「例えば、貴女達がその昔……、幼き頃……、捨てられて凍えてる仔犬を助けたことがあるとしましょう」
「雲龍、待って雲龍」
「でも死ね」
ああーーー?!!!やりやがったーーー!!!!
「雲龍!!雲龍待って!!!」
「な、何だ?!」
「けっ、警察!警察呼ぶぞ!!」
「おじさん、貴方達はウルトラマンにでも守られてるの?それとも……」
ああーーー?!!!またやったぁーーー?!!!!
「楽園にでも住んでるのかしら」
雲龍とデートに行って数分、俺は、女子高生達に逆ナン……、ってか援交のお誘いを受けた。
すると雲龍は静かにブチ切れ、話しかけてきた女子高生を三十メートルくらい蹴り飛ばしたのだ。
それを見咎め、警察に通報しようとしたサラリーマンのおっさん達も同じく蹴り飛ばした。
……鬼か?
「提督、好きよ」
「分かった、分かったから……」
マジでいかれてる。洒落にならん。思考回路がショートしてる。
「一般人に暴力は……、やめようね!」
「そう……(無関心)」
これだもんよーーー!!!
「雲龍、大切なことなんだ、ちゃんと聞いてくれ」
雲龍の肩に手を置いて、目を合わせてしっかりと話す。
「……提督」
「良いか、艦娘の力ってのは、一般人よりずっと強いんだ。気安く殴って良いもんじゃない。……そもそもんん?!」
……キスされた。
「近くで見ると、より素敵ね」
ははっ、聞いちゃいねえ。大丈夫?これ、日本語通じてる?
「雲龍……、ちょっとくらい、話聞いてくれても良くないか……?」
「聞いてるわ」
嘘つけ!!!
「それより、そろそろ食事の時間ね。行きましょう、奢るから」
俺の手をしっかりと握って、歩き出す雲龍。マイペースってレベルじゃねえぞ!!
「ここで良い?」
「ん、ああ、どこでも良いけど……」
「じゃあここで」
そうして、俺の手を引いて、その辺の定食屋に入る雲龍。
「好きなもの、頼んで。お金は私が払います」
「お、おう」
凄い勢いに押され、奢られることに。
「ご注文は?」
「じゃあこの、ジャンボ唐揚げギガ盛り定食と、特大ハンバーグギガ盛り定食、ギガ盛りミートソースパスタで」
「私も同じものを」
大体十数人前。適量だ。
「ええっ、何人前だと思ってるんですか?!」
店員さんが驚くが、それくらいは食うからな、俺達。
「大丈夫ですよ、フードファイター以上に食うんで」
「わ、分かりました……。唐揚げギガ二つ、ハンバーグギガ二つ、ミートソースパスタギガ二つですね」
「はい、お願いします」
と、言う訳で。
「本当に、マイペースなのは良いんだけど、突然人に暴力振るうのはやめてね」
「善処するわ」
善処するだけ、なんだろうなぁ。まあ良いや、言ってもどうしようもなさそうだし。一般的な会話を振ろう。
「……えっと、ほら、鎮守府での生活は慣れた?」
「ええ、まあ」
「趣味とかは見つけられたかな?」
「いえ、特には」
「困ってることとかは?」
「ありません」
……会話、弾まねぇな!でも、少なくとも、話は聞いてくれてるっぽい?
「……ハンサムね、提督」
「え、ああ、ありがとう?」
「大好きよ」
「お、おう」
何なんだ?何なんだ一体?分からん、変な子だよ雲龍は。
「帰ったらセッ◯スしましょう。提督の子供、欲しいです」
「んんんんんー、外でそう言うこと言わなーい。外じゃなくても言わなーい」
「あ、まだできないわね。練度を九十九まで上げたら、子供を作りましょう」
艦娘の肉体は、生まれたばかりでは霊的要素が強く、そのままでは子供なんてできない。しかし、ロック装置により肉体との適合率を上げると、練度九十九ケッコンカッコカリ時点で、完全に肉体が人間のものと同じになる。
つまり、艦娘は、簡単に言えば、練度九十九で子供を産める身体になるのだ。
「んあー、あれだ。子供なんて良いもんじゃないぞ。大変だぞ」
「大丈夫、私が育てるから」
うーん、この。
俺の話を聞いているようで聞いていない。完全に自分のペースで「喋ってる」だけだ。事実、先程からやっているのは、会話ではなく一方的な宣言ばかりだもの。
完全にサイコパス。
対話をしようよ対話を。
「あ、料理が来ましたね」
「ああ、いただこうか」
「「いただきます」」
あ、この唐揚げ美味い。
「………………」
「………………」
無言で食べ進める俺達。
「こ、これ、美味いね!」
「ええ、そうですね」
か、会話続かねー!!!
