旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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いつもの。


437話 甲虫王者 後編

『僕、もっと戦いたいです!』

 

「ああ、まあ、分かった。行こうか」

 

カブトムシのツルギを連れて、虫バトルをする羽目に。

 

黒井鎮守府虫バトルだ。

 

 

 

『おらよ!!!』

 

『うわあああああ!!!』

 

「あー!コクワちゃーん!」

 

暁が、吹っ飛ばされたコクワガタを介抱している。

 

『日本の虫は雑魚ばかりだな!ハハハハハ!』

 

あれは……、ケンタウルスオオカブト、アフリカの、大きなツノが上下にある、大きくて美しいカブトムシだ。

 

「こら!あんまり調子に乗らないの、ラウル!」

 

『ヒ、ヒェッ!あ、姐さん、すみません!』

 

操っているのは……、ザラか。

 

「よう、ザラ」

 

「こんにちは、提督」

 

「何やってるんだ?」

 

「いえ、よく分かりませんけど、何だか、大きな虫がいたので駆除しようとしたところ、アカシのテストに付き合って欲しいと頼まれまして」

 

成る程。

 

『お前、日本のカブトムシか?弱そうなチビめ!』

 

『な、なんだって!聞き捨てならないぞ!』

 

「じゃあ、早速テストをやるか?」

 

「そうですね!行きますよラウル!」

 

『はい、姐さん!』

 

さて、どう来る?

 

「operazione1!!!」

 

作戦一、か。

 

『おおお!!!』

 

これは……、そうか。

 

「ツルギ、右を向いて思い切り体当たりだ!」

 

『え?!でも!』

 

「俺を信じろ!」

 

『……はい!やああ!!!』

 

『な、何だと?!』

 

ザラの作戦一は、真っ直ぐ攻撃と見せかけて、相手の右側に飛び込んでハサミ技を入れるというものだった。

 

それに、ダゲキ技で返す。

 

『ダンガン!!!』

 

翅を広げて、思い切り体当たりするツルギ。

 

『ぐわあ!!!ま、マグレだ!!!』

 

「流石は提督!次、operazione3!!!」

 

『了解!!!』

 

これは……、正面か!

 

「ツルギ!ハサミ技だ!」

 

『カワセミハッグ!!!』

 

『ぐわああああ!!!』

 

よし、勝ったな。

 

「ああ、負けちゃいました……。負けるということは、この虫は要らないでしょうか?処分しますか?」

 

とザラ。

 

「日本には、一寸の虫にも五分の魂ということわざがある。意味は分かるかい?」

 

「ええと、確か、弱い者にも心があるから、大切にしようという意味だったかと」

 

「そういうことだよ。例え負けても、別に鎮守府の敵になった訳じゃないんだから、いたずらに殺すのは良くないよ」

 

「殺す価値がないと?生かす価値もないと思うのですが?」

 

「価値の話じゃなくて、道徳の話だよ。殺すことはよくない。良いね?」

 

「分かりました!」

 

 

 

さて……。

 

『あ、プロフェッサー明石が、森が大体完成したので、視察をお願いしたいとのことです』

 

とのことなので、移動。

 

森は……、遠近感が狂うような馬鹿でかい森だ。

 

リットル単位で流れる樹液が滴る、百メートル程の木々。

 

綺麗な清流には、小エビや魚が。

 

草花は通常の三倍くらいの大きさだ。

 

しかし、地面の草は短め。

 

土は……、素晴らしく栄養のある腐葉土だ。

 

他にも、巨大なスイカやメロンなんかが群生している。

 

そこら辺に森を管理するためのアンドロイドがいる。

 

アンドロイドの見た目は、明石の趣味で完全にロボ型だ。

 

白い外骨格に、薄く光るブルーのバイザー。エヴァンゲリオンみたいな有機的なボディ。硬質ラバーや人工筋肉を多く使っているみたいだ。

 

『わあ……!ここが僕達の森なんですね!』

 

ツルギは喜んでいる。

 

『ちょっと樹液舐めてきます!』

 

どれ、俺も樹液を舐めてみるか。

 

『美味しい!』

 

「んんー?これ、何だ?」

 

馬鹿みたいな高カロリーの樹液だ。

 

甘過ぎて舌がじーんとする。

 

その他にも、不自然にビタミンなどの各種栄養素が含まれている。

 

「……それは良いとして、どうやって樹液を吸っているんだ?」

 

『ああ、口の部分が改造されていて、この鞭毛がストローのようになっていて、液体を吸えるんですよ。人間の血液とかも吸えるらしいです。僕はできれば、そんなことはやりたくないですけど』

