旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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助けて!

ボボボボボ!!

また近いうちに安価取ります。安価は活動報告の方によろしくです。


183話 病みの中に「意志」があるッ!拾いに行こうッ! 後編

はぁ、はぁ、はぁ……。

 

大丈夫、私は大丈夫……。

 

黒井鎮守府にも、きっとまともな所はある。

 

……庭に行こう。

 

今の時間帯なら、確か……、古鷹さんが庭で花に水やりをしているはず。

 

「ふんふんふふーん♪」

 

いた……。

 

鼻歌を歌いながら、ホースで水やりをする古鷹さん。なんていうか、可愛らしいなあ。

 

でも、見た目に騙されちゃいけない。この人も黒井鎮守府の一員なんだ。絶対にどこかおかしいに決まっている。

 

例え、白のワンピースに麦わら帽子の美少女に見えても、中身は何を考えているか分からない、魔物と言っていいだろう。少し失礼な表現だけども。

 

「あの、古鷹さん?」

 

「何ですか、海原提督?」

 

「黒井鎮守府のイメージビデオを作成しろと旅人さんからの指示で……」

 

「撮るんですか?構いませんよ」

 

「ありがとうございます!」

 

そうすると、優しげな鼻歌とともに、水やりを再開する古鷹さん。

 

「ふんふんふーん♪」

 

……可愛らしいなぁ。

 

これでまともな精神ならなぁ……!!

 

おっと、このまま代わり映えしない動画じゃアレだし、質問でもしてみようかな。嫌な予感がするけど。

 

「あの、何故花を?」

 

「え?可愛いじゃないですか、お花。良い匂いもするし」

 

……うん、真っ当な理由だ。

 

「艦娘は五感が鋭いですよね。私と妹の加古は、特に嗅覚が鋭いみたいで、良い匂いのするお花は大好きなんですよ」

 

うん、うん。

 

ちゃんとした話だ。

 

私は今、「会話」できている!!

 

「じゃあその、好きな花は?」

 

「うーん、これと言って好きな花はありませんね。でも、薔薇とか、百合とか、良い匂いのする花が特に好きですよ」

 

「そうなんですか!」

 

良し、この調子で……。

 

と、思った矢先のこと。

 

「古鷹ー、肥料持ってきたぞー」

 

「ありがとう加古」

 

あ、加古さんだ。台車に肥料を乗せて運んできた。

 

「あら?駄目よ加古、ここに骨が残ってるわ」

 

「あ、本当だ。悪い、骨粉用の骨とどっかで混ざったみたいだね」

 

………………骨?

 

い、いや、待て、まだ危ないものと決まった訳じゃない!獣の骨かもしれない!!

 

「あは、あはははは、ひ、肥料はやっぱり、生ゴミから作っているんですよね?」

 

「ええ、生ゴミね」

 

「で、ですよねぇ!」

 

解体した獣の骨ですよね!!

 

「あんな醜い生ゴミから、こんなにも綺麗なお花が咲くんですから、素敵です」

 

醜い、生ゴミ……?

 

「ま、まさか……」

 

「肥料の元は深海棲艦なの」

 

や、やっぱりぃぃぃ!!!

 

「そ、そんな、死体だなんて!」

 

「?、生ゴミですよ?」

 

「おかしいですよ!」

 

「そうなんですか?でも、深海棲艦は生きていようと死んでいようと生ゴミじゃないですか?」

 

「いやそれは、古鷹さんにとってはそうかもしれませんが」

 

「提督に逆らうんですよ?生ゴミじゃないですか?」

 

ああっ、一瞬にして「会話」ができなくなった!!

 

こうなった黒井鎮守府の艦娘は駄目だ、意思疎通ができない!!

 

カメラを構えている春風ちゃんの肩を叩いて合図する。……ここから離れなきゃ。

 

「じゃ、じゃあ、私達はこの辺で!!」

 

「え?まだ全然撮ってないと思うんですけど……?」

 

「いえ!もう十分ですよ!!」

 

これ以上恐怖映像は要りませんから!!

 

 

 

こ、怖かった。

 

……さっきの古鷹さん、顔は笑っていたけど、目の奥底は真っ暗だった。

 

何を考えているのかまるで分かんないよ……。

 

「うう……、取り敢えず、取材しなきゃ」

 

訓練場の神通さん……、は駄目だ、笑顔で凶悪な訓練をしてる。

 

工房の白露型……、も駄目だ、明らかにやばい。

 

ガレージの睦月型……、も駄目、明らかにおかしい。

 

くっ、万事休すなの……?

 

 

 

「……おい、道の真ん中に突っ立って、何をやっている」

 

 

 

「えっ、あっ、ご、ごめんなさい」

 

ええと、初月、ちゃん?

 

防空駆逐艦、秋月型の三人だ。

 

「さあ、秋月姉さん、照月姉さん、勉強の時間だ」

 

「うう、本当にやらなきゃ駄目?」

 

「駄目だ。今のうちに勉強しておかないと、将来困るじゃないか」

 

「将来なんて……」

 

「戦争が終わっても、僕達の人生は終わらないんだ。先のことも考えなきゃいけないだろ?」

 

あっ、なんかいい事言ってる……?ひょっとしてまともな人なんじゃ……?

 

うーん、よし、駄目元で取材してみよう?

