神に気に入られし人間   作:新城真宵

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前回のあらすじ「お酒は飲んでも飲まれる事はない」

人外だけの理論ですね。


白玉楼の庭師と主と桜

 

「え?友人?」

「そうよ、貴方に紹介しようと思ってね」

 

とある日の晴れ。

久しぶりに紫が遊びに来たと思ったらいきなりこんな事を言われた。

 

「私の友人を紹介したいから付いて来て」

「どうして私に?」

「……い、一応、私の友人だからよ……………は、恥ずかしい事言わせないでよ!」

「へ~」

「い、いいから!行くわよ!」

「いいけど……何処に?」

 

紫の友人って博麗の巫女ちゃんか幽々子しか居ないと思うけど……

 

「冥界よ」

 

ですよね。分かってた。

 

「という事は白玉楼にでも行くのかな?」

「……なんで貴方が知っているのよ。また心を読んだのかしら?それとも行った事があるのかしら?」

「どっちでしょうね~」

「……本当、貴方は考えている事が分からないわ」

「私にとっては褒め言葉だよ」

「それじゃあ行きましょう」

「はいは~い」

 

私は紫の隙間の中に入り案内される。そして何処かに……そう階段の前に落とされた。

 

「紫~此処は?」

「其処は白玉楼へ続く階段よ。私は先に行っているから頑張って上って頂戴。それじゃ」

 

そう言い紫は隙間を閉じた。

私を友人に会わせたいのか会わせたくないのか分かんないよ。

 

「まぁ、地道(本気)で上ろうかな」

 

さて、何秒で着くかなっと。

 

 

 

 

 

 

 

~少女全力疾走中~

 

 

 

 

 

 

 

「良し!6秒7。短距離走ぐらいで終わったね」

 

私が全力で階段を上り大きい門の所まで着いた。

……これ、開けてもいいのかな?

なんか扉の向こうに出待ちしている人?がいるんだけど…

 

「まぁ、挨拶は必要だよね」

 

芽衣は扉に近づき扉を叩く。

 

 

ドンッ!ドンッ!

 

 

「すいませ~ん。此処、開けて貰えませんか~」

 

 

………………

返事が無い、ただの扉の様だ。

じゃなくて……開けていいのかな?

まぁ、いいか。

 

「それじゃあ、おっじゃまっしま~す!!」

 

 

バッゴオオオオオオオオオオオオン!!!

 

 

芽衣は扉を思い切り殴り無理やり力で開門させた。

 

「!?……騒がしい侵入者だな…」

「いるなら返事ぐらいしたらどうなんですか?」

「侵入者に誰が返事をするものか」

「………へ~それは勉強になりました。じゃあ、そういうことで」

「待たんか」

 

ヒュン

 

パシッ

 

芽衣が脇を通ろうとすると腰にある刀を抜き、躊躇無く芽衣に向けて振った。

だが芽衣もそれをガードした。

 

「危ないじゃないですか。白刃取りをしていなかったら普通は致命傷ですよ?」

「侵入者には十分だろう」

「わ~た~し~は、紫に誘われて来たんだってば。侵入者じゃないの。お客なの!」

「……信用できないな。それほど通りたければ儂を倒してみろ」

「……仕方無いな~お爺ちゃんを苛める趣味は無いんだけどな~」

 

まぁ、此処は余興として少し相手と合わせて戦ってみようかな。

確か隙間の中に良い刀があった様な気がしたんだけどな~ってあったあった。これこれ。

 

「ほう…中々良い刀の様じゃの」

「ありがとね~」

 

私の刀は超でかい。というより剣だけどね。両刃の。

 

「まぁ、ある物を参考にして打ったんだけどね。この刀は退魔ノ剣。そして私は星羅芽衣。旅人だよ。ふふふ、さぁ尋常に」

「……面白い。わざわざ儂と剣術で戦おうと言うのか……いいだろう。儂は魂魄妖忌。此処の庭師だ。それでは……いざ尋常にっ!」

 

「「勝負ッ!!」」

 

その言葉と共に私は巨大な剣を真横に振るう。

 

「いくよっ!それっ!」

「っ!…」

 

キンっ!

