赤と青だからHi-νとナイチンゲール。
そんな安直な考え。
「ごめんもう一回言って?」
「ですから、その」
「私達、弓が射れなくなっちゃって……」
「……なんで?」
「それは、その……」
「お、おっぱいが……」
「うむ」
「「おっぱいが大きくなり過ぎちゃって……」」
その瞬間俺は、小さくガッツポーズした。
……さて、おっぱいが大きくなった件、あ、いや、弓が射れなくなった件は大変だな、うん。
空母が弓を使えないってことはつまり、艦載機の運用が出来ないってことだ。
我が黒井鎮守府の誇るおっぱいドラゴン、蒼龍と飛龍は正規空母なのだ、艦載機が飛ばせないのは大問題。
「最近はもう、艦載機を飛ばせないから、直接深海棲艦を引き裂いてるんだけど……」
なにそれこわい。
「でもやっぱり、艦載機のオールレンジ攻撃が無いと戦い辛くって……」
オールレンジ攻撃……、正規空母の得意技だ。
物理法則を完全に無視して空を駆けるファ、あ、いや、艦載機で、ありとあらゆる距離、方向から攻撃をする、それがオールレンジ攻撃。
うちの正規空母皆んなは、多数展開したファンネ、じゃなくて艦載機のオールレンジ攻撃と共に、本体はそれの穴を埋めるかのように中〜近距離で戦う。
つまり、ファンネルとは牽制であり決め手である。もちろん、無くても戦えるくらいにはうちの空母は強い。だが、なければ辛いのは当然だ。
「しょうがねぇなぁ(悟空)、じゃあ俺が力を貸してやるかぁ!じゃ、一緒に買い物に行こうか!」
「「わーい!」」
「「………………?!!」」
はい、帰還の骨片。
「久しぶり、盗人のじいさん。クロスボウある?」
「おお、あんたか、久しぶりだな。クロスボウならここだ」
「えーっと、どうしよっかな、アーバレストがおすすめなん」
「い、いや、ちょっと待って!何処ですかここ?!」
「え?いや、ロスリックだけど?」
何を言って……、って、そうか、皆んな行ったことないもんな、ロスリックなんて。
ここはちょっと非常識な所だから。誤解されないようにちゃんと言っておかないとな。
「ロスリックは、地球で言う中世ヨーロッパくらいの文明を持つ地で、不死者と言う生きながらにして死んでいる連中が心をすり減らしながらも生きている素敵な世界だ」
「不死者」
その名の通り、不死者は決して死ぬことがない。いや、正確に言えば、死んでも復活する。その為、死にまくって心をすり減らし、やがて自分が何者だったかも忘れ、他者のソウルを奪う為だけにそこらを徘徊し暴れる亡者へと成り下がる。可哀想な人達だ。
「因みに、この火継ぎの祭祀場の外に出ないでね?この辺、亡者とか魔物とか、地球より沢山出るから。時空間もガバガバだし」
「魔物」
出る。この辺には出る。近くの沼に出た巨大蟹は美味しかった。知り合いの不死者と一緒に食べた。
「そ、その、提督?ちょっと良いかな?」
「なんだい、飛龍?」
「……ここ、地球じゃないの?」
「異世界だよ?」
多分。
「魔物、地球にいないよ?」
「いるってば。蒼龍が見たこと無いだけで。大体、深海棲艦だって魔物みたいなものだろ?」
艦娘の皆んなって、深海棲艦と戦っておきながら、怪人とか妖怪とか魔物とかの存在を認めないよね、何で?常識を考えてほしいな。
「時空間がガバガバって?」
「この辺、時間の流れがおかしくてさ。それに付随して空間も歪んでるんだよ」
今は大丈夫だが、昔は良く時空間のうねりに飲み込まれて過去や未来に飛んでしまうことが多々あった。なんだかんだで戻って来れたが。
「な、なる、ほど……?」
「ああ、安心してくれ、この世界はちょっとおかしいから。ここに慣れろなんて言わないさ」
ロスリックは結構厳しい土地だしな。ローリアンに土手っ腹を貫かれて内側から焼かれた時は久々に死を覚悟したし。あの時は酷かったな、当分ホルモン焼き食えなくなったわ。
「まあ、取り敢えずさ、買い物しようよ。買ってほしいものがあれば何でも買うからさ!兎に角、片手でも撃てるクロスボウはちゃんと選んでね?」
「「は、はい……」」
×××××××××××××××
「こりゃあ、また……、綺麗なお嬢ちゃんだな。だけどよ、クロスボウなんて使えるのか?相応の筋力が無きゃ……」
クロスボウ……。初めて見る武器だけど、これは何なんだろう?
「そ、その、すみません、それって、どういう武器なんですか?」
「ん?クロスボウを見たことがないのかい?……良いか、これはな、ここの弦をここに引っ掛けて……」
……へー、片手でも撃てる弓みたいなもの、かぁ。
これなら、弓と違って、胸が邪魔にならなくて良いな。
「……それで、ここからボルトが発射されるんだよ。……本当に大丈夫なのか?そんな細い腕で、クロスボウが引けんのか?」
「え?ここを引っ張って、ここに引っ掛けて、引鉄を引くんですよね?」
あ、凄い、使いやすい。単発の銃みたいな使い心地。
「……す、凄えな。やるもんだ」
「そ、そうかな、えへへ」
褒められて悪い気はしないよね。
「蒼龍、決まったかい?」
「うん、提督。私はこのアーバレストが一番手に馴染むかな」
ちょっと弦が引きづらいけど、一番使いやすいな。
「飛龍は?」
「私はこの、スナイパークロスが一番かなぁ」
「OK、じいさん、幾らだ?」
「そうだな、あんたには世話になってるからな。6000で良いぞ」
6000?何が?
