神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「あややややや!」

最近、睡眠薬が無いと眠れない体に違和感ががががが…。
まぁ、徹夜が普通になると体がおかしくなりますもんね、仕方ないですけど。


紫の頼み

 

清々しい朝がやってきた。天気も晴れており体が軽い。

私は新聞が届いていないかと玄関に向かう。と其処には律儀にドアの間に挟んで新聞があった。

 

「…えーと…見出しは……『物凄く強い歌姫?』」

 

新聞の内容は私が宴会の時に歌っていた時の事や昨日、フランちゃんと戦った事が写真付きで鮮明に綴られていた。最後等へんには「この歌姫と執事は本当はどんな関係なのか!」みたいな事も書かれていた。まぁ、面白そうだから別にいいけど。

 

「お嬢様、食事が出来ました……それは天狗の新聞ですか?」

「うん、そうだよ。キシも読む?」

「ええ、お言葉に甘えまして拝見………最後以外はちゃんとしていますね」

「まぁ、別にいいんじゃない?」

「それもそうですね、それとお嬢様。お客様がいらっしゃっています」

「お客?……う~ん、案内して」

「分かりました、こちらです」

 

キシが案内したのはいつものご飯を食べる場所、其処には詩音とパウの他にもう一人、紫が座っていた。詩音とパウは気にせず朝食を食べている。

 

「あ、紫。何でこの前宴会に来なかったの?」

「あ…あら、おはよう、芽衣。こ、この前は少し体調が悪かっただけよ」

「今も顔が赤いけど大丈夫?熱でもあるんじゃない?」

「そ、そそそんな事は無いわよ!」

「そう?ならいいんだけど…それで何か用事でもあるの?」

「あ、そうそう。その為に来たのよ(半分嘘だけど)」

 

私はご飯を食べながら聞こうと紫の横に座る。少し紫が驚いた様な気がしたけど気のせい。

 

「そ、それで芽衣に頼みがあるんだけど…霊夢の修行を手伝ってあげてくれないかしら?」

「どうして私が?それに霊夢ちゃんなら修行しなくても強いでしょ?」

「そうね、強いと言えば強いけれど此処にいる面子には勝てないわ」

 

……まぁ、否定はしないけど…あれ?詩音は確かこの前やられていた様な気がするんだけど..。

 

「ま、まぁ、とにかく、霊夢の修行を手伝って欲しいのよ」

「でも、それって紫がやればいいんじゃない?」

「私じゃもう手に負えないから頼んでるのよ…」

 

紫が手に負えないって…どんだけ霊夢ちゃん力付けたの…?

 

「…もぐもぐ…ご馳走様、じゃあ、行きますかな!」

「あ、それと芽衣。博霊神社に行く前に御阿礼の子の所に行ってくれないかしら?」

「え?阿礼ちゃんが?」

「いや、今は確か阿求と名乗ってた筈よ」

 

そう言えば転生してるんだっけ?なら別に変わってないと思うけど…。

 

「分かった、行ってくるよ」

「あ、母上~私も行きます~」

「人里行くなら団子屋で団子200本ぐらい買ってきて!」

 

パウは少し桁が違う団子を買ってきてと言う。というか団子屋が過労死する。

 

「…食べ過ぎは良くないよ?」

「大丈夫!」

「お嬢様、お気をつけて」

「…はーい」

 

こうして私と詩音は団子を買いに…じゃなくて阿求の屋敷に向かう。

この神社と人里まで行くのに道はしっかりと整備されており参拝者も何人か見える。使い慣れた道の様なので新しく作られた道では無い。私が長い旅をしている間に作ったのだろう。そして無事人里に到着する。

勿論、団子屋に団子200本注文した所、団子屋は目を白黒させて了承した。今日中には用意をするらしい。帰りにでも寄ろう。

 

「母上、此処ですよ阿求ちゃんのお家」

「へ~私の神社と同じぐらい大きいね~」

「そりゃそうでしょう、幻想郷の情報は全て此処に集まるとかなんとか言われているぐらいですから…」

「それで……どうやって入るの?」

 

目の前には大きな木の門がそびえ建つ。門の前には二人の門番らしき人がいる。

 

「大丈夫ですよ。……あの~すいませ~ん」

「稗田の屋敷に何か用か?詩音殿」

「はい、ちょっと阿求ちゃんに用が有るので通して頂けますか?」

「ああ、入って良いぞ」

 

門番が片手で大きな門を二人で開ける。…門番は少し人間離れしている様だ。

なぜなら門の厚さは30cm程、大人が数人でやっと開けられる程の物だからだ。

それと私は何故、門に扉が付いているのにそれを使わないでわざわざ門を開けるんだろうと考えていた。

 

「母上、早く行きましょうよ~」

「え?ああ、ごめんごめん」

 

