次も、その次もストーリー(?)が進む、と言うか、何と言うか。真面目な話は嫌いなんだがなぁ?
……「Admiral、ユー、日本語、上手くなった?……本当?嬉しい!」
……「あら、提督、今日は和食なの?……このニクジャガ、とか言うの、中々美味しいわね」
……「Admiral?お酒?そうね、今日はスロー・ジンが飲みたいわ……。うん、美味しいわね、やっぱり。Admiralもどうかしら?」
……「おお、Admiralどうした?私に何か用か?……ふむ、今日の昼食か。……ハンバーグはどうだろうか。うむ、そうか。……その、良ければ、クラップフェンを作ってもらえるか?そ、そうか、ありがとう」
「ぜぇえりゃあ!!!!」
「うおっと!……今日は一段と気合いが入っているでありますな、長門殿!!」
「……む、すまない、怪我でもしたか?」
ここは、鎮守府の体育館に併設された道場。目の前に立つのは、組手に付き合ってくれているあきつ丸だ。今はミットを持ってくれている。
「はは、大丈夫でありますよ。……ですが、何か悩み事があるご様子。……話くらいなら聞くでありますよ、長門殿」
「……うむ、それがな……」
「……はあ、要は、海外艦達が提督と近過ぎる、と?」
「まあ、そうだな」
組手を切り上げた私とあきつ丸は、シャワーを浴び、休憩室の和室でくつろぎながら、言葉を交わす。
「その、それは、なんというか……」
難しそうな顔をするあきつ丸。
「はは、嫉妬だな。笑ってくれて構わん」
「い、いえ、笑うなどと……。自分自身は、あまり気にしていませんが、普通ならば気になるでしょうね、あれは」
……そう、最近の提督は、海外艦達に付きっ切りなのだ。いつも、足が不自由なウォースパイトと、日本語が苦手なドイツの艦娘達と共にいる。
「む、あきつ丸はあまり気にならないのか?」
「ええ、自分は、あのお方に仕えられればそれで充分でありますから」
「そうなのか?……あきつ丸は、私と違って可愛らしいだろう?提督から寵愛を受けようとは思わんのか?」
すると、あきつ丸は、白い頬を赤らめ、こう言った。
「……その、それは、この鎮守府の艦娘ならば誰でも思うことでありましょう。それよりも、何故こんな事を?色恋の話など、らしくないでありますな」
「いや、それはな。……同室の、陸奥がなぁ……」
「……あー、成る程」
……そう、陸奥は嫉妬深いのだ。この私でも、若干の嫉妬を覚えるくらいのことだ。陸奥がどうなるか、簡単に想像がつく。
「陸奥殿、出撃の度に返り血塗れでありますからなぁ……。敵の屍に執拗に拳を振るったのでありましょう。きっと、今日も血塗れで帰って来るのでありましょうなー」
陸奥は、私と違い、長門型としての腕力だけでなく、技巧を持ち合わせている。普段は、その技巧を以って、深海棲艦を華麗に討ち亡ぼすが、今はただ、怒りのままに暴れているような印象だ。
だが、幸いというかなんというか、私達はそこらの深海棲艦にやられる程弱くはない。力任せに殴るだけでも充分すぎる戦力だ。……だからこそ、前までとは打って変わって、凄惨な戦いをする陸奥に文句は言えない。
「……陸奥殿だけでなく、最近、艦隊の一部がとても不機嫌なのも、やはり?」
「だろうなぁ……」
夕立は、金の髪が血色に染まるまで戦い、深海棲艦の腹に手を突っ込み、臓腑を引き摺り出して殺す。その相棒の時雨もまた、酷く惨憺たる殺し方をする。あれではまるで、戦いではなく狩りだ。
大井は、自慢の魚雷を使わずに、いたぶるかのように深海棲艦を蹴り殺し、愛宕は、巨大な大槌で頭をかち割って殺し、榛名は、全身の関節を外し、骨を折り、捩じ切って殺す……。
「だが、ああしてガス抜きをしなければ、おかしくなってしまうからな……」
「もう(おかしく)なってると思うでありますが……?(名推理)」
「……そう、だな。うむ、提督に具申してみるか……」
「お伴するでありますよ、長門殿」
×××××××××××××××
「……と、言う訳でだな、この国に慣れない海外艦達のことは分かるが、他の艦娘のことも気にかけてもらえないだろうか……」
あー、やっぱり?ま、知ってたけどね?そりゃあ、あの子ら、あんなに血の匂いをぷんぷんさせておいて「何でもない」とか言うし。尋常じゃないですわ。
「うーん、分かってるよ?あの子らにも無理はしないように言ってあるから、大丈夫だとは思うんだけど……。やっぱり、辛そう?」
「……まあ、そうだな」
そっかー、キツイかー。……まあ、付きっ切りなのは今日までの予定だし、問題は無いな。
ビスマルクさんも段々歩み寄ってくれて、マックスちゃんも話しかけてくるようになって、グラーフさんは胃袋を掴んだし。
後は、戦場で大暴れするあの子らのご機嫌とりですかね?