 

その斬撃を受け流し私にカウンターをしかける妖忌お爺ちゃん。

 

「おっと、掠る所だった」

「何故あの体制から掠りもしないのだ」

 

そうして斬撃を躱し流し避けてぬらりくらりと両方の刃が相手に届かずに時間が過ぎる。

 

「(何だこの動きは……何かの流派に習い振り下ろしている訳でも無く。これといって癖が無い……だが太刀筋がしっかりしており隙が無い。どういう事だ?我流ならばここまでキレのある動きが出来る筈が無い…)」

「どうしたの?考え事?」

「お主…何処かで流派を学んだのか?それとも我流か?」

「……強いて言うなら両方。かな?」

 

だって私がやっているのは見様見真似の剣術だしね。伊達に長く生きてない。

 

「お主…他の流派を複数混ぜお主自身の流派も入れておるじゃろう?」

「だいたい合ってるかもね」

「ふむ……興味が沸いてきた。このまま数日斬り合うのも悪くない……が、いいだろう。お主を幽々子様の所へ案内してやる」

 

そういい妖忌は刀を下げた。

私もそれを見て剣をスキマに戻す。

 

「どうして、また急に何か理由でもあるの?」

「そうだな、お主からは殺意や悪意というものが見つからなかった。それだけで理由は充分じゃ」

「それはどうも」

「それと此処からはいつ死んでもおかしくない領域になるからな。気をつけるがいい」

「?……ああ、そういうこと。分かりましたよ~」

 

『死んでもおかしくない領域』って西行妖の事と幽々子の事、どっちもだろうけど私はそう簡単に死なないしね。

 

「あ、そういえば妖忌って『歌聖』っていう人は知ってる?」

「!?………いや知らないな」

「…………そう」

 

幽々子の父親の事何だけど、後でもう一回言おうっと。

 

「それよりも着いたぞ、此処が幽々子様のいるお屋敷だ」

「へ~此処が……!」

 

おっと、危ない。

 

「如何した?」

「いや、何でもないよ」

「そうか、なら儂はお茶でも用意するかの。幽々子様の友人、紫様も来ておられるのなら尚更。幽々子様は縁側に居る筈だ。家の周りを歩いていれば見つかるだろう」

 

そう言い妖忌は屋敷の中に入って行った。私は妖忌お爺ちゃんの言う通り屋敷の周りを歩き縁側を探している。

それにしてもあれが『死に誘う程度の能力』か……あれは危ないね普通の人が近づいたら余裕で死ねる。

まぁ、そんな事は置いといて紫を探そう。

いっそ、ゆっかり~んて大きな声で呼ぼうかな。

 

 

 

家の周りを歩くこと数分。

 

「あ、意外に早かったのね芽衣」

「おやおや、腰にダメージが入るからと言ってスキマで移動した紫さんじゃないですか」

「……喧嘩を売っているのかしら?(ピキピキ)」

「私はいつでも大安売りだよ?」

「はぁ、まぁ、いいわ。それよりも紹介するわ。この子が幽々子よ」

「ど~も、初めまして。西行寺幽々子と申します」

「ど~も、初めまして。星羅芽衣と申します」

「何、口調を真似してるのよ。貴方は」

「何となく」

「あの~早速で悪いんですけど私と友達になってくれませんか?」

「私は構わないけど?」

「じゃあ、これからよろしくお願いします~」

 

やったね、幽々子と友達になった。

 

「幽々子様。お茶と菓子を持って参りました」

「あら、妖忌。気が利くじゃない」

「それじゃ、お茶会としましょうか」

 

お茶会をしている時、私は妖忌にどんな流派を知っているのかと聞かれたので色々と言ってみたが、私が総勢数十とも言える流派を話したので妖忌はいつかは旅をしたいと言っていた。

