とある妖精の航海録   作:グランド・オブ・ミル

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デービーバックファイト編3・妖精のグロッキーリング前編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェ~フェッフェ!不思議がってるな!これぞ"ノロマ光子"の力だ!!」

 

一体何が起こったのか。俺達が頭にハテナを浮かべているとフォクシーが得意気に解説に来た。

 

「の、ノロマ光子?ですか?」

 

「そう!この世に存在するまだまだ未知の粒子だ!この光を受けたものは生物でも液体でも気体でも…、他の全てのエネルギーを残したまま物理的に一定の速度を失う!!」

 

「わからん!!バカかお前!!」

 

フォクシーの説明を聞いても分からなかったルフィがそう強く返すとフォクシーはガクンと膝をついて落ち込んでしまった。意外とハートが弱い方らしい。

 

「つまりですね、あのビームに当たると何でも遅くなっちゃうんです。」

 

「あ~、なるほど。そう言や分かるよ。」

 

「でも…そんなことが…。」

 

「あり得ない!?分かっているだろう!この海でそんな幼い言葉は通じねぇ!!俺は"ノロノロの実"を食ってそいつを体から発せられる"ノロマ人間"になったのだ!!見よ!この威力!!」

 

フォクシー海賊団の一人、大柄な男のハンバーグがフォクシーに向かってバズーカを撃った。フォクシーは素早く飛んでくる砲弾に指を向け、ノロノロビームを放った。するとビームを浴びた砲弾は急に失速してのろのろ飛ぶようになる。

 

「このノロノロ効果は約30秒だ。その後速度を取り戻す。何事もなかったかのようにな。」

 

「あ、あの…そろそろ……」

 

「見たか!!これがノロ……!!」

 

ボカァン!!

 

砲弾が自分に向かっていることを忘れて夢中でしゃべるフォクシーだが、30秒経ってノロノロがなくなり、砲弾はフォクシーの顔面に直撃した。だがフォクシーはすぐにむくっと起き上がって俺達に仲間を一人差し出すように要求した。見たところ鼻血が出てるだけで特に問題なさそうだ。あれ?人間は普通死ぬと思うんですけど。あれか、ギャグ補正ってやつか。

 

『相手方の船員1名!指名してもらうよ!オヤビン!どうぞ!!』

 

イトミミズの司会と共に、フォクシー海賊団の音楽隊がドロドロドロドロと太鼓を叩く。俺は何故かロビンにギュッと抱き締められ、チョッパーに手を握られた。

 

「フェッフェッフェ!まずは一人目、俺が欲しいのは……お前!!船医!トニートニー・チョッパー!!」

 

「俺っ!?」

 

フォクシーの指名と同時にチョッパーは男達に連れていかれた。俺と繋いでいた手も引き裂かれた恋人のようにむなしく離れる。チョッパーはあれよあれよとフォクシー海賊団にもてはやされ、彼らと同じマスクまで被せられた。

 

「みんな~~~!!俺嫌だ~~~!!」

 

チョッパーは座らされたイスを立ち、泣きながらこっちに戻ろうとしたが、男達に捕まえられた。チョッパーは手足をバタバタさせて必死に抵抗している。

 

「ガタガタぬかすなチョッパー!!見苦しいぞ!!」

 

そんな時、ゾロが飲んでいた酒をドンと置いてそう叫んだ。

 

「お前が海に出たのはお前の責任!どこでくたばろうとお前の責任!誰にも非はねぇ!ゲームは受けちまってるんだ!海賊の世界でそんな涙に誰が同情するんだ!男ならフンドシしめて勝負を黙って見届けろ!!」

 

「!」

 

ゾロの言葉に、チョッパーは涙を拭いてドカッと男らしくイスに座り直した。場はゾロとチョッパーの男気に大いに盛り上がっている。

 

「さっさとはじめろ!二回戦!」

 

「あぁ、ウチの大事な非常食…取り返してつりがくるぜ。いくぞエレイン。」

 

「はいっ!!……え?非常食?」

 

さぁ、二回戦の開幕だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り引きも終わり、次は二回戦、「グロッキーリング」だ。麦わらの一味の出場者はゾロ、サンジ、エレインの三人。

 

「エレインはともかく、あの二人にチームワークがあるとは思えない。」

 

ナミはフィールド上で早くもケンカをするゾロとサンジを見て溜め息をついた。チョッパーには悪いが、一回戦でエレインを取られなくて良かったと思う。エレインが二人の良い仲裁役となっているからいいものの、もしエレインが取られて二回戦はあの二人だけなんてことになっていたらどうなっていたか分からない。

 

『ここでグロッキーリングのルール説明をするよ!フィールドがあってゴールのリングが二つ!球をリングにぶちこめば勝ち!ただし!"球"はボールじゃないよ!"人間"!両チームまずは球になる人間を決めてくれ!!』

 

「おい、おめぇら、誰が球やるんだ?」

 

「ん。」

 

「勝手に決めんじゃねぇよ!!球はてめぇだろマリモ!!」

 

「あぁ!?ゴチャゴチャ言わねぇで黙ってやれよエロコック!!」

 

ゾロとサンジは言い合いの末にケンカを始めてしまった。

 

