わるさめちゃんを散々辱しめて、深海棲艦の離島に送りつけて、次の日。
「体調を崩すくらいに面白くない……!!」
太平洋の嵐をプレイ中の俺。流石はクソゲーオブザイヤー受賞作品、恐るべきつまらなさだ。
「……何やっとるんや、司令官」
あまりのクソさ加減に俯く俺に話しかけるのは、RJこと、龍驤。
「クッッッソつまらんゲームやってる」
「暇なんか?」
「暇」
クッッッソ暇。先日のベーリング海奪還で俺の、鎮守府の暇は加速した。
俺達は、強くなり過ぎた。敗北を知りたい。
このままじゃ脱獄して日本目指す羽目になる。
いけない、このままではいけない。
「そっか、暇なんか。なら、うちと遊んでくれへん?」
「かまへんかまへん!」
ええぞ!
「よっしゃ!ほな、行くでー!」
龍驤に手を取られる。
可愛らしい、小さい手だ。少し力を入れたら壊れてしまいそうだな。まあ、実際は並の人間よりずっと丈夫なのだが。壊されそうなのはいつだって俺の方だ。
「どこ行くの?」
「そんなん、外出てから考えればええやろ」
適当。だが道理だ。気取らないで良い関係って良いよね。
外に出て、龍驤と手を繋ぎながら歩く。大人と子供くらいの身長差があるから、歩幅の差が出る。ゆっくり歩いてやらねば。
「で、どこ行く?遊園地とかか?」
「もー!子供扱いせんといてー!うちは大人のレディーなんやで!!」
「マ?」
「マジやマジ。大マジや」
大人のレディーらしい。
自分で自分を大人と言い切る奴は大抵大人じゃないと言う法則。あると思います。
格好もパーカーにジーパンと女子力低。やっぱりRJじゃないか……。
「とりあえず、その辺のショッピングモール冷やかしに行かへん?」
「良いよー」
ショッピングモールか、悪くない。
「いやー、凄いな。うちの時代はこんなん無かったからな、どこ行っても物珍しいんや」
まあ、二次大戦頃の記憶しかない艦娘にとって、現代のものは何でも珍しく見えるんだろう。
「でも、良い加減慣れたでしょ。もう建造されて何年も経つんだし」
「いやー、うち、一人だと殆ど外に出えへんからなぁ」
「あれ、何で?」
龍驤の性格的に、頻繁に外出してそうだが。
「いや、うち、この見た目やろ?どこ行っても迷子扱いされるんよ」
「あー」
なるほどね。
ぱっと見小学生くらいにしか見えないもんね、その辺ほっつき歩いてたら補導されるわな。
「もー、大変なんよ。お酒飲みたいってお店に言ったらびっくりされるし!」
龍驤も呑んだくれ勢だからなー。そっか、外で飲めねえのか。可哀想に。
「免許でも取ったら?」
「えー、めんどい」
あると便利だぞ、免許証。
「あっ、たこ焼きや!司令官、たこ焼き食べへん?」
「食う食う」
たこ焼き屋を見つけた龍驤は、嬉しそうにパタパタ走って行く。俺の手を引いて。
むーん、可愛いな。
「すいませーん、たこ焼き下さい!」
「はーい、どれにしますかー?」
ああ、ほら、たこ焼き屋の店員さんに早速子供扱いされてる……。
「うーんとな、これと、これと、これとこれ!司令官は?」
龍驤もそれなりに食うぞー。軽空母とは言え空母は空母。並の大人より大食いだ。
「同じものを」
俺はもっと食うけどな!……でも、あんまり注文し過ぎるのもあれなので、控える。
「えっ?えっと?」
それでも、普通と比べたら多いか。
「ええと、普通のたこ焼き、ネギソース、照り焼きソース、チーズ明太子を二つずつ」
「ご、五千六百円になります」
「ほい」
俺が店員さんに万札を差し出す。釣りはいらねえ、とっときな。
「あっ、司令官!もー、こういう時にお金使わんと、何のためにお給料貰っとるか分からなくなるわ」
「通販で使えば?」
「………………あー、なるほど?」
今の通販は凄いぞ、大体なんでも手に入るからな。
「でもうち、このあまぞん、ってやつイマイチ分からんのや」
「んー、どこが?教えてあげるよ」
「そもそもスマホがよう分からん」