 

へえ。

 

辺りを見回すと、カマキリやカミキリムシ、バッタなど、様々な巨大虫が。

 

こういうコンセプトの世界も面白いな。

 

そうして、食事を済ませると、視察を再開。

 

「行け!カザス!」

 

「負けないで!グラン!」

 

『『うがあああああっ!!!!』』

 

長門と霧島か。

 

虫は、コーカサスオオカブトとグランディスオオクワガタ。

 

どちらも最大級に大きく強い虫だ。

 

『ふんぬあああああ!!!!』

 

『ぬおおおおおおお?!!!』

 

あ、グランディスオオクワガタが投げ飛ばされた。

 

「ふはは!カザスの勝ちだな!」

 

長門が勝ったようだ。

 

コーカサスとグランディスは互いの健闘を称えて、スポーツマン的に終わった。

 

他の場所では、陸奥がオウゴンオニクワガタを。

 

大和がヘラクレスオオカブトを。

 

武蔵がアクティオンゾウカブトを。

 

金剛がブルマイスターツヤクワガタを。

 

日向がタランドゥスツヤクワガタを。

 

そこら中で虫バトルが楽しまれている。

 

仲良くして偉いね!

 

 

 

そこに、時雨のエントリー。

 

時雨の連れている虫はー?

 

んんんんんー?

 

『フシュルル……!コロス!コロス!!!』

 

目が赤くて、片方のハサミが金属になっている、ギラファノコギリクワガタだ。

 

んんんんんんんんんー?

 

待って、それ、今◯俊版のムシキングで見たぞ?!!

 

カクタスかお前は?!!!

 

「行け、ギラ」

 

『ガアアアアアアアッ!!!』

 

ギラファノコギリクワガタに指示を出した時雨。

 

ギラファは暴れ出す。

 

周囲の虫を蹴散らして、こっちに来た!

 

「ツルギ!」

 

『分かってます!』

 

ツルギは、ギラファの、毒の滴る金属のハサミに触れないように注意しながら、ぶちかました。

 

『ダンガン!』

 

『ギイイッ?!!!』

 

さて、厄介なのはあのハサミだ。

 

ハサミ技だけは絶対に食らっちゃ駄目だな。

 

『ガアアアアアアアッ!!!!』

 

「ツルギ!もう一度だ!」

 

『うおおおお!!!』

 

またもやぶちかます。

 

しかし、ギラファは丈夫だ。

 

なんとか、超必殺技のナゲ技であるトルネードスローを決めたいところだが、ギラファはナゲ技に有利なハサミ技を得意としている。

 

「ぶちかませ!」

 

『はい!』

 

『ガアアアアアアアッ!!!』

 

あ、ナゲ技使ってきた。

 

『うわあああ!』

 

ツルギが投げられる。

 

成る程、完全に暴走していて知能が低いという訳でもないのか。

 

「ツルギ、すまん。次はハサミ技で行け!」

 

『はい!』

 

横からギラファを掴み、極めた。

 

ギラファの甲殻にヒビが入る。

 

『アアアアアアアッ!!!!』

 

よし、今だな。

 

「ツルギ……、トルネードスローだ!」

 

『うおおおおお!!!!』

 

姿勢を低くして、ギラファのハサミに触れないようにしながら懐に入り込んだツルギは、超必殺技トルネードスローを発動。

 

ギラファを大木に叩きつける。

 

ギラファは、動かない。

 

よし!

 

……ん?

 

『お、れは、今まで、何を……?』

 

あ、ギラファが正気を取り戻した。

 

『君は、操られていたんだよ』

 

『そう、だ!おさげの女だ!刀を持ったおさげの女だ!や、やめろ、やめてくれ、俺の自慢の大アゴを削らないでくれ!あ、ああ、うわああああ!!!』

 

ギラファは錯乱している。

 

何をしたんだ時雨は。

 

「ふむ……、実験は失敗か。毒の大アゴは回収しておこう」

 

そう言って、ギラファの毒のハサミを取り外して回収すると、闇に溶け込むように消える時雨。

 

恐ろしいボスだった……。

 

 

 

『旅人さん、ありがとうございました。僕は、この森で、仲間達と命令を待ってます』

 

「ああ、また夏には会いに来るから、ツルギも元気でな」

 

ツルギと別れて、黒井鎮守府に帰る。

 

とりあえず、最後に一つ。

 

 

 

時雨には説教が必要だ。

 




時雨
アダー博士説。

旅人
時雨に説教しに行ったが、いつのまにか首だけになっていた。

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