閑話、何書こうかなー。取り敢えず、「青葉の密着取材」と、「古鷹、加古にくんかくんかされる話」は考えた。3話くらいは閑話にしたい。
……先日、モテ過ぎて困ると言ったな。
アレはマジだ。
「……提督から、他の子の匂いがします。それも、沢山……。榛名は、金剛お姉さまの二番目で良いんです。……でも、二番目より下は…………嫌ですよ」
まるでマーキングするかの様に、俺に身体を擦り付ける榛名。滅茶苦茶甘くて良い匂いするし、大型犬みたいで可愛いんだけど、目がヤバイ。漆黒の闇。
「あら?司令官どうしました?今日は取材を…………、へえ、青葉、見ちゃいました……。榛名さん、私が欲しいのは司令官の写真「だけ」なんですよ……。どいて、貰えませんか?」
青葉ちゃん。何一つ青くない。寧ろ黒い。真っ黒。黒葉ちゃんの誕生である。(激寒)
「あ、司令官。……ああ、また絡まれてるんだ。……ねえ、今日は私とサボろうよー。そんな面倒な子はほっといてさ。如月は身体が「火照って」大変だって言うし、弥生と三日月は、司令官の命令なら「何でも」聞くってさ……。ね、至れりつくせりだよ?私達とゆっくりしよ?」
望月ちゃん。小さな手で俺の手を握る。しかしその力は、手の小ささに見合わない強さ。
んもー、普段はかなり仲良しなのになー。やっぱり、社会勉強の機会の無さが原因か?皆んな、愛情表現が愚直で下手過ぎる。あと、常識もない。
「はいはいはいはい、分かった、分かったから!仕事終わったら遊んであげるね!」
まあ、仕事なんて大した量ないけど。こうでも言わんと止まらん。これでこの場は逃げるしかない。
「「「じゃあ、お手伝いしますね(するよ)」」」
はい、駄目でしたー。
「お仕事、終わりましたね!提督!」
「さあ、取材の時間ですよ!」
「は?司令官は私とだらけるんだよ?」
「提督!工廠でラジコン作りましょうよ!」
「あたしと勝負しろ!提督!!」
「ひゃっはー!」
ピャー!捕まったァー!!しかも増えとる!!もう、何と言うか、最近は人生のピークでモテてるなー。所謂モテ期かな?
……でもこれ、誰か一人だけ選んだら死ぬやつだよね?勿論、全部断っても死ぬ。時間をかけさえすれば上手く逃げられる自信はあるが、今回は断るための第三の選択肢がある。
こういうどっちを選んでも駄目な二択は大体、第三の選択肢が正解なんだよ。まあ見てな?
「いやー、皆んなからのお誘いは大変嬉しいんだけどさ?実は、大本営から、新しい艦娘が派遣されるらしくてさ?その子のお出迎えをしたいなーって!」
「「「「……………………大本営から?……そんな子、必要無い……!!」」」」
はい、駄目でしたー。
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黒井鎮守府、正門前……。前までは、私達艦娘が決して出ることの許されない、暗く冷たい門でした。……でも今は、多くの仲間達と、大好きな提督がいる、暖かな我が家の象徴になりました……。
……でも、今日は、この門を、大本営からの犬が通る……。
とても、許せるものじゃ、ない……!!
提督はお優しい方ですから、きっと笑顔で許すんでしょう。でも、こればっかりは、提督が許しても榛名が許しません……!!
「あ、あのさ?皆んなでお出迎えは大変結構だよ?で、でも、ちょっと気合い入り過ぎじゃなーい?」
「…………何だ?「あの」大本営からの犬なのだろう?相応の「出迎え」が必要かと思ってな……!!」
長門さんの言う通りです。結局、音成鎮守府は無罪だと調べがついた訳ですし、私達に不当な評価をした大本営が悪い、と言うのが、この黒井鎮守府の総意です。
「龍田ァ……、大本営からの犬っころが舐めた真似しやがったら、速攻で「バラバラ」にすんぞォ……!」
「ふふふ、そうね、天龍ちゃん。……でも、ここに来る事自体が、「舐めた真似」だと思うわ〜」
「天龍ちゃーん?龍田さーん?お出迎えに刃物は要らないなー?」
天龍さん、龍田さん、頼もしいです。……何が来るかはまだ分かりませんが、こちらに害意があるなら、直ぐに帰ってもらいましょう。……いえ、還ってもらいましょう。
「どうでもいいっぽい?提督さんに逆らう奴は、どの道、水底にぽいするっぽい!!」
「そうだね、暗く冷たい海の底なら、証拠は残らないだろうね」
「何で消す算段してるんすかねぇ……?大体にしてその武器は深海棲艦だけじゃなくって艦娘にも効くからね?やめてね?」
月光を束ねて作ったかの様な美しい聖剣を構える夕立ちゃんと、散り落ちる木の葉の様な意向の、特殊な形の日本刀を構える時雨ちゃん。……海に沈めれば、証拠は残らない、確かにそうですね。
そうこうしているうちに、大本営からの車が、この鎮守府の前にやって来ました。その車から降りてきたのは……。
「自分、あきつ丸であります。艦隊にお世話になります」
……え?艦娘?しかも、あきつ丸って陸の……?