と、その前に。
えい。
「……この手は何だ?提督?」
「いや、寂しがってたらしいから、撫でてる」
「……その、私のような女を撫でても楽しくはないだろう?」
はっはっは、何を仰る。
「長門、君はね、君が思っているよりずっと良い女だよ。……少なくとも、俺は長門のことが、好きだよ」
「………………そう、か」
確かに長門は、普通の女性よりはるかに筋肉が付いているが、それはそれでアリなんだよなぁ。カッコいい系の美女だよ?全然アリ。
あきつ丸ちゃんは、あんまり寂しがってないみたいだけど、一応。
「あきつ丸ちゃんも、ほら」
「い、いやその、自分は……、畏れ多いでありま……、あう…………、これは、その、病みつきに…………!!」
あきつ丸ちゃん。おっぱい。巨乳丸。いや、口には出さないけど、かなり大きめ。日本人は小さめだと思ってたんだがなぁ。
「じゃ、俺、あの子らを迎えに行くわ……。そろそろ帰投するみたいだしさ」
呆けている二人を置いて、窓から飛び降り、沖に向かう。
「……やっぱり、あの人は凄いな。私が一番欲しい言葉をくれた……。つまらん嫉妬など、吹き飛んでしまったよ」
「……はは、自分も、惚れ直してしまったであります」
よせやい、照れるぜ。
「はーい、おかえり!返り血拭いて、お風呂入ってきな!あ、あと、今夜はカレーだよ!」
「「「「………………え?」」」」
え?じゃないが?
「提督、どうして、ここに?」
「海外の子達は、良いの?」
「ん?段々ここにも慣れてきたみたいだし、そろそろ良いかなーって」
「…………ふふふふふふ、そう、そうなの、じゃあ、やっと私のことを見てくれるのね?」
おや、陸奥ったら、血塗れのまま笑うと怖いよ?それにね、
「陸奥はこの一週間で戦艦を十八体沈めたんだってな?弾薬の消費も少ないし。……ちゃんと知ってるよ、見てなかった訳じゃないさ。でも、不安にさせてごめんな?」
こう言う時はね、謝るんだよ。例え自分が悪くなくても、取り敢えず謝っときゃ良いのよ。特に女の子にはね。
「……ううん、良いのよ!悪いのは、勝手にいじけてた私だもの!!」
あー、良かった、いつもの笑顔だ。
「皆んなも、良いかな?今回は、いきなり海外からあの子達を連れてきた俺が悪いんだ。だから、できたら、あの子達とは仲良くしてくれないかな?」
「はい!もちろんです!」
「まあ、同じ艦娘だし……」
だよなぁ、この子ら、ちゃんと思いやりがあるもの。自分と同じような境遇の艦娘達を見捨てられる訳がない。……だからこそ、どうにもならなくてイライラしてたんだろうけど。
でも、まあ、これにて一件落着ってことで。
「じゃあ、僕達は、お風呂に入って来るね……」
あ、嫌な予感。逃げよう。
「そうだ、提督も一緒に……、チッ、逃げられちゃったか……」
「もう、駄目よ?時雨ちゃん」
「陸奥さん……」
「次は、隙を見せた瞬間に全員で抱きついて拘束、そのままお風呂にブチ込むわよ。……良いわね」
長門
脳筋。黒井鎮守府ステゴロ最強。
あきつ丸
可愛い丸。趣味が鍛錬なので、大体は道場にいる。長物の達人。
陸奥
高い筋力と技量を持って、華麗に、踊るように戦う。
夕立、時雨
この黒井鎮守府の駆逐艦最強と言われる二人。血に彩られた酸鼻な戦いは狩りに例えられ、彼女達もまた優秀な狩人に例えられる。……かねて血を恐れ給え。
大井
蹴り技が魅力。北上と共にガイナ立ちで現れる。
愛宕
★大地の大槌装備。並の戦艦以上のパワータイプ。
榛名
戦艦にしては珍しい技量特化。投げ技と関節技のプロフェッショナル。