旅人提督の世界征服までの道程   作:ハードオン

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評価イキスギィ。

こんなssよりミスター味っ子とか食キングとのか方が面白いですよ。

時間なくて死にそう。実は結構ギリギリです。誤字多くてごめんね。

追記:一週間のおやすみ。詳しくは活動報告で。


150話 料理人の心得

「利根姉さんを助けて下さってありがとうございます。その上、ここで雇って頂けるなんて……。今まで人を傷付けたきた贖罪のため、貴方へ恩を返すため、誠心誠意お仕えします」……、そんなことを言われて早一週間。

 

利根、筑摩を含めた新入りの艦娘は、圧倒的な教官力を持つ神通、鹿島の手により、パイナップルアーミー並の速度で急成長させられている。

 

だが、艦娘も人間と同じく、疲れを感じる生き物。息抜きは必要だ。特に、神通のスパルタも真っ青な殺人トレーニングは心身をぶち壊す。

 

故に、新入りの艦娘には週二日の休日を与える事にした。平日は朝から晩まで訓練してるんだ、休んだってバチは当たらないだろう。

 

「提督!遊んで!」

 

「はっはっは、しおい殿、痛いでござる。痛たたた、痛い痛い」

 

だが俺で遊んで良いとは一言も言ってない。痛たたたたた、引っ張んないで引っ張んないで。

 

……しおいは、その明るい性格から早くも鎮守府に馴染んだみたいだ。

 

「提督さん、そろそろ三時ですし、一緒におやつを作りませんか?」

 

こっちの速吸も大分馴染んだ。料理が上手く、厨房に立てると言うのも早く馴染んだ一因だろう。

 

「そうだねぇ、クッキーでも焼こうか」

 

クッキーは初心者向けながらも奥が深いものだ。今回は、そうだな、アイシングクッキーにしようか。

 

 

 

「と、言う訳で。やって参りました厨房。……間宮と伊良湖は何でいるの?」

 

「え?だって提督が洋菓子を作ると聞いて」

 

「今後の参考にしようかな、と!」

 

そんなキラキラした目で見られてもなぁ。ただクッキー焼いて、アイシングクリームで絵を描くだけだし。凄くはないと思うよ。

 

「特別なことはしないよ?先ずはクッキーを焼きます」

 

「待って下さい!」

 

「何?」

 

どうしたの速吸。俺、なんか悪いことしちゃった?

 

「……いつ焼いたんですか?」

 

「今」

 

「……?!!」

 

「料理スキルでの料理は1ターンで出来るからね仕方ないね」

 

「1ターン?!!」

 

そう、1ターン。え?1ターンで通じない?一歩歩くのに必要な時間のことなんだけど。ノースティリス単位じゃ駄目?

 

「え、いや、だって、クッキー焼くなら小麦粉をバターを混ぜて砂糖と卵を入れて、生地をなじませてオーブンで焼いて……、一時間はかかりますよね?」

 

「いや、1ターンで足りる」

 

「1ターン」

 

1ターンあればパフェまでなら作れるでしょ。何言ってんの?

 

「で、でも、これ、フードプロセッサーですよね?どうやって焼いたんですか?」

 

「調理器具である以上、概念的に料理は出来るよ」

 

「概念」

 

そう、調理器具という概念がある以上、流し台でステーキを焼くことも、バーベキューセットでケーキを焼くことも十分可能だ。

 

「そ、それに、材料は?木の実を使ったように見えましたけど、木の実だけじゃ、こんなちゃんとしたクッキーはできませんよね?」

 

「材料はアピの実だよ。食べると、器用、習得、魔力のステータスが鍛えられる」

 

「アピの実」

 

ノースティリスでよく採れる木の実だ。そこらじゅうで拾えるから初心者冒険者のお供って感じ。

 

「わ、分かりました。……でも、木の実一つでクッキー何枚かって、おかしくないですか?質量、変わっちゃってますよね?」

 

「料理すれば原材料より重くなるのは仕方ないでしょ。アピの実一つが0.04sに対して、調理後の重さは0.5s固定なんだし」

 

「0.5s」

 

そうだ。例え何十sあるドラゴンの肉だって、ステーキにしてしまえば0.5sに強制的に変化するんだ。

 

sってのはノースティリスにおける重さの単位で、鉄のロングソード一本でおよそ4.2sくらい。

 