そして……

 

「幽々子、そういえば前来た時には話題にしなかったけどあそこにある桜。随分、嫌な感じがするんだけれど」

「ああ、あれ。あれは西行妖と言われていてね。人の生気を吸うんですって」

「へぇ~面白そうね」

「いや、私はあまり面白くないと思うけどな」

「どうして?」

「あれは、普通の桜ではないよ。言うならば妖怪桜。あれからは妖力が大量に感じられる。あれが満開になると大変な事になると思う」

「あの桜は数年の間、満開になっていないわよ?」

「だからこそだよ。幽々子。溜めに溜まった妖力が一気に放出されれば………」

「大惨事になるわね……」

「それと妖忌」

「何だ?」

「『歌聖』」

「!!」

「私に隠し事は意味を成さないよ」

 

まぁ、知っているだけなんだけどね。そして出来るだけ幽々子に聞こえない様に話す。

 

「あの桜。満開になる度に人が死んでいるでしょ?最初は歌聖。そして歌聖を慕っていた者達も後を追うように死んでいった。違う?」

「……その通りだ」

「そしてもう残りは……」

「幽々子様……」

「ちょ、ちょっと待ってよ。いきなり何の話をしているの!?幽々子がどうしたっていうの!?」

「紫…幽々子を助ける為にあの桜を封印するしかないんだよ」

「それなら、早そk」

「だけど矛盾するんだよ」

「……どういうこと?」

「あの桜を封印する為には何かを媒体にして封印するしか無いんだよ」

「……まさか」

「そう。幽々子の体が必要なんだよ」

「!?」

「幽々子を助ける為には西行妖を封印するしかない。だけど封印するには幽々子の体が必要。言ってる意味……分かる?」

「………この話はもうやめましょ。今、満開になるとは限らないじゃない。それなr」

「まぁ、今は満開にならないかもしれないけど………何かを切っ掛けに満開になるかもしれないよ」

「………」

「あくまで可能性のお話だよ」

「………気分が悪くなったわ。先に帰らせて貰うわ。じゃあね幽々子」

「?何の話をしていたのか分からないけど、またね~」

 

紫は心底、気分が悪そうにして帰って行く。

妖忌も随分、悲しい表情になっている。

 

「じゃあ、私も帰るね。また会おうね幽々子」

「ええ、また会いましょう」

 

芽衣はそう言い残し帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幽々子が芽衣と出会い数日後……

 

「あれ?どうしたの紫?そんな顔して」

 

朝、裏庭で花に水をあげていると隙間が開き紫が険しい表情で出てきた。

 

「……少し付いて来て……」

「何々?何処か行くの?」

 

私は紫の隙間に入りある場所に連れてかれた。

其処にはとても美しく残酷な光景が広がっていた。

 

頭上からは桜が降り注ぎ目の前では西行寺幽々子が死んでいた。

西行妖からはとても多い妖力が発散されていた。

 

「紫………これどういう事?」

「……朝、幽々子の家に来たら…………幽々子が自殺していた……西行妖が…満開になっていたわ」

「……」

「……」

 

言葉が止まる。一秒がとても長く感じられた。

 

「……ねぇ……これは貴方がやったの?」

「やる訳無いでしょ!」

「っ!?」

 

私はそれを完全否定するように言い切る。

こんなことをする訳がないから。

 

「あーごめん。ちょっと大きい声出しちゃった」

「いえ、私が悪かったわ。ちょっと気が動転して馬鹿になってたわ。ごめんなさい」

 

紫は頭を下げて謝る。

 

「……紫……この桜を封印するよ」

「……ええ、勿論よ。こんな桜さっさと封印しましょう」

 

そして私はこの桜を封印するべく歌を歌う。

 

「芽衣?何をしているの?」

「(封印の儀式、私なりの)」

「(直接脳内に!?)」

「(少し聴いててね)」

「(……分かったわ)」

 

