神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「親子は似てる所もあれば違う所もある」

暇がようやく出来たので新しいのを投稿です。



紫と浦島と月の都

 

次の日、私は支度を整えて神社を後にした。

詩音には一応、能力の使い過ぎと神々の召喚を控えるように注意をしておいた。

あの能力は下手をすれば一瞬で世界を滅ぼせる様な神や人外を召喚しかねないからだ。

だから詩音には召喚をする時はキシに立ち会って貰いニャルちゃんの召喚だけに限定しておいた。

ニャルちゃんなら詩音に色々と教えてくれるだろうし、何よりお願いしといたから大丈夫だと思う。

まぁ、SAN値が減るような姿じゃなく人間の姿だったから安心。

まぁ、この話は置いといて。

私は今、適当に日本の至る所を旅している……行く当ては無いけれど旅をするって事が私にとっての娯楽みたいなものだしね。歩いてる場所は砂浜。

それと、さっきから誰かが私を見ている。まぁ、誰かは分かるけど。

 

「紫、其処で何やってるの?」

「………あら、偶然ね芽衣」

 

私が声をかけた所から隙間を開き紫が顔を出す。

百年ぐらい見ない内に大きくなったな~と心の中で思う。

紫の能力は『境界を操る程度の能力』。

この能力を使い境界の隙間を作っているんだろうなと私は思っている。

 

「偶然……ね。約100年ぐらいの久しぶりかな?」

「良く覚えてられるわね」

「そう言う紫も覚えてるじゃん」

「あ、あれは、私の色々な、決意の……一日……だったから……」

 

?…最後等辺は良く聞こえなかったな~。でも、何の用だろ?

 

「それで、紫。何か用なの?」

「本当に偶然に姿を見かけたら声をかけただけよ」

「へ~……でも用があるんでしょ?」

「………」

 

この広い世界で偶然、旅をしている私を見つけるなんて確率が低すぎる。神出鬼没だし私。

 

「お見通しって事ね……単刀直入に言うわ芽衣。貴方、私の式にならない?」

「……急にどうしたの?」

「私の夢を実現するには、一人では色々と大変だからよ。だから芽衣みたいな人物が式になってくれると助かるわ」

「どうして私?」

「貴方の人脈を利用したいからよ。色々と強力なのを知ってると思って、例えば貴方の執事とか」

「断る理由はあんまし無いけど嫌だって言ったら?」

「……出来るだけ傷つけないで無理矢理にでも式にさせるわ」

 

………強情過ぎるでしょ紫…。夢を叶えるのは良いけど人の都合も考えないと……。

私は荷物を置いて紫の前に立つ。

 

「…………手加減と優しく。どっちが良い?」

「ふっ!本気で来なさい!人間が私と戦えると思わない事ね!『四重結界!』」

 

紫は私の周りを結界で包囲する。

 

「ふふふ、終わりよ。これで逃げられな______」

「薄い結界だね、強度が足りないし一点に集中して攻撃すれば簡単に割れる」

 

パリーン!

 

結界を一回ノックすると其処からひびが入り跡形もなく割れた。

 

「なっ……どういうこと!?」

「力量は間違えちゃ駄目だって事」

「それは、私が上の筈、っ!」

 

ドンッ!

 

「かはっ………」

「あ」

「くっ、なんで、それほど………」

 

そう言いながら紫は倒れ伏した。

………お腹を殴る直前で止めた筈なんだけどそれでも紫には随分効いたらしく気絶した。

まぁ、直ぐに回復させるけど………

 

 

 

ゆかりん正座中……

 

 

 

「………貴方……一体何なの?力も普通の人間程度にしか感じないし」

「唯の長生きな人間だよ?それと式の件は無しでね~」

「で、でも式になれば私の能力も使えるのよ?」

「へ~どんな能力?」

「『境界を操る程度の能力』よ。移動が便利で物を入れたりも出来るわ」

「ふ~ん、それって如何やるの?」

「こうよ」

 

紫が何もない所で指をなぞると隙間が開いた。

その動きと私も同じ指の動きをする。

 

「………?」

「こう?」

 

私も見よう見真似で境界を操り隙間を開いた。

 

「ええっ!?どういう事!?」

「私の能力は『真似する程度の能力』だから、見たら出来るんだよ」

「」

 

紫は呆然として私の開いた隙間を見ている。

本当は前々から使っていたけどね。

 

「あ、そうだ。紫は妖怪と人間が一緒に住める所を考えてるんでしょ?なら、私が良い人材を探してあげるよ」

「ほ、本当に!」

「ただし!私の家族に手を出したら………」

 

そうして私は紫を威圧する。威圧なんてやった事ないけど。

だがその威圧に反応するかのように周りの景色が歪んでいく。完全にやり過ぎた。

 

「………」

「ありゃ、気絶しちゃった。悪い事しちゃったかな……まぁ、紫なら大丈夫かな」

 

