壊れた世界を余裕で生き抜く人間性クソ以下サイコパスイケメンの話書いてます。
そのうち思いつき集に投稿するですよー。
人間のクズが暴れ回る話だけど、今回はちゃんと日常のささやかな幸せを守る優しい主人公になっています(大嘘)。
「ほのぼの、してぇなあ……」
「はあ」
「なんかこう……、田舎の……、田舎の方の、あったけえ感じの……、こう……、心温まる感じの、あれで……、ほっこりして心がこう……、ほのぼの?する感じの……」
「はあ」
「ねこむすめ道草日記みたいな……、動物とかのこの……、優しいやつが、その……、可愛い感じの……、ほのぼのしてえなあ……」
「成る程」
そう、最近の俺には「ほのぼの」が足りなかった。
確かに、アクティブな方だが、たまにはほのぼのしたい。
動物と戯れたり……、なんかこう……、陽に当たったり、お昼寝したりとか。
「なんかこう……、ほら、流行ってるでしょ、スローライフ。あれ俺もやりたい」
なろう的な……。
村をこう……、開拓?する感じの?美味しいもの食べて……、ペットとか飼ってさ?
「提督の御心のままに」
そう言って退がろうとする大淀。
「え?どうすんの?」
「取り敢えず、黒井鎮守府の活動資金の余剰分を利用して、日本の田舎町を会議で選定、そこ一帯全てを買い取ります」
え?
「その、そこに住んでいる人は?」
「札束でビンタして立ち退かせますよ」
「酷え……」
鬼かよ。
スローライフやりたいって言ったのに何故か、田舎をリゾート地にするため土地を買い占める悪徳資本家みたいなこと言い始めたぞ……?
「そ、それは駄目でしょ?」
「ご心配には及びません。どうせ過疎地ですから、出費は最小限で済みますよ」
「い、いや、そうじゃなくってさ。田舎に住んでいる人を追い出したりするのは良くないんじゃないかな?」
「田舎に住んでいるのなんて、どうせ年寄りですよ。老人ホームにでも送れば良いでしょう」
「い、いやほら、そういうお年寄りもさ、田舎の長閑な風景が好きで住んでるんだと思うよ?無理に追い出すのはその……、良くないよ?」
「流石……!提督は優しくて素敵ですね!ですが、心配は要りません。この世界の全ては提督の御心のままに動くのですよ。立退く住人も、提督の暇潰しのために立退くのですから、光栄に思うでしょう」
「いやいや、そんなことないよ、恨まれちゃうよ!」
「仮に恨まれたところで、たかが人間の老人。何もできませんよ。そう言った雑事は気になさらなくてよろしいですよ、提督❤︎」
んー!
流石は大淀。
論理が通じない。
「いいか大淀、発想は良いぞ、田舎に土地を買ってそこで過ごす、それはOKだ。けど、立ち退かせるとか、買い占めとか、そういうのは駄目だ、やめてほしい。現地の人々の迷惑にならないようにしてくれ、良いな?」
「はい、了解しました」
………………
…………
……
数日後。
「H県XX市◯◯町……、バッチリ田舎だな!」
俺は、田舎町に来ていた。
田舎のビジョンが思い浮かばない場合はのんのんびよりを思い浮かべてほしい。
文字で表すと?
山!川!田んぼ!遠くにジャスコ!以上!って感じ。
駄菓子屋、小さな商店、八百屋に商店街、そして田んぼ。電車やバスの本数は日に二、三本。小学校は生徒数が百人もいない。
あっちを向いても緑、こっちを向いても緑。はぁー、一面のクソミドリ。
これだよ、これ。
俺が求めていたものだよ。
こういう田舎でほのぼののんびりスローライフやるんだよ。
「ここかな?」
「ああ、そうだね」
土地の選定者である時雨がついてきた。
……何で時雨?
「うん?何故僕が土地選びをしたか?ああ、それはね、僕は神話的事件の調査で、世界各地を見て回っているからだね。目立たない田舎町には、怪異や妖魔が多いからよく行くんだ」
成る程。
田舎ではそういうの多いもんな。
「よっしゃ、じゃあとりあえず、家建てるか!」
えー、まずは鼠や虫が怖いから石を敷いて……、柱ドーン。
「設計図もなしに作れるものなのかな?」
「頭の中にあるからね、設計図」
下水と水道、電気ガス繋げて……、こんなこともあろうかと暇潰しに焼いておいた瓦で屋根を……。
いやほら、俺は海外生活の方が長かったから、どちらかというと洋風建築の方が慣れているんだけど、折角日本なんだし、瓦屋根で畳張りの和風建築にしようと思って。
大体、日本の田舎町に洋風建築の家があったらミスマッチで景観が良くないだろ?