そして芽衣は歌い続けた。桜を封印する為に。

 

「(凄く綺麗で美しい声……だけど……なぜか涙が……)」

 

 

 

 

 

 

そして西行妖は封印された。芽衣の歌によって。

 

「紫……幽々子の体はこの桜に埋めて」

「分かったわ」

 

紫は素手で地面を掘り幽々子の体を埋めた。

 

「これで………幽々子も少しは……」

「そうだと良いね」

 

私と紫はその日を白玉楼で一晩を過ごした。

 

 

 

 

 

そして翌朝。

 

「…………あーそういえば白玉楼に泊まったんだっけ。顔洗ってこよう」

 

私は顔を洗いに井戸を探す。

 

「あれ?確かここ等辺に……ってあれ?縁側に誰か座っているな~紫?いや、あれって……」

 

 

 

 

「__________という事で頼みましたよ。西行寺幽々子」

「勿論よ~」

「……やっぱり幽々子なのね」

「あら?貴方はだ~れ?私の事を知ってるの?」

「おや?誰かと思えば、星r」

「ああ、うん。ちょっと待ってて」

 

芽衣は寝坊助さんの紫を呼ぶ。

 

「お~い。ゆかり~。ちょっと来て~」

「…何よ……朝から騒がしい……ん?その人は誰?って、え?え?幽々子?え?」

「まだ寝ぼけてるの?」

「失礼ねっ!!……本当に幽々子なの?」

「見たまんま、でも」

「あら、貴方も私の事を知っているの?」

「!?」

「記憶を失ってるよ。まぁ、それについてはさっきからスルーしてた目の前にいる閻魔様に聞けばいいんじゃない?」

 

幽々子の隣には髪は緑色で、身長は子供のそれに近い。

 

「……何か変な事を思われた気がしますが、まぁいいでしょう。それでは、貴方方にも説明します。今、此処にいる西行寺幽々子は生前の西行寺幽々子とは別です。記憶が無いだけです」

「ど、どうして記憶が無いのよ!!」

「それは『能力』の問題です。能力と魂は深い関係を持っています。彼女の能力が別の物に変わった性で魂にも干渉したんでしょうね」

「例えばどんな?」

「生前は『死に誘う程度の能力』でしたが今は『主に死を操る程度の能力』ですね。それと西行寺幽々子には冥界で永住する代わりに幽霊管理を任せましたから。それが伝え終わったので私は帰ります」

 

こうして閻魔………映姫は帰って行った。

 

「貴方達は私の友達だったのかしら?それじゃあ、もう一度友達になりましょう!」

「ちょっと待って……妖忌…隠れてないで出てきたらどう?」

「……ばれていたか」

「あら?貴方も私のお友達?」

「いえ、滅相もありません!私は此処の庭師ですから……友達とは……」

「まぁ、細かい事は気にしないで」

「こ、細かい事では……」

「それじゃあ、三人とも!友達ということね♪」

「……もうそれでいいです…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして月日が進んだある日。

 

「月に攻め込もうかしら?」

「随分と唐突だけど……それだと戦争になるね」

「ええ、月面戦争よ…」

「何を勘違いしてるの?」

「え?」

「幻想郷大戦の間違いじゃないかな」

「……まさか、邪魔をする気?」

「勿論、そんな事で妖怪達を無駄死にさせる訳にはいかないからね」

「いいわ、受けて立つわ!月に行く前に叩き潰してあげるわ!!」

「ふふふ、こっちは出来るだけ殺さないから殺す気でかかってきなよ」

「勿論よ」

 

第一次幻想郷大戦……開幕!

 

 





芽衣の使ってた剣は皆さん分かりますかね?
ディーグレのあれです。あれ。
それと芽衣は幽々子の事を死ぬ前に助けるんじゃないかと思いましたが死んでも幽霊になるし大丈夫かなと考えていたので積極的には助けようとしませんでした。



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