旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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軟禁される旅人。

これもうわかんねぇな。


158話 ただいま

『司令官帰宅まで後……!!、司令官、お帰りなさい!!!!』

 

「ん、ああ、ただいま」

 

瞬間、鎮守府中が揺れた。

 

……気がした。けど、あながち間違いでもなさそうだ。

 

はいまずトップバッターは島風。

 

「提督ーーーーーー!!!!!」

 

「ぁ"んっ!!!」

 

まるでミサイルだ。

 

続いて駆逐艦。

 

「提督!!!!」

 

「司令官!!!!」

 

「司令!!!!」

 

「ぉお"ぉん!!!」

 

直撃。狂気のスピードから繰り出される抱き着きは凶器である。思わず、死にかけのニャン◯ゅうみたいな声が漏れた。

 

軽巡重巡と、速い順に突撃してくる。

 

部屋は既に人口で飽和状態。

 

うん、死ねる。

 

「待って、待って、お願いだから」

 

揉みくちゃにされてるよ!来日したハリウッドスターかな?なお威力。

 

「はっ、提督!怪我しているじゃないか!待っていろ今私が」

 

きゃー長門さん男前ー。返しがついた矢を引っこ抜くのは治療とは言わないぞー。そして素早く回収される俺に刺さっていた矢。きっと誰かのコレクションになったんだろうな。ほら、あれだ、ロックスターのギターピックみたいな。

 

「はむ、ちゅ、れる……」

 

闇喰らいと称される、強力な闇の力を持つ黒龍ミディールに囓られた傷口に舌を這わせているのは夕立。え?何々?俺の血美味い?そっかー。

 

「提督っ……!必ず帰ってきてくれると、私は信じてました……!!」

 

パンツ返して大淀。

 

と、まあ、こんな感じで。所謂大歓迎状態。いやー、モテモテですわ。笑える。

 

あれ?見れば、明らかにやつれている子もちらほら。ある程度は予想は出来てたけどさぁ。俺がいない間ずっとダウンしてたとでも言うの?嘘やん。笑えねえ。

 

「宴だ、宴の準備をしろ!提督の帰還をお祝いするんだ!!」

 

神かな?人を神仏か何かのように扱うのはNG。悪いが、俺は人だ。

 

「はっはっは、良いよそんな。お祝いなんて」

 

「いや、そう言う訳にもいかん。貴方が無事帰ってきてくれたのだ。全力で祝う他ない。私達にとってこんなに嬉しいことはないのだからな」

 

そう?まあ、そこまで言うなら、良いけど……。

 

「さあ、提督を宴会の会場までご案内するんだ。陸奥」

 

「分かったわ」

 

すると、どこからか取り出した手錠を片方は俺の、もう片方は自分の腕にかける陸奥。

 

「はは、何これ。アクセサリーにしちゃデカくない?」

 

それに、俺の趣味じゃない。

 

「さ、行きましょう、提督」

 

そのまま俺の手に指を絡める陸奥。

 

良いけど、さぁ。

 

「……シャワーでも浴びてきたら?」

 

返り血塗れじゃん、君。また自棄になって深海棲艦を殴り殺してきたな?女性に多い、怒るとヒステリックになるやつかな。まあ、被害に遭うのは深海棲艦だし、困ることでもないんだけど。

 

取り敢えず、顔を拭いてやるか。

 

「あ、ん、ありがと」

 

拭きながら撫でる。

 

陸奥は自分のプロポーションに自信を持ってるからな。褒めたり触ったりすると喜んでくれるのだ。

 

可愛いやつめ。このこの。ここか、ここがええんか。

 

「……で、この手錠は?」

 

「……行きましょう、提督」

 

あ、そっかあ。スルー推奨かぁ。

 

まあ、外そうと思えばいつでも外せるし。

 

とか思いつつ、陸奥の誘導に従って移動。どこ行くんだ、食堂か。既に宴の準備は出来ているみたいだ。鳳翔達が三分でやってくれました。

 

ぞろぞろと集まって来る艦娘。……出入り口や窓の前に立つのは、俺を逃すまいとしているからだろうか。だろうな。

 

「さあ、座って、提督。お祝い……、の前に治療ね。全くもう、こんなにいっぱい怪我して……」

 

そう来ると思ってある程度は治してある。帰って来る前に、回復魔法やら奇跡やら薬やらで、四肢の欠損や主要臓器は治しておいた。自然治癒とは違って、負担とコストがかかるから、急速な肉体の再生はあまりしたくなかったが。

 

「治療と言っても、特にやることないんだけど。一応、大きな怪我は治しておいたし」

 

それに、どうせほっときゃ治るからね。

 

しかし、

 

「駄目よ」

 

と、服を脱がされ、包帯を巻かれる。

 

もちろん、服は回収された。

 

「いくら治るからって言っても、怪我して良い訳じゃないわ。本当に、本当に……、本当に本当に本当に本当に心配だったのよ?」

 

