とある妖精の航海録   作:グランド・オブ・ミル

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スリラーバーク編7・妖精の一撃

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何あの姿………」

 

「本当にモリアなの………?」

 

 その場にいる者は皆、異形の化け物と化したモリアに恐れおののいている。今のモリアは今までの肥満体が嘘のように筋肉質になり、身体は不気味に濁った白色となった。さらに、額からは禍々しい角を、背中からは黒い翼を生やしている。

 これまでは常に相手を見下し、高笑いをしていたモリアだが、今はまったくの無表情で、目も破壊と殺戮だけを宿した無機質なものになっている。その静けさが、逆に恐怖を掻き立てた。

 

「ちっ! どんな姿になろうと関係ねぇ!」

 

「もう時間がねぇ、畳みかけるぞ!」

 

 その沈黙を破ったのはゾロとサンジだった。もうほとんど夜は明け、東の空が明るくなり始めている。消滅まで一刻の猶予もない。恐れている暇などないのだ。

 

ガキィンッ!!

 

 ゾロの剣、サンジの蹴りは確かにモリアにヒットした。だがダメージを与えることはできなかった。変質したモリアの表皮があまりにも硬すぎて傷一つ付けることができなかったのだ。モリアはゾロとサンジを右腕を一振りするだけで弾き飛ばした。

 

「どわっ!」

 

「ちっ!」

 

「ゾロっ! サンジっ!」

 

 ゾロとサンジの安否を心配するルフィ。だが駆け寄る暇も与えずモリアの反撃が来る。モリアは自分の周囲の空間にポッ、ポッ、ポッと小さな黒い球を無数に出現させた。モリアのその技の恐ろしさを唯一知っているエレインがいち早く叫ぶ。

 

「まずいっ! 皆さん! モリアから離れて__!!」

 

「”黒雪(ダーク・スノウ)”」

 

 その叫びと同時にモリアが黒い球を辺りにパアッとバラまいた。黒い球はパラパラとまるで雪のように降り注ぐ。

 

ズッ………!!

 

「おいっ! 大丈……っ! 死んでる!?」

 

「触っただけで死ぬ!? んなバカな!!」

 

 被害者達の一人がその雪に触れてしまった。その者の肉体はたちまち闇に侵食され、命をも蝕まれてしまった。雪の恐ろしさを知った者達は雪を避けようとするのだが、上にばかり意識がいって肝心のモリアとの戦いに集中できない。

 

「”金風の逆鱗”っ!」

 

ゴウッ!!

 

 その状況を打破したのはエレインだった。エレインは風の魔力を使い、黒い雪をすべて吹き飛ばした。

 

「おおっ! 助かったぜエレイン!」

 

 当たれば即死の黒雪(ダーク・スノウ)の恐怖から解放され、ウソップが思わずガッツポーズをする。

 

「っ!! 危ねぇっ! ウソップ!!」

 

 そのウソップのすぐ後ろにモリアが迫っていた。彼は右腕を振りかぶり、その首を今にも斬り落とさんとしている。

 

「………え?」

 

ビュッ!!

 

 ウソップが認識する間もなくモリアの腕は尋常ではない速度で振られた。

 

ドンッ!!

 

「「「ウソップ!!」」」

 

 誰もがウソップの死を覚悟した。しかし、モリアの禍々しい腕は緑の熊のぬいぐるみに呑み込まれた。再生したシャスティフォルをエレインが彼を守るために滑り込ませたのだ。間一髪で命が助かったウソップはドサッとその場に腰を抜かす。

 

「こんにゃろー!! ”ゴムゴムのJET銃乱打(ガトリング)”っ!!」

 

ドドドドドドドドドッ!!

