この癖、直したい。
「さて、守子ちゃん」
「はい」
「ちょっと禁忌を犯してみようかと思う」
「はあ」
そう、今の俺は無敵だ。
恐れるものなどない。
「……初春を指名するぞい」
「えっ、わ、分かりました……」
若干引く守子ちゃんを他所に、俺は駆逐艦である初春を指名した。
駆逐艦、駆逐艦である。
ロリである。
これは、某姫騎士の如く「貴方って最低の屑ねっ!」と罵られても当然の所業。
しかし、俺は吶喊する。
やるったらやる。
鬼畜外道に堕ちようともやる。
止まるんじゃねえぞ。
「は、初春じゃ。……本当にわらわで良かったのかや?」
「ああ、初春が良いんだ」
呼んだ。
初春を呼んだ。
あー、やっちまった。
これで俺もロリコンだ。
ロリに堕ちる、UA数の為に。と言うキャッチコピーでやっていきたいと思う。
因みに、初春は着物を着ている。紫の着物だ。気合い入ってんじゃーん。
「さて、飲もうか、初春」
「う、うむ」
え?初春は飲めるのか?そもそも飲ませて良いのか?
ス、スイスの一部では十四歳から飲酒できるそうだ。
まあほら、固いこと言いっこなしだよ。
飲めるなら飲めば良いさ。
「シャンパンでも飲むかい?」
「いや、日本酒が良いのう」
キャバクラで日本酒?こんなのアトリームじゃ考えられない……。
いや、良いか。初春が飲みたいって言うなら。
「守子ちゃん、獺祭持ってきて」
「はーい、これですね」
守子ちゃんが獺祭を持ってくる。お高い酒だ。
「また高い酒を……」
呆れた様子の初春。
日本酒なら獺祭が美味いからな。
フルーティで雑味がなく、飲みやすいから女性にもおすすめだ。
俺の好みではないけれど、良い酒ではある。
「どれ、一献」
「悪いね」
盃に注がれた酒を飲み干す俺。
いやあ、悪いことやってる。
初春みたいな少女にお酌させてる。
悪だ。
これでもかってくらいに悪だ。
「美味いかや?」
「ああ、初春みたいな美人にお酌してもらえば、どんな酒だって美味いさ」
「ほっほっほ、口が上手いのう」
「そうでもないさ。俺が褒めるのは、心から美人と思った人だけだよ」
「何じゃ、わらわを口説くのかや?」
「ああ、そうだな」
悪魔に魂を売った俺は、初春のようなロリを口説くことも可能としていた。
「むう、わらわのような童女を口説くのもおかしな話じゃぞ?」
「愛に年齢なんか関係ないさ」
「あ、愛と来たか。ま、まあ、しょうがないのう、わらわを存分に愛するが良いぞ!」
良いぞー!
「ははは、ほら、初春も飲みなよ」
「うむ!」
今度は逆に、初春にお酌する。
「くーっ、良いのう、良いのう!良い酒じゃー!」
「高い酒は単純に美味いからな。安酒はそれはそれでありなんだが」
安酒を気のいい仲間達と一緒に飲むのも良いもんだ。
「そう言えば、貴様は何でわらわ達にも給金を渡しておるんじゃ。しかも、とんでもない額を」
「そりゃ、初春達もうちの一員みたいなところあるからじゃん?」
「確かに、黒井鎮守府との付き合いは長いがのう……」
「正直、金が余ってるんだよね」
「じゃあ貯金せい」
「俺、貯金とかできない種族だから」
宵越しの金を持たない。それが旅人だ。
「だからと言って、わらわに渡されてものう……」
「良いから。俺みたいなプータローに金を持たせちゃならんのよ。君らがちゃんと使うと良い」
酒、ギャンブル、風俗で溶かすよりかはよっぽど良い。
「何がしたいんじゃ、貴様は」
「美人を口説いて酒飲んで世界征服したい」
「訳分からん」
×××××××××××××××
「て・い・と・く!どうする、ナニする?」
鈴谷を指名した。
鈴谷はカーキのキャバスーツを着ている。
女子高生くらいの鈴谷……、ギリOKか?
いや、アウトだな。摘発されるねこりゃ。
風俗法違反っすわ。
でもここは黒井鎮守府。
無法地帯だ。
無法地帯なので、女子高生くらいの鈴谷にお酌させても許されるのだ!
「さあ、鈴谷!何飲みたい?」
「んー、シャンパンゴールド!」
「はっはっは、良いぞ、頼め頼め」
よっしゃ、三十万円!!
