旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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ギャグとヤンデレの両立。

難しい。


20話 星屑ロンリネス

…………ん、そろそろ朝だ。起きなきゃな、朝飯は……シャケでも焼くか。

 

 

 

アレ?起き上がれねえぞ?

 

 

 

アレ?なんか、全身がこう、もちっとするものにつつまれてるっつーか、これ、あれ、あれだ。

 

 

 

女だ。

 

いかんいかん、ついにやっちまったか俺?!昨日はそんなに飲んでないはずだぞ?!あー、目を開くのが怖い!!

 

 

 

……ちらっとだけ、ちらっと見るだけなら、

 

「あ、おはよう提督。いい朝だね」

 

「えっ?」

 

時雨、ちゃん?いやいや、嘘だろ、ロリコンじゃないよ俺。

 

「うせやろ?」

 

「昨日は助かったよ、ありがとう」

 

…………あ、そういや、添い寝してたんだっけ?よかった、俺無罪!!これで安心して起き、

 

「……なあ、時雨ちゃん?何で俺の右手は、鳳翔さんの胸の上にあるんだ?」

 

「起きたらそうなっていたよ」

 

うーん、時雨ちゃん、笑顔が怖い!

 

「左手が龍驤の股に挟まってるのは?」

 

「起きたらそうなっていたよ」

 

さらに笑みを深める時雨ちゃん。お化けなんかよりずっと怖い。

 

「隼鷹はなんで俺の股座で寝てるの?」

 

「起きたらそうなっていたよ」

 

あっ、やばい、死んだな俺。

 

「いや、あのね、俺ね、なんもやってないからね?我慢し「青葉、見ちゃいました!」貴公…………!!」

 

パシャリ、という小気味良い音。即座に、写真を撮られたことを理解する。

 

「ちゃうねん」

 

「し、司令官!駄目です!そういうことはしちゃ駄目ですよ!!」

 

「してない」

 

「とぼけたって駄目ですよ!証拠はバッチリ掴みました!!」

 

あ、やばい、すごい変な汗が出てきた。

 

「いや、本当に、誓ってやってない。ヤッてない」

 

「提督、今正直に言えば怒らないよ、僕」

 

それ絶対怒る人の台詞じゃないですかー、やだー。なんと言って誤解を解くか、必死に考える。しかし、その間に皆んなが起きてしまった。

 

「て、提督?その、こう言ったことは困ります……。ど、どうしてもと言うなら、ふ、二人っきりの時に……」

 

と言って、顔を赤らめる鳳翔さん。かわいい、が、今それどころじゃない。

 

「な?!キ、キミィ、あかんってば〜!!ちょっち、ムードってもんがないやん!!いきなりはあかんよ〜!ま、まあ、やっちゃったもんはしゃあないけど…………」

 

いや、下着も脱いでねえだろ、龍驤ちゃん。感触で分かるぞ。なに事後みたいな雰囲気出してるんですかね?

 

「んん〜?なんか頬っぺたに硬いものが…………、!!、て、提督〜!!そ、そういう趣味なのかい?そ、その、初めてなんだから、最初は普通にしてくれない、かな?」

 

思いの外乙女してる隼鷹。違うって、朝だからだよ。

 

「あ、あわわ、へ、変態です!司令官は変態さんです!!スクープ!号外!」

 

真っ赤になりながらも、写真を撮りまくる青葉ちゃん。何故か俺の下半身を重点的に撮っているのは気のせいだと思いたい。

 

「…………」

 

で、さっきから笑顔のまま一言も喋らない時雨ちゃん。洒落になってない。勘弁してくれよもう。

 

「「提督!おはようございます!今日の朝食は私達もお手伝い、しま、す、ね…………?!!!」」

 

入室してきたのは大淀、明石の二人。あー、そう言えば、昨日、夜に酒を飲むから一応起こしに来てくれって言ったっけか?昨日の俺死ね!

 

「「どういう……ことですか?」」

 

わぁ!目に光がない!!

 

「俺は何もやってません!本当です!」

 

あーもう滅茶苦茶だよ(呆れ)。

 

「提督、私は、私じゃ駄目だったんですか?!提督は、私のことが嫌いなんですか?!!私じゃ、提督を満足させられないのですか?!!」

 

「やっぱり、私みたいな、機械弄りばかりの女なんて、かわいくないですよね……。提督は、私なんか……」

 

半狂乱の大淀、青くなる明石。

 

「……提督、僕のこと、子供だと思ってるでしょ?だから、遠慮しちゃったんだよね?ふふ、違うよ、僕は艦娘、年齢なんてものはないんだよ。さあ、遠慮は要らないよ、早く僕を……」

 

暗く澱んだ目の時雨ちゃん。

 

 

 

駄目みたいですね(諦観)。

 

 

 

 

 

と、下北沢で会ったクッソ汚い野獣のような男ならば、そう断じるだろう。だが俺は違う。今まで生きてきた人生の中、この程度の修羅場、多々あった。恐れは、無い!!

 

「もー、誤解だよ大淀!大好きな大淀を差し置いて、そんなことする訳ないだろ?」

 

大淀を抱きしめ、撫でる。

 

「そ、そう、ですか……?そう、そうですね!私の提督は、私を裏切ったりしませんよね!!」

 

よし、次ィ!

 

「ほら、明石、顔を上げて?いつものかわいい笑顔を見せてくれよ!例え明石本人だって、俺の大切な明石を馬鹿にしちゃ許さないぞ?明石はとってもかわいいさ!」

 

明石の両手を包むように握る。

 

「本当、ですか?嬉しいです!大好きです、提督!!」

 

はいラストォ!