少し反省して気絶した紫を砂浜から近くの岩場に寝かせておく。

 

「さてと、旅を続けようかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砂浜を歩いて数十分。芽衣はとある人物と会っていた。

 

「いや~まさか別の土地からこんな辺鄙な所まで良く来たもんだな!」

「あはは、辺鄙なんてそんな。良い海じゃないですか」

「そうか?いつもと変わらない普通の海に見えるがな!あっははは!」

 

このハイテンションで話しかけて来ている人物。名前は水江浦島子だそうだ。

そう、殆どの人物が知っていると思う。あのおとぎ話に出てくる浦島太郎の原型の人物。

丁度、年代も一致するけどまさか此処で会うなんて思いもしなかった。

彼は漁をしている最中だったが他の土地の人が珍しいのか適当に世間話をしている。

 

「お、そうだ!良かったら一緒に漁に行かないか?」

「え……まぁ、別に大丈夫ですけど」

「よっしゃ!なら直ぐ行こう!一応、これが仕事なもんでね」

 

そうして浦島さんの漁に付き添い魚を釣ったりして仕事を手伝った。

数時間はそんな事をしていたと思う。私がまたまた釣れた魚を浦島さんに渡そうとすると……

 

「なっ?何だあれ!?」

 

浦島さんは船の前の方を見て驚きの声を上げる。

私も同じく浦島さんが向いている方向へと目を向けると其処には背中が五色に彩られた亀が泳いでいた。

 

「うわ~………綺麗な亀ですね」

「……………」

「どうしたんですか?」

「……あれを捕まえよう」

「え?」

「あの亀を捕まえよう!あんなに綺麗なら母も喜んでくれる筈だ!」

 

私としてはあれぐらい綺麗な亀なら見れただけで良いんだけど……。

 

「良し!早速、捕まえに行こう!」

「あっはい」

 

そして亀の後を追いながら捕まえる隙を狙う浦島さん。

そのせいで大分、沖の方に来ちゃったけど……大丈夫かな?主に鮫とか。

とそんな心配を横に浦島さんは亀を捕まえようと亀に向い船からジャンプした。

 

「浦島さん!?何やってるんですか!」

 

続いて私も亀の方にジャンプする。

私は完璧に亀の上に着地出来たけど浦島さんは亀を掴んではいるものの体半分は海の中だ。

 

「それで、これからどうするんです?」

「あ………」

「考えて無かったんですね、分かります」

 

私も亀の所に来た為、船は遠くって……あれ?

 

「船……何処に行ったんでしょうか?」

「………消えてるな」

 

そして二人は沈黙する。

 

「まぁ、運が良ければさっきまで漁をしていた所に亀が連れてってくれるでしょ」

「そうだといいがな……」

 

まぁ、駄目だったら私が飛んで連れて帰るけどね……。

それにしても亀に乗って海を彷徨うの結構楽しいな~。

私がそんな事を思っていると一瞬にして海の空気が感じが変わった。

 

「………」

「どうした?何かあったか?」

 

先程まで海からは多くの生物の……生きているという感じが一瞬にして生き物が住めない様な死の海に変わった。……あれ?死の海って……あっ。

 

「おお!陸が見えた!此処は……まさか!海の向こうの国、蓬莱国か!?」

 

いや、違う。私は断言出来る。

此処は日本でもないし地球でもない。ましてや蓬莱国とかいう場所でもない。

此処は……月。月の都だ。

砂浜の所に居る人物を見て私は確信する。

腰ほどもある長さの金髪をなびかせて立っている人物。綿月豊姫。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして亀に乗り砂浜へとたどり着いた。先程から豊姫が私達の事を見ている。

 

「此処が蓬莱国か~!俺の住んでいる所とまるで空気が違うな!あんたもそう思うだろ!」

「えぇ、まぁ……」

 

視線に気づかず、一人ハイテンションになり周囲を見渡す。

そして浦島さんも豊姫を見つける。

 

「おぉ!あんたは蓬莱国の人か?変わった服装をしているな!」

「それは違う。お前が今居る場所は蓬莱国などではなく海底に存在する『竜宮城』である。五色の亀は迷子になっていた私のペットであり、探していたら貴方が背中に捕まっていたのです」

「へぇー………竜宮城かぁ……」

 

そして豊姫は亀を連れてきた礼をしたいと言い私と浦島さんを屋敷へと連れて行く。

浦島さんは最初、「早く母にこの事を伝えたい」と言っていたが竜宮城……いや、栄華を極めた月の都を見ると故郷に帰る事を忘れて「もう少し此処に居たい」と言い始めた。

どう考えても私は巻き込まれてるけど私も私なりに月の都を楽しみたいので私も居たいと言った。

すると豊姫は少し考える素振りをして屋敷から出ないと決まりを付け居させて貰える事になった。浦島さんは歌って踊る兔達の楽しげな日常を見て、感動したり豊姫に「何故、海底の空はこんなに星が見えるのか?」という疑問をぶつけて「それは星ではなく、魚達が毎日躍っている姿だ」と幻想的な返しを浦島さんはそれを信じてまた感動していた。