「フードメニューはフルーツ盛り合わせで!」
「頼め頼め」
よっしゃ、五千円!!
「お願いしまーす!」
「はーい」
はっ?高額な注文をノリノリでしてしまった!
やはり小悪魔系女子鈴谷、侮れん!
「お待たせしましたー」
守子ちゃんがシャンパンゴールドとフルーツ盛り合わせを持ってくる。
「じゃ、乾杯しよー!」
ヒュウ!テンションアゲアゲ!パーリーピーポー!
「ああ!乾杯!」
「乾杯ー!」
卍解ー!
「んー!シャンパン美味しい!お高いだけあるよねー!」
おお、分かるか。
酒の味が分かる女の子……、良いね!
俺?俺はガバガバ飲むけど、一応酒の味は分かってるよ。ただ、ちょっとやそっとじゃ酔わないから、沢山飲むってだけで。
「シャンパンは熊野とよく飲むけどさ、こんな高いのはあんまり買わないかなー」
そりゃそうだ。
今、俺達の目の前にあるのは、ドン ペリニヨン レゼルブ・ド・ラベイ、最高級品だ。
高い。
キャバクラで頼んだら三十万円はする。
「熊野は祝い事の時くらいにしか飲まないんじゃないの?」
「黒井鎮守府では毎日がお祭りだからね、熊野も結構飲んでるよ」
あらそう?
「お給料も沢山貰ってるしね、皆んな結構好き勝手してるんじゃない?」
「そうか、要調査だな」
今度、艦娘の皆んなの給料の使い道について調査しておこう。
「まあ、それでも、鳳翔さんのところに行けばある程度は飲み放題だし、下手なお菓子屋さんより提督や間宮さんのお菓子の方が美味しいし、使い道は殆どないんだけどね」
そう?
「ギャンブルは?」
「やらないかなー。何が楽しいのか分かんないし」
「男とか」
「私には提督がいるもん」
「お洒落とかは?」
「んー、そこそこかな。毎月◾︎◾︎◾︎万円も貰ってたら欲しいアイテムとかトレンドの服とか全部買っても全然余るしー」
成る程な。
「あっ、でも、熊野とかはエステ代が結構するとか言ってたっけ」
「いやー、女の子は美容に金使うべきだよ?」
「私も何かやろうかなー」
「たまにはエステとかも良いんじゃない?」
「そういうのも良いけど、私は今、インスタに凝ってるからさ」
おおー。インスタ映えと言うやつですな。
「えい、ツーショット」
と、俺とシャンパンをスマホの画面内に入れて。
「『提督とキャバクラごっこ中!シャンパンがチョーおいしい!』っと。インスタに上げよう」
ほう、顔出しSNSですか。
「ネット上で変な奴に絡まれたりしてない?」
「んー?絡まれるよー。でもそう言うのはオール無視だね」
ツイッター民の漣、望月、秋雲、イムヤ辺りも、SNSで変な人に絡まれて大変だって言ってた。
「でも君ら、本名で、しかも顔出しでやってるからね」
日本最大の鎮守府の艦娘です、なんつったら変な人も湧く。
クソリプも飛んでくる。
オフ会やったら数百人は来るでしょ、君ら。
それこそ、本物の大物ユーチューバーが如く。
……大物ユーチューバーって言うとアレだな、なんか、こう、良くない。
「私達はほら、顔見られても困らないし。名前だって知られても問題ないからさ」
確かにな。住所まで特定されてる訳だしな。怖いもんなしか。
「提督は何かSNSやってるー?」
「俺はツイッターとかフェイスブックとか」
「マジー?私もやろうかな?」
「鈴谷みたいな可愛い子がやったら、オタサーの姫が如く祭り上げられるぞ」
「うーん、それはちょっとキモいかも」
でも、ちょっとしたニュースとかが見れるSNSも、社会の動向を知るには良いツールだ。
「まあ、始めたらフォローしとくよ」
「んー、始めちゃお。メアド打ってー、ユーザー名決めてー」
「ふー、もう時間だねー」
終わった終わった。
いやー、楽しかった。
「え?何言ってんの?」
「はい?」
「これから店外デートだよっ!」
「ちょっ、鈴谷」
「行こっ!」
そんなこんなで、鎮守府内のカラオケルームで朝までコース。
何だ、その、えーと、楽しかった、です。
初春
のじゃロリ。
鈴谷
小悪魔。
旅人
カラオケでは古めのロックナンバーが十八番。