですよォ……!!!」
二十日目、とろろご飯を食べる。
二十一日目、味噌鍋を食べる。
二十二日目、山菜かゆと川魚を食べる。
二十三日目、木霊と一緒にポトフを食べる。
二十四日目、木霊と森の守り神と一緒に山菜うどんを食べる。
「何やってんですか」
「いや、来るべき決戦に備えて、体力をつけてるんだよ」
二十五日目、決戦に向けた準備を始める。
投槍、弓矢を用意して、人里から貰ってきた紙に、自らの血液を使って魔法陣を描く。
また、周辺に大量のトラップを仕掛ける。
「一体何が始まるんです?」
「第三次世界大戦だ」
二十七日目、狂える荒神との決戦。
『オ、オ、ロ、ロロロロロロロロロ……!!!!』
『うおおおおっ!!!!』
『………………!!!!』
『『『『がんばえー!』』』』
腐った鹿のような姿の荒神を、トラップと魔法で足止めして、身を挺して森の守り神の盾になり、力の限り戦った。
丸一日に及ぶ戦いの果てに、荒神を封印することができた。
「だから……、だから本当にもう、何やってんですか????」
「え?何って……、森の守り神と一緒に、荒神から森を守っただけだが?(なろう)」
「何ですかそれ?外出たらすぐトラブル起こすのやめてもらえません????」
三十日目、最終日。
森の守り神と、木霊達と共に戦勝を祝って宴会。
「何ですかね、これは」
「いや、しょうがないだろ?守り神様、美人だったし。森に住ませて貰った恩を返したかったし」
結論。
「お金を増やす、魔法を使うの二つはレギュレーション違反ですね」
「そうか……」
「でも、これはこれでめちゃくちゃ面白い映像なので、アップします」
「やったぜ」
森の守り神
旅人が男だったので、わざと女の姿になってお願いしてきた策士。
旅人
まんまと森の守り神の策にハマり……、という気持ちもあったが、森への恩返しがしたいという気持ちもあった。はりつめたーゆみをー。