 

「ごめんな、時雨ちゃん。子供扱いしてるつもりはなかったんだ。でも、確かに遠慮はしちゃってた、かな?これからは時雨ちゃんともっと仲良くなりたいな!」

 

時雨ちゃんの頬に口付け。

 

「あっ、て、提督……。う、うん、僕もごめん!ちょっと我儘だったね。ぼ、僕も提督ともっと仲良くなりたいな!」

 

大勝利ィ!!丸く収めたぜ!

 

 

 

 

「……提督、私みたいな、貧相な身体の女は、お嫌いなのですね……。そうですよね、もっと若々しくて、綺麗な女の子じゃなきゃ、提督には釣り合いませんよね……」

 

「司令官、キミ!キミなぁ!!ウチとしておいて、他の女を口説くなんて!!ウチとは遊びやったんか?!」

 

「て、提督?嫌だよ?わ、私みたいな女を受け入れてくれるのは提督しかいないんだよ?も、もしかして、さっきので気を悪くしちゃった?ご、ごめんね?わ、私、提督のためならなんでもするから、お願い、私を、私を捨てないでおくれよ、お願いだよ!」

 

 

 

「あああああああああ!!!!!(即死)」

 

「んむぅ〜?うるしゃいぞ〜陸奥〜。私はまだねむ〜い。むにゃむにゃ……」

 

 

 

 

 

 

×××××××××××××××

 

 

 

「あー、朝から酷い目に遭った。なんとか切り抜けられたぜ。鳳翔さんも、もう大丈夫?落ち着いた?」

 

「す、すみません、提督。私、取り乱しちゃいまして……」

 

柄にもないことをしてしまいました。嫉妬だなんて、そんなに若くないはずなんですが……。

 

でも、目の前で、提督が取られてしまうと、そう思ったら、寂しくて、寂しくて、寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて寂しくて堪らなくなってしまって……。

 

私もまだまだ、ですね……。

 

 

 

……きっかけは、些細なことでした。

 

少し前、提督は、私に料理を作らせてくれて……、そして、美味しい、と、そう言ってくれたのです。本当に、それだけのちょっとしたことですが、私にとっては、何よりも嬉しい言葉で……。

 

その後、提督は私と二人でこの鎮守府の食堂を管理するようになりました。

 

やがて、お互いの料理を食べ比べてみたり、教えあったりしつつ、二人で料理をする時間は、私にとって、何物にも代え難いものになりました。

 

それだけでなく、提督は、こんな私のことを、一人の女として尊重してくれる。

 

……「鳳翔さん、相変わらず美人さんだねー!あ、そうだ(唐突)!着物作りたくなってきた!………………はい!これ、今度着てくれると嬉しいな!」

 

……「鳳翔さん、貴女といると、なんだか落ち着くわー。ちょっとここで休憩していい?」

 

……「鳳翔さん、首輪付きが栗拾ってきてさ、沢山あるから栗ご飯にしようよ!鳳翔さんが作る和食、大好きなんだよねー!」

 

そんな提督の言葉を聞く度、私の胸が高鳴る。

 

……「鳳翔さん、洗い物は俺がやるよ。いいって、女の子は手が荒れて大変だろ?俺、防御力高いから任せときなって!」

 

……「鳳翔さん、弓道かい?俺は剣は振ったら折れるし、銃は撃ったら明後日の方向に飛んでくけど、弓はいけるんだよ、どれ…………、ほら、皆中四連継矢。……ん?どうしたの、そんな顔して?」

 

……「鳳翔さん、いつもありがとう。感謝してるよ」

 

そんな提督の言葉を聞く度、私の心が揺れる。

 

 

 

…………恋心。

 

この気持ちは、私をおかしくしてしまった。提督の声を聞く度、笑顔を見る度、触れられる度、えもいわれぬ昂揚感をもたらす。

 

先程、提督が私をなだめる為に抱きしめてくれたときは、あまりの多幸感で気が狂ってしまいそうだった。

 

 

 

……もう一度、抱きしめてもらいたい。あの快楽の海に浸りたい!

 

……これ以上提督にご迷惑はかけられない、我慢しなくては!

 

と、しばし、自問自答する。

 

だが、提督は、ほんのちょっとした仕草や、服装や髪型など、あらゆる変化に気づいてくれる方だ。

 

「うーん?まだちょっと、難しい顔してるね、鳳翔さん」

 

「…………はぇ?」

 

あ、あら?私、また?また、抱きしめられて…………?

 

「我慢しなくていいよ、辛いこととか、悲しいことがあったなら、力になるさ。俺にできることなら、なんでもしますから!!」

 

だ、駄目です、そんな、そんなことをされたら…………!!

 

「わ、私、は、」

 

「……俺は、鳳翔さんじゃないから、鳳翔さんの気持ちは分からないよ。でも、元気付けることくらいは、できるつもりだよ?」

 

 

 

 

 

…………ああ、ここで、ここで私の恋心は、「恋」は終わってしまいました……。

 

溢れるこの想い、我慢することができそうにありません……。

 

今、私の「恋」は、「愛」に…………。

 

 

 

「…………提督?今、なんでもすると仰りましたよね?では、一つ、許してほしいことがあります」

 

「え、それは……」

 

 

 

「……こうして、二人きりの時は、貴方のことを、旦那様と、そう呼ばせていただきたいのです…………」

 

 

 

 

 




時雨
怒ると黙るタイプ。

明石、大淀
好感度カンスト。

鳳翔
ただ単純に愛が重い。

龍驤
妄想型。時折、現実と妄想の境目が曖昧になる。

隼鷹
依存型。自己評価が低い。

青葉
旅人のことを誰よりも知りたいと思っている。

ながもん
癒し。

クッソ汚い野獣
人間の屑。

旅人
問題を先送りにすることに関しては天才。

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