ゲート・サイヤ人来れり   作:野菜人

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5話 やはり男は単純な生き物である

帝国の軍事力はアルヌスへの出兵によりたった二日で5割以下となった。

 

まさに計算外。

 

大国の属国で覇気もない弱小国家の軍がここまで強いとは誰も思わなかった。

そこで一人の元老院が化け物のような異世界の軍隊に対抗する手段を考え、発表した。

 

薔薇騎士団を使ってサイヤ人と帝国に反逆しうる属国に異世界の軍隊を押し付ける。

 

方針が決まった帝国は属国には大使と薔薇騎士団には伝令を飛ばし、異世界の軍団に備えるのであった。

 

☆☆☆

 

「と、言うわけなのだが……ゼノン殿。どうにか協力してもらえませぬか?」

 

この三年でそこそこ仲良くなったピニャとグレイに酒に誘われたと思ったら、軍事協力の要請だった。

敵は異世界の軍勢で目的はフォーマル大陸の進軍と侵略……。

いや、どう考えても帝国のミスだろう。

何故俺が動かなければならない…と、こちらにリスクがなければ言っていただろう。

しかし、面倒なことにコダ村からアルヌスまでの距離は近く、異世界の軍勢とやらが侵攻してくる可能性はかなり高い。

異世界の軍勢か……どれくらいの戦力なのだろうか?

すくなくとも帝国の軍隊に甚大な被害をもたらす戦力は保有しているはずだ。

それなりに準備をすればコダ村に戦火が飛び火する前に終わらせられるか?

 

「いいだろう……帝国の思惑にとりあえず乗ってやる」

 

「おお、ありがたい!! では、さっそく帝国に伝令を飛ばします!!」

 

俺の返事に安堵と喜びの表情を見せる二人。

よほど緊急の用件だったのか、どたどたと慌ただしくなってきたので薔薇騎士団の駐屯する屋敷から出て行き自宅へと帰る前にヴォーリアバニーの集落に向かった。

 

その目当ては……。

 

「義兄さん。どうしたんですか?」

 

ヴォーリアバニー最強の称号と共に嫁さんを大量にゲットした弟子だ。

 

「実は今度、異世界の軍団と戦うことになってな。

ちょっとコダ村の防衛に力を貸して欲しいんだよ」

 

こいつの戦闘能力は10。

数字だけなら初期の悟空クラスの力を持っている。

そんな男が、村を守っているなら百人や二百人の帝国兵が来ても村人を逃がしつつ、生きて帰ってくる事も可能だろう。

 

「おお! 僕に義兄さんの領地の防衛を任せてくれるんですね!?」

 

けっこう無茶な事を頼んでいるのに、嬉しそうに引き受ける義弟。

どうやら師匠である俺に頼られた事が一番の原因らしい。

嬉しそうにしている義弟を抱え自宅へと飛んだ俺は、嫁たちとカトー師弟と村長に今後の事についてしばらく話し合った。

 

話し合った結果幾つかの案が纏まり明日から準備が始まる。

 

・帝国兵が攻めてきた時に少しでも足止めができるように柵を制作する。

 

・いつでも逃げられるように準備をしておく。

 

・逃げる際にはカトー・レレイの二人が魔法で兵を一時的に眠らせてから逃亡。

 

・戦闘が避けれない状況になったらテオ・カトーが帝国を食い止める。

 

・逃亡先はヴォーリアバニーの集落。

 

現状で考えられる一番の方法だと確信した俺達は、翌日から村人たちに理解をしてもらう為に説明と準備に取り掛かった。

 

……。

 

ズボ!…ズボ!

 

「なぁ……ゼノンさん?何度言ったか分からないが……あんた本当に人類か?」

 

「人類だ!!」

 

柵となる適度な太さと長さの木や枝を、村を囲むように刺していき村人たちに縄と枝で固定してもらう作業をしているのだが。

大量の枝を片腕だけで持ち上げ、空いた片手で深々と地面に突き刺す光景に思わず知っていても思わず人類か疑ってしまう。

村人の言葉に突っ込みをするゼノンの姿に思わず笑みを浮かべた村人たちは、悪い悪いと言って、柵の制作を手伝ったのであった。

 

こうして、戦いが起こるかもしれないという中ほのぼのとした空気を楽しみつつ、逃げる準備に逃走経路とすべての準備が完了した。

しかも十人ほどではあるが、集落から戦闘能力8のヴォーリアバニーの戦士達が自ら志願してわざわざ来てくれた。

 

これで安心して戦場へ向かうことができる。

 

村の事は安心したが、異世界の敵に関して不安がある俺は柄にもなく自室の窓から空を見上げる。

大学受験で不安だった時や、入社試験にビビっていた時も現実逃避する為に星を眺めていた事を思い出す。

 

異常状態や体力を瞬間的に回復させる仙豆もあるし、サイヤ人のポテンシャルを最大に引き出す為の装備もある。

負ける要素はない……はずだ。

 

「まったく、一体どうしたの? 帝国軍をコテンパンにした戦闘民族サイヤ人の血が泣くわよ」

 

「テューレ?」

 

背後から声をかけられ、振り返るとテューレが呆れた表情で立っていた。

どうやら不安そうにしている姿を見られたらしい。

 

「異世界の敵が何だっていうの? あなたは私の自慢の夫なのだから、シャンとしなさいな。

もし…不安なら今晩はなんでもするから」

 

最後…恥ずかしくて部屋から出て行ったテューレを見た俺は……。

 

「異世界の軍隊がなんぼのもんじゃい!!!」

 

男とはやっぱり単純な生き物で、すっかり体と心に巣くっていた不安を萌えの心で粉々に粉砕し、その夜は嫁さん達と燃え上がった。

 

夜の戦は大勝利を飾りました(小並感)

 

 

!!…合……体…!!

 

 

「アンタ、もうちょっと加減しな……アタイは死ぬかと思ったよ」

 

「デリラに同意」

 

「あんなに激しくされたら、しばらくベッドから出られないよ」

 

「焚きつけた私が言うのもなんだけど……次は無理」

 

 

ぐったりと疲弊しきった彼女たちの言葉を無視しつつ、装備を整えた俺は元気にしてくれた愛する妻達に愛していると伝えキスをした。

部屋を出る時、彼女たちにキスした際の「もう、仕方がないわね」みたいな表情を胸に戦場となるアルヌスへと向かった。

 

 

 




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