 

 腕を第二形態のシャスティフォルに呑まれて身動きが取れないモリアをギア2を発動したルフィの連続攻撃が襲う。視認すら難しい高速の拳が次々にモリアを射抜く。

 

「ナミさんっ!」

 

「OK! エレイン! 準備はできてるわ!」

 

 だが、ゾロやサンジの攻撃も通らなかったモリアにこれだけでは足りない。さらに追撃を仕掛ける。ルフィの攻撃中にナミは、モリアの頭上に大きな雷雲を作り上げていた。エレインの合図でナミは天候棒(クリマ・タクト)の先に宿らせた電気泡(サンダーボール)を雷雲へと投げる。すると瞬く間に雷雲はゴロゴロと鳴り、ピシャアァァンッと強力な雷を落とした。雷は水分を多く含む第二形態のシャスティフォルへ余すことなく降り注ぐ。

 

「”サンダーボルト=テンポ”!!」

 

 ルフィの拳にナミの雷、通常の相手ならこれで十分大ダメージを与えたと言える。だが、灰色魔神の恐ろしさを知っているエレインはさらに攻撃を加える。第二形態のシャスティフォルがモリアをがっしり掴み、そのまま空中へ放り投げた。上昇を続けるモリアにエレインは迎撃を開始する。

 

「霊槍シャスティフォル第四形態”光華(サンフラワー)”!!」

 

 第四形態のシャスティフォルから放たれた極太の光線がモリアの全身を呑み込む。これでモリアは麦わらの一味の三人の必殺技を三連続で浴びた。誰もがモリアへのダメージを期待して視線を上げる。

 

「…………」

 

「お、おいおい………嘘だろ…………?」

 

「あれだけ撃ち込まれて…………ほとんどダメージ無しかよ……!?」

 

 しかし、非情な現実がそこにはあった。モリアは身体の所々が焦げただけで特に目立った外傷や疲れが見られなかった。背中に生えた黒い翼を羽ばたかせ、悠然と空中に存在していた。

 

「チッ、本格的にマズいな。」

 

「ああ、もう朝だ。物陰に隠れながら戦うしかないこの状況でこんな奴と戦うことなんてできねぇ。」

 

 ゾロとサンジは額に冷や汗をにじませる。もう戦場には日の光が差し込んでおり、影を取られた者達は瓦礫や木の影に入らなけらば消滅してしまう。そんな中あれ程の攻撃がほとんど通じないような化け物と戦うことはとても不可能だ。

 

「! あら、そうでもないみたいよ。」

 

 そんな危機的状況の中、ふと何かに気づいたロビンがそう呟いた。

 

「あぁ? 一体何を……、! これは!?」

 

「島中の影が………」

 

 フランキーとブルックも異変に気づく。空を見上げるとスリラーバーク中の影たちが、次々に世界中に散っているのだ。その中のいくつかが戦場に降りてきて、ルフィやゾロ、サンジといった影を取られた者達の足元へ戻っていく。

 

「これは一体………」

 

「恐らく、モリアの意識が薄れているためでしょう。」

 

 ブルックの疑問にエレインが答えた。

 

「灰色魔神の闇が、モリアの精神をも侵食しているのです。自己を保つのに必死なモリアに影を支配するだけの余裕がなくなったのだと思います。」

 

「よく分かんねぇけど、これでルフィ達は自由に戦えるんだな! よっしゃあ! こうなったらここにいる全員であいつを倒そう!」

 

 エレインの話が本当なら、モリアは凶悪にパワーアップしたものの、麦わらの一味も味方が増えたことになる。ローリング海賊団をはじめとした被害者達も戦意は充分だ。ウソップの声を皮切りに、その場の士気はぐんぐん高まる。

 

「…………いや、あいつとは俺一人でやる。お前らは手を出さねぇでくれ。」

 

 それに待ったをかけたのはルフィだ。あの化け物にたった一人で立ち向かうというルフィに当然仲間達から反発が起こる。

 

「何言ってんだルフィ! 相手はお前とナミとエレインの攻撃も、ゾロとサンジの同時攻撃も通じない怪物だぞ!」

 

「そうよルフィ! せっかく皆の影が戻ったんだからここは全員で…………!!」

 

「いえ、私は正しい判断だと思うわ。」

 

 ウソップとナミの反論にロビンが意見した。

 

「ロビン?」

 

「大人数で立ち向かっても、さっきの黒い雪を放たれたらさらに犠牲が拡大してしまう。それなら例え力が上でも一対一の勝負に持ち込んだ方が戦いやすいわ。」

 

「でも……だからって…………」

 

 ナミはまだ納得していないが、ルフィはもうやる気だ。

 

「エレイン、頼む!」

 

「……はい船長。霊槍シャスティフォル第八形態”花粒園(パレン・ガーデン)”。」

 

ブゥン………

 

 ルフィの指示でエレインはシャスティフォルの第八形態でルフィとモリアの二人を包み込んだ。これで万が一モリアが”黒雪(ダーク・スノウ)”を放ったとしても仲間達に降り注ぐことはない。

 

「…………!」

 

ガン!ゴン!