「助かるよ。そぉい!」
「わっ、何ですかそれ?」
白い、炎?
「ソウル……、この世界のエネルギー体の一種で、通貨としても利用されるんだ」
「ソウル、ソウル……、その、魂って意味ですよね?」
「それ、本当に大丈夫なやつなんですか……?」
「ヘーキヘーキ。……ゔっぁ、持ってかれたァ……」
反応!反応が大丈夫じゃない!!
「……不死でもないのに、ソウルなんざ使うもんじゃないぞ?」
「ぁあ、ヘーキ、ヘーキ……(生命力低下)」
「提督!」
「む、無理しないで下さい!」
もう!提督ったら!また無茶して!
……あれ?って言うか提督、不死じゃないんだ。てっきり不死身だと思ってた。
「いやぁ、あいつが火継ぎを終わらせた時は、とうとうこの世界も終わりかと思ったが……、どうにかなったなぁ……」
「そうねー、あれ?あいつは?」
「火守女とどこかに出掛けたよ。全く、中々に仲が良くてなぁ……」
……提督、おじさんと話し込んでる。ちょっと寂しい。
……それにしても、ここ、何なんだろう?石造りの玉座が並ぶ、石造りの建物?
中にいるのは、あからさまに魔法使いに見える人とか、鍛冶屋とか……。こう言うの、ファンタジー?って言うんだよね。実在するんだ。
まあ、今更だよね。提督は、奇跡も魔法もあるんだよって言ってたし。提督が言うなら絶対に正しいよ。提督があるって言うなら、ある。当然だよね。
「蒼龍、飛龍、帰るぞー」
「「はーい」」
「また来いよー」
「「………………?!!」」
ま、また、一瞬で景色が……。
ここは……、鎮守府の裏?
確か提督が、触っちゃ駄目って言ってる篝火のあるところかな?
この辺はセーブポイントだから壊しちゃいけないって聞いているけど……、セーブポイントってなんだろう?よく分かんないや。
「提督ー?どこですか?提督ー?」
「あ、いましたいました、提督!急に消えるのはやめて下さいね?監視するこちらの身になって欲しいです!」
あ、一航戦の加賀さんと赤城さんだ。……そっか、いつもの、艦載機の監視が途切れちゃったんだ。
提督が見えないと不安。その気持ち、分かるけど……、監視ってどうなの?
「全く、異世界へお出掛けの際には連絡をお願いしますとあれ程……」
「ほんの一時間くらいだしさ、大丈夫かなー、と」
「もう、不安だったんですからね?」
むー、赤城さん、さり気なく提督の隣に……。
「今後はこのようなことの無いように、しっかりと監視されて下さい」
加賀さんまで……。
「分かった、分かった、謝るよ!……だから、しなだれかからないで?恋人繋ぎやめて?」
むー!むむむむむ!確かに私達はおっぱいは大きいけど、一航戦の二人のほうが女の人らしくて綺麗だもんなぁ。
提督はよく、自分で考えろって命令してくれるけど……、どうやったら提督を虜に出来るんだろう?
「蒼龍、飛龍、試し撃ちしておいてね!それじゃ!」
「あっ、提督ー!……!、逃げた!」
うー、もうちょっと一緒にいたかったのに……。
はぁ、しょうがないか。クロスボウの試し撃ちしとこう。艦載機無いと困るもん。
あーあ、私も一航戦の二人みたいに、提督を誘惑できたらなぁ。
「あ、そうでした。蒼龍ちゃん、飛龍ちゃん、明石さんが呼んでましたよ?何でも、どらぐーんしすてむ?が出来たとのことで……」
「四時くらいに来て欲しい、との事よ。……さあ、赤城さん?私もこのふぃんふぁんねる?なる装備をモノにするんですから。訓練をしますよ。日々、精進あるのみです」
「はい、加賀さん。……それじゃあ、頑張ってね、蒼龍ちゃん、飛龍ちゃん?」
「「は、はい!」」
……でも、私と飛龍は、一航戦の二人みたいに提督のことを監視なんてしないもん。酷いよ、監視なんて。不安なのは分かるけど、提督の迷惑だよ!
一航戦の二人は提督を叱るから、私は提督にいっぱい優しくしてあげよっと!
さて、艦載機を飛ばして……、提督の方に!
え?
これは観察だよ?
観察だから、提督の迷惑にならないもん。一航戦の二人みたいに、提督が他の他の女の子に声をかけたりしても、私達は怒らないよ?
ただ、大好きな提督を見てるだけ。
……ずっと見てるからね、提督❤︎
ダブルドラゴン
旅人を観察している。命令されるのが大好き。
一航戦
旅人を監視している。口説かれるのが大好き。
盗人のじいさん
旅人と色々なところに盗みに入る。顔の頭巾がチャームポイント。
旅人
最近、監視の目が撒きづらいなー、と思っている。