ゲート・サイヤ人来れり   作:野菜人

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3話 領地と帝国の刺客(性)

 

まさに現世の地獄。

冥界の神ハーディの所業ではないかと思う惨劇。

サイヤ人の挨拶に奇跡的に生き残った兵と後方のさらに後ろに控えていた貴族たちは、逃亡を開始した。

 

もはや戦場には誇りも何もない。

あるのは単純なる死。

彼らの頭に思い描いていた、名誉と勝利は塵となって消えた。

 

そして、暴力の化身たるサイヤ人ゼノンは恐怖で逃げ惑う人々を一瞥して、帝都へと乗り込んだ。

 

ー帝都議会にてー

 

「ふざけるな!!! 2日だぞ! 出陣して僅か二日で7万の軍が壊滅だと!?」

 

「ありえない!! おそらくヴォーリアバニーが雇った精霊魔法使いの仕業に違いない」

 

「いや、魔法使いによる広範囲の殲滅魔法だ!」

 

一番に逃げたワイバーンに騎乗した兵の部隊壊滅の報告を受け、緊急で開催された元老院議会。

議会の開始早々に会場は混沌としていた。

 

「静まれ、今は確かな情報を集めるのだ。

魔法にしても幻覚にしても確かめなくては、話が進まぬ」

 

 

現皇帝のモルト・ソル・アウグスタスは混沌とした空間を鎮め、指示を飛ばす。

だが、彼の指示は全くの無駄となった……何故なら…。

 

「皇帝陛下! 侵入者ゴバァ!??」

 

敵が、帝国兵を殺しながら、敵が目の前にまで侵入してきたのだから。

 

周りが突然の侵入者に愕然としている中、男は皇帝の前に瞬間移動した。

まあ、やった本人は数あるゲージの一つを消費して、スキル『瞬間移動』を発動させただけに過ぎないのであるが、帝国の元老院は未知なる敵の力に恐怖した。

そして、恐怖に支配され動けなくなった元老院たちの存在を完全に無視した男は皇帝の首を掴み、持ち上げた。

 

「ぐう!?」

 

「帝国の敗北と滅亡…どちらがいい? 滅亡なら帝国の全てを破壊する。

敗北なら土地と金で見逃してやるが……俺に逆らったら滅ぼす」

 

滅亡か頭を垂れるか?

男の質問に皇帝は思った。

帝国の歴史を終わらせるわけにはいかない、恥を忍んで従順なフリをして今すぐにでも殺してやる!!

そして、男の言葉を聞いて皇帝のようにスキを見て殺してやると思った議員が今。

皇帝に夢中になっている男の背中を刺してやろうと男の背後へ忍び込む。

が……。

 

「邪魔だ」

 

「ボヒャ!!」

 

「グフ!?」

 

なんと皇帝を武器に背後に忍びよっていた議員を殴ったのである。

皇帝の攻撃(?)を受けた議員は痛みのあまりに後ずさる。

後ずさった議員を確認した男は皇帝を持っている逆の手で光の玉を生み出し、議員の頭を消し飛ばした。

首から上が綺麗に無くなり、バタンと倒れた議員の体を近くで見ていた議員は気を失ってその場に倒れた。

 

「滅亡か敗北か…どちらがいい?」

 

男を悪魔でも見るように恐怖する議員たちを虫でも見るような目で一瞥した後。

男は再び皇帝に質問した。

 

その質問により、皇帝は……。

 

「我々……帝…国……の…負け…だ」

 

首を絞められながらも途切れ、途切れではあったが、帝国の敗北を宣言した。

 

それから三ヵ月、ヴォーリアバニーの族長…いや、女王は俺と共に皇帝と元老院貴族と会談し、敗北した帝国への損害賠償と土地を貰うこととなった。

そして、それと同時期に小王国連合が俺達…正確には帝国に勝利した俺と同盟関係になりたいという、申し出が美女と兵士が共にやって来た。

どうやら、女に弱いという噂を信じてのハニートラップのようだ。

同盟には条件次第と言って、保留にしているが、面倒なことこの上ないがそれ以上に俺の頭を悩ませているのが……。

 

「アンタ、お姫様御一行が来たみたいだよ」

 

俺の自宅を唖然とした顔で眺める赤い髪が特徴的な帝国の姫ピニャ・コ・ラーダとそのお伴である薔薇騎士団。

彼女たちが我が家にやって来たのは、やっぱりハニートラップかそれとも暗殺のどちらかだろう。

どちらかだったとしても、数が異常なのだが……。

後、若干気になるのは女性だらけの騎士団の中に白髪の爺さんと若い金髪の男が居るのは何故だ?

男色だと思われてるのか?

 

「って、何時までも待たせておけないな」

 

家のモニターを切った俺は彼女たちを迎えに自宅前へと向かった。

 

ちなみに俺の新しい自宅は、帝国からもらった領地にフィールドキャンプに使用されるカプセルアイテム『どこでもキャンプ』シリーズの豪邸セットで、モデルはカプセルコーポレーション通称『ブルマの実家』である。

玄関のドアが自動で開くと顎が外れるのではないかと思うくらいに口を開ける騎士団の面々。

騎士団がそんな顔を晒して大丈夫なのか?

 

「何時まで家の前でアホな顔を晒すつもりだ?」

 

「す、すみませぬ。どうも独創的な屋敷に驚いておりました」

 

俺の言葉に正気を取り戻したお姫様は、俺の自宅を独創的と評した。

文明レベルの違いからそう言われても仕方がないが、飛びぬけた芸術家のように変人とは思われたくないので思わずしかめっ面をしてしまう。

 

「と、ところで! コダ村の様子はどうでしょうか!? じゅ、住民とは馴染めましたか!?」

 

俺が不機嫌になったと感じた姫さんは俺の自宅から露骨な話題変更によって回避しようと必死だ。

表情がかなり引きつっている。

 

彼女の言っているコダ村は帝国からもらった領地にある村の事だ。

始めはかなり怖がられたが、村の住人との橋渡しとなってくれた魔法使いの師弟によって現在はそれとなくやっていけている。

 

「そ、そうですか……我々もこの近くに滞在することになりましたので何かあったら、よろしくお願いします」

 

村の現状の把握と問題なく領地を統治されていることを知った彼女は、なんとも言えない表情をしつつ、帰っていった。

何だったんだ?

 

☆☆

 

ピニャは皇帝と元老院の命令により、コダ村に訪れた。

彼女の目的は三つ。

 

・サイヤ人の統治に不満を持つコダ村の住人を間者にする事。

 

・統治に問題があれば、帝国の知恵を貸してサイヤ人に恩を売る事

 

・薔薇騎士団の人間・もしくはピニャがサイヤ人の子供を孕む事

 

 

戦いで勝てぬと思った元老院と皇帝は、暗殺とサイヤ人の血を軍隊に入れようと考えた。

理由は単純である。

子供さえ出来ればサイヤ人の同盟と混血ではあるが最強の民族の子供が手に入り、将来その子供を軍に入れれば帝国の地位は盤石の物となると考えたからだ。

故に、王族ではあるものの妾の子供であり皇位の低いピニャとスペアになる貴族の次女や三女の集団であり、陰では初陣の経験のない軍のお荷物と呼ばれる彼女たちがこの特殊任務に選ばれたのだ。

帝国の繁栄の為にサイヤ人の生贄になったと、絶望しながらも帝国の繁栄の為と覚悟を決めた彼女たちはこの任務を全うする為に策謀する。

 

 

 


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