一方、長門と武蔵も中々の物。
「ふふふ」
「ぐぬぬ」
んー。
「勝ったぞ、武蔵」
「今回は負けたよ、長門」
そんな二人の手には。
『全日本ボディビル大会女性部門優勝』と『準優勝』の杯が。
ふーむ?
「良いじゃん、筋肉女子」
さて、何があったのかと言うと。
まず前提として、長門と武蔵は筋トレが趣味だ。
毎日毎日飽きもせずに筋トレ組手。おかげさまで、と言って良いのか、それはもう美しい肉体美がある。
彼女達は日々のトレーニングは欠かさない、故にリアル系格闘ゲームの女キャラみたいな物凄い筋肉の持ち主だ。
二人のトレーニング見た?アンチェイン並の訓練してるからね?
具体的に言うと離陸するヘリに鎖つけて引っ張るとか、重機と相撲とか。
そんなビンビンマッチョなお二人は、その恵体を見せびらかしたい欲があるらしい。
どうも、俺一人に美しいと言われればそれで良いらしいが、どうせならなんかの賞をとって褒めてもらおうと考えたんだとさ。
それで出たのがボディビル大会。
いやー、確かに「肉体美」を見られる催し物ではあるけどさぁ。
まあ、その結果ッ!!
「仮面ライダー!!」「冷蔵庫!!」「肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい?!!」「土台が違うよ、土台が!!」「筋肉本舗!!」「キレてる!!」「デカい!!」
と大好評状態だったらしい。
怖いねー。
えーあー、それで、日本一の筋肉美女と認定された二人は、ノリノリで俺に迫る、と。
どう思います?
俺はね、美人ならなんでも良いと思ってるからね、マッチョの腹筋バキバキ系女子もアリだと思ってるよ。
大体にして、俺の方がマッチョだし。
いや、その辺はね?
意外だと思うか?
俺より長門と武蔵の方がマッチョだと?
そんな訳ないんだよなぁ。男性と女性とでは積める筋肉の量が違うぜえ。
俺がどのくらいマッチョかと言うと、友達のジャギと同じくらいはマッチョだ。つまりは世紀末ボディ。たっぽいたっぽい。
でもそんなに力はないけど。
俺の知り合いには測定不能の握力を持つ男とか腹筋でショットガン受け止めるアンチェインとか色々いるし、そんなのと比べたら俺もまだまだ常識の範囲内なんだよなあ。
バフかければ俺もトン単位の力出せるけど。
そう、それで、うちの二人がその物凄い筋肉で迫ってきたのよ。
抱きつかれる俺、背骨ボキボキ。
どうせ再生するでしょみたいなノリで全力でぶつかってくる二人。
しかし俺はやめてなんて言えない。
彼女達には全力でぶつかれる相手が必要だろうと思って。
痛いが。
ものっそい痛いが。
まあ、俺が死にかけるなんて日常茶飯事と化している節があるから、誰も気にしない。
いや、何人かは気にするけど、俺があまりにも不死身なんで、最近は解放骨折内臓破裂すると心配して撫でてもらえるくらいかな。
少なくとも身体の何割かを失うような大ダメージでもない限り心配されない。
かなしい。
などと、色々考えているのは全部。
「ええい、提督は私のものだ」
「なんの、私のものだとも」
「ぐっ、がああああ!!」
現実逃避だ。
現在は岡っ引きよろしく左右から引っ張られている。
防御バフ積んでさけるチーズ化は防いでいるが、ちょっとでも気を抜けばバラバラ確定でござる。
いやー、モテるってつれーわー!
「ちょ、ちょっと、二人とも、裂けちゃう、裂けちゃうよ俺」
「「む、すまない」」
ふう。
外れた関節をはめて、と。
「それで、どうしたの?」
「いやあ、私はボディビル大会で優勝したんだぞ?私の方が美しいだろう?」
「お、おう」
……ボディビル大会で評価されるのは筋肉の美しさで女性としての美しさではない気がするぞお。
しかし、あえてそれを言うこともないか。
実際、女性としての美しさも中々のものだしな。
強いて言えばもっとお洒落しなさいとは思うが。
あと、レモン石鹸で全身丸洗いもやめさない、と。
それとメイクとかしないのかね。
二人ともね。
まあ、元が良いから何にもする必要がない、のかねえ?
「いやいや、私だって負けていないぞ!見ろこの上腕二頭筋を!!」
「お、おう」
うーん?
「二人とも美人じゃん。順位なんてつけられないよ」
「「む、そうか」」
うん。
「どの辺りの筋肉が美人だ?」
と、長門。
うん?
うーん?
