3月のラプソディー   作:スズカサイレンス

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第6話

 

◆◆◆◆

 

 

学校が終わり、バイトの予定もない。クラスメイトが誘ってくれたカラオケも流行の曲が分からないので断った。

とまぁ、割とありがちな夕方を過ごすことになった俺はこれまたありがちな趣味を行うことにした。

俺の趣味。そう、料理だ。

 

 

高校生というのは、案外暇なものだ。と二回目になって思う。

前だけまっすぐ見ていたようなときには気が付かないものだが授業が終わった後の学生なんて本当にやることがないのだ。特に部活にも入っていない場合は。

 

今でこそ週に3回のバイトがあるので何とかなっているが高校生の初めの頃はそれはそれは大変だった。

暇で暇でしょうがなかったのだ。

 

友人はいたがその誘いに乗って出歩くのにはあまり乗り気にはなれなかった。

いまいち馴染めているという感覚になれなくて。

 

となるとあとは本を読むかゲームをするか、くらいしか思いつかなくて。

迷った末にたどり着いたのが腕を磨くのを兼ねた夕飯作りだった。

 

渋る母さんを何とか説得し、週の何回かの夕飯を作ることを任せてもらった。

あまり母さんの仕事をとらないでね、と苦笑気味に言われたが。

 

そんな経緯があった俺の趣味。我ながら難儀なものだと思いつつ帰宅の路に着く。

家の近所のスーパーへと立ち寄って今日の献立を考える。

 

(昨日はそばだったから今日は何にするか…。しまった、昨日の父さんたちの晩飯聞いてくればよかった…)

 

 

母さんが作るのは和食が多い。だから昨日も和食だろう。

そう考えて今日は中華にすることに決めた。

中華、中華だ。何がいいだろうか。

とりあえずエビチリとチンジャオロースは作ろう。

姉さんがいるなら他にも…。今日は姉さん帰ってくるのか?

ああもうふらふらするのは別にいいけど夕飯を作る側からするととてつもなく厄介だ。

そう思った俺は食材をカゴにほおりこみながら手早くメールを送信した。

 

 

 

 

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送信者:幸田歩

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タイトル:Re:

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添付ファイル:

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今日は中華です。帰ってきますか?

 

     -END-

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返信は二分後だった。

 

 

 

 

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送信者:幸田香子

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タイトル:Re:

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添付ファイル:

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エビチリは絶対ね!!

 

     -END-

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よし、帰ってくるのか。ならレバニラも作って明日の弁当のおかずにしよう。

久しぶりの中華にテンションが上がった俺は上機嫌に買い物を続ける。

三軒隣の藤原さんに絡まれたりしつつレジへと向かう頃にはカゴはかなり重くなっていたが心はかなり軽くなっていた。

人間やっぱり趣味って大切だなと、改めて実感したのであった。

 

 


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