よし、休憩。
先に作っておいた縁側に座りながら、飯を食う。
飯も和風におにぎりと卵焼き、たくあんなんかを手づかみで。
んー、味噌おにぎり美味え。そういや、俺を五歳くらいまで育てて姿を消したじいちゃんの好物も味噌おにぎりだったな。
俺も産まれたのは田舎の方だったからな。どことは言わないけど東北の方だったよ。
家の近くに北斗神拳って拳法の道場とか、南斗聖拳って拳法の総本山があって、よく遊びに行ってたっけ。
懐かしいなー。
と、そこに。
「こんにちはにゃ!」
「ああ、こんにちは」
小さな女の子がやってきた。
ん?
いや、こりゃあれだな。
人間じゃねえな。
とかそんなことを思った瞬間、時雨が刀を抜いて女の子の肩に突き立てた。
「あ、い……?!いぎゃあああああ!!!!」
「時雨、なんてことを!」
「提督、気付いているだろう?」
それはそうだが……!
「だからってそんな酷いことをしちゃ駄目だろ!」
その子は……!
「にゃあ、あぎ、いいっ……!!痛い、いたいぃ……!!」
「その子は確かに化け猫の子で、人間の子供に化けているみたいだけど……、何故そんな酷いことを!」
「悪意があるからさ」
「そんな……!大方、ちょっと騙くらかして食料をせしめようくらいの可愛らしいもんだろ!過剰に攻撃しちゃ駄目だ!」
俺は時雨の刀を、猫娘ちゃんの肩から抜いて、回復魔法で手当てした。
「ひ、ひっぐ、えぐ、いたい、いたいにゃあ」
「可哀想に……、もう大丈夫だからね」
「提督、それを譲ってくれないかな?天然物の妖怪は珍しいから、ホルマリンに漬けて保管しておきたいんだ」
「やめやめろ!!!」
「提督、よく考えて欲しいな。所詮妖魔、人外だよ?人の領域に踏み込んだ人外は退治されても文句は言えないはずさ」
「そんなことはどうでも良い……!こんな可愛い女の子を虐めちゃ駄目だ!!!」
時雨は、珍しく、少し驚いた顔をして。
「猫だよ?」
「今は人の見た目だし」
「……見境ないね、本当に。ああ、いや、貶している訳ではないけれど」
「お名前は?」
「天音……、にゃ」
「そうか、天音ちゃんって言うのか。可愛い名前だね。……さっきはうちの子が酷いことをしちゃったね、本当にごめん」
「大丈夫にゃ……、ちゃんと治してくれたし……」
痛かっただろうに……。
良い子だ。
「お詫びに、俺にできることならなんでもするから、言ってくれ」
「にゃんでも?!本当かにゃ?!」
「ああ、もちろんさ」
「そ、それじゃあ、食べ物を分けて欲しいにゃ!」
はーーー!!!
なんって良い子なんだ?!!!
刀で穴開けられておいて、多額の金銭も相手の命も要求しないだなんて!!!
あまりにも良い子だ。
抱きしめちゃう。
「ふにゃあ?!」
「天音ちゃん、君は本当に良い子だね……!お腹いっぱい食べると良い!今度はお友達も連れておいで!」
「えっ!良いの?!」
「それだけじゃなくって、この家にはいつ来てもらっても良いよ!食べ物をいつも用意しておくから!」
「本当に?!ありがとうお兄さん!」
んあああああーーー!!!
可愛いィーーー!!!
「相変わらずびっくりするほど女性に甘いね」
「しゃーない、美女には何でもあげたくなっちゃうんだよね」
H県の山の方、過疎地域で。
「お兄さん、お名前を教えてにゃ?」
「新台真央……、旅人さ」
さあ、ほのぼのデイズの始まりだ。
天音
猫又。雑魚妖怪。
旅人
くずおとこ。