「何その斬新な質問。顔が美人だね、スタイルも良いよと言ってるのよ、俺は」
「顔」
「そう、顔」
「……ふむ?私は美人なのか?」
「そりゃあもう、とびっきりの美人だよ。ノーメイクでこれって各方面の女性に喧嘩売ってるとしか思えないね」
「そうなのか?」
「もちろん、武蔵もだよ」
「ふむ」
二人揃って首を傾げている。
え?
まさか、自覚ないの?
「二人とも女優レベルで美人だけど、自覚ないの?」
「「特には」」
ウッソだろオメー。
はぁー。
なんつーか、ブスに限って自分は美人だって思ってるよな。対して、美人は自分が美人だと言わない。
いや、たまに本当にカワイイ子もいるけど。幸子とか。
いやー、俺もイケメンイケメン言ってるとひょっとしてブサメンなのではないかと勘繰られるかもしれんなー。
だがあえて言おう、俺はイケメンだ。
「顔が良いとかはあまり興味がないな。それよりほら、どうだ、私の筋肉は」
俺はむしろ筋肉には興味ないかなあ……。
「あー、まあ、良いと思うよ」
「おお、そうか!」
ふーむ。
ひょっとして、艦娘って、自分が美人だと自覚していない?
「もっちー」
「あいよー」
「自分はカワイイと思う?」
「は?冗談でしょ。私可愛くないよ」
んー。
「鹿島、自分の顔が良いとか思わない?」
「え?自分の顔ですか?特には……」
んんんー。
「暁、自分はカワイイと思うかい?」
「え?……そんなこと、考えたこともなかったわ」
んんんんんー。
「ついでに聞くけど、守子ちゃんはどう?自分の顔、気に入ってる?」
「はい?……えっと、普通、だと思います」
あーーーーー。
「つつしみ」
慎みかよ。
「君らは本当に……、そこらの並のアイドルを鼻で笑えるくらいに美人だからね?分かってる?」
「「「「?」」」」
ンモー。
ダーメですわねクォレハ……。
よし(即断即決)。
「お洒落させよう」
そうと決まれば。
「陸奥ゥェァ!!!」
「はあい、何かしら?」
「長門と武蔵!!この二人に可愛い格好させてやってくれ!!」
「………………無理ね」
「何故」
ま、まさか。
「あのね、提督。基本的にね、女物ってね、細めにできてるのよ」
やっぱりか。
「筋肉?」
「そうねぇ、無駄な筋肉が邪魔ねえ」
「む、筋肉は無駄ではないぞ!」
「そうだ、闘争の基本は格闘戦!筋力は運動能力の大切な」
「だまらっしゃい」
と陸奥。
「「む」」
む、じゃないよ全く。
「全くもう、二人とも、こんなに筋肉つけて!服、どうしてるの?」
「「ジャージかタンクトップ」」
「「はぁ……」」
俺と陸奥は揃って溜息。
良くないなー、良くないなー、そう言うのはなー。
「そんなに!!美人なのに!!そんな格好じゃ!!駄目でしょ!!!!」
「そうよ、女なんだから、もっと身嗜みに気を遣いなさい、二人とも」
「「む、そうか」」
そうだよ。
「よっしゃ、しゃーなし、俺が特注サイズの服を作ってやる。陸奥、サポート頼んだ」
「任されたわ」
そしてガンガン服を作る俺。
………………
…………
……
「ドレスの一着くらい持っといた方が良いって!」
「い、いや、不要だ」
「欲しいの!!それとスーツもよ!!」
「着る機会がないんだが」
「「いつかあるかもしれないでしょ!!」」
「「お、おう」」
「ってか何このパンツ?ふざけてるの?」
「ユニクロの五百円くらいのやつだが」
「はぁ?ふざけてるのかしら?」
「ふざけてなどいないが」
「駄目ですよこれは、駄目駄目ェ」
「これね」
「むぅ、落ち着かん」
「ブラはこれ」
「むぅ……」
「革ジャンとか似合いそう」
「まあアリね、かっこいい系よね」
「も、もう良いか?」
「「良くない」」
「「勘弁してくれぇ……」」
「はいそれじゃ、まず、レモン石鹸で全身丸洗いはやめること!!」
「「はい……」」
「服もジャージとタンクトップ以外を着ること!!」
「「はい……」」
「良いね?」
「「分かりました……」」
はい、解決ッ!!!!
「提督、ありがとうね」
「どうした陸奥」
「あの二人は本当にね、素材は良いのに着飾らないから」
「勿体無いよね」
「これでちょっとはマシになる、かしらね」
兎も角、そんなこんなで、二人はちょっとお洒落になった。
「女の子でしょ!!シーブリーズシャンプーはやめなさーい!!(しかるたびびと)」
「「はい……」」
お洒落に、なった、か?
旅人
細マッチョなんてナヨナヨした言葉では表せないくらいにはマッチョ。その上イケメン。
長門
腹筋バキバキ。
武蔵
はち切れんばかりの筋肉。