「そ、そうか」

 

愛されてるな俺。

 

こんなに大切に思ってもらえるなんて、俺はきっと特別な存在なのでは(ヴェルタースオリジナル感)。

 

よし。

 

「ありがと。包帯はこんなもんで良いよ。さて、俺も料理を手伝「良いから。座っててちょうだい」……はい」

 

目力。

 

目で制されてしまった。

 

「提督は何もしなくて良いの。ね?」

 

ね?じゃないが。

 

「はーい、提督ー。あーん」

 

「あ、あーん」

 

いつの間にか隣に座っていた最上に餌付けされる俺。うん、料理は美味しい。

 

「提督ー、この北上様が肩揉んであげるよー」

 

「お、おう」

 

肩こりとかそういうものは一切ないけど。

 

「五分経ったよー、交代して、雪風ちゃん!」

 

「うー、分かりました、交代します!」

 

雪風と入れ替わりで膝の上に座る文月。

 

何なのだこれは。どうすれば良いのだ。至れり尽くせりで堕落しそうだ。いや、人間的には既に堕落しているんだが。

 

「いかんいかん、これ以上駄目人間になったら手が付けられん。俺を甘やかさないでくれたまえ」

 

「あらあら、良いのよ?少しくらい駄目な方が、親しみがあって良いと思うわ」

 

「いやいや、そんなそんな」

 

「良いんだってば、ほら!」

 

そう言って、俺の片手を自らの豊満な胸に持って行く陸奥。ナイスおっぱい。

 

「……女の子に囲まれて、良いもん食いながら酒盛りって、完全に悪いやつだよな」

 

「提督は悪の組織のトップなんでしょう?じゃあ、問題無いんじゃないかしら」

 

一理ある。既に悪の組織だった。

 

「なら良いかー!酒持ってきてー!!」

 

「はーい、只今ー」

 

そうだよな、うん。

 

俺、この五日間頑張ったしな。これくらい許されるよな。

 

さあ、酒だ!!!

 

明日の朝まで飲むぞー!!!

 

 

 

×××××××××××××××

 

「……ん、おはよ、あれ?」

 

「おはようございます、提督」

 

「あ、ああ、おはよう大淀。なんか、これ、空間が……、閉鎖されてる?」

 

「……ああ、それについては事故、だそうです」

 

事故ですよ、提督。ええ、事故です。

 

「事故?」

 

「夕張さんが、空間操作関係の機材を誤って操作し、空間を歪ませてしまったとか」

 

「……ふーん。まあ、そうだな。確かにこれじゃ、迂闊に空間湾曲で転移出来ないな」

 

……良し!

 

「その気になれば抜け道はあるけど……、やるつもりはないよ。暫くの間は、外出を控えるね」

 

「そうしていただけると、助かります」

 

そうですね、暫くの間は。

 

提督にいてもらわなければ。

 

「……だから、手錠は外してもらって良いかな?煩わしいかなーって」

 

……?

 

何を仰っていらっしゃるのか、分かりかねますね。

 

「取り敢えず、朝食にしましょう?厨房の方、私もお手伝いしますから」

 

「なら、尚更外さなきゃ。えい」

 

「あーーー!!!」

 

「待って、分かった、分かってる。……えい」

 

あ、足にかけ直した……。

 

「五日間くらいは、こうして繋がれたまんまでOKかね」

 

「……少なくとも、一週間はずっと外出をしない、ですか?」

 

「増えてるんだが。……まあ、それで良いよ。実際、倒れた子とかも多かったらしいじゃん?俺のせいで泣いた子がいるってんなら、償いは出来る限りするさ」

 

提督……!!

 

なんとお優しい方なのでしょうか!

 

「ありがとうございます!では、早速厨房へ!皆んながお腹を空かせて待ってますからね!」

 

「おう」

 

しかし、この手錠で提督と繋がれている感じ……。運命の赤い糸のようで嬉しいですね。

 

だからこそ、この状況を羨む子もいるでしょう。

 

ですから、皆で話し合って、なるべく平等になるように、提督と手錠で繋がる役を決めなければなりません。

 

……本当は抽選などで決めたいのですが……、そうすると、雪風ちゃんばかりが当たりを引き当ててしまいますから。

 

「と言うわけで提督、厨房の後は会議にご出席なさるよう、お願いいたしますね!」

 

「え、うん……、何の?」

 

「それはもちろん、提督を身体で繫ぎ止める役割の方を決める会議ですよ」

 

「言い方どうにかならない?」

 

「お好きな艦娘に護衛を」

 

「なるほど」

 

ですが、提督自身に無理矢理に選んでいただくと、角が立ちますから。結局は私達が選出するしかありませんね。

 

さて、どうしましょうか……。

 




陸奥
案の定、旅人に会えないストレスから海で大暴れ。

大淀
復活。

旅人
ただいま。

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