「……提督、何だか頭が痛くなってきました」

 

「大丈夫?」

 

おでこに手を当てる速吸。え?なんか俺、おかしなこと言ったかな……。

 

「提督、こうですか?」

 

「そうだよ間宮。中々、料理スキルが高まってきたじゃないか。勿論、普通の料理法も出来なきゃ駄目だけどね」

 

しっかりと心を込めてはいるが、ノースティリスの料理では限界がある。繊細な料理にはあまり向かないんだよね。だって冒険者の技だもん。

 

……でも、ご家庭で作るクッキーくらいなら十分に対応できる。

 

「味見してみて」

 

「はーい。さくっ……、美味しいです!」

 

よし、しおいの口に合ったみたいだ。

 

「速吸も」

 

「は、はい……。あ、美味しい?!」

 

過程はアレだが、ちゃんと美味しく作ってはいるんだ。素材の味を活かす系のアレである。

 

「それに、今回はアイシングクリームでのデコレーションだから」

 

クッキー自体は凝る必要がないよね。

 

「クリームでデコレーション……、絵を描くんですね?」

 

「そうそう、こんな感じで」

 

ビール瓶の底くらいの、少し大きめのアピの実クッキーにクリームで絵を描き込んでいく。

 

「あまり気負わないで、楽しんで」

 

固めのクリームで縁を、柔らかめのクリームで色をつけて。

 

「でも、美味しくなるように気持ちを込めるのを忘れずに」

 

素早く、繊細に。

 

「結局のところ、料理は愛情だからね。たかがクリームでお絵描きするだけなんだけど、美味しく食べてもらう気持ちは大切で……、っと、できた」

 

「……?!、これ、私ですか?艦だった頃の……」

 

そう、海に浮かぶ補給艦、速吸を描いてみた。

 

「わあ!こっちは私です!」

 

運河の伊401も別で描いた。

 

「提督すごーい!写真撮ろーっと!」

 

 

 

「え?え?普通に神業では?」

 

「速吸ちゃん」

 

「間宮さん?」

 

「提督だから仕方ないと思って、納得して」

 

「は、はあ……」

 

「提督は定期的に奇跡を起こして毎日神業を見せるので、驚かないように慣れて下さい、としか」

 

「伊良湖ちゃん……」

 

申し訳ないが、人をびっくり人間みたいに言うのはNG。

 

「うわぁ、右手と左手で別々の絵を……。人辞めてませんか?」

 

いや、ちょっとは辞めてるけどさ、大体は人間だよ。四捨五入すれば人だから人とカウントしてくれ。……あれ?いや、仙人は人間とカウントしていいよな?そうじゃなきゃ俺人間じゃないぞ?……まあ、ほら、そう言うのは気の持ちようだろう。

 

「俺は人間だよ」

 

そう、人間だ。概ね人間だから人間だ。約人間。

 

「人間の動きでは……」

 

人間だよ。

 

 

 

×××××××××××××××

 

「フゥー!テンション上がって来たァ!お菓子作りたーのしー!!あはははははは!!!」

 

「ヒエッ……」

 

わあ、ハイになってる……。

 

提督さん、何でも出来るんだなー。空を飛んで瞬間移動して、艦娘と一緒に出撃して、建物を建てて、自爆したりして、その上料理も作る……。控え目に言って人じゃない。

 

「人間だよ」

 

………………。

 

そ、それに、そのどれもが一流。料理だって凄く上手い。

 

「いやいや、俺なんてまだまだ。世の中にはもっと上手い人が」

 

「その、世界で一番じゃなくても、上手いものは上手いと思います!」

 

何で変なところで謙虚なんだろう……。プロ級なのに。

 

「いやね、俺はあくまでプロ級ってだけで。世の中には俺が逆立ちしたって敵わない料理人が何人もいるからなぁ。いやぁ、味吉さんとか、北方さんとか。無理無理、敵わんね」

 

だ、誰ですか?

