神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ『ゆかりん、自重しようよ』

遅れてすいませんでした。色々と入り方はありましたがこれで行きます。
それでは本編どうぞ


門番&魔女

 

「ふぅ……やっと着いた」

 

最初は場所が分からなかったが優しい旅人とさすらいの商人のお陰で数日かけて、ようやく私は紅い洋館に着く事が出来た。

そして門の前で立って寝てる美鈴を見つけたので確定。

 

「どうも、こんにちは~」

「ZZZ~」

 

美鈴は深い眠りについている。

 

「美鈴~起きて~」

「ZZZ~」

 

美鈴は(yr

 

「………朝だよ!」

 

芽衣は美鈴の頭を軽く叩いた。

 

「いたっ!……だ、誰ですか!?」

「えっと……私は星羅芽衣。この洋館に入ってもいい?」

「何処かで会った事が………?…でも駄目です。私は此処の門番ですから。通す訳には行きません。どうしても通りたいのなら私を倒して下さい」

「あんなに爆睡してたのに?」

「あ、あれはたまたまです!!」

「へぇーたまたまかー。ならいいや。此処を通るには貴方を倒さないといけないんだね?」

「倒せるのなら……倒してみて下さい!」

 

そう言い、美鈴は戦う構えを取った。

 

「じゃあ、私も型に合わしてあげるよ」

 

私は美鈴とはまた違う構えを取る。

手を両方とも上に挙げて意味深な構え、特に理由は無い。

 

「独特な構えですね……それでは、こちらから行かせて貰います!」

 

美鈴は一瞬で間合いを詰めると芽衣の死角から拳を放ってきた。

だが私はそれを直観で避ける。

美鈴の拳は私の頭の位置にあった。

あのまま当たっていたらどんなに酷い事になっていたか……。

 

「………なるほど、熟練者ですね」

「次はこっちから行くよ?」

 

私はは美鈴が放った拳を掴んで背負い投げをする。

 

 

「ぐっ……!」

 

美鈴は地面に思い切り叩きつける。

だが美鈴はきちんと受身をしておりダメージはそれほど入っていない様に見える。

 

「追撃いくよ」

「!」

 

倒れている美鈴の腹に向けて掌底、けれど横に転がられ外す。

美鈴はそのまま転がった勢いで立ち上がり、再度私に拳を放ってくる。

狙いは腹、そう感じた私は本能のままに腹を守る。

予想は的中しガードした感覚が残る。蹴りは重い。だが既に美鈴は次の攻撃をしていた。

脇腹への回し蹴り、受け止めて防ぐ。やはり重い一撃。美鈴は残った足で私の頭を狙う。

私は両手でもう一方の脚を受け止めていたので必然的にその脚を離してまた防ぐ。

今度は反撃を許す前にこちらが反撃する。無防備になっていた腹に全力で掌底。

 

「たぁっ!」

「っ……!」

 

当たった感触はあるが妙な違和感。

美鈴は堪えた様子は無い。………どうやら気で防がれたらしい。

『気を使う程度の能力』

この能力は攻撃は当然、防御にも使える。

気を溜めて一箇所に集中して防御をすれば攻撃は通らず、気を溜めて攻撃を放てば防御など並みの相手ならば無意味だろう。

武道や武術に対して最も適している能力だろう。

ただしそれは気を十分に使える前提である。

もし気を乱す相手ならば話は別だ。

気を乱されればいつもと同じ様に戦えないのは必須であろう。

 

「ぐっ……!……?」

「気を乱すツボを14箇所やらせてもらったよ」

 

その相手が今、目の前にいる。

気を使い攻撃と防御をしている事を知り、それを乱す技を知っている。

気を使う武道としてはまさに天敵だ。

だが美鈴はその事に驚いてはいない。場数はそれなりにこなしている。

そんな相手がいなかった訳ではない。

 

―――あの攻防の中、そんな余裕があったのか!?―――

 

そう、美鈴は自分でも知らない内にその技が為されていた事に驚いたのだ。

だがそれは一瞬。直ぐに頭は切り替わりこの問題を対処する。

 