ほら、龍驤は古い人間だから……。現代技術に追いついていけないのだ。
「ボタンじゃないのがなんか、こう、使いづらい」
「おばあちゃんか」
「誰がおばあちゃんやねん」
駄目だよ、ちゃんと新しい技術についてこなくちゃ。取り残されるぞ。
「何でこんないっぱい機能があるん?電話できればええやん」
「ラインとか便利だろ」
「んー、文字打つのが苦手や」
「ツイッターとか」
「分からん」
「ゲームとか」
「家帰ってやりゃええやろ」
うーん昭和!でも、艦娘の皆んなって大体こんなもん。現代っ子があんまりいない。
ぱっと思いつく現代っ子と言えば、うちでは、イムヤとか鈴谷とか、望月と漣とかだな。鹿島とか秋雲も結構……、あとは工廠組とか。
兎に角、皆んな現代に溶け込む気が全くない。
「ほら、このキャンディを砕くゲームとかどうだ?面白いぞ」
「うーん、ホンマによう分からんなー」
そんなこんなで、龍驤にスマホの使い方を教え込んでいると、
「たこ焼き、上がりましたー」
「はいはーい」
たこ焼きが。
「おっ、できたみたいやな、食べよ」
そこら辺にあるテーブル席に座って、できたてのたこ焼きを食べることに。
「「いただきます」」
挨拶は大事だ、古事記にもそう書いてある。……艦娘は常識が古いからなのか、礼儀がなっている場合が多い。今時いただきますをしっかり言える子なんてそうはいないのにな。
因みに俺もつい言っちゃう。俺は旅人、いつも何かをいただく側なので、せめて感謝ぐらいは……、と思った結果。
「んー、できたては美味いなー」
「ホンマやなー」
美味い美味い。旅の最中は最悪人肉とか食わされたこともあるし。店売りのたこ焼きなんて美味しいものの部類だ。
「………………!」
ん、どうした龍驤。
「司令官、あーん」
ああ、はいはい。
「あーん。……じゃあ俺も。龍驤、あーん」
「あーん」
機械的なイチャつき。
もっと、こう、少女漫画的な心のときめきや葛藤はないのか。
「えへへ、ちょっち恥ずいなー」
軽く頬を染める龍驤。
うむ、可愛い。
所謂ラブラブ状態なんだが、周りの人には何か微笑ましいものを見る目で見られてしまってる。娘か何かだと思われてるんだろうなー。
食後、ショッピングモール内をぶらつく俺達。
「司令官、映画見よ、映画」
そんな中、龍驤がショッピングモール内の映画館を見て言った。
「良いよー」
映画は好きだ。承諾する。後数十分で開幕だ、ちょっと待とう。
「映画、映画かー。司令官、好きな映画は?」
「あー、明日に向かって撃て、かな」
「ふーん、どんなん?」
「懲りない馬鹿二人がフラフラ生きる話」
「……おもろいんか、それ」
「まるで自分の人生を見てるようで楽しい」
正直、一番面白いのは俺の人生だが。どんな映画より旅の方が楽しいのだ。事実は小説より奇なりとはよく言ったもの、そこらの三文小説よりずっと楽しい人生を歩んできた。
「司令官、人生を楽しんどるもんなぁ」
「何だ、龍驤は楽しくないのか、人生」
いかんぞ、人生は楽しんでナンボだ。
「んー、楽しいけど、もうちょっと、大っきくなりたいなー、とは思うわ」
艦娘は成長しないからなぁ……。
望み薄、だな。
「あ、そろそろ始まるで」
「おっ、そうだな、行こうか」
と、店員さんにチケットを渡すと、
「こちらのお子さんは子供料金で大丈夫ですよ?」
とか言われる。
「うちはこー見えても大人やで!」
「え……?あ、あー、すみません?」
と、短いやり取りの後、映画に入る。
見た映画は、よくあるアクション映画だった。
「いやー、おもろかったなー!」
「中々だな」
普通に面白かった。
「でも龍驤、恋愛映画とかじゃなくって良かったのか?」
「んー、うち、恋愛とかよく分からんし」
そうなの?
「正確には、恋愛映画とか恋愛小説とかが分からんのや。何で皆んな、あんなにうじうじ悩むん?好きな人に好きって言えないもんなんか?」
あー、これはサバサバ系女子ですわ!
