またアンケ取ろうかな?
「ぎゃぁああああ!!!腕が!腕がぁぁああ?!!!」
「すみません、榛名の身体は提督の所有物ですから……」
「あー、榛名?まず、セクハラされたなら、腕の関節を外す前に声を上げよう?それと、外でそう言う話は、やめて?」
「はい!榛名は大丈夫です!」
大丈夫だった試しが無いよ?
……はい、そんな訳で。
金剛型の皆んなとお出かけである。
正確には、俺の散歩に金剛型が着いてきた、だな。
仕事?
あー、そうだね、俺が知らない間に、北アメリカの端っこまでの海路を開放してたね。もちろん、指示はしてない。
もう俺要らないんじゃないかな?
……いや、そんなことは良いんだ、重要なことじゃない。それより、この状況はまるで……。
「提督ー?どうしたんデスカ?」
「早く行きましょうよ!」
「提督は大丈夫です!!」
「具合でも、よろしくないのでしょうか?」
「い、いや、何でもないよ?」
包囲……?
包囲されてない?俺?
……さり気なく、右に行く。
「どうしました、司令?」
笑顔の霧島に腕を掴まれる。
さり気なく、左に行く。
「えへへ、司令の手、あったかいです!」
笑顔の比叡に手を握られる。
うーん、この。
前に、
「アイホールドユー!抱きしめちゃいマース!!」
後ろに、
「んっ❤︎提督……、榛名は、提督の側にずっといますよ……❤︎」
………………。
金剛型からはにげられない!!
何てこった、もう遅い!脱出不可能よッ!だなんて。
これではおちおちナンパも出来ない!宇宙の法則が乱れる!
「うわぁ、あんな美人を侍らせて……」
「あれ、黒井鎮守府の提督じゃね?ヤバくね?」
「なんか有名人らしい人発見!記念撮影なう!」
そして目立つ!自分で言うのもなんだが、俺はイケメン!そして艦娘は身内贔屓無しで美人!そりゃそうだ!
そして目立つと!
「あらあら〜?お兄さんさぁ、良い女連れてんじゃん?ちょっと俺にも分けてくんない?」
「マジかよ!この女マジでイケてる!ヤベェ!」
「女優とかか?ヤベェ女優喰うのは初めてだわ!」
「メッチャルックス良いわー!オシャレだし、金持ちじゃね?ラッキー、逆玉じゃん!」
馬鹿馬鹿!やめろ!やめろ身の程を弁えないチンピラの皆さん!!やめろ!!!
「こ、殺すな!!!」
「はぁ?もう命乞いかよ?そのデカい身体は飾りぺブァ?!!!!」
あ、いや、そうじゃなくって。
「ファックユー……、ぶち殺しマスヨ、ゴミめら……」
「金剛、殺すな……!」
この子達の話。
「良いですか、霧島!骨を折る時はこうやって折るんですよ!」
「や、やめろ!待て、待て、待て待て待て待て待て!!、ぎぃいやぁああぁぁぁ!!!!!」
「こうでしょうか?」
「あああああああ!!!!ぎゃぁああああ!!!!!」
「行きますよ!えい!とりゃ!」
「かぺっ?!!!痛ぎゃっ?!!!や、やめえぎゅっ?!!!殴らないでうぁあ?!!!!」
あーもう滅茶苦茶だよ。
「ストップ!!そこまでだ!!死人は出しちゃ駄目!!」
殴るくらいならまだしも!止めないと殺しかねない!!
「殺した?!」
「警察!警察を!!」
「うわああああああ!!」
パニック状態だ。仕方ない。
「煙玉!」
それ、逃げろっ!
「はぁー、あのね?いつも言ってるけどね、気に食わないからって暴力を振るっちゃ、駄目だよ?」
いつもの。
その辺の小綺麗なカフェで小一時間くらい説教してやる!オラオラ!紅茶飲め!ケーキも食べろ!
全く……。
「提督とお外でティータイム!嬉しいデース!」
「あわわ、これって、もしかして、デートってやつでしょうか?!」
「榛名、感激です!」
「成る程、逢引、ですか!私達は夫婦ですものね!」
あるぇー?
説教とは一体なんだったのか。
確かに説教したはずなんだがな……?
「提督のお話は興味深いデース!」
「あんなゴミでも、殺すと大変なんですね……。知りませんでした!」
あ、成る程、普通の世間話だと思われてたんだ。
……たまには、こう、ガツンと言うべきだろうか?
「えーと、つまりあれだ、手加減しなきゃ、駄目だぞ!怒っちゃうぞ!」
「怒った司令も素敵です!」
「比叡!気合い!入れて!怒られます!!」
なんでや!!
「ま、全く!俺は、ほら!怒ったら恐いぞ?!だから、手加減抜きで人を殴ったりしちゃ駄目だ!!」
「え?人を一人壊せば、提督にお説教していただけるんですか?!榛名、頑張りま」
「だから駄目だって!!」
話が通じん!!
いかんいかん!価値観がぶっ壊れてる!!
「駄目だってば!!俺を好いてくれるのは嬉しいけどさ!俺の為に他人を傷付けるなんて!!」
倫理とかそう言う話じゃなくてさ、ただ単に、俺に構って欲しいなんて理由で、他人を傷付けるのは良くない。
正確には俺は傷付け合うのが好きじゃない、だが。
「俺はさ、君達に、平気で他人に暴力を振るうような子になって欲しくないんだ」
「?、提督は、優しい子が好きなんデスカ?」
「んー、まあ、そうなの、かな?」
いや、確かにさ、俺も喧嘩はするし殺し合いの経験も何度もあるよ?でも、本当に、良いもんじゃないんだよ。
特に殺し合いなんて最悪だ。両手に血がこびり付くようなあの感覚は、世界で一番不快だと思う。
まあ、艦娘が戦う為に生まれた存在なのは重々承知だがね、だからと言って、暴力や殺しは本来痛ましいものだと言う事実は変わらない。
自分が何をしているか、何をしようとしているか、それを確りと自覚した上でその力を振るって欲しい。
俺に言われたからとか、俺に好かれたいからとか、そうじゃなくてさ?
「提督は優しい子が好き……。榛名は、提督に優しくします!」
そうじゃなくてさ?
「優しく、優しく……、こんな感じで、司令を撫でてあげたり、とか、かなぁ?」
そうじゃなくてさ?
「私の分析では、優しい子とは、こう言うものかと。……さあ、司令?ケーキですよ、あ、あーん、です❤︎」
そうじゃなくてさ?
……まあ、良いか。
ちゃんと、殺しは面倒事に繋がるってことは理解してくれたし。
俺の言うことを聞いてくれるのが救いだ。この調子で、確りとこの世界の常識ってやつを教えてやらねば。
……常識を、教える。
そう、そうだよ、これを機に、艦娘の皆んなにお出掛けと言う名目で常識を教えるんだ!
待ってろよ艦娘!
この俺が!常識を!教えてやるからな!!
金剛型
倫理観がぶっ壊れてる。旅人の為なら顔色ひとつ変えずに何でも殺す。むしろ笑顔で殺す。
旅人
多分黒井鎮守府で一番常識が無い。