「すううぅぅぅぅぅ………はああぁぁぁぁ……」

「おぉ……」

 

美鈴は気の乱れを静め、そしてまた気を戦闘できるまでに回復させる。

それぐらい出来なければ当然『気を使う』などとは言えない。

 

「埓が明かないね」

「まだまだ、私はやれますからね」

「なら、次の一手で勝負を決める。一手だよ」

「…………出来るのなら拝見したいですね」

「…………」

 

芽衣は集中する。どこに一手を決めれば相手を倒せるか。

どうすれば相手の注意を攻撃する場所から遠ざけられるか。

その考えは二秒で終わった。気づいた時には体が動いていた。

 

―――速いっ!―――

 

瞬間、芽衣の立っている所には誰もおらず、気づけば美鈴の下に移動し終えていた。

 

―――っ!……脇腹に蹴り…?……いや違う、これはフェイント!本命は顎に掌底!―――

 

美鈴は気を全て腕に集中させてアッパーの様な掌底をガードさせる。

拳と腕が当たる直前、拳はすり抜ける。

それは残像であった。確かに当たる直前までは其処にいたのだ。

だが今はもう居ない。ふと上に気配を感じた。

 

―――最初は全てがフェイントっ……!……本命は上からの踵落としか……!―――

 

直様、腕を上でクロスさせて衝撃を緩和させる。

避けるのは当然間に合わないからだ。

今度こそ攻撃が当たる。

その時、美鈴は頭を強く揺さぶられた感覚に陥る。

それは一番最初のフェイントの顎に掌底を喰らえばこの様な感じになるだろうという感覚。それは正しかった。

なぜなら芽衣は下に居ると見せかけ上に行きそしてまた下に戻ったのだ。

 

―――二重フェイント……!……見事な物だ…っ!―――

 

今、思えば最初のフェイントが発覚して上に気配を感じた時、気を乱す技を知っていたのだ。なんなら気配を断つ事だった出来た筈だ。

それなのにわざわざ上に気配を感じさせて注意を引き本当の攻撃は気配を完全に断ち、私に昏倒させる程の一撃を喰らわせる為だったのだ。

そして美鈴は地に膝を着いた。

ここまで来れば、宣言通り一撃で決めると言った事を実現したのだ。

もう敬意を示す他ない。

けれどもそれはしてはいけない。目の前にいる人物は主に牙を剥くであろう人物。

ここで倒れれば門番としての役割は果たせない。ならば尚、抗うのは当然の事。

 

「…………ぐ……」

 

一度、地に膝を着いたがまだ完全に倒れた訳ではない。

死力を振り絞りもう一度地面に立とうとする。

 

「あんまり動かない方が良いと思うんだけど……」

 

その忠告は正しい。これ以上無理に体を動かせば日常に支障をきたすであろう。

だが美鈴はそんな忠告を聞かずに立ち上がった。

 

「私は………門番だ。……門を……主を守らないで……どう……す…………る……」

 

そして美鈴はここで完全に動きを止める。立ったまま気絶したのだ。

 

「……何処の弁慶だよ美鈴は………」

 

―――でも、まぁ。ここで気絶してくれるなら良かった。これ以上動いたら本当に危ないからね。このままそっとしておこう―――

 

芽衣は立ったまま気絶している美鈴に一礼して紅魔館の領地へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う~ん、見た目と中の広さは同じみたいだね」

 

てことは、咲夜は居ないって事かな?

 

「適当にドア見つけて入ろうかな」

 

芽衣は適当にドアを探して片っ端から調べようとした。

けれど意外にも直ぐに誰かがいそうな雰囲気のドアを見つけた。

 

「う~ん鬼が出るか蛇が出るか…まぁ出るのは吸血鬼なんだけどね。此処にいるかな?」

 

そのドアはいくつも備え付けられているドアと違い二倍程の大きさだ。

私はそのドアを数回ノックする。…返事は返ってこない。

仕方ないのでそのまま開ける。そして其処には…

 

「わー本がいっぱいだー(棒)」

 