 

そして三年程の月日が流れた。その間に私は綿月依姫に会った。最初に会った時は少し怪訝そうな感情を表していたが次第には興味深い目をして私と浦島さんに接して来た。豊姫もそうだった。一応不老で歳は取ってないけどバレてないからいいかな。

けれど、三年程の月日が経ったある日。浦島さんが「家が恋しい」と言い始めた。

その日をきっかけに豊姫と依姫の目が変わった。問題事をどうするかという目に変わった。

そしてそれから数日後、私と浦島さんが寝に着くと……

 

「二人は眠った様ね」

「ええ、そうみたいですね」

 

聞こえて来る声、豊姫と依姫の声だ。

 

「良く眠っているわね。流石、八意様の薬だわ。お酒に混ぜて飲ましたらイチコロだったわね」

「それじゃあ、二人を人工冬眠(コールドスリープ)室に移動させましょう」

 

とそんな会話が聞こえて来たのですかさず起き上がる。

私が起き上がったのが其処まで驚いたのか直様、一歩二歩と後退された。悲しい。

 

「貴方………起きていたのですか?それにその姿…」

「うん……まぁ、見て分かる通りかな」

「………八意様の睡眠薬を飲んだ筈では……」

「えーと……そういう薬は私には効かないんだ。体質だから。ま、それはそれとして永琳を呼んでくれるかな?」

「………何故、貴方は八意様のお名前を?私は貴方たちの前ではその名前を口にしていない筈」

「まぁ、呼んでくれれば分かるからさ。呼んで来てくれる?」

「依姫、私が呼んで来ますから貴方はその人間を」

「はい、お姉様」

 

依姫は自分の腰に掛かっている刀を抜くと自分の手前の床へ刺した。

すると私の周りに無数の刃が生えてきた。

 

「動くと祇園様の怒りを買うぞ」

「はいは~い」

 

私は大人しく永琳が来るのを待った。時間は数分程度だろう。

豊姫と一緒に来たのは昔と変わらない永琳だった。

 

「やぁ、永琳!久しぶり!」

「もしかして………芽衣さん!?」

 

私は嬉しさで祇園を無視して永琳に近づく。

 

「動くとっ!」

 

依姫の忠告の前に周りの刃が私に襲いかかる。

そして私の体に突き刺さる…………人間串刺しの完成だ。

………周りに居る永琳達が呆然としてるから茶番は止めて刃をすり抜けて永琳の前に行く。

傷?そもそも刃にすら当たって無かった無傷だけどね。

永琳の前に行くと永琳が私の手を握り、

 

「芽衣さん!お久しぶりです!!」

 

と先程まで串刺しだった私の事を無かった事にして感動の再会を果たす。

 

「いや~偶然来ちゃってね。三年ぐらい月の都を堪能してたよ」

「はは、芽衣さんらしいですね」

「えっ!?ちょ、ちょっと待って下さい!お、お知り合い!?この人間と!?それに何で普通に祇園様の力を無視して更に無傷!?」

 

私と永琳が感動の再会をしている時に完全に蚊帳の外だった依姫が質問を多く投げかけてきた。

まぁ、質問されたから永琳と一緒に一つずつ答えていく。

永琳が地球にいた頃に私と出会っていた事,それに祇園をスルーしたのは私の能力って事にしておいた詳細は秘密。

 

「芽衣さんが良ければ私が月の都を案内しますが……」

「う~ん、十分に月の都は堪能したから私は帰るね」

「そうですか……豊姫、芽衣さんを地球に送って上げなさい」

「……ですが月の都の事が…」

「彼女はそんな人じゃないから大丈夫よ。………処で芽衣さん。あの男性は?」

「ああ、浦島さんね。普通の人だよ。私と同じ。だからさっきやろうとした事をすれば良いんじゃない?本当は浦島さんには家に帰ってお母さんと一緒に過ごして欲しいけど」

「男の方は普通の人間として芽衣さんが普通の人ですか(笑)それでは、また何処かで」

「うん、じゃーねー永琳!それに依姫と豊姫もね!また会おうね!」

 

私は永琳達に別れを告げて豊姫の能力によって地球へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「八意様………彼女は一体、何者なんでしょうか…?八意様より長く生きて祇園様の力を無効化する程の力を持つ人間なんて有り得ません…」

「彼女は彼女よ。昔と変わらない……」

「はぁ………あ、この男はどうします?」

人工冬眠(コールドスリープ)しておきなさい」

「はい、分かりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、久々の地球!いや~やっぱり地球の空気はいいね!月も悪くないけどやっぱり地球が一番かな!」

 

さてと、旅の続きでもしようかな………また当てもなくブラブラして日本を回ろっと!

 





そういえば月に行っていないな~と思いまして行ってもらいました。

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