 

 閉じ込められたモリアは緑の粒子の壁を殴って外へ出ようとする。だが、ちょっとやそっとの攻撃で破れる程花粒園(パレン・ガーデン)は甘くない。さすがに七つの大罪原作の、”完璧なる立方体(パーフェクト・キューブ)”程硬くはないが、それでも神樹が身を守るための防御技だ。防御力もそれ相応に高い。

 

「”暗黒の環(ダーク・ネビュラ)”。」

 

ゴォ………!!

 

 生半可な力では破れないと知ったモリアは暗黒の魔力を衝撃波にして身体から放った。その凄まじい圧力にミシミシと花粒園(パレン・ガーデン)が悲鳴を上げる。

 

ドルルンッ………!

 

 だが、その時にはルフィも最終攻撃の準備を整えていた。ギア2を発動して身体から蒸気を噴き出し、さらにその上からギア3も重ねて発動する。

 

「おい! その技重ねていいのか!?」

 

 その行為に仲間達から心配の声が上がる。エニエス・ロビーでの戦いでは2と3をそれぞれ単発で出しただけでルフィは動けなくなったのだ。その技を同時発動など無謀にもほどがある。

 とはいえ、モリアは無茶をしなければ勝てない相手というのも事実だ。魔神の力を取り込んだモリアは最早ルフィ達の力をはるかに越えた存在。現にルフィ達の攻撃はまったく通じなかった。今のモリアを討つには限界を超えた一撃を叩きこむほかない。

 

「いくぞ………モリア! お前をぶっ飛ばして、俺達は先へ行く!!」

 

 加速する血流と骨風船によって赤く光る砲弾と化したルフィは闇のエネルギーの中心にいるモリアをギンと睨む。

 

「”ゴムゴムの巨人の(ギガント)JET砲弾(シェル)”!!」

 

ドオォンッ!!! バリンッ!!

 

「…………!!」

 

ズガンッ!! 

 

 超速度で発射されたルフィ砲弾はモリアの”暗黒の環(ダーク・ネビュラ)”いともたやすく破り、モリアの土手っ腹に直撃した。その衝撃は凄まじく、攻撃を受けて身体をくの字に曲げたモリアは”花粒園(パレン・ガーデン)”を貫き、はるか上空へ打ち上げられた。

 

ぷしゅうぅぅぅ!

 

 持てる力を超えて攻撃を放ったルフィもまた、空気を噴射しながら吹き飛ぶ。今のは紛れもなくルフィの最高威力の一撃。これならどんな相手でも一溜りもない。

 

「がっ…………!! おのれ…………!」

 

「う、うわあぁぁぁぁ!!」

 

「まだ生きてるっ!!」

 

 __そのはずだった。上空で黒い翼を羽ばたかせ体勢を立て直したモリアは鋭い眼光でルフィを睨む。

 

「あの攻撃でも………ダメージ無し…………!!」

 

「そんな…………!! ルフィの身体張った攻撃でも効かねえってのか!?」

 

「…………いえ、効いてはいるわ。見て。」

 

 ロビンが気づいたように、ルフィの攻撃はモリアにまったく通じなかったわけではなかった。強烈な一撃をまともに喰らったせいでモリアの皮膚の装甲が崩れている。今の状態のモリアなら、先ほどまでのようにすべての攻撃を無効化されることもない。次にモリアが地上に降りてきた時が彼を倒すチャンスとなるだろう。

 

「かあぁ………!」

 

ポッ! ポッ! ポッ!