「うちは後ろ暗いこと何にもあらへんから、司令官に真っ直ぐ好きって言えるで!」
「そうか、龍驤は真っ直ぐな女の子だな。好感が持てるよ」
「うちも司令官の事、大好きや!!」
やはり圧倒的美少女。真っ直ぐ、一本気な女の子だ。恋に悩む女の子も可愛いけど、こうやって真っ直ぐ向き合える女の子も可愛いし、かっこいいと思う。
さて、昼も過ぎて良い時間。
おやつ食べたい。
「龍驤、おやつ食べよう」
「せやな。……そう言えば一階にドーナツ屋あったな、行こか」
おっ、ドーナツ。良いね、日本のドーナツは……、ってかお菓子全般が甘さ控えめだよね。それが良いんだけど。いや本当に、日本国外のお菓子は甘過ぎてなぁ。それはそれで美味いんだけどね。
「さて、ミスドミスド、と」
二人で10個ずつくらいか、ドーナツを買って、またもやそこらのテーブル席に着く。
「「いただきます」」
「美味い、美味いな」
「このチョコのついたオールドファッションが好きなんよー」
「俺はこの、チョコついたフレンチクルーラーかなー」
「もちもちしたやつも好きやわー」
「カスタード入ったやつも好き」
「あ、司令官、口元にクリームがついとるで?……はい、取れたで」
機械的なイチャつき(二回目)。
「ん、甘い」
まるで当たり前のように、俺の口元のクリームを掬って舐める龍驤。特にドキドキとかはない、気取らないイチャつきだ。
乙女チックなアレはないのか。
「まあ、その辺が龍驤の良いところだよな」
「?」
「じゃ、司令官、また後でな!」
「おお、今晩も飲もうな」
ブンブン手を振る龍驤と別れる。
この別れのワンシーンすら、葛藤の一つもないんだ、龍驤は。今夜は帰したくないとか、お前と結婚するのは俺だと思ってたとか、そう言うのがない。
さっぱりしてんな、流石龍驤。
やはり龍驤は、病んでいないのでは?
病み尽くしの中で清涼感と言える存在だな。
艦載機での監視はしてくるが、まあ、誤差の範囲だろう。
病んでない子もいる!希望はここにある!!
「ふふふ、提督。龍驤ちゃんとのデート、楽しかった?」
ヒェッ……、陸奥……!!
もう夜だ。陸奥の気を鎮めるのに時間がかかった。
危ないところだった。
これでもかってほど乳を揉んだら解放されたが。
「司令官!」
「どうした龍驤」
そして、ここは居酒屋鳳翔。丁度、龍驤とエンカウントしたところだ。
「見てたで〜!陸奥のおっぱいを!!」
「揉んだが、問題でも?」
「むむむ!当てつけか!揉むほど無いうちへの当てつけかー!!」
「いやいや、そんなことはないよ」
そんなこたぁ無い。
「……揉んで」
「は?」
「うちのも揉んで!!」
「まあ、良いけど……」
おっぱいは心で揉むもの。貧乳でも愛撫はできるッ!!
龍驤を膝の上に座らせて、後ろからおっぱいを撫でる。
「こうか?」
「んっ❤︎ええよ、ええ感じや」
なんと言うか、罪悪感。年端もいかない子を毒牙にかける成人男性の図、な訳だから。側から見たら。
「ちゃんと揉まな、機嫌直らんからな❤︎」
「おう」
平坦な胸を撫で回す。対貧乳の対策もバッチリなのだ。
一通り撫でたあたりで、
「あっ❤︎あっ❤︎あっ❤︎あーーーっ❤︎❤︎❤︎」
足をぴんと伸ばして、どこかへと達する龍驤。どうしたんでしょうね、一体ね?(すっとぼけ)
「満足した?」
「うん……❤︎満足や……❤︎」
ふー、楽しかった。
「そろそろ下ろして良い?」
「ん……、駄目」
そっか、俺の膝の上が気に入ったか。
「今晩は司令官に目一杯甘えるんや❤︎」
この後は、強いて言うようなことはない。それでも、一言言うのであれば……。
この後滅茶苦茶イチャイチャした。
龍驤
サバサバ系女子。
旅人
謎の房中術など、女の子を虜にする技能を多数所持。