其処には所狭しと並べられた本が有った。

残念、パチェのいる所でした。

 

「いらっしゃい。侵入者さん」

「え?」

 

声がする方には椅子に座り本を読んでいるパチュリーがいた。少し若い感じがする。

何でノックに反応してくれなかったんだろう……。

まぁ、侵入者がノックする時点でおかしいんだろうけど…。

 

「えっと……こんにちは、この屋敷の主の所に行きたいんだけど……」

「それより、紅茶でも飲んで行きなさい。こぁ!紅茶を入れて貰える?」

「分かりました、パチュリー様」

「え、でも…」

「お茶の誘いを断るほど無粋では無いでしょう?」

「……いただきます」

 

―――さっき侵入者って言ってたのに何でもてなしてくれるんだろう―――

 

「さて、待っている間、暇だし自己紹介でもしましょう。私はパチュリー・ノーレッジ。魔女よ」

「私は星羅芽衣。人間だよ」

「人間……ねぇ。貴方を監視していたのだけれど……貴方、本当に人間?」

「まぁ…普通の人間だよ」

「……そう」

「紅茶をお持ちしましたよ」

 

話してる間にこぁが紅茶を持って来てくれた。

 

「ありがとう、それじゃ早速」

 

そして私は普通に紅茶を飲んだ。

飲んだ瞬間、口の中で一瞬変な味がした。

 

「……うん、中々美味しいよ」

 

これ……毒?この甘く苦い毒って……体が麻痺して最終的に死ぬ毒じゃん……。

体の中で勝手に抗体が出来なければ死んでたよ…。

 

「「!?」」

「どうしたの?そんな顔して、それじゃ紅茶もご馳走になったしそろそろ行くね。誰か屋敷の主まで案内してくれない?」

 

 

芽衣は紅茶を飲み干して図書館から出ようとする。が、

 

バタンッ!

 

急にドアが閉まった。

 

「行かせないわ..貴方みたいな危険人物を..こぁ!殺しなさい!」

「分かりました!」

 

すると小悪魔は小さな魔法陣をいくつも展開して術を放ってきた。

後ろではパチュリーが大きな魔法陣を作りあげている。

 

「それじゃ、今回も付き合ってあげるよ♪」

 

そう言いながら小悪魔が放ってきた魔法を避けて、

芽衣はスキマから例の魔法書を手に取りあるページを破った。

芽衣の前にこう文字が表示される。

 

≪魔法発動..『黄金の魔女の家具 召喚』≫

 

すると芽衣の周りに幾つもの魔法陣が展開してある人達が出てきた。

 

「「「「「「「煉獄の七姉妹、此処に」」」」」」」

「やっちゃって」

「「「「「「「了解」」」」」」」

 

煉獄の七姉妹は自分の体を七杭にし高速飛翔して魔法陣を全て貫いた。

そして、

 

「くっ..」

「すみません~パチュリー様~」

 

七杭の四本は小悪魔を壁に貼り付けて残りの三本はパチュリーの顔の目の前で止まっている。

 

「これで、Checkmate(チェックメイト)だよ」

「..私の負けよ。好きにするといいわ」

「それじゃ、≪解除≫」

 

すると七杭は元の姿に戻り芽衣を一瞥して消えた。

 

「じゃあね♪」

「まっ、待ちなさい!」

「何?」

「何で...攻撃を止めたの?」

「...」

「私は貴方を殺そうとしたのよ!?何で..何でそうあっさりとしてるのよ!」

「...紅茶のお礼..かな?それじゃあまたね♪」

 

そして芽衣は魔法のかかった扉を普通に開けてまた洋館の中を探索する。

 

「..訳が分からないわ..星羅芽衣..人間...ね。ふふ」

 

一人、人間という生き物に興味を持った魔女が微かに笑った。

 

 

 

 

 

 

「此処で最後かな」

 

芽衣の前には図書館より一層、大きい扉が待ち構えていた。

そして扉を開くと..

 

「ようこそ、人間...いや?人外よ」

 





次は、スカーレット家当主とご対面です。
次回も遅れるかもしれません。それではまた次回。

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