 

「ちょっと良いかな、あの……」

 

と、イメージビデオ作成について伝えると、

 

「ん、ああ、構わない。ただ、勉強をするだけだから、見ても面白いものじゃないぞ」

 

「いえいえ!良いんです!平和な動画が撮れれば!!」

 

「そ、そうか」

 

そんなこんなで着いて行った先は秋月型の私室。全体的に質素な感じの部屋だ。

 

三人は、部屋の中央の丸テーブルに集まって、勉強を始めた。

 

主導しているのは初月ちゃんだ。

 

「照月姉さん、そこ違う」

 

「あ、本当だ、ありがとう初月」

 

ちょっと覗いてみよう……。

 

うーん、高校レベルくらいかな?結構ちゃんと勉強してるんだ。

 

「あの、ちょっと聞いて良いかな?」

 

「何だ?」

 

「勉強して、どうするの?」

 

正直な疑問だ。勉強してどうするつもりなんだろう?

 

「取り敢えず、大学は出ないとな。学歴がないとこの先困るだろ」

 

大学!え、偉いなぁ、先のことまでしっかりと考えてるんだ。

 

「その後は?」

 

「提督と共働きで、夫婦として生きていく。子供も欲しいから、育児休暇がとれる会社が良いな」

 

へ、へえ。

 

「そして都心から少し離れた海の見える土地に家を建てて、ペットに大きな犬を飼って、家族皆んなで一生幸せに暮らすんだ。僕自身は子供は二人欲しいな。男の子と女の子一人づつ。まあ、姉さん達の子供も合わせれば大家族になるだろうから、家は結構大きい所になるだろうな。だから、相応の経済力が必要なんだ。今の貯金に数百万あるけど、これだけじゃ足りないだろうしな。その為にも学歴を積んで……」

 

うう、将来計画がやたらとリアルなんだけど……。

 

「……それで、子供が大きくなったら、年に一度は旅行をするんだ。提督は外国の文化や外国語に堪能だから、海外に行くのも良いかもしれない。いつもは海の見える家に住んでいる訳だから、観光先では綺麗な街並みを見るためにヨーロッパなんて良いかもしれないな。それで……」

 

お、重いッ……!!途轍もなく重い!!愛が重い!!!

 

頬っぺたに手を当てながら、嬉しそうに話し続ける初月ちゃん。

 

これはこれで、ある意味でやばい!

 

逃げなきゃ延々と話すよね、これ。

 

「う、うん!そうなんだ!ありがとう!十分撮れたから、私達はこの辺で!そ、それじゃ!!」

 

「だから、頭のおかしいうちの艦娘達とは違って……、ん?もういいのか?そうか。じゃあ、また今度」

 

 

 

ここも離脱……。

 

黒井鎮守府の深い闇……。

 

やはり、一筋縄ではいかない!

 

そう、ですね、朗らかな人。朗らかな人を探しましょう。

 

そう思って歩き回ること数分。私達は埠頭に辿り着いていた。

 

「あれは……」

 

そこには、折りたたみ椅子に腰掛け、釣り糸を垂らす天龍さんの姿があった。

 

「ん、なんか用か?」

 

天龍さん……、天龍さんはまともな方、かなあ……。

 

話してみよう。

 

「あの、取材を……」

 

と、イメージビデオの件について伝えると、

 

「おお、良いぜ、何でも聞きな」

 

快諾してくれた。心は広いんだよなぁ。病んでさえなければ、皆んな良い人なのに……。

 

「天龍さん、釣りが好きなんですか?」

 

「ああ、アウトドア全般だな。でも、釣りが一番好きだ」

 

「なるほど、何を釣るんですか?」

 

「何でも釣るぜ?今日はサビキやってるけど、この前は提督とカジキ釣りに行ったしな」

 

「カジキ釣りを?」

 

「おう!ありゃあ楽しいぜ?かなり暴れたけど、ま、そこは艦娘の腕力で押さえ込んで一本釣りだ」

 

和かに語る天龍さん。釣りかぁ。実家を思い出すなぁ。私の実家、漁師だから。

 

「でもまぁ、一番釣りたい獲物は、釣れないままなんだけどな」

 

「へぇ、何を狙ってるんですか?」

 

「決まってんだろ?提督だ」

 

「アッハイ」

 

さて、春風ちゃんに合図をしてビデオを切る。いかなる理由があっても、黒井鎮守府の艦娘が旅人さんの話をし始めたらもう駄目。深い闇に包まれる。

 

「提督、カッコいいよな……。俺のものになってくれないかな……」

 

「い、いやあ、ちょっと分からないですね……」

 

曖昧に言葉を濁しておこう。

 

「あ"?分かんねえのか?提督は最高の男なんだよ」

 

ひいっ!やっぱり駄目だ。はっきり言おう!

 

「は、はい!そうですね!私もカッコいい人だと思います!」

 

「んだと?提督に手出ししたら……」

 

「わ、分かってます!分かってますから!手出しなんてしませんから!!」

 

どっちにしろ怒るんじゃないですか?!

 

こんな時は、えーと、そうだ!

 

「良いですか天龍さん!わ、私は旅人さんのこと、尊敬してはいますけど、異性としてどうこうってつもりはありません!」

 

兎に角、異性として興味がないと言っておけば……!!

 

「……そうかよ、ならいい」

 

良かった、信じてもらえた……。

 

「どの道、提督に手出しした奴は殺すんだ。好きにしろよ。俺は最終的に提督が側にいてくれりゃそれで良いからよ」

 

良くなかった、私殺される……。

 

い、いや、大丈夫、手出ししてないもの、しないもの!

 

「大丈夫です!手出ししませんから!」

 

「だから、良いって。問題があれば殺すから」

 

う、うう、目が本気だ……。

 

「わ、分かりました」

 

もう、無理だ。

 

ビデオを返そう。

 

イメージビデオなんて撮れなかった。

 

私は何も見てない。

 

今日あったことは忘れて、音成鎮守府に帰ろう……!!

 




重巡軽巡
忠誠心と恋慕がない交ぜになった特異な感情を向けてくる。

駆逐艦
八割サイコパス。

海原守子
この後、ビデオを返却して音成鎮守府に逃げ帰る。

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