屋敷に入ると案内の人が出迎えてくれて阿求の部屋に案内してくれた。

 

「失礼します、阿求様。お客様が来られました」

「ええ、分かっています。貴方は下がっていいですよ」

「はい」

 

そう言われ案内人は退出する。

 

「さて……久しぶりですか?それとも初めましてですかね?」

「久しぶりでいいんじゃない?変わった所と言えば前髪が短くなった所ぐらいだし?」

「良く覚えていますね」

「阿求程じゃないと思うけどね」

「それもそうですね」

 

阿求は苦笑する。

阿求の一族……というか阿求は転生を繰り返している。

なぜなら彼女は『一度見た物を忘れない程度の能力』を持っているからだ。

だが転生する時に大半の記憶は消えてしまう為、前世などの記憶はあまり持っていない。

けれど私と会った時の事が記録に残っていた為、阿求は私の事を忘れていない様だ。

 

「それでですね、今日呼んだのは芽衣さんの記録が無いので作る為に呼ばせて貰いました」

「え?母上の資料ってまだ無いんですか?」

「ええ、なので芽衣さんを記録に残したいのですが宜しいでしょうか?」

「私は全然、構わないけど?」

「ありがとうございます、それでは名前から一からお願いします」

「……長くなりそうだね」

 

~数時間後~

 

「……これで大丈夫です。ご協力ありがとうございました。途中、色々と怪しい回答がありましたが良いでしょう。それと一つ良いですか?」

「ん?何?」

「あの…私がこの幻想郷縁起を転生してまで編纂を続ける意味は有るのでしょうか?」

 

阿求から出た言葉は予想外のものだった。

 

「それって、『人間を守るための書物』として意味を成さなくなって来たからって事?」

「…はい」

「そうだね、最近では表でも妖怪と人間の距離が近くなっているしね、そう思うのも無理は無いけどさ。でもそれでも人間に対して敵意を持っている妖怪だっているかもしれない。とても危険な妖怪が何処かにいるかもしれない。そういう事が確認出来るのはこの書物だけだよ。意味が無い事なんてこの世界に無いんだよ阿求」

「!……は、はい!ありがとうございます!」

「お礼は良いよ。もし阿求が転生をしたくなくて無理に地獄の閻魔様にやらされているとしたら、私は地獄全てを相手にするよ」

「えぇっ!?だ、大丈夫ですよ。これは私の意思でやってる事ですから」

「なら良かった。さて霊夢ちゃんに会いに行くとしますかな……どうしたの?詩音」

 

詩音は立たずに座ったままプルプル震えている。

 

「……ずーっと座って聞いてるだけだったので足が痺れました。おんぶして下さい」

「仕方がないなぁ…よっと、じゃあ、またね阿求」

「今度は遊びにいらして下さい」

「そうだね、暇な時に来るよ」

 

私は阿求に見送られて人里を後にして博麗神社に向かった。

現在はお昼過ぎだ。お昼は阿求の所でご馳走になった。

博麗神社にはいつも通り、霊夢ちゃんと魔理沙ちゃんがいた。

魔理沙ちゃんの方は何故かボロボロというか満身創痍で霊夢ちゃんの方は物足りないという顔をしていた。

 

「…えーと…何でそんなボロボロなの?」

「あっ!聞いてくれよ芽衣さん!此処に来たらいきなり霊夢が弾幕ごっこやら天則やらで散々だぜ!」

「…それで霊夢ちゃんは?」

「強い相手が居なくて物足りないです」

 

…別の意味での欲求不満?それともただ強くなりたいだけ?……まぁ、取り敢えず…

 

「なら詩音と本気で戦ってみたら?弾幕は苦手だけど普通に戦うのなら得意みたいだし」

「……分かりました。全力で行かせて貰います」

 

霊夢ちゃんは既に戦闘準備万端の状態だった。

何が霊夢ちゃんを此処まで動かすのか全然分かんないよ。

 

「詩音、足の痺れは治った?」

「はい、それで……母上…私も本気出していいですか?」

 

……此処で本気?…まぁ、いいか。

 

「いいけど…でも少しは手加減してあげてね」

「分かってますよ!」

 

あの目……絶対分かっていない目だ…。

 

「それじゃあ、行きますよっ!」

「来なさいっ!」

 

そして霊夢ちゃんと詩音のお互いガチ戦闘が始まった。

 





やった!紫を出せたよ!色々と隠しきれない部分があったけど平常心(笑)保てた!
活動報告で芽衣ちゃんの幻想郷縁起を書いておきます。(数日後かもね!)
次は霊夢と詩音の本気戦闘です。これは博麗神社倒壊不可避。
そしていつも通りの魔理沙が不憫。この世界の魔理沙では仕様です(泣)

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