 

「あー、確かに。日之出食堂、凄かったですね」

 

「五稜郭亭の料理も神懸かり的な美味しさでした」

 

……成る程、自分より上手い何人もの料理人に会ったから、自分の料理がそれ程でも無いと思っているんですか。

 

 

 

……何で超一流の料理人と同じ物差しでものを語るんでしょうか、この人達は。自分の本業を思い出して下さい……。

 

「その、提督さんは提督ですよ?料理の腕前なんて……。間宮さんも、艦娘が本業ですし」

 

「え?俺の本業は旅人だよ?」

 

「あ、そう言えば私、艦娘でした」

 

えー。

 

「なんて言うか、その……」

 

良いん、ですかね?

 

「まあまあ、皆まで言うな。意識の低さは重々承知。……最近は最早趣味で提督やってるからな俺は」

 

「で、でも、提督さんは凄く頑張って戦っていて、お掃除とか料理とか、そう言うのも全部やって、その上、私達に時間を割いてくれてるじゃないですか!」

 

頑張り過ぎなくらいには頑張ってると思いますけど……。

 

「え?そう?書類とかは全然書いてないよ?一日中遊んでるだけで」

 

「それでも、この鎮守府で一番の働き者ですよ!」

 

「ははは、ありがと。本当に趣味でやってるんだけどね、全部」

 

確かに、料理とか、家事をしてる提督はとっても楽しそうですし。そう言ったことを楽しめる人なんですね、提督は。

 

「単に、美人揃いの艦娘に良いもん食わせてやりたいだけなんだけどね。ほら、俺、悪者だから。美人には目がないのだよ」

 

「ふふ、そうなんですか」

 

もう、そんなこと言って。提督が優しい人だってことは分かってるんですよ?

 

例えば、野菜嫌いの駆逐艦のことを考えて、野菜を細かく刻んだ肉団子やスープを作るとか。例えば、メニューに無くても、出来るだけ艦娘の要望に応えてくれるとか。

 

他にも、女の子ばかりの鎮守府ですから、味付けを少しだけ甘めにしているところ。皆んなが戦いで汗を流すから、少し濃い目の味付けにしていること。

 

料理一つからでも優しさが伝わってくるんです。確かに、奇をてらった発想や、超級の技術はないのかもしれませんが、何より……、暖かい……。

 

提督は、本当に私達を大切に思ってくれているんだなって分かっちゃいます。

 

「そうそう。男相手なら手料理なんて作らないもんね。……でもここは良いよなぁ。毎日毎日、キレーに食べ終わったお皿を持ってきて、ありがとう美味しかった、って言ってもらえるんだからよ」

 

おどけて言う提督。でもやっぱり、嬉しそう。

 

「あ、私もそれ、いつも思ってます!この前のカレーの時も、暁ちゃんが嫌いな人参を全部食べてくれて!」

 

間宮さんが言い出しました。

 

「ああ、あの時?」

 

「そうですそうです、あの時です!……あの時のごちそうさまって一言、私は一生忘れません!!」

 

「それなら私も負けてませんよ!電ちゃんのナス嫌いを克服したときも凄かったんですから!」

 

伊良湖ちゃんも声を上げる。

 

「確かあの時は、ミートソースドリアにしたんでした!電ちゃんも美味しい、美味しいって全部食べてくれて……!」

 

自分の作った料理を美味しく食べてもらえる、それはとっても嬉しいことです。感謝されるのって気持ちがいいですから。

 

他人に感謝してもらえるような美味しい料理は、深い愛情がなきゃ作れません。だから、ここの厨房の人達は皆んな、愛情を込めて料理を作れる、心優しい人です!

 

 

 

私、こんな素敵な鎮守府に来れて、良かった!!

 

 

 

「あっ、狙撃だ。殺し屋かな?」

 

「伊良湖ちゃん行くわよ。提督の敵に死を」

 

「はい。手足斬り刻んでシチューにして食わせましょう」

 

「その前に皮を剥いでから顔面を素揚げにしますよ」

 

 

 

……わ、私、こんな素敵な鎮守府に来れて、良かった!!!

 




しおい
パッションタイプなので割とすぐ馴染んだ。

速吸
何故か毎朝出撃する間宮、伊良湖の存在に戦慄する。

味吉さん
少年時代は、亡き父が残した料理ノートで料理を作っていた。

北方さん
料理の再建請負人。割とすぐキレる。

旅人
称号:パルミア一番。

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