 

「おい! あの黒い雪……!」

 

「気を付けろ! またあの攻撃が来るぞ!!」

 

 だが、モリアはそんなチャンスは与えないとばかりに、攻撃がほとんど届かない上空で攻撃の準備を始めた。触れただけで命を奪う”黒雪(ダーク・スノウ)”を無数に生み出す。

 

ズズズ…………

 

 しかも今度はそれだけではなかった。生み出した大量の黒い雪を凝集・濃縮し、死のエネルギーが満ちる漆黒のエネルギー弾を作り出した。

 

「何あれ…………!」

 

「まずいぞ……! あんなのぶん投げられたら…………!!」

 

 絶体絶命の状況。それも悪いことにモリアは、技の反動で身体が縮んでしまっているルフィを狙っていた。

 

「死ね……! 麦わら…! ”黒死(デッド・エンド)”!」

 

「ぐっ………! くそっ…………!」

 

 無慈悲にもその死は、力を使い果たしたルフィに放たれようとしている。

 

「「「ルフィ!!」」」

 

 もはやルフィの死は逃れられない。誰もがそう思った。

 

「……神器解放。」

 

フワリ……

 

 その時、ルフィの身体が優しく抱きしめられた。ルフィが見上げると、金色の炎の如き魔力の波動に包まれたエレインが自身を抱きとめ、微笑んでいた。

 

「エレイン…………。」

 

「船長、後は私にお任せください。」

 

 エレインの言葉を聞くと、ルフィは安心したかのように瞼を閉じた。

 

「何を___!!」

 

ズガンッ!!

 

 その様子を不審に見ていたモリアは突然巨大な影に打ち落とされた。

 

「くっ!」

 

 モリアは自身が墜落したことで発生した土煙を払い、状況を確認しようと辺りを見渡す。

 

ドズゥンッ!! 

 

 すると間もなくその巨大な影がモリアのすぐそばに着地した。その正体は緑の熊のぬいぐるみ、シャスティフォルだ。だが先ほどまでとは姿が大きく変化している。

 体格はオーズほどではないにしても、巨人族並みにまで大きくなっている。さらに身体の形状も腕が四本から二本になり、より筋肉質な戦闘向きのものへと変化した。

 

「真・霊槍シャスティフォル第二形態”守護獣(ガーディアン)”」

 

「ぬぅんっ!!」

 

ドガガガガガガッ!!

 

 その巨人のようなシャスティフォルにモリアは連続で打撃を与えていく。その一発一発の攻撃は大地を簡単に割る程のパワーが込められている。

 

 ドズンッ!!!

 

「ぐはっ!!」

 

 だが、シャスティフォルはその攻撃を意にも介さず、逆に強烈な一撃をモリアにおみまいした。岩石のような拳で殴られたモリアはズズズズッと地中深くにめり込んでいく。元々第二形態のシャスティフォルにはいかなる打撃も吸収する特製があるが、それにしても、モリアの連続攻撃を受け切ってのカウンターの一撃。明らかにシャスティフォルはパワーアップしている。

 

「うおぉぉぉっ!! すげぇぞエレイン!!」

 

 その強さにウソップ達も歓声を上げる。

 

「ハアッ……!! ハアッ………!!」

 

 しかし、その強さと身に纏う金色の炎とは裏腹に、エレインはとても苦しそうに息を荒げている。汗を大量にかき、時々血も吐いている。

 

「エレイン………? どうしたんだ?」

 

「……まさかあの技、あいつにかなり負担がかかるのか?」

 

 ゾロやサンジがそのことを尋ねる間もなく、ボンッと勢いよくモリアが地中から飛び出してきた。

 

「貴様……!!」

 

 皮膚の装甲がなくなり、今のシャスティフォルの攻撃が効いたようだ。少なくないダメージを受けた様子のモリアは、今度は手を天高く掲げ、闇の炎の魔力を集め、発射の準備をする。

 

「真……霊槍シャスティ……フォル…第五……形態”増殖(インクリース)”……!!」

 

ザンッ!!

 

 それを黙って見届けるエレインではない。すぐさま第五形態のシャスティフォルのクナイの大群で迎撃する。

 そしてその第五形態もまた変化していた。クナイ一つ一つがエレインの身体と同等の大きさがある、黄金色のものに変化している。その大型海王類の牙のような刃の嵐に襲われたモリアは集めていた闇の炎の魔力ごと吹き飛ばされた。それだけではなく、四肢や下半身といった身体のパーツがバラバラに切断された。

 

「「「おおおぉぉぉ!! やったぞぉぉぉ!!」」」

 

 その姿に誰もがモリアの死を確信し、被害者達も歓声を上げた。

 

「ゼェ……!! ハァ……!! ゲホッ!」

 