「えーっと?そのさ、俺の記憶が確かなら、君って陸軍の船だよね?……なんでここに?」
「はっ、自分は、大本営からの命令で、この黒井鎮守府に転属することになりました」
……厄介払いを兼ねたスパイってところでしょうか?相変わらず、陸とは上手くいってないんですね。愚かしい。
まあ、少しは同情します。大本営に振り回されているんですから。
「なんでも、この鎮守府は、前回の作戦において虚偽の報告をしたと聞きました。ですから私は、憲兵の役割も兼ね、この鎮守府の戦力になるとともに監視を……」
…………ああ、ああ、もう、謝罪も、命乞いも、聞きません……。
消えて下さい……!!
長門さんが地面に拳を叩きつける。
夕立ちゃんが月色の斬撃を飛ばす。
天龍さんが突貫する。
雷ちゃんが鎖に繋いだ錨を投げる。
島風ちゃんが飛び、踵落としをする。
蒼龍さんが大弓を射る。
羽黒さんが門の鉄棒を千切り、投げる。
私は大きく踏み込み、殴りつける。
「っぶねえ!!マジっぶねえ!!!何すんの皆んな!!」
……振り向くと、提督が大本営の犬を抱えて、正門前に立っていました。
大本営の犬は、最初はただただ驚いていたようですが、自分の立っていた場所がひび割れ、裂かれ、貫かれているのを見て、青い顔をしながら震え上がりました。
「あら?司令官?駄目ですよ?「それ」は如月が風穴を開けるんですから……」
「待って、NIOH仕舞おう、如月ちゃん!仲間同士で争うのは止めよう?」
……仲間同士?何のことですか?
「Нет(いいや)、そいつは、仲間じゃないよ、司令官。……敵だ」
「ヤメロォ!!響ちゃんストップ!!まだ話聞いてないじゃん!!!」
……話?聞く必要、ありますか?
「提督……?何故、邪魔をするんですか?そんなの、要りませんよ?提督には、要りませんよ?……今すぐに消せば、証拠は残りません。さあ、早く、早く、処分してしまいましょう……」
「あー、確かに、榛名も、皆んなも大本営を嫌っているのは分かるよ?でもさ、悪いのは大本営「だけ」でしょ?大本営の下で、何も知らずに働いている人だっているんだよ?……何かを嫌いになるな、とは言わないけどさ、嫌いになるものは最小限の方がいいよ?その方が、人生楽しいからね」
「……では、提督は、その犬が大本営に良いように使われているだけ、だと?そう仰るのですか?」
……まあ、提督が言うことはいつも正しいし、そう言われてみると、やり過ぎたのかもしれない。
「そうそう、第一、本当に大本営の犬なら、態々監視するとか言わないでしょ?」
「……確かに」
……では、この女に罪はない、と?だけど、確証はない。
「ま、ほら、兎に角本人に…………、あ、あら?気絶、しちゃってる?」
……まあ、保留、ですね。
「……分かりました。私達は、提督の言葉に従います」
「分かってくれて嬉しいよ、榛名!……君達は女の子なんだ、暴力は控えた方が良い。……じゃ、俺、この子を医務室まで運ぶから、よろしくぅ!」
女の子、ですか。ふふふ、やっぱり、提督は私達を女として見てくれている……。こんなに嬉しいことはありません。
でも……、
「提督、私が運びます。その子、こちらに渡して下さい!」
「え?ま、まあ、その、本当に大丈夫?痛くしない?」
「はい!榛名は大丈夫です!!」
……提督に抱きかかえてもらう、なんて勝手は、榛名が許しません……。
榛名
最近は大丈夫じゃない。
睦月型
各自、個性を活かして口説いてくる。
夕立、時雨
番犬。
羽黒
提督の障害にはまるで容赦をしない。
その他艦娘
提督の命令により、落ち着いた。
あきつ丸
本日の可哀想な子MVP。大本営から厄介払いを兼ねて黒井鎮守府に転属。
旅人
トム・クルーズと同じくらいイケメン。