旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

160 / 593
時間と金が欲しい。


160話 熱く激しく求めてくれ

よう、提督。

 

「ああ、おはよう、木曾」

 

それで、早速だが、今日の予定はどうするんだ?

 

「予定も何も……、『これ』がある以上、外出は出来ないよね」

 

そう言って、腕の手錠を見せてくる提督。

 

……すまない。それは外せないんだ。少しの間だけ、我慢しててくれ。

 

「ああ、いや、分かってるよ。皆んな寂しかったんだよね。暫くは外出しないからさ、安心してよ」

 

……ああ。

 

……先日、提督が五日間の旅に出た時の話だが、俺は……、寂しさのあまり、正気を失っていて、出撃も碌にできない有様だった。

 

全く、自分の弱さに反吐が出る。

 

提督を支えると決めたのに、未だに守られてばかりだ。「寂しかったよな、ごめんな」と頭を撫でられ、ガキのようにあやされる自分が許せない。

 

何て不甲斐ないんだ、俺は……。

 

「……偉いな、木曾は。俺に気を遣ってくれるのか」

 

やめてくれ、当たり前のことだ。

 

「いや、それでも嬉しいよ。さあ、朝早くから悪いが、厨房に行こうか」

 

……ああ。料理は出来ないが、野菜の皮剥きくらいは手伝うからな。

 

 

 

「助かったよ、木曾。ありがとう」

 

何言ってるんだ、提督。俺はちょっと手を貸しただけだ。鳳翔や間宮の方がずっと役に立ってただろ。

 

「それはそうだ。人には得意不得意がある。差があるのは仕方ないことだ。でも俺は、手伝ってくれたこと自体が嬉しかったんだよ」

 

そんなの……。

 

「綺麗事かな?」

 

ああ……。そんなのは綺麗事だろ。邪魔だったんじゃないのか?

 

「俺はかわい子ちゃんと厨房に立ててラッキー、君は俺と厨房に立ててラッキー。それで良いじゃん?」

 

……そうだな。それで良いか。だが覚えておいてくれ、俺は提督の役に立ちたいんだ。もっと俺を使って欲しい。

 

「んー、じゃ、おいで」

 

ああ、何だ?

 

「えい」

 

お、おお?何なんだ?急に抱きしめてきて?

 

「んんー、あったかいな木曾は。はあー、あーうー」

 

ど、どうした?

 

「セクハラした」

 

セクハラ?セクハラになるのか?俺は抱きしめられて嬉しいんだが。

 

「よっしゃ、メッチャ元気出たわありがとう」

 

そ、そうか?そういうものなのか?

 

「スキンシップは大事、だろ?」

 

あ、ああ!そうだな!スキンシップは大事だな!!

 

 

 

「スキンシップは大事なんだが……、手を繋いだまま歩くのはどうなの?」

 

……嫌か?

 

「そんなことはないよ」

 

……なら、良いだろう?俺とお前の仲じゃないか。

 

「……ただ、手を繋ぎたいだなんて、木曾は可愛いこと言うなー、と思ってさ」

 

意外か?

 

「いや?そうでもないな。なんたって、木曾は女の子だし」

 

女の子、か。

 

「うん、可愛い女の子だ」

 

はは、そんなことを言うのは提督くらいだ。街に出ても男と間違えられるくらいだぞ、俺は。

 

「見る目がない人間なんて沢山いるさ。少なくとも俺は、木曾の良いところ、沢山知ってるよ」

 

なら、それで良いさ。有象無象がどう思うかなんてどうだって良い。提督に見てもらえるなら、俺はそれだけで良い。

 

「……そっか。でも、世界は広いんだ。俺以外にも、木曾の良いところを分かってくれる人もいるよ」

 

要らないさ。お前がいればそれで良いと言った。……いつも、俺以外にも良い人が、などと言うが、何故なんだ?俺が鬱陶しかったか?

 

「いやいや、そんなことないよ。そうじゃなくってさ……。確かに、俺と艦娘の皆んなとの出会いは幸せなものだと思ってるよ?でも、幸せってのは、探せばいくらでもあるものなんだ。だから、皆んなにも、幸せを探して欲しくってね」

 

与えられる幸せに満足せず、より大きな幸せを探し求めろと?

 

「そう、なるのかな?」

 

成る程、俺の幸せか……。提督の言う通り、俺自身が幸せを探すのも重要かもしれない。だが、少なくとも、提督の側にいれるだけで俺は満足なんだがな。

 

「……やっぱり、可愛い女の子だな、木曾は」

 

 

 

『テーテレッテー、テーテーテー』

 

おお、凄いな!