でもちょっと嬉しそうなのは分かる。例え一方的でも、話しかけられるのが、構ってもらえるのが嬉しいって面だ。
本当にごく僅かな表情の変化と、雰囲気の違いから気持ちを割り出してるが……、攻略難度高いな、この子は。
あっ、パスタ美味え、素朴な感じの味がグッド。ハンバーグも手ごねだな、ジューシーで美味しい。
特に会話もなく食事を終わらせ、再び街へ。
「提督、子供は何人欲しい?」
何だよいきなり?急な発問。
「いやぁ、いらないかな」
「そう……、二人くらいいると良いと思います」
「だ、だからね、俺は子供なんて」
「男の子と、女の子」
「話聞いてる?」
「提督と同じですね、男の子一人と女の子一人って」
怖ーい、話聞いてなーい。
「確かに俺には妹がいるけどな……、新台家の男ってのが不味いよ、碌な大人にならないから」
「きっと、提督に似てハンサムな子に育つと思います。髪もきっと白ですね」
いやいや、俺の髪が白いのは地毛じゃないから、遺伝しないと思うよ。
「俺のこれ、若白髪だよ?」
「へえ、そうなんですか。でも、私の髪が白いから……」
ふーん、ある程度、望む答えを出してやると会話が成立する、と。
「まあ、娘だったらいても良いかな」
「女の子ですか。私に似て、愛想がない子になったら嫌ですね。提督に似て明るい子になって欲しいです」
「はっはっは、愛想なんて別に気にならないさ」
「提督は、私のような愛想のない女も好きですか」
「ああ、好きだよ」
「ふふ、嬉しいです」
何だ、結構会話が出来るじゃねえか……。
そろそろ良い時間だ。居酒屋鳳翔にでも行くかァ!
「雲龍、酒飲もうぜ酒」
「はい、お酒、好きですよ」
との事なので、居酒屋鳳翔に直行。酒飲むぞー。
「鳳翔さーん、ビールちょうだーい」
「はーい」
鳳翔マイワイフ……。
鳳翔からビールを受け取る。
キンッキンに冷えていやがる……っ!!
「鳳翔さん、私も同じものを」
「はーい」
鳳翔さんがまたもやキンッキンに冷えていやがるビールを注いで、雲龍に渡す。
「んじゃあ、乾杯」
「ええ、乾杯」
喉を鳴らしてビールを飲む。やっぱこれだね、このために生きてる。
「……随分、美味しそうに飲むのね」
「んー?俺、お酒好きだもん」
「提督が幸せそうだと、私まで嬉しくなるわ」
と、雲龍は、優しげな笑みを見せた。何だ、可愛い顔出来るじゃんかよ。
「そうかい、俺も雲龍が喜んでくれて嬉しいよ」
正直な気持ちだ。例えちょっとサイコパスでも、黒井鎮守府の仲間だし、可愛い女の子だ。若干話が通じないくらいで嫌いになんてならない。
「提督」
「何、雲龍?」
「やっぱり私、提督が好きです」
「俺も雲龍のこと、好きだよー」
「提督を好きになって良かったと、心から思います」
「ははは、ありがとね」
無表情だが、声に喜色が。分かりづらいけど、好感度は上がってる。……いや、上げようと思ってないのにね!おかしいね!!
不味いな、この辺で好感度を下げるようなことやっとかねえとな。
さて、雲龍の隣に座って、と。
「触るぞ、雲龍」
「どうぞ」
雲龍の太腿を、揉む……!!
おおお、おおおおお!
筋肉!キック主体で戦うからか、太腿の筋肉すげー!!結構硬い!!
でも肌触りはすべすべ。白い肌。綺麗だ。
「どうだ雲龍、嫌いになったか」
「何をですか?」
「突然セクハラしてきた俺のことをだよ」
「いえ、嫌いになる要素がありません」
やっぱりな(レ)。
まあ、そんなことだろうと思ってた。むしろ嫌われる方法を知りたい。
「提督、その程度で良いんですか?服、脱ぎますよ?」
「いや、そこまではしなくて良い」
そんなことしたらエロ小説になっちゃうだろ!!
っはー、このしなやかさよ。ネコ科の動物みたいな鋭さと柔軟性を持ったこの足。こんな太腿に触れるとは、役得だ。
「本当に、これで満足ですか?」
「おう」
「挿れなくて、良いんですか?」
「女の子が挿れるとか言わないの」
「私はいつでも構いません。例え、今この瞬間に犯してもらっても」
「はいはいはいはい」
俺はセクハラできるだけで満足なの!中学生の頃のような、煮え滾る獣欲はもうない!……いや、性欲はあるけどね?
「じゃあ、そうだな。今晩は一緒に寝ないか?」
「喜んで」
よっしゃ、ベッドの上であんなことやこんなところを触りまくってやるぜ!!
と、今晩を楽しみにつつ、お開きだ。寝室へGO!
さあさあ、セクハラするぞー!!
おっと、ここから先は、大人の時間、ってことで。
「提督……❤︎」
「はいはーい」
まあ、なんだ。
楽しんだよ、色々とね。
雲龍
サイコパス。
旅人
サイコパス。