今日も授業が終わり、視聴覚室へ向かっている。
今日はなんか大事な話があるそうだ。安芸がそう言っていた。
「話ってなんだろうね?」
「さぁ?どうせろくでもないことだろ」
「....最近比企谷くんも安芸くんに対する扱いがひどくなってる気がするよ」
「よし、みんな集まったな」
「それで?なんだよ話って?」
「報告っていうか、相談なんだけどさ。俺たちの作ってるゲームって加藤がメインヒロインじゃん?」
「そりゃそうでしょ。あんたが加藤さんと出会ったのが始まりなんだから」
「まぁ私達1年の時も同じクラスだったんだけどね」
あるよね。普段関わらないやつの名前って覚えられないもん。
「ご、ごほん。その話は置いといて。このゲームにはメイン主人公がいないんだよ」
「倫理君じゃないの?」
「まぁ確かにきっかけは俺だけど。別に俺が主人公ってわけじゃない。しかも俺もディレクター兼プロデューサーとしてやることもあるし。それにゲーム作ってるやつが主人公ってイタイだろ?」
「まぁ....」
「そこで!俺から提案がある!メイン主人公のモデルを比企谷にしようと思うんだ!」
「.....は?おいおいちょっと待て。なんで俺なんだよ」
「まぁ比企谷、最近加藤とも仲良いしな」
「でも別に比企谷は加藤さんに恋してるわけじゃないでしょ?」
「そこが問題なんだよ」
「え、待って俺やらないよ?そんなの」
「じゃあ比企谷君。聞くけどあなた、何しにこのサークル入ってるの?私が見た限り、たいして役に立ってないと思うのだけれど。まぁそれは倫理君もだけれど」
「うぐっ....」
なんか地味に安芸にもダメージ与えてるし。
「いや、まぁ....でも俺誘われた側ですよ?俺別に何が出来るわけじゃないですし。なのに安芸が無理やり誘ったから入っただけで」
「まぁ確かにそうね」
「うぐっ....,!わかった!俺はあの時比企谷がいつかメイン主人公になると思って誘ったんだよ!うん!今日のために誘ったんだ!」
「倫也、あんた今思いついたでしょ」
「....い、いやでも比企谷になにかピンッときたのはほんとだよ?なんかサークルに入れなきゃってきがしたんだよ」
「....でも、比企谷の場合、倫也の体験した加藤さんとの初めての出会い(嘘)の感動は知らないわけでしょ?
その出会いがきっかけで始まったのに。そこはどうするのよ?」
「う〜ん....,そこはなんとかする!」
「....とりあえずこの話は保留にしましょうか。すぐ決まらなさそうだし。私まだやることあるから」
「私も」
澤村と霞ヶ丘先輩はすぐ解散していった....自由だな。
っていうか誰かいなくない?
「.....」
...-加藤がいなかったんだ。俺より影薄いんじゃない?こいつ。
「.....加藤。もう少し話に参加しろ。これは加藤にも結構関わる話なんだぞ?」
「え?あーうん。私は別にいいよ?比企谷くんでも」
「....軽い。軽いぞ加藤!そんな簡単な問題じゃないんだよ!」
「えー?めんどくさいなぁ」
なんかまたヒートアップしてるよ安芸のやつ。
....読書するか。
数日後
今日はなんか急遽サークルは休みになった。
久しぶりに早く家に帰れる。....まぁ学校にいても別に忙しいわけじゃないけど。読書してるか雑用かのどっちかだもん。
そういや、今日今読んでる本の新刊出る日じゃん。
買いに行こう。....安芸の家行く時も思ったけど、この坂きっついよなぁ.....
俺が坂を登っている時、上から何か落ちてくる....あれは、帽子?そのまま帽子は俺の横を通り過ぎて坂を下っていく。....とってやるか。
ふぅ.....またこの坂を登るのか...,ていうか落とした人は....
そう思い坂の方に顔を向けると.....とつぜん、桜がどこからか吹いてきた。.....今夏だぞ?どういうことだよ.....
その時、ちょうど落とし主であろう人を見つけた。
「......」
......なんだ、この胸のざわつき。言葉では言い表せないような気持ち。.......よく見たらあれは、加藤?
「はい、カット」
「.....へ?.....霞ヶ丘先輩?」
いきなり声がした方向を向くとそこにいたのは霞ヶ丘先輩だった。....澤村に安芸までいる。
「どうだ?今なにか感じたか?比企谷」
「何かって.....」
そうか。桜、ベレー帽、加藤、そしてこの場所。
前聞いた安芸のゲーム作りのきっかけとなった出来事。
「まぁさっきの顔見れば答えはでてるんじゃない?」
「そうだな。比企谷、今お前は何を感じた?」
「.....分からん。なんかこう....胸がざわついたというか」
「.....うん。成功だ!」
「は?」
「いや、前にお前を主人公にするって言ったろ?でもこの出会いが足りなかった。だから再現したんだよ。俺のこの胸のトキメキを感じてもらうために」
「.....つまり今日の休みもわざとか」
こりゃはめられたな。
「......比企谷、もう1度言う。メイン主人公になってくれないか?俺と同じ経験をした比企谷ならできる」
「.......わかったよ」
「ほんとか!?」
「あぁ」
「これで解決ね。比企谷君、きっとこれがあなたの本当のサークル加入ね。これからやること増えると思うのだけれどしっかりね」
「まぁ頑張りなさい」
「....はい。宜しくお願いします」
こうして俺は本当の意味でサークルに加入したのだった。
「.....私は帰っていいのかな?」
.....ごめん。忘れてた、加藤。
続く