 

「映画、あんまり観ないの?」

 

ああ、そう言えば観たことが無かったが……、いやぁ、面白いな!にしても、考古学者とはこんな仕事なのか。大変なんだな。

 

「いや、それは映画だから」

 

鞭は使わないのか?

 

「フェドーラ帽も被ってないよ」

 

そうなのか……。

 

「まあでも、世の中が不思議で溢れてるのは本当かな」

 

じゃあやっぱり、聖杯とかもあるのか?

 

「ああ、あるぞ。うちにある。使うとダンジョンへの道が拓けるだけだが」

 

クリスタルスカルも?

 

「聖者の頭蓋なら。使うとこれまたダンジョンへの道が拓ける」

 

す、凄いな。それはなんとも……、

 

「旅、してみたくなるだろ?」

 

……ああ、そうだな。

 

まだ見たことのない何かを探しに行きたい、その気持ちが少し分かった気がする。

 

だから提督は旅に出るんだな。

 

「ああ!未知の世界は最高だろ?」

 

次、旅に出るときは、着いて行って良いか?

 

「そうだね、今度、皆んなで一緒に旅行にでも行こうか」

 

 

 

「お昼、どうだった?」

 

ああ、美味かった。いつもありがとう。

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。さて、午後はどうしようか?何かやりたいこととかはある?」

 

いや、ないな。暇な時間にやることと言えば鍛錬くらいだ。

 

「んー、鍛錬以外にも何か趣味を持ってみるのも良いと思うよ?」

 

そうだな……、さっき見た映画は面白かったな。

 

「じゃあ今日は、映画を観て過ごそうか」

 

良いのか?俺に付き合う必要はないぞ?提督にやりたいことがあるならそっちを優先してくれ。

 

「大丈夫。今日は映画を観たい気分だから。さあ、行こうか」

 

そう言って、自室に入ってテレビを点ける。姉貴達はいない。恐らくは休憩室だろう。

 

「はい、ポップコーンとコーラ。映画観る時のしきたり」

 

へえ、そうなのか。

 

「何でか分からないけど、食べたくなるんだよね、キャラメル味のポップコーン」

 

 

 

「そろそろお風呂入ろうか、木曾」

 

ん、ああ、そうだな。映画に夢中になって忘れていた。

 

ちょうど終わった映画を消して、と。風呂に向かうか。自室にもシャワーはあるが、どうせなら、提督が態々作った大浴場が良い。

 

自室から数分歩いて……、ここだ。因みに、大浴場の裏には露天風呂がある。至れり尽くせりだな。

 

「っと、手錠があるから脱ぎづらいな、一旦外すよ……、よし、はい」

 

よし、俺も脱いで、と。

 

さあ、風呂だ。

 

「………………きゃああああ!!!」

 

……何だ?

 

「ししししし、司令官!!!な、何故ここに?!!!」

 

「朝潮か。急に大きな声出しちゃいけないよ、皆んながびっくりするからね」

 

「はい、すいません……、じゃなくって!何故女湯のここに司令官が?!」

 

「いやぁ、本当は俺も遠慮してるんだけど、皆んなの強い要望があってここに」

 

「?!……、?!!!」

 

確かに、初見では困惑するか。だが、提督と一緒に入浴したいと言う欲求は、ここの艦娘なら当然あるもの。

 

「ごめんね、気を悪くしたなら謝るし、すぐに出て行くから」

 

「い、いえっ!何も問題ありませんっ!む、むしろ、光栄です!」

 

例え新入りでも、それは同じだ。

 

「本当にごめん、なるべく後ろ向いておくから」

 

「いえっ!司令官さえ宜しければ、朝潮の身体を、どうぞお好きなようにっ!!!み、見るのも!ふ、ふ、触れるのも!司令官の思うがままにして下さい!!!」

 

「お、おう」

 

……ほらな。

 

「……ん、どうした木曾?」

 

いや?手が早いな、と思ってな。

 

「あー、悪かったよ。新入りだけじゃなく、君もちゃんと相手するさ」

 

本当か?

 

「もちろん」

 

そう言うと、提督は俺の肩を抱いてきて……、

 

んっ……❤︎

 

優しい、口付け……❤︎

 

「ふう、満足かい?」

 

まだだ、もっとだ、提督……❤︎

 

そんなものじゃ満足できない。もっと強く、激しく……❤︎

 

俺を求めてくれ……❤︎

 




木曾
割と乙女。

朝潮
初めて見る異性の身体に興味津々。

旅人
本来は外でドラム缶風呂に入っていたが、艦娘達からの要望で大浴場で混浴が基本に。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。