「エレイン! 大丈夫!?」

 

 エレインが相当辛そうに地に膝をついた。満身創痍のエレインにナミが駆けよる。

 

「麦わらぁ……!! 闇の聖女(ダーク・セイント)ぉ……!!」

 

ズズズッ…………

 

「………おいおい、しつけぇぞ。」

 

「あの再生能力……完全に人間やめやがったなモリアの野郎。」

 

 麦わらの一味の連続攻撃を喰らわせ、ルフィの限界を超えた一撃をまともに受け、真・霊槍の力をこれだけ喰らい、身体がバラバラになろうともまだモリアは倒れない。身体の切断部位から闇を放出し、モリアは上空で身体を

再生して見せた。その執念深さにゾロもサンジもうんざりとした表情を見せる。

 

「もう限界だろう小娘ぇ………! 今度こそ終わりにしてやる…………!!」

 

 エレインに狙いを定めたモリアは再び闇の魔力を高め始める。”黒死(デッド・エンド)”の構えだ。モリアはエレインはおろか、広場にいる全員をまとめて始末するつもりなのか、その闇の球体は先ほどルフィに放とうとしたものより遥かに大きい。

 

「やべぇ! やべぇよ! どうすんだあれっ!?」

 

「………くそっ!」

 

「万事休すか…………!!」

 

 このままでは地上にいる者達は全員等しく殺されてしまう。頼みのエレインも無茶に無茶を重ねた真・霊槍の連発で恐らくもう限界、ゾロやサンジは”黒死(デッド・エンド)”に備えて臨戦態勢をとっているが、すべての生物に等しく死をもたらすあの闇に対抗できるとは思えない。

 

「どうしよう……」

 

 ナミが不安げにそう呟いた時だった。

 

「大丈夫……ですよ…ナミさん……。再生することぐらい…………想定通り…です。」

 

 エレインが、フラフラながらも立ち上がっていた。ドレスの胸部分を握りしめるその姿は見ていて辛いが、目の闘志は消えていない。

 

「でも、あんたもうボロボロじゃないっ! それに想定通りって、バラバラになっても再生しちゃう化け物を一体どうやって…………!!」

 

「はあぁぁぁっ!!」

 

 エレインはフワリと浮かぶと、自身が今出せる最大出力まで魔力を高めた。身に纏う金色の炎が今までで一番勢いよく、力強く燃え盛る。

 

パチッ

 

 その状態でエレインが指を鳴らすと、クナイ状となって散らばってい真・霊槍が集まり、槍の形を形成していく。やがてシャスティフォルはエニエス・ロビーでクマドリの左腕を奪った黄金の炎の槍へと姿を変える。

 

「真・霊槍シャスティフォル第一形態”霊槍(シャスティフォル)”っ!!」

 

ドンッ!!!

 

 ありったけの力を込めてエレインが最後の一撃を放つ。

 

「”黒死(デッド・エンド)”!!」

 

 モリアも負けじと最大級の闇を放つ。

 

パンッ!

 

「なにっ!?」

 

 しかしその闇は妖精王の光によってあっさりと消え失せてしまう。

 

「ああぁぁぁぁっ!!!」

 

カッ!!!!

 

 シャスティフォルがモリアに直撃した瞬間、巨大な十字型の大爆発が起き、激しい光が放出される。あまりの光量に地上にいる者達は目を開けていられない。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁ…………!!」

 

 光の中、モリアの断末魔の叫びが響き、そして徐々に小さくなり、消えていく。

 

「……おい、モリアは?」

 

「どう……なったんでしょう?」

 

 次にウソップ達が目を開けた時、モリアは消えていた。跡形もなく消滅させられたか、それとも遥か彼方へ吹き飛ばされたのか、それは定かではないが、ルフィ達麦わらの一味はスリラーバークの悪夢との戦いに勝利したのだ。

 

「ハアッ………ハアッ………」

 

ポスッ

 

 力をすべて出し切ったエレインは空に浮かぶこともできなくなり落下した。それをロビンが能力を使って優しく受け止める。

 

「すぅ……すぅ……」

 

「ふふ、お疲れ様。」

 

 ロビンがエレインを抱き上げると、彼女はルフィと同じように寝息を立てていた。闇と影を打ち払った英雄はしばしの休息をとる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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