「あはは、すみません。私がやります。」

 

仕方なくおずおずと手を挙げたエレインが球役を務めることになり、球役の証として紅白のピエロのボールを頭につけた。

 

「はぁぁ~~……。」

 

その光景を見てナミは頭をおさえて深い溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴンダバダバダバ♪

 

『おっと!聞こえてきたよ!奴らの入場テーマ曲!』

 

突然軽快な音楽がかかり、フォクシー海賊団の海賊船の船首がウィーンと開いて、相手選手が入場してきた。まずはさっきの大柄男のハンバーグ、次にハンバーグよりもさらに大きな男ピクルス、そして最後にハンバーグやピクルスよりもさらに大きい、魚人と巨人のハーフ"魚巨人(ウォータン)"のビックパンだ。球役の証は一番大きいビックパンがつけている。

 

「不足は?」

 

「ねぇな。」

 

「が、頑張ります!」

 

普通に考えて勝ち目は薄いが、ゾロとサンジは心底わくわくしているかのようにニヤリと笑っていた。頼もしく思った俺は怖い気持ちを必死に抑えてギュッと握りこぶしを握った。

 

キィンとコイントスが行われ、ボールを相手チームが取った。ボールマンである俺は審判に指示された通りに敵陣のミッドサークルに移動する。

 

「おい、嬢ちゃんちょっと待て。武器は反則なんだ、そのクッション置いてきな。剣士の兄ちゃんもだ。」

 

「え?これダメなんですか?どこから見ても普通のクッションですよ?」

 

「しらばっくれても無駄だ。さっきそのクッションが槍に変わったのをこの目で見たんだからな。」

 

「……ぶぅ~~。」

 

ちぇっ、いざって時はシャスティフォルで何とかしようと思ってたんだがな。俺はしぶしぶシャスティフォルをルフィに預けた。ルフィは「お♪フカフカだ♪」なんて嬉しそうに抱いている。能天気な奴め。

 

『さぁさぁさぁさぁ!待ったなし!!麦わらチームのボールマン、エレインが敵陣サークルについたよ!!グロッキーリング!いよいよスタートだ!!』

 

ピーーーッ!!

 

『試合開始ーー!!!』

 

「いくどーー!!"投石器(スリリング)タックル"!!」

 

「わっ!!」

 

試合開始のホイッスルが鳴ると同時にピクルスが思い切りタックルしてきた。俺はタックルをすんでのところで空に回避する。

 

「どいてろエレイン!俺が決めてやる!!」

 

素早く敵陣に走り込んできたサンジがビックパンの顔目掛けてジャンプする。そして蹴りの体勢に入った。

 

「ん?ああ。」

 

ボーッと突っ立っていたビックパンだが、サンジの存在に気づくとヒュッとサンジに腕を突き出した。ビックパンの上に着地したサンジはぬるぬると滑ってしまう。

 

『ビックパンの腕で滑るコックサンジ!そりゃーそうだね。ビックパンはドジョウの血を引く"魚巨人(ウォータン)"!肌はぬるぬるだ!』

 

「速攻ーーっ!!」

 

パァン!!

 

「きゃっ!!」

 

サンジが滑っている間にビックパンは俺を手のひらでバチーンと弾いた。俺は敵陣から吹き飛ばされて味方陣地まで戻ってきてしまう。

 

「エレインっ!!」

 

「"お掃除タックル"!!」

 

「うわっ!!」

 

吹き飛ばされる俺を受け止めようと下を走っていたゾロはピクルスの強力なタックルで吹き飛ばされてしまった。その間にハンバーグが空中で俺の体をがっちりと掴む。

 

「ゴリラスロー!!」

 

「わ~~っ!!」

 

俺はそのままブォンと投げ飛ばされた。投げ飛ばされた先ではピクルスが待ち受けていた。

 

「この野郎!!」

 

「エレイン!!」

 

ゾロとサンジがそのピクルスをカットに向かった。

 

「"スピニングタックル"!!」

 

「うが!!」

 

「ぐわっ!!」

 

するとピクルスは巨体を高速回転させた強力なタックルで二人を弾き返した。投げ飛ばされた俺もまた回転タックルで再び上空へ弾かれる。

 

『敵陣上空!ハンバーグ、エレインをとらえた!!これはリングが射程距離!!ハンバーガーダンクだ!!』

 

上空で俺をキャッチしたハンバーガーはさながらバスケのダンクシュートのように構え、俺をリングに叩き込もうとする。

 

そうはさせるか。

 

俺は両手を地面に向けて魔力を放出した。するとシュルシュルと芝生が異常な速度で伸び、ハンバーグをぐるぐる巻きに拘束した。

 

「え?」

 

「ふぅ…、よいしょっ♪」

 

俺はその隙にハンバーグの手から抜け出し、魔力で芝生を操作してハンバーグを勢いよく投げ飛ばした。ハンバーグはピクルスの下へ飛んで行き、二人はゴーンと頭をぶつけて気絶した。

 

「ふふん♪どんなもんですか。」

 

俺は伸ばした芝生の上に仁王立ちしてむんっと胸を張った。

 

 

 

 

 

 

 

 


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